最強メンター美容師になろう!!④ 〜自分の正義(価値観)だけが正しいわけではない!

最強メンター美容師になろう!!④ 〜自分の正義(価値観)だけが正しいわけではない!

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動画撮影・編集:石井佑典

●手が空いてそうなアシスタントが、ヘルプに入ってくれると思ったら入ってくれずイラっとした。

●お店の中にモチベーションの高いスタッフ、あまり高くないスタッフがいて、どちらに合わせて教育したらいいのかわからない。

●「スタイリストデビューのために明日から朝練頑張ります!」と元気よく話をしていたのに、翌日遅刻してきた。

など…

挙げだすとキリがないくらい、美容室という環境では「人にまつわるモヤモヤ」が日々起きていますよね。

さらに、労働集約型産業である美容室では人が辞めてしまうことでのマイナスは非常に大きい。それがAIに負けない武器でありつつも、多様な価値観を持つスタッフたちの教育はとても難しいものです。

そんな悩みを持つ現場のリーダー、店長、未来のリーダーたちに知って欲しいのが『メンター美容師』という概念。

過去の連載はこちら。美容業界No.1エンタメコーチの中野友介さん・Lond代表取締役 甲斐紀行さんのお2人が、「メンターってなに?」「なぜ今必要?」という問いに答えています。

今回は第4回目。メンター美容師に必要な5つの心得の3つめについて学んでいきましょう。

その前に、心得5つのおさらいです。

メンター美容師5つの心得

1)ありのままを受け入れる

2)自分の世界と相手の世界がある

3)自分の正義(価値観)だけが正しいわけではない ←今日はこの議題を学びます!

4)相手の趣味に興味を向ける

5)徳を積む

Contents

美容室あるある3「2年でデビューして欲しいのに、後輩がなかなか焦らない」

引き続き、「メンター美容師になりたい人」として徳永恵里さん(December/東京・原宿)に参加いただいています。

店舗の中ではディレクターとして、また「メンター美容師」をめざすリーダーとして、リアルなお悩みの一つを動画の中で紹介してくださっています。

さて、今回のお悩みは…?

徳永さん

お店のデビューまでの年数の目安が「2年」と決まっているのですが、

今教えているスタッフの中に試験の合格のペースもゆっくりで、なかなか焦らない子がいるんです。

あまりしつこく言いすぎても本人のモチベーションを下げてしまうし、でもデビューはしてほしいし、どんな風に伝えたらいいのか悩んでいます。

 

そんなお悩みに対する今回の動画はこちら!


メンター美容師心得その3 自分の正義(価値観)だけが正しいわけではない

「自分の正義」とは

“正義”と聞くと、「そんな大それたものは持っていない」と思う人も多いかもしれません。

ですが、正義を言い換えると「価値観」のことでもあります。

・自分が正しいと思っていること

・こうしないといけないと自分が思い込んでいる世の中のルール

など、法を犯す以外の部分でのルール・モラル・マナーのような「〜しなければいけない」という考え方は誰にでもあるはずです。

あなたが持っている「正義」、相手も持っているんです

この「〜べき」という考え方を持っていること自体は、良いことです。

自分を律することにつながり、それがプラスに働くこともたくさんあるからです。

ですが、忘れてはいけないのは、自分以外の相手にも同じように「正義」があること。そしてその正義は自分と違っていて当たり前ということ。

自分が正しい! と思うことを自分が大切にするのは良いことです。しかし、自分にとっての「正しさ」は相手にとっても「正しいこと」だと思ってしまいがち……。

そのすれ違いや認識の違いが元でもめごとが起きてしまうのです。

自分が持っている「正しさ」の基準は、相手に同じようには当てはめることはできません。

もしかすると同じ部分もあるかもしれないし、違う部分があるのは当然だ、という前提を持っておくことが大切なのです。

自分の「正義」に気づくにはどうしたらいい?

とは言え、毎回のことながら「自分の正義=価値観」に改めて気づくのはとても難しいことです。

「正義感が強い」という自覚がある人はいるかもしれませんが、改めて自分自身の考え方に気づくきっかけってなかなか無いもの。

そんな時は、以前の「ありのままを受け入れよう」の回(下記の記事)でも話しましたが…

「イラっとした瞬間」が、正義に気づくチャンスです!

例えば、

・コミュニケーションをしている中で、相手の言っていることにモヤっとした瞬間

・自分の意見を聞いてもらえなかったな、とイラっとする瞬間

などのシーンは大なり小なり誰にでもあるはず。

イラっとする瞬間=大切にしているものが脅かされそうになっているとき

という話を以前にしましたが、つまりここでの

大切にしているもの=正義

のことなのです。

「イライラ」「怒り」は一見ネガティブだと思える感情ですが、ここにこそあなたの大切にしている価値観があるんです。この瞬間に、イライラを客観視し、「自分がこんなポイントに正義感を持っているんだな」と思考をシフトさせてみましょう!

【実践編】相手の正義と自分の正義をすり合わせる

お互い前に進むために必要なのは、自分と相手の「正義のすり合わせ」をすること。具体的に詳解していきます。

すり合わせに必要なポイントは2つ!

①お互いの「目的」を明確にする

②お互いの「この先のゴール」を明確にする

もっともっと具体的に、徳永さんのお悩みを例にしていきましょう。

例)先輩が後輩に対し「2年でデビューしてほしいし、そのために今もっと焦ってほしい」という悩みがある。

■先輩にとっての目的とゴール

①目的:2年でデビュー

②先のゴール:ちゃんと売り上げられる美容師になってほしい

では後輩はどうでしょうか? よくよく聞いてみると…

■後輩にとっての目的とゴール

①目的:自分のペースで着実に力をつけてからデビュー

②先のゴール:安定して売り上げられる美容師になること

しっかり互いにヒアリングをしていくと、「ゴール」に対しては共通の認識を持っていることがわかります。

現場で管理をする店長・幹部・教育担当の方が仕事に追われすぎてついつい陥りがちなのが、プロセスとゴールを混同してしまうことです。

「2年デビュー」はそれ自体がゴールではなく、一つのプロセスです。

デビューした後にどうなりたいのかがもっとも重要なのであって、その過程はゴール以上に重視される必要はないのです。

お互いに共通のゴールがあるのであれば、そのプロセスに対して会社や先輩側が柔軟な考えを持つこともできますし、後輩も考えを寄せてきてくれるかもしれません。

実例その1 「カットができないから辞めたい」

実際に徳永さんが在籍するDecemberの社内で起きた事例。

徳永さん

カットに対して苦手意識を持っているAさんという子がいまして…。

デビューして1人前に仕事をしていくことが難しいと思ったことや、以前から興味があったヘアメイクとして活躍したいと思ったことを理由に、お店を辞めたいと言ってきたことがありました…。

その話を受けて私と代表の北田(ゆうすけ氏)とで相談し、

ヘアカラーとスタイリングを行う「カラーリスト・アレンジニスト」という新しいポジションをつくることにしました。

そうしたら、「自分が伝えたことで会社が動いてくれるんだ」とAさん自身も感謝してくれ、より責任感を持って仕事に関わってくれるように。

加えてそのポジションでお客さまと関わっていく中で、「やっぱりカットもできるようになりたい」と思ってくれるようになり、今ではカットも学んでいます。

Aさん自身が大切にしたいことについてしっかり話を聞き、会社も柔軟に対応する大切さを感じた機会でした。

 

Aさんの将来に対する不安感(自分がカットをうまくできるのか)を汲んだ上で新たなポジションをつくったことで自発性の伸長やさらなる自信につながり、得意分野で成功体験を重ねたことで、「やっぱりカットもできていた方がいい」と自分が思うように(結果的に)なったこと。なんという好事例でしょうか。

結果的にカットも学んで1人前に成長しているAさん。

学ぶ順番や過程が他の子たちと異なっただけで、自分の武器を活かして集客にも成功しています。

これも、Aさんの努力とDecemberの経営陣の柔軟性の両方によって成し得た着地点。

どちらか一方だけでもうまくいきませんが、会社が柔軟になることによって本人のモチベーションや責任感・やる気が上向きになることも多分にあるのです。

実例その2 「メンズ売りをしたい2人の美容師」

実際にLondで起きた事例。

甲斐さん

同じくらいのタイミングに、「メンズの技術を推してみたい」と思った、異なる店舗の2名スタッフがいました。

それぞれが店舗の店長に話をしたところ…

A店の店長は、とても真面目な店長でLondのことが大好きな子。これまでLondはあまりメンズのお客さまターゲットに発信をしてきていなかったので、それを踏まえて会社としての理念や考え方を伝えてくれました。その場で、メンズ売りの話は一旦ストップしたそうです。

B店の店長は軽やかなタイプ。「代表に聞いてみるね!」と伝え、すぐに僕たちに話を持ってきてくれました。その声をきっかけに会社でもアンケートをとることになり、実は今もタイミングなどを伺いながら動いているところなんです。

真面目でしっかりしていて愛社心のあるリーダーほど「うちの会社はね……」と話をしがち。ですが、スタッフからすると会社が前向きに動いてくれた方が嬉しいし、モチベーションも上がります。

もちろんすぐに実行できないこともたくさんあると思います。Aの店長が悪いわけではなく、理念を伝えてくれる人も大切な存在です。自分が大切にしていることを相手に伝えることもメンター美容師としては重要なことです。

ですが、スタッフから提案や意見があったら、まずは「できる方向で考える」という意識を持ってみること。これがメンター美容師がいるお店のあり方だと思います。

 

会社やリーダーの受け止め方によって、スタッフの未来も変わります。

メンター美容師・メンターサロンとしては、その子の願いを叶えられる方法はないのか? できない前提ではなく“できる前提”で物事を捉えていく重要性をLondさんの事例からも学ぶことができます。

メンターマスターの今月の一言

メンターマスター・中野さん、甲斐さんによる、今月のつぶやきをご紹介。

甲斐さん

「正義」や「正論」は言うタイミングが大事。

正論は、野球に例えて言うならば160km/sのストレート。

受け取れる人もいるけれど、いきなり不意打ちに受け取るのは難しいし、受け取れる人もよっぽどの手練れでないと受け取れません。

 

まずはキャッチボールを繰り返しながら徐々に慣らしていくこと。それによって相手も受け取りやすくなるし、投げ返しやすい関係性もできていきます。

中野さん

息子たちから気づかされることがたくさんあります。

家族でキャンプに行った時のこと。

おそらくその一部の区画に対して「火気厳禁」と言う表示だったと思うのですが、次男がそれをそのあたり全域に指している言葉だと思い、バーベキューで轟々と火を焚いている僕の横で

「パパ、ここ火気厳禁やで!!!」と注意してくれました(笑)

一方、長男は「立ち小便厳禁」の表示の横で堂々と立ち小便をしている始末(笑)

決まりやルール、言うなれば「正義」に対しての捉え方がここまで真逆なんだなと面白く感じた瞬間でした。

※立ち小便はちゃんと注意しました(笑)

徳永さん成長日記

徳永さんがこのセミナーで得た学びをどんな風にサロンで活かしているのか、その成長日記の一部をお届けします!

徳永さん

先ほどのカットが苦手なスタッフの話でもそうですが、相手の希望をその時点で100%叶えられなくても、まずは「動いてみる」「動いている姿を見せる」と言うことが大切なのだと感じています。

自分が伝えたことによって前向きな変化が起こるだけでも、その子にとっては嬉しいこと。

「できる方向で考える」意識を忘れず、みんなと接していきたいと思います!

次回は、メンター美容師の心得その4「相手の興味に興味を向ける」の回です。

お楽しみに〜!

中野友介(エンタメコーチ)・甲斐紀行(Lond/東京) / メンターアカデミー代表
Profile
中野友介(エンタメコーチ)・甲斐紀行(Lond/東京)

メンターアカデミー代表

なかのゆうすけ/1981年9月6日、京都府生まれ。中学時代にグレて道を踏み外すが、24歳の時にメンターとなる美容室オーナーに出会ったことで人生が激変。美容業界No.1の売上をつくる営業マンとなる。現在は美容室のアシスタントやスタイリストのやる気をアップさせるモチベーター・また売り上げアップをサポートする「成功コーチ」として全国のサロンの人材育成に関わる。

かいのりゆき/1986年3月21日、神奈川県生まれ。日本美容専門学校卒業後、都内有名店に入社。その後、美容専門学校の同期6名で「Lond」を起業。現在、グループ企業含めて450名を超える。創業から10年を通して、離職者は総数の1割にも満たず、現在も拡大中。主にスタッフの人材育成とアイラッシュ事業を担う。長年に及ぶメンター教育やコーチング習得を経て、心のあり方から組織の内部強化を担っており、離職率の低下に力を注ぐ。

セミナーに関するお問い合わせは下記InstagramのDMか、LINEから!

KAGA
執筆者
KAGA

多毛・くせ毛で常に横に広がっています。おにぎりと鰻とタッカンマリが好き。

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