健康を自ら「経営」する術

美容協同組合 日本ヘアデザイン協会(NHDK、横田敏一理事長)は2月21日、同会員に向けた学芸文教特別セミナー「本物の健康経営を知る」を(株)フジシン本社FASTAⅡ(東京都新宿区)で開催した。

同セミナーは、コロナ第一波により開催当日の朝に苦渋の中止を決断して以来、3年振りの開催。表題「本物の健康経営を知る」とは”健全なサロン経営”ではなく、美容師が自らの健康をマネジメント=経営し、サロンのスタッフや顧客との関わり合いをより向上させるための知識・術を学ぶもの。

冒頭で横田理事長は「今日会場に集まっている老若男女は健康についての捉え方や悩み所がまったく異なる。専門の医師から自分の健康をマネジメントする方法を知っていただき、スタッフや顧客に還元してもらいたく企画した」と意図を述べた。

佐野正行医師

講師を務めた医師の佐野正行氏はキャリアを外科医からスタートし、現在は医師・産業医・森林医学医また医療研究プロジェクトの代表を務め、全国で法人・個人に向けたセミナーも行っている。
参照:https://dr-masa.com/prof/

今回のセミナーで紹介したのは、健康問題に起因するパフォーマンスの損失を表す指標「プレゼンティーイズム」。これは、欠勤には至っていないものの健康問題が理由で生産性が低下している状態で、 心身の不調によってパフォーマンスが思うように出せない状況”のこと。症状は3つに大別され、放置してしまうと企業(美容室)が被る損失額は具体的に「低リスク群・@50万円/1人」「中・高リスク群@70万円/1人」とのこと。

例)10名の従業員を抱える企業の場合

◆低リスク群が7人×50万円=350万円の損失

◆中・高リスク群が3人×70万円=210万円の損失

これらは発症してから対処するより「未病の取り組み」で容易に回避可能で、その第一歩として「日頃からの雑談」を奨励。
施策の多くが成果を上げない要因は、労使・上長部下間のコミュニケーションを「業務上の行為」と捉えているからと指摘した。

年齢・学歴・職種問わず、信頼していない人には悩みを打ち明けず話を聴いてくれる人と一緒にいたいもので、経営者や管理者は話し方の取得よりも「聴き方の訓練」に注力すべきと解説した。

顧客ニーズやライフスタイルの多様化により新たな業態やサービスを始める美容室も増加している中、経営者も社員も毎日活き活きと仕事を楽しめる「本物の知識」が求められている。健康経営学は生涯顧客づくり・人材育成・離職率増加といったサロン経営が直面する課題を解決するヒントとなるだろう。