美容師が炎上したら、何をすればいい?専門家に聞く対策ポイントとリカバリ方法

美容師が炎上したら、何をすればいい?専門家に聞く対策ポイントとリカバリ方法

211

SNS上で「施術を失敗された」「あの店には行かない方がいい」と投稿・拡散された場合、美容室・美容師はどう対応すべきか。事前対策と復活への道筋を考える。

ライコウ/1993年生まれ、神奈川県出身。埼玉東萌美容専門学校 通信制美容科を卒業後、都内2店舗を経て2022年8月赤坂に「Period.」出店。同年3月に蒲田店、今年6月に蒲田にもう1店舗オープンした。サロン専売品の開発、オンラインサロンも運営。(@hairdr_rykou

東京都内で、髪質改善を得意とする美容室「ピリオド(Period.)」3店舗を経営するライコウさん。今年5月にX上で、お客さまの「ビビり毛になった」「過収斂を起こされた」という投稿が拡散され、炎上を経験した。一方、サロンでは過収斂を起こす薬剤を使用していなかったため、事情を知る美容師の間では疑念も広がっていた。

美容師はSNS上での露出も多い分、炎上のリスクを完全には切り離せない。事前にできる対策法と炎上した場合のリカバリー方法について、炎上リスクから企業を守るスペシャリスト、シエンプレのSNSリスク管理士・桑江さんに聞いた。

事前対策は2つ、
Xの運用とホームページ内容

桑江 令(くわえりょう)/シエンプレ株式会社 主任コンサルタント 兼 一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所主席研究員。多くの企業のWeb戦略策定・炎上時対応・支援に携わり、セミナー講師なども務める。警察庁サイバーパトロールやNHKテレビ出演、新聞やビジネス誌へのコメント寄稿も担当。

ライコウ:炎上を予防するためにできることはありますか。

桑江:今回の場合は2つありました。

①「誤解されやすい施術」や「起こりうる髪のトラブル」について、ホームページ上のQ&Aなどで丁寧に説明しておくこと

② Xのアカウントを日頃から運用しておくこと

美容室の売上減にもつながりかねない“炎上”という状況は、「第三者の目線からどう見えるか」で起こり得ます。X上で「失敗された」という投稿がある、それが本当かどうか、共感すべきかどうかを多くの人が見極めようとするんですね。今回、ホームページ上に①があれば投稿の真偽に異議を唱える人も現れたはずです。

また、“炎上”はXで起こります。TikTokにあげた動画がXで炎上する、インスタグラムの投稿がXで炎上する。フォロワー数が多い必要はありませんので、経営姿勢がわかるような発信をするXのアカウントを美容室または美容師個人で持ちましょう。何かあればX上で謝罪する、事実と違う場合は反論することができます。

ライコウ

今回、全く運用していなかったXアカウントで「代表です。どういうことなのでしょうか?」と返信しましたが、他の方から“なりすまし”だと言われました。ホームページの内容についても再考したいです。同じことを繰り返さないために、施術前に「同意書」を導入しました。施術のリスク説明が正しくできているか、正しく伝わっているか双方で確認しています。

「インナーコミュニケーション」と
「第三者目線」が回復を早める

ライコウ:炎上後、まず何をすべきだったのでしょうか。

桑江:まずは周囲の論調を把握することです。「第三者」からどういう風に理解されているかを把握します。第三者へもオーバーに伝わっているなら、訂正するリリースを出す、一部事実があるなら謝罪した上で事実と異なる部分を否定・訂正する。一方、第三者から見ても言い過ぎでは?事実と異なるのでは?という反応かつお店側に非がないのであれば、X上で「何かございましたか」と返答するのもいいと思います。論調を把握できれば、対応の方向性を決めることができ、信頼回復への適切な行動に移せます。

同時に、社内で事実確認・聞き取りを進める必要があります。ここで注意すべきなのは「現場のウソ」を絶対に避けなければいけないということ。「お店として、オーナーとして、あなたの味方です」という姿勢、普段のコミュニケーションの質が問われます。これは危機管理対策で重要視されていて「インナーコミュニケーション」と呼ばれます。昨今「内部リーク」のトレンドがあり、社内の不満がたまっていれば炎上の長期化や会社の信用失墜も避けられません。企業・経営者が現場のせいにしない、すべては企業側に管理責任があるという姿勢が必要です。

ライコウ

早く対応しなければ!という思いは間違っていなかったと桑江さんからも言っていただき、安心しました。今回の場合、スタッフからも施術時に相談を受けており僕も一緒に対応していたのでスムーズに事実確認ができたと思っています。

ライコウ:既存顧客にも、今回のトラブルについてお知らせしたほうがいいのでしょうか。

桑江:昔は隠す文化でしたが、今は逆でオープンにする姿勢が大切です。例えば会社からリリースを出すなどして、事前にお伝えしておくのもいいでしょう。グーグルマップやホットペッパービューティーの口コミも同様に、ネガティブなコメントに対しては丁寧に返信し、自店の対策や改善すべき点があれば伝える。会社としての姿勢を第三者も見ています。

ライコウ:炎上により個人名がネット上で特定され、個人攻撃へ発展した場合はどう対処すればいいのでしょうか。

桑江:個人名を出して誹謗中傷されている、その他いたずら電話などの営業妨害があるのであれば、警察、弁護士に相談しましょう。通常、ネット上の炎上は5日ほどでおさまることが多いですが、事実内容や初期対応の差で長引くこともあります。

ライコウ:今後、炎上は増えるのでしょうか。

桑江:昨年(2023年)の炎上は、1583件ありました。そのうち一般人の炎上が33.4%と増えており、著名人の炎上件数を初めて上回りました。2023年8月にXの「クリエイター広告収益化プログラム」が始まったことも大きく、収益化の条件としてインプレッション数があるんですね、“見られるためにオーバーに書く”人が増えています。炎上系インフルエンサーの登場などもあり、今後も増えるのではないでしょうか。

桑江

炎上後の対応次第で、「以前よりもポジティブなイメージを持つようになった」と答える方が3割もいます。リスクを下げるための準備は必要ですが、リスクはゼロにはなりません。真摯な対応とその後の改善で、炎上を活かして欲しいと思います。

増田 歩
執筆者
増田 歩

「CHOKi CHOKi」「Ocappa」「BOB」 etc.からのフリーランスライターです。ボブとショートをいったりきたり、趣味にしたいのはヨガ。

Prev

Next