【第1回】「おめでとうは言われなかった」
質問もできて「ボブロガーズ」とつながれるコラム連載。ママ美容師でライター業もバリバリこなすサカリさんがママ美容師のリアルな悩みに答えます!
「店長、実はご報告があって…」
個人ミーティング。タイミングは、今しかない。
「…実は二人目を妊娠していて…」
「あ…そう。」
私は今、29歳のスタイリスト。上の子は先月2歳になった。なかなか授かれなかった待望の長女。1歳前に復帰して、やっと顧客が戻ってきていたけど、兄弟はつくってあげたい。
私も三十路手前で、美容師としての生活より母を優先したかったのが本音。
店長は五個上のお姉さん的存在で、上の子の時みたいに、「おめでとう」って言われると思ってた。
「二人目早すぎじゃない?今抜けられるの困るの知ってるよね?
つわりは病気じゃないから、休まないでよね。
働くならこっちも今まで通りガンガンお客さん入れるから」
そして次の日から、店長はよそよそしくなり、挨拶も目を合わせてくれなくなった。
昨日まであたりまえだった、「おつかれさま」も、言われなくなくなった。
周りのスタッフから聞いた、店長が不妊治療をしていること。
ツワリがひどくなり、吐きながら出勤。詰め込まれる予約。不安と共に大きくなるお腹……
今月のママ美容師のお悩み
〈神奈川県・29歳女性・スタイリスト6年目〉
妊娠報告したら店長から心ない発言を受け、無視されるようになりました。
スタッフとも気まずくなってしまい、体調が悪くても言えません。
精神的にもツライのですが、妊娠したことで職場の人間関係が悪化したことに責任を感じています。
これってマタハラなのでしょうか?
ずっとこの状態が続くとなると働きにくく、続けられるか悩んでしまいます…
ママで美容師でライターをやっています
美容師ライターの盛(サカリ)と申します。
美容師歴12年、2人の子供がいるママ美容師です。
現役でサロンワークをしながら、美容師専門のWEBライターとして活動しています。
また、ママ美容師オンラインコミュニティ「MAMABI PARK」にて、ウェビナーメインパーソナリティを務め、さまざまな美容師さんたちの経験や仕事に対する想いをお伺いし、言葉として世に伝えています。
ライフステージによって、働き方の変化を強いられることが多い女性美容師。
美容師として、女性として。その狭間で起こる苦悩。
そんな女性美容師さんたちのリアルなお悩みを、美容師×ママ×ライターならではの視点とたくさんのママ美容師さんたちのご経験を元に解決の糸口を探る、このコーナー。
時は、令和。多様化する生き方や働き方。
誰かが歩いた道を辿るのが、正解とは限らないのです。
女性美容師のカテゴライズできない日々の中で。
パラダイムシフトは加速していく。
「私のようで私じゃない。同じ時代に生きる、どこかの美容師さんのお話。」として読んでいただけたらと思います。
- Profile
- 盛(サカリ)
美容師ライター(山形県山形市)
山形県出身、在住。現役美容師。歴12年。2児の母。「華やかに見えて、長時間労働や低収入、人間関係など課題のある美容業界。それでも愛を持って努力しつづけている美容師さんの想いを世に伝えてくこと」を使命に、美容師専門のwebライターとして2022年1月から活動中。美容師メディア「HAIRCAMP」他、美容商材、オンラインサロン等執筆多数。日本最大級ママ美容師コミュニティ「MAMABIPARK」ではメインパーソナリティを務める。当コミュニティメンバーで日々話題となっているさまざまな悩みやキャリアデザインのヒントから今回のコラム執筆に至る。
- Twitter : @waamama_room
マタハラは管理体制で本来なくなるべきもの
まず、ご懐妊おめでとうございます!
先に断言できることは、あなたのお腹に新しい命が宿っている、とっても奇跡的で喜ばしいことに間違いはないのです。どうか、ご自分を責めないでくださいね。
さて、はじめにちょっと小難しい話をしますが、そもそもハラスメント(harassment)とは、「他の人からの発言や行動で尊厳を傷つけられたり、不快感や不利益、脅威が与えられること」を示します。
与えた側にたとえそのような意識がなかったとしても、受け取り側の主観が重視されるということです。
なので、あなたが店長さんからの発言を受け、精神的にそのようなお気持ちになられたというのは、マタハラ事例*1 に当てはまると判断できるでしょう。
実はマタハラって4.5人に1人の割合で被害の経験があるという調査結果*2 が出ています……!
*1 出典元 マタハラの基礎知識
*2 出典元『独立行政法人 労働政策研究・研修機構』妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査結果
マタハラは感じ方に個人差があったり、子育て中の忙しい期間のため泣き寝入りすることも多く、美容業界ではサロン内外でも表面化されないことが多いようですね。
ここで負い目を感じて欲しくないのですが、働く人数が減ってしまうことでの仕事のしわ寄せでのストレスの矛先って、本来サロンの管理体制に向けるもの。
サロン全体で労働環境を整えるべきです。
ですが、今回は店長という上の立場の方というのが難しいところですよね。まして、無視されているとなると余計にツラい……。
あなたもきっと、これ以上コトをややこしくしたいわけでもないと思うんです。
妊娠はできないことも増えるけれど、できることもある
仲良かった先輩とのすれ違いで、どんどん溝が深まることへの不安……。
直接言いづらかったらLINEや手紙で、予約や出勤時間の短縮などは可能か、業務的な内容からお伺いしてみてはどうでしょうか?
返信のニュアンスで、どう感じているのか察せる部分もあるはずです。
案外忘れがちですが、つわりや体調の良し悪しって、妊婦さん本人以外はどんな風にキツイのかは周りはイメージしにくいものなんですよね。
どこまでは業務可能か、「これはできて、これは出来ない」などの考えは、共有して大丈夫です。
「そんなことわかっているよ!」と、思うかもしれませんが「できないことの代わりにできること」も提案し、歩み寄るってこともやってみてください。
今はきっと泣きたくなったり、ムカついたり、自分じゃなくなっちゃう感情になったりする日もあるはず。
身体の変化に心がついていかなくなるとき。「なんでも私が解決しなきゃ! お母さんなんだから!」なんて思わないでくださいね。弱くていいんです。できれば周りを”頼ってあげて”ください。
もしかしたら、店長さんも周りも、引くに引けないみたいになってるのかもしれませんから。
赤ちゃんを育てながら仕事もしてる。今のあなたは自分が思ってる以上に頑張ってますよ。
ママ美容師ってすごいです。
今月のお悩みへの“サカリ的”解決提案
①LINEや手紙で、業務的な内容からコミュニケーションを図ってみる。
②「できること」と「できないこと」を伝えた上で、「代わりにできること」も提案する。
③弱くなっても大丈夫。もっと周りを頼って。
P.S もしもの時のお守りがわりに、相談機関*3 もお伝えしておきますね。
次回のお悩みは・・・?
トイレに行って溜息を吐く。涙よ、止まれ。何も今日が初めてじゃない。
その日、後輩スタッフの妊娠報告。
頭ではわかっていても、胸の黒い渦は消えない。
決壊寸前の心の堤防は、店長という微かなプライドだけで保たれている。結婚7年目。34歳。わたし、このまま仕事のために生きるの?
NEXT→ 妊活とサロンワーク
名前がつかない、この日々で、
パラダイムシフトの途中で。
そんなことを思いながら、今日もサロンに立つ私。
サカリさんへの質問やコラム連載で取り上げてほしいテーマなどは以下のボタンから! 悩みを抱えている女性美容師さん、女性美容師の輝き方を模索している経営者からの質問もお待ちしています。
※質問の際は「サカリさんに質問」と入力してからご質問ください。
- TOP
- 〈ママ美容師〉サカリのコラム
- つながる
- 【第1回】「おめでとうは言われなかった」
TREND TOPIC
- TOP
- 〈ママ美容師〉サカリのコラム
- つながる
- 【第1回】「おめでとうは言われなかった」