【最終回】お客さまと仕事が好きなら、どこに行っても楽しめるのが美容師

【最終回】お客さまと仕事が好きなら、どこに行っても楽しめるのが美容師

211

連載:〈ママ美容師〉サカリのコラム


【前回の続き】「転勤だって。」帰宅早々、主人がおとす、ジャケットと肩。「え…?」びっくりすると、本当に言葉って出ないらしい。結婚したら転勤はない、と安堵して復帰した美容師。子供も学校に慣れ始めた。お客様もついてきた。これからだってのに。かと言って、私と子供で残るなんて…


Contents



自分でいうのもなんだけど

順風満帆な人生だったと思う。

夢だった美容師になり、

安定職の主人と結婚し、ほどなく出産。

専業主婦を経て、

子供が小学生に上がったタイミングで復帰。

大きくもなければ小さくもないサロンで

パートスタイリストとして働いていていた。


「家庭を第一に働ければいいか」

と思ってはいたものの、

お客さまに感謝され、

売上も上がってくると

若い頃のガムシャラな気持ちもせり上がる。


「もっと働きたいな」

そう思っていた矢先。

子供が心配…

なんていうのは建前で

わたし自身が環境の変化に怖気付いている。

かといって…


今月のママ美容師のお悩み

(大阪府・30歳・スタイリスト)

夫が急に転勤になってしまいました。また顧客0からスタートなのも不安ですが、一人で子育てしながら美容師を続けられるかも不安です…


ママで美容師でライターをやっています

美容師ライターの盛(サカリ)と申します。

美容師歴12年、2人の子供がいるママ美容師です。

現役でサロンワークをしながら、美容師専門のWEBライターとして活動しています。

また、ママ美容師オンラインコミュニティ「MAMABI PARK」にて、ウェビナーメインパーソナリティを務め、さまざまな美容師さんたちの経験や仕事に対する想いをお伺いし、言葉として世に伝えています。

ライフステージによって、働き方の変化を強いられることが多い女性美容師。

美容師として、女性として。その狭間で起こる苦悩。

そんな女性美容師さんたちのリアルなお悩みを、美容師×ママ×ライターならではの視点とたくさんのママ美容師さんたちのご経験を元に解決の糸口を探る、このコーナー。

時は、令和。多様化する生き方や働き方。

誰かが歩いた道を辿るのが、正解とは限らないのです。


女性美容師のカテゴライズできない日々の中で。

パラダイムシフトは加速していく。

「私のようで私じゃない。同じ時代に生きる、どこかの美容師さんのお話。」として読んでいただけたらと思います。


積み上げてきた自信が未来を創る

新しい場所で0からのスタートか、今の場所で頑張るか…

環境の変化の選択は、独り身だったら自分の都合だけで乗り切れることでも、家庭を持つとそうはいかないものですよね。


転校や引越しの手続き、職探し、新しい場所での人間関係の再構築…


慣れるまでの生活リズムが整うまでも時間がかかります。

旦那さまとの家事と仕事のバランスにもよりますが、大概こういったものはママの比重が多いという現実。


ただ単に仕事を変えるだけならまだしも、美容師という仕事はサービス業の中でも特殊で、信頼関係の積み上げは時間がかかるものです。

0からのスタートとはいえ、ハードルはかなり高い。

その上、体力勝負な仕事でもあるので、

サロンワークの後に家事や育児を一人でこなすのも大変です。


そんな厳しい選択を余儀なくされたママ美容師たちはどうやって乗り越えてきたのか?


180名以上のママ美容師が在籍する、日本最大級のママ美容師オンラインコミュニティーMAMABIPARK 内では

どんな形態であれ、メンバーのみなさんは我が子を第一に考えての働き方をされていました。

祖父母を頼れるかどうかも重要なポイントです。

そうでない場合は、やはりママがお子さんの生活に合わせた働き方をするのが現実的なようです。

転勤経験のあるママ美容師さんたちにお伺いしてみました。

MAMABI PARKとは?

ママ美容師を繋ぐコミュニティ型オンラインサロン。 公園に立ち寄るような感覚で、日々の“嬉しい”や“ちょっと困った”を共有。 オン・オフラインの技術セミナー、好きなことで繋がるサークル、お悩み相談、交流会、練習会など幅広いジャンルで楽しめる。忙しいママだからこそ自分のペースで自由に参加できるスタイルで、現在180名以上が参加中。メンバー全員が主役でママ美容師の挑戦を応援し合える場所を目指し活動している(@mamabi_park)。



転勤が決まったとき、どう思った?

・嫌だなあとは思いつつ、楽しそうとも感じた

・都会から地元に戻る選択だったので、都会で一人で子育てをするのが心配だったこともあり、身内が近くにいるのは安心だった

・家族はやっぱり一緒にいた方がいいので、ついていくことに迷いはなかった

・都会暮らしが向いていたので、田舎に戻るのは嫌だった

・子供が中高生くらいになると難しくなるので、動けるうちはついていきたい

・旦那さんが収入の主軸だったのでついていくしかなかった

・今のお店に不満もなく、スタッフやお客さまも好きだったので絶対嫌だった

どんな不安や葛藤がありましたか?

・長年働いていてお客さまがついていたので申し訳なかった

・一人で子育てをする不安

・知り合いが0になるので頼れるところがない

・しばらく実家にいさせてもらうにも、ニートだったので経済的な不安があった

・子供の転校や自分の仕事などをどうするかずっと葛藤していた

・田舎に引っ越すので、親戚付き合いや義母との同居

・ずっと仕事をしていたため、しばらく専業主婦になるのことへの抵抗感

・縁もゆかりもない土地で、顧客0からの集客

・新しい環境での人間関係の再構築

どうやって乗り越えましたか?

・家族や友人にサポートしてもらい気持ちを切り替えられた

・旦那さんが「着いてきてください」と土下座した姿を見て

・お客さまは気がかりだったけど、最後にきちんと挨拶ができてやりきった感があった

・手に職だし、なんとかなるかと思った

・悩んだ結果、自分でお店を持つことにして逆にワクワクした

・転勤先の遊ぶところや支援センターでの新しい発見や出会いを楽しんだ

転勤をした選択は、今どう感じますか?

・後悔はない! 新しい挑戦もできた

・計画的ではなかったがなんとかうまく行っている。時の流れに身を任せてもいいもんだなとも思う

・同居は嫌だけど、仕事は変えて大正解だった!

・専業主婦を経て美容師に復帰したけど、専業主婦の間に両親以上に助け合える仲間に恵まれたのでよかった!

・結果的にいい人生になっているので、転勤を決めた夫に感謝している

・自宅サロンをオープンしたことで子育てと仕事のバランスが取れて、今の働き方がちょうどいい

・転勤をしたからMAMABIPARKのメンバーと会えたりしているので運命だったと思う!



不安や葛藤もありながらも、みなさんそれぞれで解決策を模索し、前向きなご意見ばかり。

自分の美容師としての幸せを一旦抑えてから、ひとまず家族を優先させ、その上で自分も幸せになる方法を創り出す…

手に職があれば、会社に依存しなくても生きていけると思えるのも、これまで積み重ねてきた自信が不安を打ち消せるのではないでしょうか。

また、女性美容師はなんといってもコミュニケーション能力が高いので、新天地でもすぐに新しい人間関係を築き上げるのが上手な印象があります。



最強!どこででもやっていけるのがママ美容師

そして、最後に「これから0スタートする方へ」

「不安はあるけど新しい環境で素敵なこともたくさん待ってます!」

「自分がどうしたいかの軸をしっかり持てば、0からでも100にできるチャンス!」

「美容師は自分次第でいつでもどこでもできる!」

「やってみなければはじまらない!」

「どこにいても美容師、お客さまが好きということがすべてかなと。それさえあればなんとかなる!」

「旦那さんは転勤直後は仕事で一杯一杯で頼りにならなくても(笑)、ママの最大の味方の子供がいる! この心強さでどんなことでも乗り越えられる!!」


こんな前向きすぎるメッセージをいただきました。

仕事よりも、かけがえのない家族を大切に考える姿勢はまさに「母は強し」。

ならぬ、「ママ美容師は最強」なのではないかとすら思います。


転勤だけじゃなくても、新しい環境へ飛び込むのは勇気がいるもの。

恐怖や不安から、逃げるようにハサミを置いてしまわれる方も多いのもまた事実です。


ですが、考え次第で人生は好機にも向かいます。


恐怖心の正体は「知らないから」

経験者の事例を聞くことも、大きな決断へのヒントになりますね。



サカリ

今月のお悩みへの“MAMABI的”解決提案

①旦那さんの転勤は着いていくママ美容師が多数

②手に職なのでお客さまと仕事が好きなら、美容師はどこでもやっていける説は本当。

③転勤が良いかどうかは考え方次第! 場所より何より家族が大切!





epilogue 〜自分が自分であるために〜

〇〇美容師が溢れる中で、カテゴライズが難しいジャンル「ママ美容師」。

妻として、母として、そして美容師として。

「子供が急に…」「両親が突然…」「学校が…」「旦那さんが…」

毎日毎日、自分ではコントロールできないタスクが

矢のように降り注ぎ、

最終的にお客さまに頭を下げ、

積もり積もった疲労は身体を病む。

「どれも中途半端な自分は価値のない人間だ」

自分で選んだ道であれ、

キラキラ輝いていた美容師生活はとうの昔。

いつもうまくいかなくて、ずっと自信がなくて。

だけど美容師が大好きで。

そして子供も大好きで。
だから諦めたくなくて。


なんとか食らいついても振り出しに戻され、

何度も何度もリスタートを切る。

全て自分の感情や欲求だけでは成り立たたず、

人が介入すればするほどその道は複雑になっていく。


複雑化しているから前例もなく、正解もない。


何が正解かなんてわからないし、

誰かの正解がうまくいかないことがあるのも知っている。


妻だから、母親だから、そして美容師だから、

という常識がない私たちが、複雑化した問題を

1つひとつ正解に書き換えてきた先はパラダイム。


いつかまた、仕事だけができる日が来たときに

今日の感情を今日と同じように感じられるのだろうか。


そうではなくて悔しさや悲しみはきっかけだったと言え、

悩みはチャンスになる。

ならば、

この日々に悲劇のタイトルは付けなくていいじゃない。


名前がつかないこの日々で

自分が自分であるために

今日もサロンに立つ私。



盛(サカリ) / 美容師ライター(山形県山形市)
Profile
盛(サカリ)

美容師ライター(山形県山形市)

山形県出身、在住。現役美容師。歴12年。2児の母。「華やかに見えて、長時間労働や低収入、人間関係など課題のある美容業界。それでも愛を持って努力しつづけている美容師さんの想いを世に伝えてくこと」を使命に、美容師専門のwebライターとして2022年1月から活動中。美容師メディア「HAIRCAMP」他、美容商材、オンラインサロン等執筆多数。日本最大級ママ美容師コミュニティ「MAMABIPARK」ではメインパーソナリティを務める。当コミュニティメンバーで日々話題となっているさまざまな悩みやキャリアデザインのヒントから今回のコラム執筆に至る。

サカリ
執筆者
サカリ

美容師ライター。二児の母。

Prev

Next