指名制度ナシ、店長不在。ヘッドスパ専門店の働き方新潮流

指名制度ナシ、店長不在。ヘッドスパ専門店の働き方新潮流

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スタッフ全員が美容師免許を持ち、睡眠の改善にアプローチするヘッドスパ専門店・ヘッドコンシェルジュ(本社:東京都中央区)の効果を11月9日公開の記事では取材した。

本編では美容師の新たな働き方を創造するヘッドスパ専門店の新潮流を探るべく、ヘッドコンシェルジュ 代表取締役社長 滝村晃平氏に話を聞いた。


Contents

若いうちから女性美容師が活躍できる環境を

インテリア業界で企画を行なっていた滝村社長がヘッドスパ専門店を創業することになったのは、ヘッドコンシェルジュスタートアップメンバーでもある元美容師に聞いた美容業界の話がきっかけだった。

美容の世界の奥深さや、そこで働く人たちの想いや課題を聞き、自分にも何かできないかを考えた。

滝村晃平社長

美容の現場で得られる体験やサービスそのものに、もっと価値を見い出したいと考えました。

きっかけはサービスからでしたが、国家資格である美容師免許を取得しても、活かしきれていない美容師さんが多くいることを知って、働き手の新たな可能性も模索したいと強く思うように。

雇用問題の解決にも力を入れるべく、「価値あるサービス提供」「雇用問題の改善」の両輪で事業展開していくことに決め、2019年に創業しました。

ヘッドコンシェルジュのスタッフは滝村社長以外は全員女性。パート契約も選択できるが95%が正社員で、本年度も新卒採用は3名だった。

設立当初は「休眠美容師の再雇用」を促進し、国家資格を活かせる場を提供したいという想いもあったが、事業をスタートさせてから気づいたのは、新卒で入社したサロンを3〜6カ月ほどで退社する美容師が多く、20代前半の美容師が再スタートする場所として求められているということだった。

【ヘッドコンシェルジュのスタッフ年齢構成】

平均年齢は27.8歳。


現在74名が在籍。創業から5年弱で退社人数は6名と離職率が低く、急成長している理由もこの離職率の低さが大きく寄与している。

離職率の低さを滝村社長はこう分析する。

滝村晃平社長

組織をつくる上で大切にしているのはスタッフ個々の意思を汲み取ること。

性格や目指すキャリアに合わせて成長できる教育や人事制度を導入しています。

特に「美容師歴に関わらず、ゼロからヘッドスパの技術を習得できる教育」と「チームで高め合う人事制度」をしっかり整えてきました。

「良いチームから、良い仕事が生まれる」と僕自身、これまでの経験で強く感じているからです。

ヘッドコンシェルジュが早期に急成長した理由

①教育:美容師歴に関わらず、ゼロからヘッドスパの技術を習得できる(60〜100時間)

②人事制度:チームで高め合う人事制度
 
⬇︎
・若いうちから活躍できる
・離職率が低い
・人材が育っているので全国展開しやすい


店長は置かない。垣根のないフォーメーション

70名以上の女性スタッフそれぞれの個性を活かすのは、さぞ難しいだろうと想像するが(笑)、滝村社長は1日2〜3店舗を回りながら、個性豊かな女性たちをどのように輝かせるのかを常に考えている。

ヘッドコンシェルジュには店長や副店長などの役職はない。全員がフラットにサロンのために意見やアイデアを出し合えるチームであるためだ。

会社が決めたシステムに人を当てはめるのではなく、性格や特性に合わせて社内のシステムや制度を可変させる。

組織図もサッカーのフォーメーションのように個性を活かして配置し、特性や働き方に合わせて、店舗に所属しないフリーメンバーのスタッフも置いている。

滝村晃平社長

チームは店舗以外にもプロジェクトチームや労務などのオフィス業務を行うチーム、広報やプロダクトなどの制作を行うチームなど、兼任しているスタッフもいます。

女性をチーム分けする上で大切にしているのはやはり「個性を活かす」こと。

性格や血液型、兄弟姉妹構成を参考にすることもありますね(笑)。

組み合わせがとても大事で、フォーメーション次第で数字が大きく変わることもあります。

社長自ら、全員にキャッチフレーズをつける

1人ひとりの個性を把握している監督のような滝村社長が欠かさず行なっているのが、スタッフ1人ひとりにキャッチフレーズをつけること。

ヘッドコンシェルジュのホームページでは、手書きで書かれた全員のキャッチフレーズを見ることができる。

滝村晃平社長

キャッチフレーズが浮かばないということは、”その人”を見られていないということ。

できる限り店舗に顔を出したり、LINEなどでのコミュニケーションは欠かしません。

この先スタッフ数が増えても、このキャッチフレーズの命名は僕自身で続けたいですね。


指名制度がなくてもリピートされる理由とは?

ヘッドコンシェルジュは指名制度がない。指名をモチベーションとする美容師も多いが、個人にファンをつけるのではなくヘッドコンシェルジュにファンをつけるチーム力を重視した組織づくりを面接段階で共有しているため、この戦略を理解しているメンバーが入社し、チーム力を重んじる文化が根付いている。

個人主義に走りすぎると、女性スタッフのみのヘッドコンシェルジュでは、変化する女性のライフステージによって産休・育休などに入る際の失客リスクも考えられる。

アフターカウンセリングでお勧めする次回予約もリピート率を集計してはいるものの、個人の数字だけで評価する人事制度にはなっていない。リピート率で伸び悩んでいるメンバーがいた場合は、チームで解決。次回予約につながりやすいトーク内容をチームで話し合う。

指名制度がなくても、リピート率が評価に関係しなくても、全店で70〜80%の顧客がアウターカウンセリング時に次回予約を取って帰っている。

個人力ではなくチームで評価する5段階の評価基準

5段階のランク制度である「コンシェルジュ制度」は、数字だけでなく「学びの姿勢」や「店舗への貢献」をトータルで評価する評価基準だ。

C1からスタートし、年2回の評価でキャリアップ。現在、C3は10名、C4は3名、C5は0名。

滝村晃平社長

リーダーシップを発揮するのが得意なタイプもいれば、技術を追求するのが好きな人、マルチにタスクをこなせる人など特性はさまざま。全員が埋もれない評価制度を目指しています。

 

創業当初は店舗を全国・海外に展開していく事を目標としていました。そういった背景から、個人にファンをつけるのではなく、ヘッドコンシェルジュのブランド力を高める組織が必要であると考えてきました。

けれども、今は店舗数を伸ばすことだけを目指すのではなく、良い人材を多く採用・育成し、1人ひとりがヘッドコンシェルジュとして輝く未来を描いています。

そして、ヘッドコンシェルジュが憧れの職業だと言ってくれる人を1人でも増やしたい

きっとその頃には自ずと店舗が増え、全国や海外展開が見えてくるのではないかと考えています。

head CONCIERGE(ヘッドコンシェルジュ)
Salon Information
head CONCIERGE(ヘッドコンシェルジュ)

・設立:2019年3月
・店舗:青山本店、表参道店、銀座店、新宿店、池袋店、麻布十番店、二子玉川店、心斎橋店、福岡店
・スタッフ数:74名
・客単価:約14,000円
・顧客リピート率:80%

住所 東京都中央区銀座6丁目4-9 SANWA GINZAビル 4F
MAP Google map
店舗情報 ・メニュー料金:
「究極睡眠ヘッドスパ」お試しコース(所要目安:60分)10,780円(税込)/税抜価格9,800円
「究極睡眠ヘッドスパ」スタンダードコース(所要目安:90分) 16,280円(税込)/税抜価格14,800円
「究極睡眠ヘッドスパ」ラグジュアリーコース(所要目安:120分) 21,780円(税込)/税抜価格19,800円

 

滝村晃平 / 代表取締役社長
Profile
滝村晃平

代表取締役社長

1986年生まれ。大阪府出身。IT業界、インテリア業界を経て、全く未経験の美容業界へ。2019年にヘッドコンシェルジュ株式会社を立ち上げる。「究極睡眠」をコンセプトとしたヘッドスパ専門店を全国に展開。ホスピタリティを追求した唯一無二のサービスで人気を博す。また全社員女性という組織を経営マネジメント。今後は海外進出も目標に掲げる。

YAHAGI
執筆者
YAHAGI

ほぼ毎日WEB記事、ときどき単行本。

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