【編集長対談】BOB×NEXT LEADERが2025年を大予測!
巳年の2025年。皮を脱ぎ捨て新たに生まれ変わる姿から、巳年は新しい挑戦や変化に対して前向きな姿勢を示す年として知られています。
2025年の初投稿は月刊BOB編集長 森井純子(ズン子)と月刊NEXT LEADER 渡辺淳司(ズンジ)の編集長対談をお届け!
ぼく、ボブログ編集部のボーリーが「ズン子とズンジ」に2025年注目のトピックを聞いていきます♪
2024年も新しいサービスが続々
美容室の「AI」最前線
まずは昨年の振り返りから! 2024年の取材活動を通して、業界の転換期になりそうだと感じたテーマは何でしたか?
“美容師の敵か味方か?”と表紙に謳った「AIモデル」特集は、反響がありました。
取材してわかったのは、ローカルサロンほどAIモデルを受け入れていること。
都心はカメラマンやモデルになってくれる人がたくさんいて、撮影が比較的容易だけれど、撮影文化があまりないローカルサロンほどAIモデルの導入にポジティブなんですよ。
- AI MODEL 美容師の敵か味方か?
- 誌面にAIモデルが多数登場する、いまだかつてない特集号! AI(人工知能)はあらゆる分野で急激に発展をしています。生成画像ツールを使用してつくった、何かと話題な「AIモデル」にスポットを当てて、AIの基本的な考えや使い方の可能性を模索しつつ、美容師とAIの関係性やこれからについて改めて考えます。
Meta Beauty DAOチーム(AIクリエイター)×BOBのAI制作
AIモデルを活用する分、美容師の技術力が問われるという声も多く聞こえてきました。
それはSNS集客が始まった頃と全く同じ。どんなに拡散力があっても、その後が最も重要だということはもうみんな理解していると思います。
お客をリピートさせられる技術が備わっていれば、「来店きっかけになるツールのどれを使うかはそれほど重要ではない」と考える美容師が増えたと思います。
生産性向上にはAIが不可欠な時代になり、中小企業のDX化は年々進んでいます。
AIモデルと話は少しずれますが、AIで「口コミの返信」を禁止するサロンも出てきています。
サロンの紹介文はAIに作成を任せても、お客の実際のコメントに返信するのは「本人の言葉であるべき」という考え方ですね。美容室にとって一番根幹となるコミュニケーションの部分にAIを禁止する判断は人材育成の側面から見ても納得です。
なぜAIを使うか? ですよね。今、AIで最も問題になってるのはフォトコンなんですよ。誰も見分けがつかない。
通常のモデル撮影のレタッチがAIに近づいていて、AIモデルでつくった作品はリアルに近づけているから、より境目がなくなっていくと思います。
AIの制作会社の方に聞いても、黄金比すぎないパーツバランスのオーダーや、AIっぽくつくり込みすぎないオーダーが増えていて、AIをより人間らしく魅せるニーズは高まりそうです。
集客サイトでは今後ますますAIモデルが増え、みんなが同じ方向に向かって「均質化」が進むだろうと予測しています。
だから、あえての“はみ出す集客”が鍵。たとえば常連客のリアルスタイルを掲載するなど、AIが選ばないことをして独自性を出すべき。
人口減の今、特にローカルエリアは生産性を上げていくという意味でAIの活用は今後ますます広がると感じます。どこまでAIに任せるかはさまざまですが、自社のブランディングや育成の方針が明確にあった上で判断基準を設けるべきだと思います。
「急速成長」を遂げるサロンの共通項とは?
NEXT LEADER 2024年11月号では、急速成長をしている美容室にフォーカスしました。
取材した中でもfifthはこの5年間でスタッフ数は6倍、年商は12倍という成長スピード。
木村允人代表の「美容師にもっと還元していきたい」という思いがベースにありつつ、スペシャリストを入れて本部機能を充実させたり、「ALL SHARE」というシェアサロンの独自サービスを活用して、出店スピードを上げたことが急成長の要因だと思います。
【主なシェアサロンのサービス】
2023年から2024年にかけて、店舗開発に長けているシェアサロンが物件情報を紹介するサービスがスタート。基本的にシェアサロン名義のサブリースとなるが、優良な物件が見つかりやすく、新規出店時の初期費用を大幅に抑えられるメリットがある。
・SALOWINの「ALL SHARE」 2023年3月開始
・GO TODAYの「Salon Start」 2024年8月開始
- 【SOLD OUT】「成長戦略」どうしてあのサロンは急成長しているのか?
- コロナで加速した働き方の多様化や人材の流動化が続く中、急成長するサロンにはどんな共通点があるのだろうか? 今の時代、店舗拡大がすべてではないかもしれないが、組織が大きくなればスケールメリットが得られるだけでなく、有能な人材を確保しやすくなり、事業の幅も広がっていく。破竹の勢いで成長するサロンの軌跡と要因を探る。
教育サロンがシェアサロンの手法を取り入れてビジネスを広げていくのは新しいですね。
以前は多額の借金をして独立する経営者が多かったですが、今は独立したい人のハードルが下がっています。
お客さまにとっては資本がどこかはあまり関係がないのと、多少の手数料を払うことより成長スピードを選ぶ流れは2025年以降も増えるのではないでしょうか。
成長スピードを加速させることは、若い世代にとっても未来があります。
急速に成長している美容室の共通項はなんですか?
成長サロンの共通項はやはり、「集客」と「育成」がしっかりできていることだと思いますね。
・短期間で質の高い教育がある
↓
・会社として集客ができている
↓
・平均売り上げが上がる
↓
・生産性アップ
↓
・賃金アップ
これらは相互関係にあるので、賃金アップのためには生産性向上は欠かせないですし、集客と育成が鍵になるでしょう。
伸びているサロンは個人ブランディングに頼りすぎず、会社で集客ができていますよね。
しかもそれをやっているのは若いオーナーたち。
これまでの経営手法だけだといつか限界が来るとわかっていて、シェアサロンのやり方も取り入れたハイブリッド教育が始まっていると思います。
どうなる? 2025年問題
ここからは2025年を大予測!
NEXT LEADER最新号の2025年2月号では「美容室の2025年問題」を特集しています。
2025年問題とは、1947年〜1949年に生まれた団塊世代が75歳に到達することで起こる深刻な働き手不足、社会保障費の増大などの諸問題を指します。
美容室に置き換えると、2025年問題に「人材不足」「顧客の減少」「競争の激化」が挙げられるでしょう。
2025年、変化をチャンスに変えるためのキーワードは何だと思いますか?
NEXT LEADER注目トピック①「求人と定着」
やはり、求人からの定着ですね。
求人はだいぶリファラルになってきています。学校訪問だけじゃなく、SNSも使わないと認知されない時代になって、SNSを駆使して採用したものの早期で離職してしまうケースがここ1〜2年、各地で起きています。
理念経営と採用がつながっていないと定着率にも影響が出てしまう時代。
賃金などの待遇面、キャリアパス、教育などすべてをつなげて、採用と定着率を考えたいですね。
【NLメモ/Londの場合】
・時間単価をKPIに据えることで実現した40%という高い歩合率や、スタッフをFCオーナーなどで外に出していくことで全体の底上げが常に行われている。
・さらに直営代表などのキャリアパスを多く用意していることが人材定着の理由となっている。
BOB注目トピック①「特化集客と教育」
求人との話題のつながりで言えば、美容学生がサロン選びで重視しているのが「ちゃんと教えてもらえるか」。これを改めて聞くようになりました。
早くデビューしたいのもあるけれど、デビューしてから苦労するよりはしっかり教えてもらって技術力を高めたいと思っている人が一定数増えています。
動画やアプリを使った、短期間で完成度の高い教育手法もどんどん増えていますね。
【BOBメモ/ALBUMの場合】
・6カ月デビューと早期育成型でありながらカリキュラムが充実している。
・6カ月で561時間学べる(2024年の実績・補講を含んだ月刊BOB調べ)。
・教える人のレベルが高い。
・査定表やアプリなどツールも充実。
一方、ターゲット集客で1つの技術に特化してきたけど、それだけだとトレンドが変わったときにお客が減ってしまう不安を持つ若手美容師も増えました。
デビュー前後のブランディングとして特化集客は必要だけれど、それだけでは一生美容師ができないことに若い世代はみんな気づいているんですよね。
「早くデビューしたい人」「ある程度時間をかけてしっかり教えてもらいたい人」など美容師も価値観が多様化しているから、その価値観が会社と個人で合うかどうかをより見極める求人と、理念に合った「教育のあり方」を考えることが大切だと思います。
美髪特化、ハイトーン特化、ショート特化、メンズ特化・・・さまざまな特化集客があるけれど、2人が注目している新たな特化メニューはあるのかしら?
「多毛専門店」を見かけたことがあります。
特定のメニューやデザインを打ち出す特化型が多いですが、今度は特化サービスなど、今までにないジャンルの特化サロンが出てくるかもしれないですね。
「クセ毛カット専門店」! クセを真っ直ぐにするだけじゃない、クセを活かした仕上がりは多様化時代こそ必要な特化型サロンになるかもしれませんね。
たとえば「縮毛矯正をかけたら真っ直ぐになりすぎた女性」に特化したメニュー名など、「髪の悩み発」でリアルな心の声を捉えると、結構出てきそうです。
NEXT LEADER注目トピック②「賃上げ」
給与については還元しているサロンが増えています。最低賃金も全国平均1054円と過去最高で上がっている。経営者は賃上げにどう取り組んでいけばよい?
経営者はみなさん、給与を上げたいとは思っているけど、そこに「生産性が追いついているか」ですよね。
生産性が高くなければ賃金は上げられない。やはり、生産性がすべてだと思います。
付加価値メニューで単価を上げている美容室は問題ないと思いますが、メニューの値上げのみで対応した美容室は、年間支払額がそこまで変わらなかったり、本当の意味で生産性が上がっていないケースも多く聞きます。
2024年は、ファイブスターやKENJEグループが初任給25万に引き上げを決めました。2025年も初任給を上げる動きがいくつか聞こえてきています。
生産性が高くないと実現不可能なので、集客やメニューづくりにおける仕組みがしっかりつくられているのだと思いますね。
BOB注目トピック②「レイヤーと中明度カラー」
ヘアデザインは消費者の経験値が上がって、ますます多様化しています。
そんな中、「動きのあるヘアスタイル」ニーズが高まっていますね。
クリエイションの作品持ち込みも、ライン感の強いヘアスタイルから「髪を動かす」表現が圧倒的に増えました。提案する美容師の「軽め気分」も高まっていると感じています。
■顔周りレイヤー
顔周りのみに入れるレイヤーはチャレンジしやすく、20代〜40代でオーダーが増えている。
■クラゲフォルムのハイレイヤー
韓国アイドル人気により、トレンドに敏感なロングレイヤーが10代後半〜20代から人気。全体にハイレイヤーを入れたクラゲフォルムのオーダーが都心を中心に増えそうな予感。レイヤーは二極化が進みそう(『ボブログ』調べ)。
ヘアカラーに関してはPELEやiLe. など、ハイトーンサロン推しでブランディングしてきたサロンからも、中明度でブリーチなしのカラーが戻ってきているという声を耳にします。
デザインカラーが下火になることはないけれど、ヘアカラーは髪の質感そのものをキレイに見せる流れヘ移行し始めています。
美容医療にお金を使ったり、髪や肌などの「素」を大事にするZ世代は、どんな髪型にしても素材が悪いとキレイに見えないことをよりわかっているのだと思います。
NEXT LEADER注目トピック③「M&A2.0」
コロナ禍以降活性化していたM&Aは、2024年は少し落ち着きました。
M&Aはエリアの違いや文化の違いから、現場スタッフの大量離職があったり、さまざまな難しさがあると思います。
2024年はサーチファンドという新たなプレイヤーの美容室業界への参入がありました。経営者を目指す個人(サーチャー)が投資家の支援を受けながら中小企業を買収する仕組みで、今度はサーチファンドによる美容室の買収も増えると言われています。
プロ経営者がここ10年でかなり増えましたが、美容室経営の難しさは、現場がついていくか 。これは他業界の経営とはまた別の話だったりしますよね。プロ経営者のM&Aでうまくいっている美容室がどれくらいあるのかは興味あります。
BOB注目トピック③「店販の新しい形」
特化型の美容師が商品をつくり、販売する流れが加速しています。
毛髪知識に詳しい美容師が、髪の課題を解決するために必要な成分を使って商品を開発し、自分たちのネットワークで売る。スタイリング剤に留まらず、プレックス剤や処理剤をつくる美容師が増え、店販の形も大きく変化しました。
ハイトーンや美髪など、美容師の専門性の高さをウリにプロモーションすることで、個が尖っている美容師ほど固定ファンがついています。
トレンドが変わるとビジネスとして成り立たなくなる商品もあるため、ロングテールで売る難しさはあると思いますが、サロンワークだけでない稼ぎ方のひとつとして、今後も動向に注目しています。
【番外編/ズン子推し!】「ヒトCPJ由来幹細胞培養上清液」
- Profile
- 森井純子
月刊BOB編集長
2025年、個人的に気になっているのは「ヒトCPJ由来幹細胞培養上清液」。
効果には個人差があるらしいですが、美容室で「ヒトCPJ由来幹細胞培養上清液」のメニューを導入する美容室が少しずつ出始めています。
個室がないと難しいメニューではありますが、話題性を考えると、トータルビューティサロンでは今後新しいメニューの軸になる可能性もあると思います!
- Instagram : @bobstagram_kamishobo
【番外編/ズンジ推し!】「美容外科とのコラボ」
- Profile
- 渡辺淳司
月刊NEXT LEADER編集長
ここまで美容医療がトレンドになっていているので、美容室と美容外科のコラボに注目しています!
韓国の美容室「イガジャ・ヘアビス」は、韓国の美容外科「krismas」とのコラボサロンをベトナム・ホーチミンに2024年9月に出店しました。切開を行わないライトな施術のみ行い、ヘア施術の他、美容注射やレーザー治療、植毛、ファッションタトゥーを行っています。
韓国は美容医療サロンの数が多く、敷居が日本ほど高くない分、企業規模が大きいイガジャが美容室主導で運営できています。日本ではまだまだ課題もありそうですが、今後の動向に注目ですね!
- Instagram : @nextleader_editors
まとめ
経営者向けの『NEXT LEADER』とスタイリスト向けの『BOB』、取材対象は異なれど、いくつかの共通項がありました。
【2025年、考えるべきこと】
①個のブランディング以上に、会社でどう集客するか。
②新しいツールは「何のために」やるのか。
③スタッフへの還元のためにも、生産性が高まる工夫を!
2025年問題を乗り越え、変化の時代を共に生き抜きましょう。
変化が激しい時代こそ、柔軟に対応できる新たな価値観を持つことが欠かせません。
2025年も、美容師の皆様やその先のお客さまにとって価値ある情報が発信できるよう、髪書房一同努めてまいります!
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
- 「カリキュラム改革」変わる教育とそのヒント
- サロンの在り方が多様化すると同時に、スタイリストデビューまでの道のりも大きく変化している。近年はアシスタントのモチベーションや生産性、さらにはリクルートを考慮して短縮化の傾向にあるが、現在の成熟した日本の美容マーケットに対応するにはただ「減らす」だけでは難しい。教育はサロンの心臓部。技術カリキュラムは美容師人生を左右する。働き方も大きく変化しつつある中で、一生美容師を続けるための教育カリキュラムとは何か? その最適解を探す。
- 「美容室の2025年問題」大変革の時代に何が起こる?
- 超高齢化社会を迎えるにあたり、労働力不足など各分野へさまざまな影響が及ぶとされている2025年問題。医療・介護業界ほどのインパクトではないかもしれないが、美容業界ではどのようなことが起こるのだろうか?依然つづく求人・定着難から、集客競争の激化、業務効率化、出口戦略に至るまで。トピックス形式で時代を先読みするためのヒントをお届けする。