11月10日にInstagram(インスタグラム)のアクションボタンが美容サロン予約にも拡大されることがメタ社より発表されました。同機能の連携パートナーは、ビューティーメリット(株式会社サインド)をはじめ複数社の連携が予定されていいます。
集客や顧客管理はどう変化していくのかなど、美容業界内でも話題の中心となっています。導入サロン1万軒の予約一元管理システム「ビューティーメリット」を展開し、2021年12月22日に東京証券取引所マザーズへの上場を控えた株式会社サインドの松野晃大さんに話を伺いました。

ーービューティーメリットがInstagram(インスタグラム)の美容サロン予約機能の連携パートナーとなった経緯について教えて下さい。

2017年夏くらいに、メタ社(当時Facebook社)が米国内でホテル予約のように美容サロンを予約できるサービスを開始したと耳にしました。当時、弊社は日本国内の予約プラットフォームでトップシェアでしたので、同じようなサービスを日本でも実現できるのではないかと思い、メタ社の方とお話していました。

ーー当時のメタ社の反応はいかがでしたか?

日本支社にはそのようなサービスの卵になるような話もほぼない状態でした。やるとしても、人口規模の大きなインドなどのマーケットからだろうと言われていました。

やった時のインパクトと、波及することがあるかどうかが重要なんですよね。アジア圏で美容メディアが発達してるのは日本くらいなんですが、残念ながらマーケットが小さいんです。たとえばシンガポールは波及する力はあるけど、美容に対してメディア送客の文化がない。その天秤にかけられる段階がいずれ来るだろうと予想していました。

ーー他国には美容サロンのポータルサイトや、カルチャーはないのですか?

当時、僕が調べたときにはそういったメディアやカルチャーはほぼありませんでした。あったとしても、今の日本のような、メディアを使ってサロンを認知してもらい、来店、自社アプリへの囲い込むというカルチャーではなかったですね。

ーー2017年当時の状況だと日本に実装されるのはなかなか難しそうですが、そこからどうなったのですか?

2021年4月22日に飲食店の予約に対応するというニュースを聞きました。飲食店の予約システムと、美容サロンの予約システムは構造が同じなので、美容サロン予約の可能性があると思いました。それでメタ社に再度アプローチしたら、ちょうど美容サロン予約も検討中というタイミングだったという流れです。

ーーInstagramの美容サロン予約機能のメリットは何でしょうか?

さまざまありますが、LINE、Instagramなど、多くの人が利用しているSNSサイトとの連携が可能になり、予約を取りまとめる手間がなくなったことが最大のメリットです。

特に、Instagramはビジュアルありきで、エンドユーザーがそれを目的として、その情報提供で満足しているSNSです。現在、多くの美容サロンがヘアスタイル写真を掲載したり、美容情報を発信したりして、美容サロンとInstagramは親和性が高く、唯一無二の場とも言えるでしょう。ここで、公式の「予約する」ボタンが設置されていれば、DM(ダイレクトメッセージ)で質問などのやり取りをして、予約ボタンより予約をとるという流れがスムーズにできるようになる。リアル店舗でできる流れが、そのままInstagramでもでき、エンドユーザーにとっても違和感なく予約がとれる。その懐の深さがInstagramにはあるのではないかと思います。

ーーでは逆にデメリットは何でしょうか?

今は多様なSNSサイトがあるので、サロン側はエンドユーザーとのコミュニケーション機会を増やさないといけない状況です。Instagramへの対応が必須のようになっていくため、悪く言えば、手間が1つ増えることにはなると思います。ただ弊社のシステムを使えば、人の手間がかかるところを補えるので、ご心配には及びませんというところですね。

ーー美容サロン経営者側としては、Instagramは個人に紐づくため、費用面や顧客管理などどうしていくべきか心配の声も聞かれています。

そうですね、個人に紐づくのでサロン管理よりもスタイリスト個人の管理に頼ることになります。ですから、導入にあたっては、会社としてどのように管理していくのか方針を決めるのも1つの方法です。たとえば、あるヘアサロンでは、月額費用を会社持ちにし、Instagramの運用は各スタイリストに任せつつ、アカウントの表示名の形式や、ID、パスワードなど、会社で管理することで徹底しています。そうすればスタイリストが退職した後も会社の意向次第でアカウント削除もできます。

ーー貴社では、Instagram予約機能の対応と同時にダイナミックプライシング機能もリリースしていますが、これは何でしょうか?

ダイナミックプライシングとは、旅行予約で例えるとわかりやすいのですが、旅行の閑散期は安く、繁忙期は高くなり、時期によって価格が違いますよね。それを美容サロン予約に当てはめた機能で、平日昼間など予約が空きやすい時間帯は安く、混雑する時間帯や週末などは高く提供します。それがコロナ禍において、お客さまの人数を制限し、店内の混雑を避けたいというサロンのスタンスとも合致したということです。AIを使った機能なので、自動で管理ができます。

ーー旅行では当たり前の価格の考え方ですが、美容サロンではなかった考え方ですよね。

そうですね、旅行によく行く方でしたら馴染みのある価格の考え方だと思います。働き方改革にもなるかなと。予約の少ない時間帯はスタッフを少なく、混雑する時間帯はスタッフを多く配置するなどマンパワーの管理ができるようにもなります。それによってスタッフのワークライフバランスも調整できますよね。

ーーこの機能を導入した美容サロンの反応はいかがですか?

考え方としては新しいので、もちろんすぐに導入とはいかないですが、一定数のお申し込みはいただいております。みなさんがいちばんお気になさるところが、「単価を下げてしまって、売上が下がるのではないか」「お客さまが来店しにくくなるのではないか」ということですが、導入サロンさまの売上はきちんと上がっています。なぜなら、お客さまも安い時間帯に来店できる方々ばかりではなく、週末に少し高くても行く人が多いからです。また、安い価格で先の予約をおさえることも可能なので、次回予約、次次回予約への活用もできます。

ーーInstagramで予約するシェアはどうなっていくと思いますか?

Instagramは使う人は使うし、使わない人は使わないとハッキリしたSNSです。特にInstagramを使う頻度が高く、物事を情報収集する層は今のところあまり高齢化していないと考えています。予約機能はリリースされたばかりなので、僕らも現在見守っている状態ですが、そこまでシェアが急拡大するということはないのではないかと思います。あくまでも、選択肢が1つ増えた、という感じでしょうか。

マキピピ
執筆者
マキピピ

ヘアデザインのこと、パーマ、データ分析が得意な全頭ブリーチ族。好きなことは海外旅行。苦手なことは貯金。

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