文化と熱狂を生み出すヘアサロンへ、宮永えいと×木村允人が仕掛ける「レタッチ バイ フィフス」
メンズコスメブランド「レタッチ(RETØUCH)」と、全国でサロン15店舗を展開するフィフスグループ・メンズサロンの「フィフス(fifth)」がコラボした「レタッチ バイ フィフス(RETØUCH by fifth)」のオープンから2カ月。仕掛け人である、シーク(CiiK)代表の宮永えいとさんと、フィフスグループCMOの木村允人さんに手応えを聞いた。
photo : Kaori Ito(Y’s C Inc.)
ユーチューブで得た信頼と実績で
1,100万円を達成
――どのようなお客さまがご来店されていますか?
僕が運営している“大人男子の「身だしなみ」をアップデートする”ユーチューブチャンネル「大人男子ラボ」(チャンネル登録者数:約24万人)から、たくさんの方にお越しいただいています。チャンネルのターゲット・視聴者と同じく、25~35歳の男性のお客さまが一番多いですね。併設している「レタッチ」ショップは、インスタグラム広告を打っていることもあり台湾や韓国のお客様もいらっしゃいます。
4月11日にオープン、5月はスタイリスト4名、アシスタント6名で約1,100万円以上を売り上げました。(「レタッチ」ショップの売上は含まず)スタイリストのうち2名はレタッチ バイ フィフスのオープンにあたりデビューした者だったのですが、総売上約365万円、170万円と想像以上の初動のよさだったと感じています。
――美容感度の高い方が多かったのでしょうか。
よくそう言われるんですが、実際は
・これからオシャレになりたい方
・原宿の美容室が初めての方
・どこの美容室へ行けばいいか分からない方
・似合う髪型が分からない方 が多かったですね。
――フィフスグループのお客さまとの違いはありましたか?
フィフスグループは10代~20代の方が多いので年齢層が違いますね。さらに、同じメンズサロンであるフィフス全店舗のパーマ比率が81.47%なのですが、レタッチ店はパーマ比率が72.9%とやや低いながらも「ニュアンスパーマ」の需要が非常に高かったです。
宮永えいと×フィフスの
シナジー効果
古くは読者モデル、美容師として10年来の知り合いだったという2人。ユーチューブやSNSを活用したブランディングや集客を宮永さん率いるシークが、店舗やスタッフの管理・教育、ホットペッパービューティーを活用した集客を木村さん率いるフィフスグループが担っているという。宮永さん自身が美容師としてサロンに立つのは週1回、既存顧客のみ施術している。
キーワードは「分業・協業」!
――お互いのメリットはどこにあるんでしょうか?
サロンって「アーティストのライブ」と同じだと思います。僕がユーチューブで発信した動画コンテンツの15分は、サロンでのリアルな2時間の体験には絶対勝てないんですね。ライブというサロンがあるからこそ熱狂が生まれ、ファンが生まれる。
さらに、商品開発時の美容師目線も僕1人だと視点が少なくいいものができないし、スタイル作りにしても、スタッフ教育にしてもやりきれないです。
えいと君はじめ、シークに所属するデザイナーやSNSのプロの力を借りれることです。フィフスはお客さまのお悩みを解決することを重要視する、いわば“大衆向け”のサロンだったので今回のレタッチ バイ フィフスのような世界観やコンセプトづくりはできなかったと思います。
お互い得意な分野で分けて仕事をするので、ワックス1つ開発するにしても早いしクオリティが高いことも。……いいことしかないですね(笑)。
――他のスタイリストではなく、宮永さんに切ってもらいたい、という方が多いのではないでしょうか?
僕自身は新規のお客さまはお受けしていないので、約5年間ユーチューブを通して得た“宮永への信頼”が活きたと思っています。「宮永が信頼している美容師であれば信頼してみよう、1回だけ行ってみよう」そう思ってくれた方が多かったと思います。
実際に来てくださった方とスタイリストのやり取りを見ていても、初回から距離感が近いし、信頼がある状態で来ていただけていると感じています。その証拠に、「お任せでお願いします」というオーダーが多いです。次の日の朝、僕の動画を開けばヘアセットに戸惑うこともないんですよね。他のサロンへ行くよりも満足度が高いと思います。
パーマを鍵にカルチャーを創出
ファン化するサイクルへ
――レタッチ バイ フィフスにより、今後どのようなことを目指していますか?
「日本一パーマを巻いているサロン、パーマならフィフス」と思ってもらえるまで成長したと思っています。今までは「絶壁の解消」「スタイリングの楽さ」などお悩み解消を主軸に幅広いお客さま向けのサロンとして成長してきました。次はオシャレな“文化”や“カルチャー”としてのパーマへステップアップさせたいですね。さらにフィフスグループは1,000人企業を目指しているのでその足掛かりとしても成功させたいです。ただ単に人数を増やすということではなく、スタッフが幸せになれる企業、具体的には1年目からしっかりと給料が払える企業・利益を正しく分配できる会社になりたいです。
僕は“文化”は湧き出るものだと思っています。ユーチューブの「大人男子ラボ」、大人男子向けコスメ「レタッチ」だけでは、単なるD2Cビジネス(自社のウェブサイトなどから直接消費者へ商品を提供すること)で、文化は湧き出ない。
そこにリアルな関わりができる「お店」「サロン」があることで“文化”や“熱狂”を湧き出させるサイクルが生まれファン化が進むと思っています。そのサイクルをよりつくりこみ、回し続け、研ぎ澄ますことを成し遂げたいですね。1人ひとりの可処分時間(自由に使える時間)をいかに占有するかがカギだと思っています。
――店舗を展開する予定もあるのでしょうか?
日本の6大都市にまずは展開できたらいいですね。ユーチューブでは視聴者の属性を見ることができるのですが横浜や大阪の方が多いので、数値も分析しながら決めたいです。
メンズ美容の先進国・韓国にも出店したいと話していて、実はインスタグラムのアカウントはすでに動きだしています。物件や、その店舗を任せるスタッフの育成ができたら、すぐにでもとは思いますね。
【メンズヘア】ネクストトレンド
――今後、どのようなメンズヘアデザインを推したいですか?
今の30代の男性は、20代を「かわいい」「フェミニン」が良しとされる中で過ごしてきたと思うんです。30代の今、そのままでいいのかな?と思い始めている人が多い。だから、「カッコイイ」「男らしい」感覚を得られる、前髪を立ち上げたパーマを推したいですね!僕自身も最近パーマをかけて前髪を立ち上げています。
僕はアンニュイなパーマスタイル、オシャレな雰囲気が出るヘアを推したいですね!例えば「センターパート×ウルフ」なんかです。数年前に比べたら減りましたが、刈り上げ比率って今も高いしツーブロックは当たり前、そのトレンドを変えたいなと。
あと、日本のファッションブランド「オーラリー(AURALEE)」の売上が世界でも伸びているということを聞いて、素材を活かした気取らない雰囲気にあうヘアデザインを提案したいと思いました。
昔僕が憧れたように、美容師はオシャレでトレンドをつくる存在でありたいと思います。
経営者、ユーチューバー…
それでも美容師を続ける理由
――お2人ともお忙しいと思うのですが、ハサミを置かない理由は何ですか?
好きだから……ですかね!スタイルづくりも好きだし、美容師という仕事が好きです。さらに先ほどお話ししたように、コンテンツ・プロダクトだけでは「文化」は湧き出ない。そこにリアル、美容室があってこそサイクルが回り始め、勝手にトレンドや文化や熱狂が湧き出てくる。これは、韓国のアイドルグループを見ていても、ディズニーランドだってそうですよね。エンターテインメントには必要不可欠な仕掛けだと思います。
主役は店舗のみんなです。だから、経営者としていつでも技術者の気持ちがきちんと分かる状態にしておきたい。さらに、約5年間で15店舗まで出店できたのは、短・中期的な戦略で集客と求人(中途採用含む)がうまくいったからですが、長期的な戦略として「教育」は外せません。自分自身が現場にいてこそ成り立つと思っています。
木村さんは野球でいう「監督」だなって思います。美容室経営者の方ってピッチャーをやりたがる方が多い気がしますが、木村さんは個人の利益や名声よりも、みんなの生活、お店としての利益を優先する行動をする。実はオフィスが同じフロアにあるんですが「役員報酬を減らせばみんなに還元できる」と発言が聞こえてきたときは、いい意味で驚きましたね(笑)。
スタッフのために行動することが、成功の一番の近道だと思ってるんですよね。
ちゃんと会社として売上・利益をあげていく。そうすれば、「スタッフそれぞれが大切な人へ恩返しできること」につながる。今美容業界に、働く美容師がワクワクできるようなブランディングができていて、かつみんなが豊かに、選択肢を持って働ける美容室ってないと思っているんです。だから、僕等が成し遂げたいと思っています。
初月から売上を軌道にのせた
スタイリストの集客アイデア
ここからは、レタッチ バイ フィフスのスタイリストがオープン前から実行した集客法を紹介。鬼澤さんのインスタグラムは、シークのスタッフがコンサルティングに入り、約半年の運用でフォロワー2500人を達成。ユーチューブチャンネル「大人男子ラボ」を知らない方からも続々と指名が入るまでに成長している。
①鬼澤ジュキヤさん(スタイリスト5年目、4月より中途入社)
主な集客方法:インスタグラム、宮永さんのユーチューブへ登場
5月総売上:約365万円/月(技術売上:約335万円、店販売上:約30万円)
5月指名客数:322人/月、5月平均客単価:11,311円
②直井文弥さん(スタイリスト6年目、5月より中途入社)
主な集客方法:ホットペッパービューティー(以下HPB)
5月総売上:約170万円/月(技術売上:約160万円、店販売上:約10万円)
5月指名客数:145人/月、5月平均客単価:11,917円
スタイリスト・鬼澤ジュキヤさんの場合
インスタグラムをイチからスタート!
⇒何が得意な美容師か分かりやすく
・モデルを固定して、世界観をつくった
⇒ブランディング
・写真に見出しを入れるデザインで統一
⇒ブランディング、見た時の分かりやすさ
宮永さんのユーチューブでヘアを担当
⇒美容について信頼できる宮永さんの信頼する美容師
⇒カウンセリング~スタイリングまで見れることで、親近感と信頼度もアップ
今までもインスタグラムを更新していましたが、シークのスタッフにディレクションしてもらうようになった今、過去の投稿は「ただの自己満足」だったなと思います。半年で、たくさんの指名がインスタグラムから入るようになりました。インスタグラムは最高で50万リーチ(見た人の数)/月を記録しています。
スタイリスト・直井文弥さんの場合
HPB上にヘアスタイル写真を大量にアップ!
⇒HPBのフィフスページを訪れた人が自身の髪を想像して予約しやすい、安心感
・ブログでもおすすめのヘアデザインを頻繁に更新
⇒SEO対策と合わせることで、人気順が上がりお客さまに見られやすくなる。
センターパート・ニュアンスパーマが得意であることをアピール
⇒提案バリエーションの広さをアピール、安心感
「フィフス・パーマ」で検索してHPBサイトを見てくださった方が予約しやすいよう、自分が得意なデザインをなるべく多く明確に提示して、ヘアスタイル写真のアップとブログの更新を続けています。1度来ていただいた方へは、提案と技術で再来していただけるようフォローしていきたいと思います!
木村さん曰く、インスタグラム集客のお客さまよりも、HPBからご予約のお客さまの方がリピートしやすい傾向があるという。インスタグラムからのお客さまは、競合も多くトレンドを追い続けるため離れやすい。一方HPBのお客さまは、行きつけのサロンがないフリー客であり、来店日時や希望メニュー以外の軸がないためファン化もしやすい。
レタッチ バイ フィフスとして1番力を入れているのは、やはり宮永さんの運営する「大人男子ラボ」の動画コンテンツによる認知度アップ。次に、ホットペッパービューティー内で「メンズ パーマ」などと検索された際に上位に表示されるためのSEO対策だが、スタイリストの自力集客も欠かせない。
おまけ:YouTubeの影響力は想像以上だった!!
簡単に真似はできないが、宮永さんのユーチューブチャンル「大人男子ラボ」の影響力は想像以上。2021年当時・フィフスのスタイリスト堀 雄大さん(現・レタッチ バイ フィフス店長)が登場したのが2021年のこと。動画公開後、堀さんの新規指名売上は約250万円/月に伸びたという。
- Salon Information
- RETØUCH by fifth(レタッチ バイ フィフス)
2024年4月にオープンした、大人男子のためのサロン。メンズ化粧品ブランド「レタッチ」初の店舗が併設している。
住所 | 東京都渋谷区神宮前4-31-16 ALLEY原宿3F |
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MAP | Google map |
TEL | 03-6384-5567 |
店舗情報 | 月~金曜日:11時~21時(カット最終受付20時) 土曜日:10時~20時(カット最終受付19時) 日曜日:10時~19時(カット最終18時) 定休日:不定休 |
- Instagram : @retouch_tokyo
- 執筆者
- 増田 歩
「CHOKi CHOKi」「Ocappa」「BOB」 etc.からのフリーランスライターです。ボブとショートをいったりきたり、趣味にしたいのはヨガ。