【ケミカル編/第5回】“アンチエイジング”という言葉に流されすぎるな!

【ケミカル編/第5回】“アンチエイジング”という言葉に流されすぎるな!

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こんにちは。「ボブログ」で辛口コラムを執筆しているのりこ美容室 前田秀雄です。

先月からスタートした【ケミカル編】。前回は「“酸性”に流されすぎるな!」のテーマでお伝えしました。


まだまだ「流されるな!シリーズ」いきますよ!
今月は「“アンチエイジング”という言葉に流されすぎるな!」のテーマでお伝えしたいと思います。

Contents


この数十年、「アンチエイジング」と言う言葉を耳にする機会が増えました。アンチエイジング効果を謳う化粧品や広告なども増えています。

前田秀雄

しかし、悲しいかな、実際の年齢に逆らうことは、なかなかできませんね。

広告で「アンチエイジング」はNG。「エイジングケア」はOK?

【アンチエイジング】

エイジング(aging)は「加齢」や「老化」、アンチ(anti)は「抵抗」。
アンチエイジング(anti-aging)とは《本来、年齢を重ねていくときの流れに抵抗し逆行して、いつまでも若々しくいたい》という思いの言葉です。

「アンチエイジング」は、化粧品や健康食品の広告でよく見かける表現ですが、いずれの商材においても標榜することは認められていません。



【エイジングケア】

これには「年齢に応じたケアのこと」と注記表示があります。
あまりに多く見かけますし、※で注意が書かれているので、「アンチエイジング」はNGでも、「エイジングケア」なら標榜してよいと理解している方も多いですが、ここでも注意が必要です。

日本化粧品工業連合会が発表している化粧品等適正広告ガイドライン

年齢に応じたケアの表現であること
化粧品等の効能効果の範囲内であること
の2つの条件を満たすことを求めています。

このように、「年齢に応じたケア」としていることから、現在の肌状態を維持することまでしか認められていません。この現在の肌状態の維持を超えて、若返り(例えば、アンチエイジングなど)や老化防止を表現することは、アウトになってしまいます。

また、「化粧品等の効能効果の範囲内(「化粧品等適正広告ガイドライン」p80参照)」という条件がついているので、化粧品広告で認められている《56の効能効果》の範囲内で記載する必要があります。つまり、「エイジングケア」という言葉そのものを効能効果として認めているものではないということを覚えておいてください。


「アンチエイジング」という言葉は、【老化の防止】や【若返り(時間の逆行)】といった意味合いで受け止められる可能性が非常に高いことから、「アンチエイジング」は、広告に使用することができない違反キーワードのひとつなのです。

「アンチエイジング」という「時間を遡る表現」は、虚偽・誇大な表現として、薬機法(旧薬事法)のみならず、景品表示法にも違反する可能性があります。同様に若返りを意味する「リジュビネーション」も使用はNGです。

前田秀雄

“美容”に関わる我々美容師が気をつけるべき表現は、極めて重要となります。なぜなら、これらの表現は薬機法の規制対象となるからです。

では、なんと謳ったらいいのでしょうか?
年齢に応じたケアという意味では、やはり「エイジングケア」が、ふさわしいのでないでしょうか。


老化が進む「酸化」と「糖化」のメカニズム

「いつまでも若々しい、心と体を維持したい」「実際の年齢よりも若く見せたい、または見られたい」「できるだけ長生きしたい」と言う欲望は、老若男女すべてに共通しているといえます。

前田秀雄

やはり「老化」には抗いたいもんです。


老化は「酸化」と「糖化」から始まると言われています。「酸化」は体のサビ、「糖化」は体のコゲとも言われます。

《酸化》
酸化の原因である活性酸素(酸素フリーラジカル)が害をなすのは、他の分子から電子を奪って安定しようとするため、電子を奪われた他の分子は次々と連鎖式に電子を奪っていきます。これが、細胞の老化を促進します。この反対が還元です。我々美容師は常にこの酸化と還元を利用していますね。

《糖化》
糖化とは、食事などで摂取した糖が体内にあるタンパク質と結びついて、AGEs (糖化最終生成物)という異常タンパク質が作られることをいいます。こんがりきつね色に焼けたホットケーキはその一例で、糖とタンパク質が結びついた食べ物はAGEsが多いということになります。

糖化することで起こる頭皮や髪の影響として
・血行が悪くなる
・頭皮が固くなり弾力がなくなる
・髪にハリ・コシがなくなる
・毛が育つ力が弱まり細くなる
などが挙げられます。
 
体内で糖化が進むと、頭皮の真皮層のコラーゲンとエラスチンに影響がでて、肌のハリ・弾力が失われ『硬化』が進み、毛細血管の通り道が減少し、血行不良になる原因となります。
 
結果、髪をつくる毛母細胞の働きが減少してしまい健康な髪が育たなくなってしまいます。

つまり…

《糖化》
 ↓

《真皮層の硬化》

    ↓

  《毛細血管減少》

    ↓

  《表皮幹細胞の加齢変容を誘導》


    ↓
  《表皮の新陳代謝の低下》
    ↓

  《皮脂膜の減少》

    ↓
《皮膚のバリア機能低下》
       
    ↓
《酸化しやすくなる》

    ↓
《老化の進行》

                                             ※前田秀雄氏の考察



以上が、僕が考える老化がより進む要因。
酸化と糖化が頭皮・頭髪に作用し、そこに、更年期におけるホルモン(エストロゲン)低下が追い討ちをかけ、皮膚や髪に影響を及ぼし、老化がより進むのです。

「妊活」「腸活」「デトックス」もNGワード

2022年8月9日、消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の一部改定(案)を作成し公表しました。

また同日より9月7日まで、パブリックコメントにて意見を募集、12月1日には公表されました。

健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(一部抜粋)

(3) 「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するもの次に掲げるもののように、「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するものであっても、「健康保持増進効果等」についての表示に当たる。 ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの 例:「ほね元気」、「延命○○」、「妊活」、「腸活」、「快便食品(特許第○○○号)」、「スリ○○」、「減脂○○」、「血糖下降茶」、「血液サラサラ」、「デトックス○○」、「カラダにたまった余分なものをスッキリ」


ここで注意すべきことは、新しくNGワードとして【妊活】【腸活】【デトックス】などが入ったということ。

これまで美容業界や理美容師さん、その他の人も、これらのワードを使用して展開して来たと思いますが、今後はリスク大です。

また、こんなことも書いてあります。

健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(一部抜粋)

(4) 体験談の使用方法が不適切な表示実際に商品を摂取した者の体験談を広告等において使用することが、直ちに虚偽誇大表示等に当たるものではない。 しかし、体験談を不適切に使用することにより、消費者に誤認される表示をする場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たるおそれがある。 なお、「個人の感想です」、「効果を保証するものではありません」等 の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響 を与えるものではなく、体験談等を含む表示内容全体から、当該商品 に健康保持増進効果等があるものと一般消費者に認識されるにもかかわらず、実際にはそのような効果がない場合には、その表示は虚偽 誇大表示等に当たる。


「体験談を不適切に使用することにより、消費者に誤認される表示をする場合には、その表示は虚偽誇大表示等に当たるおそれがある」とあります。

個人の感想でも、実際に効果がない場合には「虚偽表示」にあたるということ。

知ってますか? 美容師がオススメする化粧品広告の規制について

 化粧品の広告では、医師や薬剤師、美容師等の国家資格を持っている人が、化粧品の広告でオススメや愛用していますということを言うと薬機法違反になることを知っていますか?

まず、最初に医薬品等適正広告基準という化粧品の広告に関する法律にそのことが書かれていますので、そこから見ていきましょう。

【医薬品等適正広告基準】(一部抜粋)

10  医薬関係者等の推せん 医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等している事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。 (1)医薬関係者の推せんについて本項は、医薬品等の推せん広告等は、一般消費者の医薬品等に係る認識 に与える影響が大きいことに鑑み、一定の場合を除き、例え事実であった としても不適当とする趣旨である。「公認」には、法による承認及び許可等も含まれる。また、「特別の場合」とは、市町村がそ族昆虫駆除事業を行うに際して 特定の殺虫剤等の使用を住民に推せんする場合である。なお、本項は美容師等が店頭販売において化粧品の使用方法の実演を行う場合等を禁止する趣旨ではない。(2)推せん等の行為が事実でない場合について 推せん等の行為が事実でない場合は、法第 66 条第2項に抵触する。(3)特許について 特許に関する表現は、事実であっても本項に抵触し、事実でない場合は虚偽広告として取扱う。 なお、特許に関する権利の侵害防止等特殊の目的で行う広告は、医薬品の広告と明確に分離して行うこと。(特許に関しては表示との取扱いの相 違に注意:「特許の表示について」(昭和 39 年 10 月 30 日薬監第 309 号厚 生省薬務局監視課長通知)) (4)「公務所、学校、学会を含む団体」の範囲について 「公務所、学校、学会を含む団体」の範囲は、厳格な意味の医薬関係に限定されない。(5)厚生労働省認可(許可・承認等)等の表現について厚生労働省認可(許可・承認等)、経済産業省認可(許可)等の表現も 本項に抵触する。

注目したいのは推薦と選用がNGとなっている点です。

推薦とは文字通り、「オススメです!」等商品を推薦したり、愛用しているや使っているなどの表現ですらNGとなっています。

たとえば、以下のような表現はすべてNGとなります。

・◯◯医師が愛用しています
・◯◯病院推薦の化粧品です
・皮膚科医の私がオススメします
・美容師の◯◯◯もオススメします

しかし「医師の◯◯◯が開発しました」「美容師の◯◯◯が作りました!」など事実であれば、商品についてオススメ等の推薦をしていないのでOKとなります。

また、先ほど書いたNGワードは、医師、美容師さん等、店頭での販売に関しては、これらの表現は除外されています。これが規制されてしまうと、販売も何もできませんので、ここに関しては安心してお話して頂いても大丈夫です。


WEB上には膨大な数の広告があり、ECを運用する美容師さんも増えている今だからこそ、僕たちは法律や規制を知っておく必要があるのです。

前田秀雄

さぁ、美容師さん、知らなかったでは済まされませんよ!




前田さんへの質問は、以下のボタンをクリックして書き込めます。ボブロガーズコラムでテーマにしてほしいことなども是非送ってください!

※質問の際は「前田秀雄さんに質問」と入力してからご質問ください。

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前田秀雄

次回は「“髪を洗う”という常識を変えよ!」のテーマ(仮)でお届けします!

前田秀雄
執筆者
前田秀雄

1965年9月6日、京都府生まれ。京都理容美容専修学校卒業後、1991年、京都府伏見市に母・紀子さんが創業したのりこ美容室に勤務。2007年に事業を継承し(株)NORIKOを設立。代表取締役社長となる。小さな美容室の「行きつけマーケティング」を追求し、独自の小規模美容室経営を確立。スタッフ5名、1店舗で増収増益を続けている。毛髪診断士および毛髪協会認定講師。学校法人京理学園評議員。著書に『ちっちゃい美容室のでっかい革命』『美容師のケミ会話』(ともに髪書房刊)がある。

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