独立の道、組織に残る道、組織に残りながら会社を運営する道・・・。さまざまな選択肢の中で今後のキャリアプランを考えている美容師へ。
“ネクストリーダー”たちによって構成されるRug.J( ラグジェイ/Real Up Grade Japan)に加盟するサロンから、BUDDY HAIR(愛知県名古屋市)伊左治資生氏、MICHI GROUP(岡山県岡山市)島田和也氏、NOISM(京都府京都市)山田慎也氏、AVANCE.(大阪府大阪市)片桐潤也氏の4名が男性美容師のキャリアパスを考える。
【座談会メンバーのプロフィール】
会社の「右腕」でもある「FCオーナー」
- Profile
- 山田慎也/やまだしんや
NOISM(ノイズ) FCオーナー/京都府京都市
1985年、福岡県生まれ。福岡美容専門学校卒業。2012年にNOISM入社。2020年、FCオーナーとなる。ヘアサロン2店舗、アイラッシュサロン2店舗のFCオーナー。集客や求人など、本部組織の右腕としても手腕を振るう。
- Profile
- 片桐潤也/かたぎりじゅんや
AVANCE. (アバンス) FCオーナー/大阪府大阪市
1990年10月4日、長野県生まれ。大阪美容専門学校卒業。2009年にAVANCE.入社。2016年、FCオーナーとなる。現在5店舗のFCオーナー。32歳の若手FCオーナーでありながら、AVANCE.グループの美容室を運営する株式会社リトルバンブーの全店の店舗運営も担う。
組織の「右腕」
- Profile
- 伊左治資生/いさじもとお
BUDDY HAIR(バディヘア) 取締役マネージャー/愛知県名古屋市
1976年11月28日、愛知県生まれ。大阪中央理容美容専門学校卒業。2000年にBUDDY HAIRに入社。ROOTS店の店長を経て取締役マネージャーに就任。持ち前の外交力で講師活動や求人・採用活動を担当する。9店舗となるtorchを2023年1月にオープンさせた。
- Profile
- 島田和也/しまだかずや
MICHI GROUP(ミチグループ)代表/岡山県岡山市
1979年12月8日、東京都生まれ。岡山県理容美容専門学校卒業。2000年にMICHI GROUPに入社。2011年にMICHI GROUPの代表に就任。右腕として美容室6店舗、ブライダルサロン3店舗、脱毛サロン1店舗、育成サロンを統括する。2022年12月には43歳で総売上804万円の自己最高売上を達成し、プレイヤーとしても記録を更新中。
この4名で行った前回の座談会「レギュラーサロン? 業務委託? それぞれの結論」の記事はこちらから。
独立も考えた。だけどFCオーナーを選んだのには理由がある
ーー片桐さんと山田さんがFCオーナーになった経緯を教えてください。
いちから独立する道を考えたことも、もちろんあります。
けれどもFCオーナーになった26歳の頃、既に当時社長だった小竹唯央会長が10店舗以上展開していて。僕が独立して、仮に小竹と同じ十数店舗を展開できたとしても、同じ道を辿ることになるだろうなと。
それであれば、FCオーナーになってAVANCE.として展開することで既にある10店舗プラス10店舗展開が可能になる。組織の上に自分の組織をつくって、より高いところから物事を見たいと思いFCオーナーの道を選びました。
僕も独立しようと考えた時期はありました。最初は中村(芳進社長)にまだその段階ではないと猛反対されて。さらにその3年後に、FCオーナーになるか独立するかで迷っていると率直に相談しました。
そのとき、一番はじめに思い浮かんだのはスタッフの顔。仮に僕が独立してスタッフがついてくることになったり、社長とスタッフを取り合うような関係になりたくないなと。社長にお世話になったし、恩返しもしたいと思っているので・・・。
NOISMがオープンした当初、僕は一番年下で、独立したり、他店に移籍したりする先輩たちを見てきました。末っ子タイプなんで(笑)、兄たちの動きを見て、自分はどうするべきなのか冷静に判断してきた部分もあったと思います。
自分でお店をつくるよりも「誰と働くか」だなと。
ーー伊左治さんと島田さんは組織の右腕を選びました。なぜ、組織に残る道を選択したのですか?
自分も管理美容の資格を取得した20代後半のタイミングで独立しようと考えたことはありました。でも、そのときに思ったのは「美容室が多すぎる」ということ。独立して出店しても、それが日本にとって良いことなのか? これは疑問ですよね。
愛知県はトヨタが強い県です。車業界でも選ばれているメーカーは数社と限られています。美容室も将来そうなっていくんじゃないかなと。
BUDDY HAIRでは店長の先のキャリアアップとして、取締役か執行役員を選べます。個人の能力や会社から求められる領域、人材のバランスを考えて自分は取締役を選択しました。
うちの今の規模感だと「求人」が肝。美容学校や業界の方々と外交できる人材は必須で、僕は今、主に求人を中心に外交の役割を担っています。
僕が「代表」の肩書になったのは、キャリアアップしていく中で会社全体を統括する立場になったときです。役職名を決めるときに自分で「代表でいきます」と(笑)。
社長は5歳年上で年齢もあまり変わらないので、事業承継の話は具体的にはなっていなくて、現在、役員ではありますが代表権は持っていません。
自分としてはまずFCオーナーを経験してみたい。FC事業部を立ち上げてみたいですね。
MICHIグループの社員にはベテランスタッフもたくさんいるので、次のキャリアアップを考えているスタッフはたくさんいると思う。最初からFC事業が軌道に乗るとも限らないので、まず自分がFCオーナーをやって成功モデルをつくりたいと考えています。
ロイヤリティや加盟金はどう考える?
Rug.Jの中には、FCオーナーをやりながら本部でも中枢を担っている人が多いですよね。
山田さんは会社全体のリクルートもやっているし、自分の店舗だけでなく、会社組織を運営しています。そういう形のFCが理想。
片桐さんも本部には関わっているんですよね?
はい。昨年末からはほとんど本部の仕事をしていて、本部の店舗も自社の店舗も一緒に運営している形です。
本部の仕事は、全店舗の店舗運営が主な仕事で、店長と売上推移の予算組みをしたり、人件費の調整をしたり。
コンセプトの「美髪と似合わせ」を軸にどう売り上げを向上させていくかを各店の損益、本部全体の損益や財務状況も含め、方針をつくっています。
僕の場合、求人や材料は別の者が担当してくれているので、自分は店舗の売り上げを伸ばすことに集中させてもらえていますね。
各社どうやってFC制度をつくりあげていったのでしょうか?
僕の場合は、僕がFCオーナーになる以前からすでにできあがっていたFC制度がありました。社長と交渉して、事務所経費などの経費制度を変更してもらったこともあります。
うちの場合は、僕がFCオーナー1人目だったから社長と一緒に北海道から福岡まで、FC制度を取り入れている美容室に勉強しに行きました。
自分は1〜2店舗のFC展開が目的ではなかったので、230店舗を展開し1人で70〜80店舗をみているFCオーナーもいるEARTHホールディングスに興味があり、EARTHホールディングスのFCオーナーを15人ほど訪ねました。
自社のFC制度をつくるにあたり、半分は各社の成功事例を参考にさせていただきながら、もう半分はどうしたら自分たちが幸せになれるかを考えてきました。
厳しいルールをつくっても、一部の人しか達成できないと長くは続かないので、最終的には自社のスタッフの顔を見て、自社で制度を構築することが大切だと思います。
僕も初期経費やロイヤリティについてたくさんの情報を得た上で、うちの会社にマッチするやり方をつくり出したいです。ネットで調べても、この情報過多の時代、情報で踊らさせれているのか?と思ったりするので・・・。
ロイヤリティは組織の大きさによって材料費率などのスケールメリットの違いがあるので、さまざまな形がありますよね。
1店舗目はロイヤリティのパーセンテージが高めで、2店舗目以降からは一気にロイヤリティが下がる仕組みを取り入れている会社もありました。
Google先生は美容室FCのロイヤリティは5〜10%が多いと書いてありました(笑)。ロイヤリティが定額払いのところもありますよね?
定額払いの方が売り上げに対して払う額が決まっているので、売り上げが上がるほど利益が出るメリットはありますよね。他社で1店舗50万の定額払いロイヤリティの話を聞いたことがありますが、売り上げが下がったときは同じ額を払うので苦しくはなると思います。
AVANCE.は1店舗目のロイヤリティは10%。その後、店舗が増えるごとにパーセンテージが下がっていく方式を採用していますね。
大きくなるFC、うまくいかないFCの違いとは?・・・
AVANCE.のFCオーナーは今何人ですか?
現在FCオーナーは4人いて、その他にまだ会社を設立していない「ステップFC」が3人います。
今後、FCオーナーの人数を増やしていくかどうかは会社の方向性によりますよね。FC事業を展開していくならFCオーナーの数を増やすべきですし、1つの会社として美容業を推し進めるなら店舗の責任者を増やす。
これは会社の方針によるかとは思いますが、自分としては本部の運営で利益を分配していく利益分配方式が理想だと考えています。
なぜかというと、1店舗できるFCオーナー、10店舗できるFCオーナーなど能力の差もあるので、本部として収益が成り立たなくなる店舗数のタイミングが出てくるから。
それを考えると、売上金額に対してロイヤリティを支払うFCではなく、利益を分配していく店舗を本部の運営でつくるほうが良いかなと。
粗利の金額に応じて変動するスライド方式ですね。
NOISMでは、美容室は今後、福岡・名古屋・神戸などの人口が多い都市のみに展開していく予定のため、美容室のFCオーナーを増やす予定はありません。
5月にオープンするアイサロンで現在25歳のスタッフが2年後にFCオーナーになることが決まっていて、NOISMでは今後、アイ事業の方でゆっくりとフランチャイズを増やしていく方針です。
アイサロンの方が美容室に比べてリスクが少ない分、アイ事業で展開を進めてから美容室のFCを展開する方が資金面でのメリットもあります。
ーー新規加入者を募集するFCと会社の中で育った人にバトンを繋ぐ家族主義のFC、どちらのやり方を取り入れていますか?
会社の中で育った人がFCオーナーになる後者の方が、思想が伝わりやすいですよね。僕たちは美容師なので、技術の貸し借りなどのつながりも大切にしています。
新規加入の場合は思想も違ければやり方も違うから、納得いかないこともあると思う。NOISMでもスタッフを育てて、家族くらいまで密な関係のスタッフ、思想を共有できるスタッフに富を分配するというやり方でやっています。
一方で、別事業で新規加入のFCをやっていく予定はありますが、こちらはまだこれからなのでいずれお話できると思います。
上手くいっているFCと縮小しているFCの違いを考えると、やはり「FCの旨み」を感じられることが鍵になるのではないでしょうか。
ロイヤリティなのか。スケールメリットなのか。集客・求人・教育すべて含めて「この会社にいた方がいいな」と思わなければ誰もやらないですよね。「自分でやった方が良かった」と思わせたらFC制度は破綻します。個人で独立した美容師よりイケてないと。
40代男性美容師、出口のキャリアパスをどう考える?
BUDDY HAIRは女性スタッフが多く、男性が少ないのですが、先ほども話した店長の先のキャリアアップとして、取締役や執行役員になる道もあります。株を持って取締役になるか? 執行役員として業務を執行しながら社員として働くか? 会社と相談しながら、自分のなりたい姿や目的によってキャリアが選択できる仕組みにしています。
20代、30代の結果が40代であって、個人的には40代で独立を考えるのは遅いと思っています。後悔しない40代を過ごすために、若手スタッフには職業訓練校のカリキュラムを使って勉強会を行ったり、20代をどう過ごすかを見つめ直せるような動画や音声を共有したりしています。
40代を超えたら人の人生に迷惑をかけてほしくないですよね。
仮に僕が独立するとしても組織はつくらない。その場合は、独り独立が良いのではないかと思っています。
うちの会社も女性の方が強い。だから女性がずっと働ける環境を整えることが1つのテーマ担っています。女性のキャリアやライフプランに合わせたサロン展開も考えていきたいですね。
うちは40代で役職なくスタイリストをしている男性もいます。売り上げを守り続けてくれているけれども、それ以上は難しかったりするので、今後のキャリアパスの1つとして、AVANCE.グループの中で独りサロンをつくる計画が挙がっています。出資の一部を会社が持ち、スケールメリットもある形で独りサロンを運営する。
まだロイヤリティのパーセンテージなどは明確に決まっていませんが、売り上げの規模や1人でやれる物件の問題などをクリアしつつ、計画を進めていきたいと考えています。
昔は40歳になったらハサミを置くべきという議論があったけれど、高齢化社会により40代になっても売り上げは落ちにくいですよね?
時代は変わったと思います。
僕も40代になって、売り上げは上がっていますね。
40代のキャリアパスの問題はよく業界内の話題になりますが、業界の問題というよりは自社の問題なのかもしれないですね。
キャリアパスが必要な会社で、仕組みをつくっていく必要があるのだと思います。
厳しいかもしれないですが、僕は40代のことを考えるなら20代のことを考えてあげたいですね。
会社も自身も、強くなる
ーーーー最後に、今後のご自身のキャリアプランを教えてください
会社として求人にも力を入れていて、さまざまなエリアから入社してくれるスタッフが沢山増えてきました。自分の次の仕事としては、その子たちが将来、帰れる場所をつくってあげたい。
僕は福岡から出てきて18年ですが、3〜5年で地元に帰りたい美容師も多い業界だと思うので、スタッフが活躍できる場所がさまざまなエリアにあると良いなと。
1発目は僕の地元の福岡。自分たちが頑張ってきた証を全国に広めながら、地方出身の美容師の帰れる場所をつくる。これが僕が今、一番やりたいことです。
NOISMとしては初のエリア外出店。福岡は早くて年内にはオープンさせたいと考えています。
自分の目的はAVANCE.グループとリトルバンブーの永続。100年企業にするために会社を繋いでいきたいと考えています。
僕がもし会社を継承することになったら、次はどんな人を育て、継承するか。未来に向けて、代表を繋いでいきたい。
僕は会長の小竹を信じて頑張ってきました。名前だけの社長であれば意味がなくて、継承するからには株や名義ごと継がないと会社が変わっていかないと思います。
常にお伺いを立ててという立場を求めているわけでなく、自分の挙動一つで会社が動いていくことをやっていきたい。そしてそれを繋いでいきたいと考えています。
僕は美容学生との接点が多いのですが、学生のうちにインスタフォロワーがすでに多く、自分に自信のある子も増えてきました。
最近の傾向を見ていると、組織に尊敬できる人がいなければ辞めていく現状もあると思います。
そんな中で、僕は若いスタッフにも夢を見せ続けさせられる右腕でありたいと思っています。
右腕の仕事をしながら、名古屋以外の美容室に対して求人を中心としたコンサルの仕事も広げていて、新しいことにもチャレンジしています。
いくつになっても「今が一番楽しい」、そう胸を張れる右腕でありたいと考えています。
アイ事業もやりたいし、FC事業もやりたい。けれども事業展開を広げることは自分の数字を落とす理由にはならないと思っています。
昨年12月にギネスが出て、まだ自己記録を更新できるんだなと思いました。
プレイングマネージャーとしてギネスを出し続けながら、現場100%、会社運営も100%で、会社全体の業績も上げていきたいと考えています。
Rug.Jとは?
Real Up Grade Japan。西日本を中心とした有力サロンの“ネクストリーダー”たちによって構成される美容団体。近年では関東エリアからの参加サロンも増え、加盟サロンは西日本だけでなく東日本にも広がっている。Rug.Jの目的は情報交換、勉強会を通じ、加盟サロンが更なるリーダーシップマネージメントを発揮して業界の活性化につなげること。それぞれのサロンの“リアル”な情報を共有し、そこからヒントを得て自社をアップグレードさせているのが特徴だ。
Rug.J参加サロン ※カッコ内は本社所在地
AMA TOKYO(東京都)
AVANCE.(大阪府)
Bee-ms(岐阜県)
BUDDY HAIR(愛知県)
FORTE(東京都・静岡県)
HAIR MAKE GRACE(愛媛県)
HANABUSA(石川県)
LARANJE(広島県)
Lee(大阪府)
MICHI GROUP(岡山県)
MODE K’s(大阪府)
M.O.E.(神奈川県)
neaf(東京都)
NOISM(京都府)
OBJE’T(岡山県)
RT HAIR CREATION(高知県)
RUTH(広島県)
Shin(愛知県)
- Salon Information
- BUDDY HAIR/バディヘア
愛知県名古屋市
住所 | 愛知県名古屋市緑区滝ノ水3-102 |
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店舗情報 | ・会社名:株式会社バディ ・代表:鈴木伸弥 ・設立:1989年 ・店舗数:9店舗 ・スタッフ数:110名 ・HP:https://www.buddy-hair.com |
- Salon Information
- MICHI GROUP/ミチグループ
岡山県岡山市
住所 | 岡山県岡山市北区野田4-12-107 |
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店舗情報 | ・会社名:株式会社MICHIグループ ・代表:松野史恵 ・設立:1964年 ・店舗数:9店舗、ブライダルサロン3店舗 ・スタッフ数:70名 ・HP:https://michi-group.jp |
- Salon Information
- AVANCE./アヴァンス
大阪府大阪市
住所 | |
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MAP | Google map |
店舗情報 | ・会社名:株式会社 AVANCE. ホールディングス、株式会社リトルバンブー ・代表:小竹唯央 ・創業:1992年 ・店舗数:41店舗 ・スタッフ数:350名 ・HP:http://hair-make-avance.com |
- Salon Information
- NOISM/ノイズ
京都府京都市
住所 | ・会社名:株式会社On ・代表:中村芳進 ・設立:2007年6月 ・店舗数:ヘアサロン6店舗、アイサロン7店舗、ネイルサロン5店舗、アイ&ネイルサロン5店舗 ・スタッフ数:86名 ・HP:http://noism-hair.com/ |
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