【ケミカル編/第6回】“髪を洗う”という常識を変えよ!

【ケミカル編/第6回】“髪を洗う”という常識を変えよ!

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こんにちは。「ボブログ」で辛口コラムを執筆しているのりこ美容室 前田秀雄です。

これまで、ケミカル編では「“酸性”に流されすぎるな!」「“アンチエイジング”という言葉に流されすぎるな!」のテーマでお伝えしました。


美容師さんの価値を高める地道なセミナーを、もう30年、2,300回以上も続けてきました。

そんな僕が、今月は『“髪を洗う”という常識を変えよ!』をテーマに書きたいと思います。


Contents


シャンプーは頭皮を洗うもの

前田秀雄

シャンプーはどこを洗うか、わかりますか?

この質問をすると、美容師さんのみならず、一般の方々も「頭皮です」と答える昨今になりました。


ぜひ、一緒に考えてみてください。

皆さん一様に、シャワーで湯洗し、シャンプー容器のフタを開けて、手のひらに適量を出し、フタを閉めて両手を擦り合わせて泡を立て、髪に付けて再び空気を入れながら泡立てて洗います。


なぜ、手のひらで泡を立てなければいけないのでしょうか…

なぜ、頭皮に直接付けてはいけないのでしょうか…

誰もそこに疑問すら持たずに、当たり前にやっている毎日のシャンプー。

前田秀雄

思考停止状態になっていませんか?


知識をどんなに増やしても、資格をどんなに取得しても、それをサロンワークで使い、お客さまに伝わらなければ何の意味もありません。



テレビで特集されたときや雑誌などを見ていても、専門家や医師らが「シャンプーやトリートメントは直接頭皮に付けずに…」と言っています。

さまざまなサイトを見てみると

「シャンプーの原液を直接地肌につけてはいけない」

と書いてあります。なぜなら、シャンプーの原液は、洗浄成分が非常に高いので、直接つけてしまうと頭皮がかぶれたり、毛穴に原液が流れ込んで、毛穴を詰まらせたりするからです。


「まずは手のひらでシャンプーの原液を水で少し薄めながら、泡立てていきます。ある程度泡立ったら、髪全体になじませるように、優しく丁寧に髪の毛に揉み込みます。

日本人は髪を洗いすぎていて、必要以上に頭皮の皮脂を取りすぎていて、それが『薄毛の原因』になったり、髪質に必要な油分を奪ってしまっている」

などとも書いてあります。

頭皮の皮脂腺は、他の場所より発達していて、皮脂量は顔のTゾーンの3倍もあります。皮脂腺から分泌される脂が残ったままだと、汗やほこりなどと混ざり合って思わぬトラブルを生み出します。

シャンプー剤は、直接付けてはいけない。
シャンプー剤は、手のひらで泡を立てなければいけない。

つまり、直接皮膚に付けてはいけないものとしてつくられていることになります。

だから、髪に作用させるように「しっとり」「ツルツル」「サラサラ」「パーマヘア用」「カラー用」「硬い髪用」「クセ毛用」などと表記されているのだと思います。

毛乳頭に血液を送り込むためにシャンプーする

シャンプーの語源は、ヒンドゥスターニー語の champo。

ムガル帝国のビハール州周辺において行なわれていた香油を使った頭部マッサージが語源です。

つまり、シャンプーとは「頭皮をしっかり洗って刺激をし、血行促進をする」という意味です。

しかし、ほとんどの人はそれを知らないために、間違った方法で洗っているために髪を傷めているのです。

頭皮より髪…という本質からズレて、毛細血管から毛乳頭に栄養が行き渡らない状況です。

前田秀雄

人間は新陳代謝は自らが行い、栄養補給は口からしかしません!

皮膚は消化吸収する器官ではありません!


僕は、汚れを落とすだけじゃなく《毛乳頭にいかにして血液を送り込むか》を、シャンプーの最終目的として、『逆算から目的達成させること』が大切だと思っています。



頭皮に作用させる「逆算シャンプー」の考え方とは?

①頭皮の緊張をなくすことで、毛細血管が通りやすくする

②皮脂膜形成をさせることで、頭皮の保水力をアップし柔軟性を持たす


③毛細血管を拡張

④頭皮別に特化して、最適な皮膚に使う


⑤頭皮に直接付けられるシャンプーを選ぶ


⑥湯洗で7割の汚れが取れるなら、一度洗いを基本にするシャンプーを目指す


⑦頭皮の状態と髪の毛のコンディションは、必ずしも一致しない

⑧頭皮は生きている細胞、髪の毛は死滅細胞である

この中で、最も重きを置いたのが《皮脂膜形成》です。

その為に理解すべきことは、以下のことです。

皮膚には「常在菌」と呼ばれる菌が存在し、様々な外的要因から皮膚を守ってくれています。
この常在菌のバランスが崩れると頭皮環境の悪化や湿疹などさまざまな問題を起こします。

常在菌を知る

●常在菌とは
人の体に存在し、人類と共生している菌のことをいいます。主に皮膚や粘膜などに存在しており、体のバリア機能を担っています。その中でも皮膚常在菌は皮膚上に生息している菌のこと。皮膚には200種以上の常在菌がおよそ100万個棲息しているといわれており、主に汗や皮脂などをエサにしています。

常在菌の主な種類としては善玉菌、日和見菌、悪玉菌が挙げられます。常在菌は通常の相互バランスを保っていれば人体に害を与えることはありません。むしろ病原性の微生物繁殖を抑制したり、花粉などのアレルギー物質からも守ってくれたりと、重要な役割を担っています。そのほかにも、肌を弱酸性に保ちトラブルの起こりにくい状態をキープする働きも持っています。

●常在菌による頭皮のトラブル
皮膚常在菌の一種である「マラセチア菌」などが異常繁殖した場合、脂漏性皮膚炎という皮膚疾患を引き起こす可能性があります。脂漏性皮膚炎は頭皮が炎症を起こすため、かゆみ、抜け毛を助長させ、頭皮環境の悪化にも繋がります。

近年《湯シャン》なるものが、ネット等で頻繁に発信されているみたいですが、普段は人体に潜んでいても何の問題もない常在菌ですが、異常に繁殖することで常在菌のバランスが崩れ、悪影響などが起こります。
この《湯シャン》で、こういったトラブルが起こっていることは、あまり発信されていませんが、実際にはトラブっている方々も多いのです。

《湯シャン》を推奨すること自体は悪いことではありませんが、あくまで自分自身にとって良いと思ったことであり、他人に勧められることではありません。
以前《湯シャン》をされている方に話をしてみたことがありますが、「シャンプーは何処を洗うのかわかりますか?」と聞いたら「頭皮」と言われたので「では、頭皮を見てシャンプーを選んだことがありますか?」と聞き直すと「ありません」という答えでした。

前田秀雄

美容師さんの中にも「界面活性剤が悪い」と言われる方も多々おられます。

であれば、カラー剤やパーマ液の方が頭皮に影響あると思います。


●常在菌のバリア機能
常在菌にはカビや花粉などといった外的刺激から守ってくれます。紫外線などのダメージ、活性酸素を分解する物質を生産したり、肌を保湿したり、アレルゲンの侵入を防いだりと、さまざまな働きを担っています。
皮膚常在菌の一種で善玉菌の「表皮ブドウ球菌」は、普段は皮脂や汗をエサにしてグリセリンや脂肪酸を作り出し、肌を弱酸性に保ってくれています。

●常在菌のバランスが崩れる原因
無数に存在する常在菌は、“バランス” が崩れたときにトラブルが生じます。
常在菌のバランスが乱れる原因としては、生活習慣が大きく関係しています。頭皮や髪の毛を清潔に保てない状態が続くと、常在菌が異常繁殖する可能性があります。

その他にも、洗髪後に髪を乾かさず濡れたままの状態でいると雑菌やカビの繁殖が活発になり、フケやかゆみの原因に繋がりやすくなります。

ただし、髪を清潔にしようとしすぎて、1日に何度もシャンプーすると、必要な常在菌まで洗い流すことにも繋がり、皮膚のバリア機能を担う常在菌が取られすぎて、頭皮のバリア機能が低下してしまいます。

バリア機能が低下した頭皮は、乾燥や外的刺激から逃れるために皮脂を過剰分泌しようと働きかけますが、皮脂の過剰分泌は、頭皮環境の悪化に繋がる可能性があります。

前田秀雄

すべては、バランスですね!

経営も人生も「毛周期」のようなもの

今回は目的から逆算する【“髪を洗う”という常識を変えよ!】という発想について書きました。

大切な大切なお客さまに喜んでいただきたいからこそ、《髪のかかりつけ医》として勉強しなければならないことは、当然のことです。

我々美容師は、料理人とは違い “素材となる髪を選べない仕事” であり、素材をつくるのはお客さま自身です。

お客さまに素材のコンディションを自宅でつくってもらうアドバイスと処方で、その素材をサロンに持ってきていただいて、デザインを施していく「共同作業」を日々行なっています。

勉強して知識を得ることは最終目的ではなく、お客さま自身の髪をお客さまご自身で最高のコンディションにしていただき、それを持って、我々美容師が最高のデザイン・技術を提供し、お客さまを幸せにする。

すべてにおいて、前提を疑う発想のクリティカルシンキングを働かせ、ロジカルシンキング、ラテラルシンキングのバランスを取ることが大切です。

流行に直ぐに手を出したり、シナジー(複数人が協力することで高い効果が生まれること)効果を過剰評価し、過去を安易に否定する、これでは実績が評価されずに、新しいことが「目的」になってしまう。

即効性も必要ですが、3〜6年かかる毛周期から考えたら、すぐには結果は出ません。即効性あるものは副作用もあるのです。

経営も人生も、全ては《毛周期》と一緒です。

【成長期⇨退行期⇨休止期⇨脱毛⇨成長期】これを繰り返している。


前田秀雄

過去に学び、実績を積み重ね、未来をつくること《知識と知恵と知見と見識》のバランスを持って、信用され信頼を勝ち得ることが我々美容師なのではないでしょうか。







前田さんへの質問は、以下のボタンをクリックして書き込めます。ボブロガーズコラムでテーマにしてほしいことなども是非送ってください!

※質問の際は「前田秀雄さんに質問」と入力してからご質問ください。

前田秀雄

次回は「過度なUVケアは注意が必要」のテーマ(仮)でお届けします!

前田さんのケミカル知識を集結し、サロンワークの現場で使いやすくした1冊はこちらから↓。

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前田秀雄
執筆者
前田秀雄

1965年9月6日、京都府生まれ。京都理容美容専修学校卒業後、1991年、京都府伏見市に母・紀子さんが創業したのりこ美容室に勤務。2007年に事業を継承し(株)NORIKOを設立。代表取締役社長となる。小さな美容室の「行きつけマーケティング」を追求し、独自の小規模美容室経営を確立。スタッフ5名、1店舗で増収増益を続けている。毛髪診断士および毛髪協会認定講師。学校法人京理学園評議員。著書に『ちっちゃい美容室のでっかい革命』『美容師のケミ会話』(ともに髪書房刊)がある。

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