PEEK-A-BOOが語る、原宿の『今』と可能性 ハラカド誕生で再注目の美容の聖地
“美容の聖地”として長く親しまれてきた原宿。その中心にある新たなランドマーク「ハラカド」に移転したPEEK-A-BOO。西尾卓義店長に、原宿の最新ファッションやヘアスタイルの動向について聞きました。
原宿に息づくエネルギー
街の変化とPEEK-A-BOOの視点
原宿・表参道エリアは美容室激戦区。原宿・表参道は90年代末~2000年代の「美容ブーム」の中心地で、「裏原系」などの個性的なファッションの発信源でもありました。
原宿は今でもにぎわっていますが、かつての尖ったイメージと異なり、ファッションのファスト化も指摘されています。
そんな今、原宿店を東急プラザ原宿「ハラカド」に移転したPEEK-A-BOO。長年原宿に店舗を構えるPEEK-A-BOOから見た原宿の若者やヘアスタイルについて、西尾卓義店長にインタビューしていきます。
- Profile
- 西尾卓義
PEEK-A-BOO原宿ハラカド/店長
1981年12月17日生まれ、滋賀県出身。京都理容美容専修学校卒業後、PEEK-A-BOO入社。ANNEX店(表参道)に配属し、デビュー後原宿店に異動。2024年5月の原宿店移転プロジェクトに際し、店長に就任。新しいランドマークでの営業に向けた店づくりやスタッフ教育に尽力している。
- Instagram : @takuyoshi_nishio
――PEEK-A-BOOにとって原宿はどんな街なのか教えてください。
1977年に川島(文夫代表)がPEEK-A-BOOをオープンしたころの原宿は、まだまだ何もないときだったと聞いています。感度の高い人やお店が集まっていき、ファッションの街になっていったとのこと。
僕自身はもっと後に入社したのですが、先輩からはPEEK-A-BOOというサロンにも原宿という場所にも、こだわりやプライドを持っていると感じて育ちました。
──西尾さん自身は「美容ブーム」や個性的なファッションで溢れていた時代に就職されたんですね。
はい。「ギャップ前」※で撮影会をしたり、雑誌のストリートスナップをやっていたりにぎわっていました。
※ 原宿駅前の「GAPフラッグシップ原宿」のこと。若者にとってのランドマークの1つだった。2019年に閉店。
──西尾さんは当時の原宿をどう見ていましたか?
原宿と一口に言っても、いろんなジャンルがあってエリアで分かれていたと思っていて。
竹下通りがロリータ、裏原はストリート系というような。自分がどこに属するのか感じながら、刺激的にすごしていましたね。
PEEK-A-BOO店長が見る
原宿の「今」
──では、今の原宿についてはどう思われますか?
ファスト化とか没個性とかいわれているんですが、僕は「抜け出そう」としているパワーを感じているんです。
帰宅しようと街を歩いていると若者が集まっているのをよく見ますし、日中もコロナ禍を経て、今また90年代に戻っているような感触を受けていて。
──コロナ前はインバウンドの旅行客で溢れていましたが、またそれとは違って「90年代」っぽい、と見ているのでしょうか?
そうなんですよね。今の若者はSNS世代ではあるのですが、コロナ禍の自粛期間を経て改めて「体験」に重きを置いているように思うんです。実際に感じたい、行ってみたいという思いから、原宿に人が集まっているのではないかと。
──なるほど。若者が求める今の原宿のファッションやカルチャーとはどんなものなんでしょうか?
先ほどエリアでジャンルが違ったと言いましたが、そのジャンルは没個性化したのではなく進化したと感じているんです。
ですので今は今で相変わらずエネルギーを感じますし、美容師としては可能性を感じる場所です。
原宿の中心から見る今のヘアスタイル
──ヘアスタイルの観点ではどうでしょうか? 今の原宿はどんなニーズですか?
やはりブリーチですね。若者からのオーダーだけでなく、世代や職種も広がってきていると感じます。原宿店は特にブリーチのオーダーが多く、原宿ハラカド店に移転してさらに増えた実感があります。
──原宿の中での移転でもオーダーが変わるのですね。カットはどうでしょうか?
ここ10年くらいはダウンシェープのカットが多かったのに対して、今は頭から離して切るカットのニーズの高まりを感じます。レイヤーを入れるなどして、フェイスラインに表情を求められますね。
透明感カラーがはやっていた時代は面を見せる方がよかったのが、デザインカラーのバリエーションが増えたことで毛流れが必要になってくるので、連動しています。
──ヘアカラーやカットのニーズの変化はファッションと関係がありますか?
ありますね。レイヤーが求められるということは、70年代テイスト回帰だったり、ラフで風を感じるようなファッションが流行っている証拠だと思います。トレンド全体からヘアの流行を予想することも、お客さまの気分の変化からファッションを感じることもどちらも必要ですね。
──PEEK-A-BOO原宿ハラカドとしては、ヘアを通してファッションやカルチャーにどうアプローチしていきたいですか?
PEEK-A-BOOとしてカットにこだわるのはもちろんですが、今は「カット+個性」も大切です。髪を通して何ができるかを常にスタッフに問いかけています。
高いカット技術をベースに、ブリーチ、アップなどさまざまな武器を持ったスタッフが育っているので、その点が「原宿らしい」のではないかと思います。
体験型アプローチで新たな活力を
──そういった「カット+個性」という強みを通して、原宿をどう盛り上げていけるでしょうか?
まず、このお店がお客さまが「髪を切るところ」としてだけでなく、髪を通じてもっと豊かになれるハブのような場所になっていければと思います。
ハラカドへの移転に際して、カルチャー・アート・音楽を身近に感じてもらえるお店づくりにもこだわりました。
──ハラカドには他の複合施設にはない、個性的なテナントや体験型のサービスも多く入っています。そういったお店との相乗効果はありますか?
あります! ハラカドはテナント同士のコミュニケーションが活発な施設だと思います。たとえば「COVER」という雑誌図書館が入っているのですが、そちらから蔵書をお借りし、お客さまに自由に読んでいただけるサービスも行っています。
──今読んでも新鮮でおしゃれなファッション誌やカルチャー誌が読めるのは、当時の読者である大人客だけでなく、感度の高い若者にも喜ばれる「体験」になりそうです。
そうなんです。毎月最終水曜日には「ワラカドデー」というコラボイベントがあり、7月には「STUDIO SUPER CHEESE」で、お客さまの撮影会をやりました。
今はスマホで手軽に撮影ができますが、開発中の最新技術を生かした“体験”がウリのイベントなので好評をいただきました
──おもしろいですね! 美容専門誌のカット書籍でも使えそうな技術です(笑)。
スゴイですよね(笑)
最先端の技術やカルチャーがハラカド内では「ご近所づきあい」の感覚でシェアし合えるので、とっても刺激的ですよ。
──まさに「体験」の街ですね。最後に、今後原宿はどう盛り上がっていくか、展望をお願いします。
銀座でも新宿でもなく、原宿に集まる人はどういう人だろう? と考えると「ワクワクを探しに来る人」が集まっているんじゃないかと思うんです。何かの目的を持って街に行くのではなく、何かを発見したい人。それは、昔も今も変わらないのかなと。
昔と違うのは、若い人だけでなく老若男女問わず「おもしろいことを求める人」の街になっていくだろうということです。
私たちも髪を通してそのニーズに応えたいですし、原宿の持つパワーを武器に、ヘアデザインの幅をもっと広げて発信していきたいと思っています!