
ビジュアル制作に魂を捧げる、理系大学出身の感覚派アーティスト〈キム・サンウ〉
編集部が首都・ソウルへ飛び、調査取材。K-ビューティの最前線で活躍する、若き美容師たちを紹介する。
第13 回は、驚異的な成長を見せるヘアサロン「KAIJUNG HAIR(カイジョンヘア)」のカイジョン代表。
写真:相原サン
通訳:イ・ジョンオク
※「BOB」2023年3月号の抜粋で、情報は当時のもの

ビジュアルづくりが魂のサロン〈LOAB〉

「ソウルの白金台」ともいわれる高級エリア・漢南洞(ハンナムドン)。新進気鋭のアパレルブランドのショップが立ち並び、ファッション感度の高い人々が集まる場所だ。そんな場所に2021年にオープンした〈LOAB〉でオーナーを務めるキムさんは、洗練されたSNS発信で注目を集めている。コンテンポラリーな雰囲気のサロンも相まってアーティスト気質な人かと思いきや、実は大学の機械科卒業という経歴の持ち主だ。
「21歳で兵役に行った際に散髪係に配属され、隊員達の髪を切った経験が楽しくて。進路変更し、美容師になることを決めました」

特別な経験を提供する空間


世界各国から取り寄せたアーティストの作品が飾ってあったり、まるで美術館のような店内。直線的なデザインで、ショールームのような雰囲気を意識している。サービスとしてドリンクとトーストを提供するなど、カフェのような体験もできる場所だ。
平均客単価は18万ウォン(約2万円)で、今年は各メニュー1万ウォンアップを予定しているLOAB。価格に見合う体験を提供するため、サロン内にはさまざまなこだわりがある。アーティスト作品が飾られていたり、待合スペースには一脚70万ウォンの椅子を配置していたり。シャンプー後のホットタオルやマッサージなど、せっかちな国民性の韓国ではあまり見られないサービスが特徴だ。
フォロワー11.5万人を誇る写真の撮り方

SNS投稿がおしゃれで、発信にまつわるセミナーが大人気のキムさん。スタイルを撮るときは、少しスマホを手前に倒すとかわいく写る。iPhoneの基本カメラで撮影し、画像加工アプリ「VILLO」で明度を上げたり「meitu」で顔を補正し、あくまでも何もいじってないような自然な質感に仕上げるのがポイント。
人気殺到のSNS発信についても、そのポイントを聞いてみた。なるべくナチュラルに見せるため、自然光で、加工もシンプルに。キャビンアテンダント科の学生や女優の卵などのモデルを囲い、質にこだわる。美容師用のアカウントではプライベートな投稿を禁じてプロフェッショナルとしての見え方を徹底。年に2回のキービジュアル撮影も、ブランディングのために個人店としては破格の投資をしている。


キービジュアルはモデルやフォトグラファーの手配など約1,500万ウォンかけて、こだわって撮影している。通常個人店ではやらない規模の撮影だが、「トレンドをつくるサロンになる」という信念が突き動かしているのだ。ブランド価値を高めるために欠かせない。
最近の人気スタイルは、オリジナルの「RUPPIE PERM」。「RUFF」と「HIPPIE」を組み合わせたネーミングで、ヒッピーパーマをより細かいカールで、ラフに仕上げたデザインだ。韓国では売れているサロンには必ずシグニチャーデザインが存在するのだという。
トレンドを発信し続けるために、感性を磨くことは欠かせない。休みの日には人気サングラスブランドのGENTLE MONSTERが運営するカフェ・HausTamburinsや、香水ブランドADER Errorのショップなどに足を運び、刺激を受ける。これらのホットスポットは従来のショップの概念を覆す、まるでギャラリーのような展開で、LOABの内装とも通じる。
新たなカルチャーが芽吹き続けるソウルでは、そのミームが業界を超えて広がり、進化していくのだろう。

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