こんにちは。「ボブログ」で辛口コラムを執筆しているのりこ美容室 前田秀雄です。
これまで、ケミカル編では「“アンチエイジング”という言葉に流されすぎるな!」「髪を洗うという常識を変えよ!」「過度なUVケアは注意が必要!」のテーマでお伝えしてきました。
【ケミカル編/第5回】“アンチエイジング”という言葉に流されすぎるな!
【ケミカル編/第6回】“髪を洗う”という常識を変えよ!
【ケミカル編/第7回】過度なUVケアは注意が必要!
そんな連載もついに最終回です。
……さぁ張り切って行きますよ!
時はヘアカラーブーム。
街を歩けば多くの人がファッションカラーを楽しんでいますね。
しかし! 楽しいヘアカラーの邪魔をするのが「頭皮トラブル」。
50代以上の人が人口の半数以上を占める今日、厄介な頭皮トラブルはこれまでの50代より、これからの50代の方が増えるのではないかと考えられます。
それは、ファッションカラーを長年楽しんできた世代が白髪世代に突入し、白髪のリタッチを行うなど、カラー剤に触れる期間が長期に渡っていることも要因のひとつです。
アレルギーの危険性を知ろう!
頭皮トラブルの中でも一番多いのは「アレルギー」です。
そもそも「アレルギー」とは?
原因物質となるアレルゲンが触れたり体内に入ったときに体が危険と判断し、それに対抗する抗体を作ってしまうことで発症する自己免疫システム。
現在、日本などの先進国と呼ばれる国々では、成人が花粉症や喘息、食物アレルギーなどのアレルギー性疾患の数が増加傾向にあります。
アレルギー患者の数は成人が年々増加していますが、厚生労働省の調査でも全国民の3分の1が何らかのアレルギーに悩んでいると報告も……。
その原因として
・アレルゲンの増加 ・衛生仮設
・食生活の変化 ・腸内細菌の環境変化
・生活環境の汚染 ・ストレス
また、交差反応などさまざまな要因とアレルゲンが重なってアレルギーの人が増えているのです。
子どもの時には起こらなかった食物アレルギーが、なぜ成人になってから発症するのでしょうか?
それには、発症のメカニズムが関係しています。
そのメカニズムの例として、ある食物を毎日のように食べていると、次第にその食物に対するアレルギーになることがあります。
今まで問題なく食べられていたものでも、食べ続けているうちにアレルギーを発症することがあるのです。
食物ではなくても、花粉やダニのような環境中に普通に存在するアレルゲンが食物アレルギーに関与することがあります。花粉やダニなどの環境アレルゲンと食物アレルゲンの形が似ている場合、環境アレルゲンに対してアレルギーがある人が食物アレルゲンに対してもアレルギー反応を起こしてしまうわけです。
これを「交差反応」といいます。
https://www.jcia.org/user/public/uv/knowledge
【交差反応が起こる可能性があるものの事例】
・サーファーに多い納豆アレルギー
クラゲに繰り返し刺されたサーファーは、皮膚からPGA(ポリガンマグルタミン酸)が体内へと入ります。なんと納豆のネバネバ成分に含まれるのが、このPGA。納豆を食べ、PGAが体内に入ると、体がアレルゲンが侵入したと認識してしまい、体が過剰な免疫反応を起こすことで発症します。
・カレイの魚卵、獣肉アレルギーとマダニ
マダニの唾液に含まれているアレルゲンα-Gal(アルファガル)と牛肉、豚肉、羊肉には α-galが存在しており、α-galに抗体ができた状態で牛肉を摂取するとアレルギー反応が出る場合があります。また、子持ちカレイ(主にカレイ魚卵)も同じくアレルゲンの形が似ているために発症します。
このように、様々な要因とアレルゲンが重なって、アレルギーの人が増えていることがわかったと思います。
このアレルギーに関する問題はかなりクローズアップされている!
カラー剤によって引き起こされるアレルギー症状には
・頭皮のかゆみ
・頭皮のかぶれ
・頭から首筋にかけての湿疹
・顔全体の腫れ・むくみ
などがあります。
また、ヘアカラーでのアレルギーの原因物質は「パラフェニレンジアミン」であることが多いですが、これに似た成分の酸化染毛料には、
・パラトルエンジアミン
・ニトロパラフェニレンジアミン
など俗に言う「ジアミン系」。
ジアミン系と同じように酸化染毛料に多いのが、
・パラアミノフェノール
・メタアミノフェノール
などの「フェノール系」。
実は「ジアミン系」と「フェノール系」、化学構造が似ているのです。
そのため、一度これらのどれかでアレルギーを発症した場合、交差反応が起こる可能性があり、酸化染毛料を使用するヘアカラーの使用は危険を伴います。
人によっては、呼吸困難や激しい頭痛・動悸などの症状が出て入院になってしまうことも……。
今まで全く症状がない人も要注意!
「10年カラーをしてきたけど11年目に症状が出てしまった」なんてことも普通にあるのです。
頭皮にも休憩を
すこやかな頭皮環境の維持には「頭皮常在菌」が関係しています。
頭皮常在菌には、皮脂を代謝し脂肪酸を作り出して頭皮を弱酸性に保つ役割があります。
そして形成された皮脂膜が頭皮を保湿させ、これらの常在菌・善玉菌・日和見菌・悪玉菌らが互いに影響し合ってバランスを取り、健康な頭皮を保っています。
しかし、更年期に入る40〜50代。
ストレスや身体の変化で、頭皮のバリア機能乱れ敏感肌状態に……。
そんな頭皮にパーマやカラー剤などのアルカリ剤や過酸化水素などの刺激物質が触れると、炎症が起きやすくなります。
正常な皮膚上で染毛剤を塗布しても大きな問題が起こる可能性は低いです。
でも、バランスが崩れ皮脂膜のない状態にカラーリングを繰り返すと、トラブルが起こるのは当然!!
「これから長くカラーを続けたい」という人には、カラーする期間をなるべく1カ月程度は空けて、皮脂を守るバリアゾーンの皮脂膜を形成する期間をつくることをお勧めします。
ゼロテクだけを信じるな!
さて、ここまで読んで、
「そもそも“ゼロテク”を使って頭皮に直接カラー剤が付かないようにすればいいじゃないか!」という美理容師もいるのではないでしょうか!?
そんな方はまず以下を読んでいただきたい……!
日本ヘアカラー工業会が2017年11月6日に開催した、アレルギー疾患の専門医・松永佳世子教授(医師、藤田保健衛生大学医学部)の特別セミナーとヘアカラーリストらによるトークセッション。
松永佳世子教授は、アレルギー種類の違いやヘアカラーアレルギーの現況を説明したあと、美理容師や顧客に起こりうるアレルギーをテーマに疾患回避の方法を示した。
そして「アレルギーがあっても地肌に剤をつけなければ大丈夫か?」の質問に対し、「なかには大丈夫な人もいるがこれは例外で、用剤を洗い流すときに触れるので基本NG」と回答した。
さぁ、「たとえ地肌にカラー剤を付かない“ゼロテク”でもダメ」と専門医が言い切った!
美容師さん、どうする!?
こういった問題には、やはりパッチテストが重要なのです!
アレルギー予防には「パッチテスト」
大人になってアレルギーを発症した場合、残念ながらアレルギーが完治することはほとんどないといわれています。
しかも、アレルギー性接触皮膚炎の場合、我慢しながら使用していると症状がどんどん悪化して、最初はかゆみだけだったのが、そのうち呼吸困難やアナフィラキシーショック等を起こすことになってしまうこともあります。
「ゼロテクやっているから、大丈夫!」なんて妄想にとらわれている美容師さん、ダメダメ!
それよりも、パッチテストを徹底すること!
貴方のサロンでは、新規客や、飛び込みでご来店されるお客さまに「パッチテスト受けていただかないと当店では、カラーリングはできかねます!」って言えますかっ!?
……正直言いにくいかもしれません。
しかし、それをやることで、逆に絶大な信頼を獲得できた経験を、僕のサロンで多々経験しています。
それが逆に、意識の高いお客さまの獲得に繋がり、その意識の高いお客さまのつながりでまた、意識の高いお客さまの紹介につながります。
たとえ初めてヘアカラーをお使いになられるときでも、必ずパッチテストをするようにしてください!
さいごに
ということで、2023年2月からスタートした《前田秀雄の『前提を疑え!』》第1回から第8回までが終わりました。
人は不安に陥いると大多数に所属しようとします。
「今、美容業界の流れは〇〇だから……」などという囚われた思考から抜け出して、“クリティカルシンキング”という重要な思考を持つことが必要です。
「自分ならどう考えるのか?」
「その本質は何処にあるのだろうか?」
常にクリティカルシンキングを胸に「あり方」を問いかけ、「コト」に当たってみてはいかがでしょうか。
そして、半年間、皆さまからの嬉しいメッセージが僕を突き動かしました。
本当に有難うございました。
これまでの第8回までの内容が、これからも皆さまのお役に立ちますように……!!!
また、お会いしましょう!!
前田さんのケミカル知識を集結し、サロンワークの現場で使いやすくした1冊はこちらから↓。
- 美容師のケミ会話
- 店販購買率95%、年間平均来店回数8回、固定リピート率95%!スゴイ数字を出し続けている前田さんの「リアルなカウンセリングで使っているキーワード」が学べる1冊。
現場でよく聞かれる25の毛髪科学にまつわる疑問と、そこに出てくる専門用語をサッと引くことができる辞典の2部構成なので、毛髪科学がスルスル分かります!
- 執筆者
- 前田秀雄
1965年9月6日、京都府生まれ。京都理容美容専修学校卒業後、1991年、京都府伏見市に母・紀子さんが創業したのりこ美容室に勤務。2007年に事業を継承し(株)NORIKOを設立。代表取締役社長となる。小さな美容室の「行きつけマーケティング」を追求し、独自の小規模美容室経営を確立。スタッフ5名、1店舗で増収増益を続けている。毛髪診断士および毛髪協会認定講師。学校法人京理学園評議員。著書に『ちっちゃい美容室のでっかい革命』『美容師のケミ会話』(ともに髪書房刊)がある。
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