【第2回】「後輩の妊娠報告に焦ってしまう」誰にも相談できない美容師の妊活

【第2回】「後輩の妊娠報告に焦ってしまう」誰にも相談できない美容師の妊活

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質問もできて「ボブロガーズ」と繋がれるコラム連載。ママ美容師でライター業もバリバリこなすサカリさんがママ美容師のリアルな悩みに答えます!

Contents



トイレに行って溜息を吐く。涙よ、止まれ。何も今日が初めてじゃない。

その日、後輩スタッフの妊娠報告。

頭ではわかっていても、胸の黒い渦は消えない。

決壊寸前の心の堤防は、店長という微かなプライドだけで保たれている。結婚7年目。34歳。このまま仕事のために生きるの?

自分でいうのもなんだけど、昔からなんでも卒なくこなせるタイプだった。

成績は上位。第一希望の人気サロンに就職。

同期で一番にスタイリストデビュー。

右肩上がりの売上。社内最年少店長に。

優しい彼と、恋愛結婚。

……7年目。

これだけはうまくいかなかった。

妊活は3年目になっていた。

二十代。まだまだ仕事が好きで考えられなかった「子ども」。

三十代。お義母さんと顔を合わせるたびの「そろそろ…」は呪文のように。

すぐにできると思ってた。けどお互い仕事も重要なポジションになってきて、タイミングが合わない夫との関係はすれ違い。

積み上がるのは焦りと不安。時間とお金は消えていく。

基礎体温の微々たる数字の変化。

この一喜一憂は無意味だ。

そんな矢先。

後輩スタッフの妊娠報告。

妹みたいに思ってたのはタテマエで、胸のうちは醜いオンナだったんだな。

「なんで? また休んだら仕事の穴は誰が埋めるの? 私が店長だからしないといけない? また妊娠できないの?」

嫌だ。

会社も、後輩も、美容師も、周りも

こんな自分が一番。


今月のママ美容師のお悩み

(東京都・34歳・スタイリスト店長)


不妊治療をしながらサロンワークをしています。

職場では重要なポジションになっていて、周りにも相談できずにいます。

ですが、周りの妊娠報告に焦ってしまったり、精神的にも肉体的にもツラくなってきました。

不妊治療と仕事の両立はどう考えたら良いでしょうか?


ママで美容師でライターをやっています

美容師ライターの盛(サカリ)と申します。

美容師歴12年、2人の子供がいるママ美容師です。

現役でサロンワークをしながら、美容師専門のWEBライターとして活動しています。

また、ママ美容師オンラインコミュニティ「MAMABI PARK」にて、ウェビナーメインパーソナリティを務め、さまざまな美容師さんたちの経験や仕事に対する想いをお伺いし、言葉として世に伝えています。

ライフステージによって、働き方の変化を強いられることが多い女性美容師。

美容師として、女性として。その狭間で起こる苦悩。

そんな女性美容師さんたちのリアルなお悩みを、美容師×ママ×ライターならではの視点とたくさんのママ美容師さんたちのご経験を元に解決の糸口を探る、このコーナー。

時は、令和。多様化する生き方や働き方。

誰かが歩いた道を辿るのが、正解とは限らないのです。


女性美容師のカテゴライズできない日々の中で。

パラダイムシフトは加速していく。

「私のようで私じゃない。同じ時代に生きる、どこかの美容師さんのお話。」として読んでいただけたらと思います。


忙しくて不安な不妊治療……まずは思考を整理することから

私たち女性美容師は、二十代後半から三十代中盤にかけて、お客さまも役職もつき、あらゆる場面で求められる時期。

そして、この時期は結婚や出産など女性としてのライフスタイルの選択も強いられる方も多いでしょう。

変化する日々に、不安や葛藤、後悔が付きまとうのは当たり前。



今回のご質問は、ママ美容師同士でもセンシティブな内容でお互いに相談しづらいところでもあります。

ですが、相談者さんの今の状況はどれも納得のいく形ではなさそうですね。

まずは「何を優先すべきか」を一度、旦那様とご相談してみてはいかがでしょうか?

その上で、もし妊娠を望むのであれば、サロンとの連携は必要となってきます*1。

*1 出典元 不妊治療と仕事との両立について|厚生労働省



不妊治療と美容師の両立

①自分の健康を最優先にすること

妊活は体に負担のかかるもの。ご自身の健康が第一です。仕事の負担が高すぎる場合は、調整が必要になってくるでしょう。

②周りに理解者を作ること

誰にでも理解されるものではありませんが、理解者を作ることで心理的な負担を軽減できます。特に、長い時間を共有する職場の理解者は貴重な存在になります。

③時間の管理をしっかり行うこと

病院での検査や体調不良で時間がとられる場面も多々あります。②に加えて、労働時間の変化への対応も必要となってきます。



知っていますか? 不妊治療連絡カード

店長という役職で言い出せない場面もあるかと思います。

実際ご自身も、スタッフさんの妊娠報告にシフトや予約調整などで頭を抱えた場面もあったことでしょう。

ですからなおのこと、備えはあったほうがお互いに負担にならないはず。

口頭の説明が難しいようなら、あまり美容業界では浸透していませんが「不妊治療連絡カード*2」を利用するもの良いでしょう。

不妊治療カードとは、主治医等から診療に基づき治療や検査に必要な配慮事項について、会社に的確に伝達するためのカードです。

・妊活についてどう伝えたらいいかわからない方

・忙しくてミーティングをする時間がない方

「なんて言ったらいいか…」と言う方は、まずは渡すだけでもその旨は伝わるでしょう。
かかりつけのクリニックでご相談してみてください。


*2 出典元 不妊治療連絡カードをご活用ください!

経験者のママ美容師さんには、役職を降りてパートになり専念した方もいれば、一度妊活をやめて仕事に振り切ったら自然にできた、なんて方もいます。

仕事に専念する結論を出した方もいます。

こればかりは、本当に正解はないものです。

でもどんな選択をした方も「過ぎたとき、つらかった経験は自分にとって意味のあるものだった」と口を揃えておっしゃいます。もしかしたら出産という、命をかけた経験をする前になにか気づきを与えてくれているのかもしれませんね。

「そんなに頑張ってるママのお腹に今行ったら、もっとつらくなっちゃうのかな」

なんて。

「幸福とは、欲しいものを持つのではなく、持っているもので満たされる方法を知っている状態のこと」

という研究結果があります。

私たちはつい、

お金があれば、時間があれば、家族がいれば、子供がいれば、安定があれば…

と、ないものを持てば幸せになれると思ってしまうけれど

私たちがこうやって今生きていけること。

それは、いま目の前にいる人のおかげだということ。

あなたはちゃんとがんばってた。

もうひとりで戦わなくていいんですよ。




サカリ

今月のお悩みへの“サカリ的”解決提案

①周りに理解者を作ろう。

②「不妊治療連絡カード」を使って、会社に理解を求めよう。

③体調管理と時間の管理を徹底しよう。自分自身を認めてあげることも大切。








次回のお悩みは・・・?

「ほら!早くご飯たべて!」「早く着替えて!」「早くお風呂入って!」……

我が家に現れる「妖怪ハヤクハヤク」。
その正体は「ハヤクハヤク」と子供を急かす、眉を吊り上げ髪を振り乱した私の姿。38歳。パート美容師。

帰宅が遅い主人。限られた仕事の時間。美容師18年目。毎月の振込額が新卒の子より少ないなんて。仕方ないよね。

だけど……時間もない。お金もない。私、美容師の価値あるの?


NEXT→ ママ美容師のお金と時間

名前がつかない、この日々で、

パラダイムシフトの途中で。

そんなことを思いながら、今日もサロンに立つ私。




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盛(サカリ) / 美容師ライター(山形県山形市)
Profile
盛(サカリ)

美容師ライター(山形県山形市)

山形県出身、在住。現役美容師。歴12年。2児の母。「華やかに見えて、長時間労働や低収入、人間関係など課題のある美容業界。それでも愛を持って努力しつづけている美容師さんの想いを世に伝えてくこと」を使命に、美容師専門のwebライターとして2022年1月から活動中。美容師メディア「HAIRCAMP」他、美容商材、オンラインサロン等執筆多数。日本最大級ママ美容師コミュニティ「MAMABIPARK」ではメインパーソナリティを務める。当コミュニティメンバーで日々話題となっているさまざまな悩みやキャリアデザインのヒントから今回のコラム執筆に至る。

サカリ
執筆者
サカリ

美容師ライター。二児の母。

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