研究所で髪を切る。ラボ・ファクトリー・サロン「三位一体」で叶えるNEW BEAUTYとは?

研究所で髪を切る。ラボ・ファクトリー・サロン「三位一体」で叶えるNEW BEAUTYとは?

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現代の美容室のカタチとはなんだろうか?
今回は、トレンドや時代の流れにとらわれないサロンの、深い信念に迫る。

写真:MISUMI

東京・渋谷の繁華街を抜けた先にある、閑静な街「富ヶ谷」。
代々木公園駅から歩き始めて数分ほどして、本格的な研究室が併設されたサロンが現れる。自然の植物の香りが漂うここは、日常とは少し違う不思議な場所だ。

俗社会で生きる我々を、やさしく植物の力で包み込む。1秒が長く、穏やかに感じる空間がそこにあった。

今回は、植物と香りにファーカスしながら健康美を育むEpoの新たなサロンのカタチを探る。


21世紀のサロンのカタチ

『植物の持つパワーをダイレクトに美容に活かす』『足りないものは、自らの手で創り出す』
これらをコンセプトに掲げるのは、蒸留精製システムと製品開発ラボをサロン内に併設する、日本国内では一風変わった形態をとる「Epo Hair Studio」

提供するシャンプーやトリートメントは、すべてEpo内で加工されたオリジナル。
Epoが信じる、自然と植物のパワーをダイレクトに味わうことができるのだ。

また、外国にいるような内装が特徴のここは、国内外で活躍するヘアスタイリストKENSHINさんがブランディングのダイレクションを務める美容室。ニューヨークに縁がある彼の、21世紀の美容室のカタチが投影されている。


提供するのは、オリジナルの自然由来。

コンセプトは、ラボ(製造)・ファクトリー(生産)・サロン(提供)三位一体
提供するシャンプーやトリートメントは、厳選した素材から、ラボとファクトリーを通して自サロンで加工した自然由来のものだ。

国内外の植物(ハーブ)をスタッフ自らの手で蒸留抽出・アルコール抽出・醗酵・パウダー状に粉砕などの加工工程を行い、トリートメントなどの原材料を創り出し製品化。
それらをお客が体験できるメニュー展開をしている。

Epoで使われるシャンプー&リンス

自然由来の香料がつけられており、月替わりに香りの種類が変化する。
季節に合った香りや効能を楽しむことができる。


Epoで使用するエッセンシャルオイル(精油)は、すべて植物の香り成分を抽出したエッセンスだ。
精油とは、自然植物の花や葉・木部・果皮・樹皮・根・種子などの部分に存在する天然の液体のこと。

天然純度100%のものだけが「エッセンシャルオイル(精油)」と呼ばれ、何らかの混ざりがあったり植物の香りに似せて人工的に作られたものとは明確に区別されている。

例えば数mLのエッセンシャルオイル(精油)を抽出するのに、ラベンダーなら花穂を100~200㎏・ローズなら花を3~5t も必要とする。
大量の原料植物から、ほんの少ししか採れない希少価値の高い原料なのだ。


このように、日本にはまだ浸透していない、自然や植物の力を信じる”健康美”がここにはある。



自然を届けるしくみ

Epoの三位一体の店内を紹介したい。
我々に自然の力を届けるまでの過程には、多くの努力と植物への可能性を信じる想いがある。

Labo

新たな自然の香りや効能を求めてこだわり続ける研究所。壁の棚には、厳選された国内外のハーブが並ぶ。
常にここには1人、研究を重ねるスタッフがいる。人の手で何かが生まれるはじまりの場所だ。

Factory

「自分たちで納得ができる素晴らしいプロダクトがないなら、自分たちで原材料からつくる」という想いで
日本にまだない価値を求めて作られた工場。
厳選したハーブから、製品に使用されるエッセンシャルオイル(精油)を蒸留機(写真左)で抽出する。

蒸留法は水蒸気蒸留法というもの。蒸留機は国内では大変珍しい100ℓものスペックがある。

コロナ以前は、理想の薬草やハーブを求めて山野に入り、大地で育った自然の恵みを採取することもあった。
現在は、信頼できる産地からの仕入れが中心になっているものの、蒸留機に隣接された「Culture Room」で植物を自栽培している。

取材時(1月下旬)は水菜を栽培中。「ヘッドスパメニューの際のマッサージクリームに使用できないか」など検討中の段階だという。


Salon

ラボやファクトリーを経て作り出されたシャンプーやトリートメントをお客が体験できる場。
サロン内は、何種類もの植物が調和した自然の香り。純度の高いものを提供されている証拠だ。



”生きる”に立ち返る

Epo Hair Studio のはじまりは、自然への並々ならぬこだわりだった。

「植物療法の圧倒的な存在感とエネルギーに触発され、自国の洗練された薬草植物とその文化に着目しました」
こう語るのは、Epo Hair Studio オーナーの渡辺靖雄さん。

「動物は身体の不調に際し本能的に身の回りの植物を摂取するように、植物療法は生物にとって根源的な療法だと言えます。実際に私たちが過去に訪れたことのある世界の国々にも、必ず植物療法の文化が存在していました」

生きることの根源を見つめ直し、美につなげる。
時代が流れようとも、植物は人間にとって、安らぎやエネルギーを与えてくれる存在なのだ。

こだわりのメニューで、自然を摂取する。

サロンで植物を存分に体験できるメニューのひとつにヘッドスパがある。しかし、通常のものだと考えてはいけない。
今まで体験したことのない新しさに出会うことのできる有意義な時間を紹介する。

=MENU=
Head Spa Use Field Labo Essencial Oil
60min ¥15,000

Epo内のファクトリーで蒸留したエクストラバージンエッセンシャルオイルをベースに季節のハーブを練り込んだシャンプー&トリートメントを使ったヘッドスパ。
目的に合わせた5種類の違ったハーブ調剤を目の前で調合したものを使用する。
サロンが調合したエッセンシャルオイルをふんだんに摂取することができる特別なメニュー。


施術は、ハーブ香る個室のあたたかな灯りの下で

ヘッドスパ専用の部屋。自然の光が差し明るさを感じるサロンとは違い、照明が落ちリラックスできる空間になっている。壁に並んだハーブは、純度が高く互いに調和し微かに香る。


今の自分が求める香りは?

自然の香りを精油とブレンドした5種類から、直感でいい香りを選択。
この5種類の香りは似たものがなく、それぞれ強い香りの特長を持っている。スパリストから効能を聞くも良し、香り優先で選ぶも良し。
Spalist 鷲野さん

この「香りを選ぶ」ということは、自身の身体が求めている効能を導くということなんです。
実際に、その日「良い香り」だと思って選んだものが、2カ月後に苦手な香りに感じたりする方も結構いらっしゃいます。

香りの説明書

エッセンシャルオイル(精油)がブレンドされた香りは、リラックス効果はもちろん、身体の不調や気持ちを整えてくれる。
シャンプーの香りは、Spalist の鷲野さんが月ごとに調香。その季節特有の植物や、お客に寄り添うような香りは、訪れた人の心に癒しを与える。


提供されるこだわり

すべては植物を”美”に活かすため。Epoの信念は揺るがない。

ハーブパウダーが練り込まれた
マッサージクリーム

クレイクリームにハーブパウダーを混ぜて使用。ハーブは選んだディフューザーと相性がいいものをスパリストが選定。ホットストーンであたためられたマッサージクリームは、頭皮に負担をかけずゆっくり浸透する。

まるで外国の
お菓子のような耳栓

Epoでは香りに集中し嗅覚を研ぎ澄ますため、施術中の耳栓を推奨している。香りに加え、呼吸の音や水の音が響き、心身ともにリラックスを叶える。

ティンクチャー

高純度アルコールにドライハーブを2週間ほど漬け込んだもの。
水で薄めて使用する。

頭皮の環境改善だけでなく、自律神経を整え深いリラックス状態へと導く頭皮環境に特化した「ティンクチャー」。生え際に10分間垂らすことで、ストレスなどによる不調や不安・不眠などの症状を緩和し免疫力を高めてくれる。

これは、インド・スリランカの伝統医学であるアーユルベーダのシロダーラ(額にオイルなどを垂らす療法)からインスパイアされている。シロダーラの要素を分解し、都市生活に即した形でアウトプットしたのだ。

ティンクチャーは、ヨーロッパでは古くから取り入れられてきた自然療法の1つ。
水溶性成分だけでなく油溶性成分まで抽出されるためハーブの有効成分をより効率的に得ることが可能だ。

東洋では漢方が取り入れられてきたように、ヨーロッパではHERBORISTERIE(エルボリステリア)というハーブの薬局が古くから存在する。身体の不調を感じたときに相談にへ行くと、植物の知識が豊富な薬剤師によるのハーブや身体ケアの方法を個人別に提案。
このような、植物療法をスカルプトリートメントにアレンジしたのがティンクチャーなのだ。

香りのコラム

嗅覚は、五感の中でも太古から存在する原始的な感覚器とされている。
嗅覚の情報は視覚や聴覚の情報と違い、大脳新皮質を経由せず、本能的な行動や感情・直感に関わる大脳辺縁系に直接届くのが特徴。
そのため人間は、香りを嗅ぐと「なんの香りか」を判断する前に何らかの感情が沸く。

香りの情報は脳の視床下部に伝わり、人間の生理的な活動をコントロールする自律神経系・ホルモン系・免疫系に影響を与え、心身のバランスを整える。
つまり、一瞬にして脳を活性化させ感情をリセットさせるのだ。

この香りの習性こそ、「長期的な健康美を引き出すという根本的な美の手伝いに有効な手段だ」とEpoは考えている。

NEW BEUTYの今とこれから


新しいサロンのカタチとして植物のチカラを信じた、内側からの健康美を提示する Epo Hair Studio
本格的な研究室の併設も、植物の持つパワーを探し活かすためのこだわりに過ぎない。

そんなEpoが、見る現在・描く未来をオーナー・渡辺靖雄さんに聞いた。

──新たなサロンのカタチに掲げる想いとは?

21世紀に入り生活様式や世界情勢が多く変わっていく中で、我々は従来型である20世紀ビューティービジネスフォーマットへの依存からの脱却ができていない現状下にいます。
このような、ケミカル中心の短期的なビジュアルのみにアプローチしたマーケット依存型の運営システムでは 、我々の描く長期的な健康美を引き出すという”根本的”な美のお手伝いは難しいと判断しました。

結果、 大きなチャレンジではありましたが新しいヘアサロンの在り方を創出することを選択するに至りました。
種の終わり方は絶滅していくか進化していくかの選択であるように、今までの HAIR SALON(美容産業)という概念から脱却して進化を模索する道を選んだ次第です。


──個性派サロンの未来とは?

私共のような路線のサロンは、今後も増えるだろうと思いますし、そうなる事を願ってもいます。
さまざまな切り口で独創的なサロンは既に多く存在しています。
これはあくまで私見ですが、私共Epoが目指すような世界観のサロンは、多くのサロンが密集し合う東京のような都市部より、地方にこそ可能性があるように感じています。

──多くのサロンが展開する東京。唯一無二になるには?

少なくともEpoでは『市場もしくは世の中が抱える課題に向き合い、課題解決への価値の提供を模索して、現代社会に即したアウトプットで形にする』を軸にして取り組んできました。
要するに、周りを気にせず自分達が信じることを進めてきた結果、このようなサロンの形になりましたので、何か特別な方法がある訳では無いのかなと思います。



ラボとファクトリーを併設するという、21世紀の NEW BEAUTY が投影されたサロン。
そこには、植物のチカラとともに”美”への可能性を見い出し、生きることを美しくする人たちの想いがあった。

 Epo Hair Studio
Salon Information
Epo Hair Studio

2018年12月設立。21世紀の生き方や美しさが投影されたサロンのカタチ。
主宰を国内外で活躍するヘアスタイリストKENSHINが務める。
「NEW BEAUTY」を掲げており、サロン内にラボとファクトリーを併設。30代~40代のお客を中心に植物やハーブに関する施術を提供している。

住所 東京都渋谷区富ヶ谷1-9-15 ウイハイツ1F
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店舗情報 ■営業時間:平日11:00~19:00/土曜10:00~18:00
■定休:日曜・月曜・祝日
※火曜11:00~17:00はプロダクト販売のみ。
※クレジットカード・各種電子マネー・QR決済での取り扱い。

■ホームページ:https://www.epolabo.com/

ishikawa ayaka
執筆者
ishikawa ayaka

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