「ヘアスタイルは性格まで変えるもの」MANON — ヘアが語るワタシ

「ヘアスタイルは性格まで変えるもの」MANON — ヘアが語るワタシ

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photo:Domu
text:那須凪瑳

ヘアスタイルはその人を構成する大切な要素の一つ。自己表現のツールにもなるし、ときにアイデンティティにもなり得るものだ。そんな視点から、ヘアスタイルへのこだわりや遍歴をインタビューする連載「ヘアが語るワタシ」。

第1回は、ピンク髪が印象的なモデル・アーティストのMANON。「ヘアスタイルで性格まで変わる」と話すMANONに、ヘアスタイルとファッションの繋がりやヘアスタイル遍歴などを訊いた。

MANON / モデル・アーティスト
Profile
MANON

モデル・アーティスト

次世代カルチャーアイコンとの呼び声が高い、福岡県出身の20歳。dodo、LEX といった新鋭アーティストから、藤原ヒロシ、ケロ・ケロ・ボニト、最新作「TROLL ME」ではBring Me The HorizonのRemixで話題のプロデューサー集団six impalaなど、多岐のコラボも。アーティスト活動にストリートからモードまで着こなすモデル活動と、音楽・ファッションを横断した活躍で注目を集めている。

「ヘアをハイトーンにしてから、性格まで明るくなった」

18歳の頃は黒髪ロングヘアだったというMANONがヘアをピンク色に染めたのは、ある美容師からの1通のDMがきっかけだったという。
 
「初めて髪の毛をピンク色に染めたのは、19歳のとき。美容師さんからサロンモデルのお誘いのDMをいただいたのがきっかけでした。その方のInstagramを見てみたら、水色やピンク色などのハイトーンカラーのモデルさんの写真が並んでいて、直感的に『私もハイトーンにしてみようかな』と思ったんです」
 
ハイトーンカラーに染めるのは人によっては勇気のいる選択だが、当時黒髪ロングヘアだったというMANONに抵抗はなかったのだろうか? そう尋ねると、次のような回答が返ってきた。
 
「私は昔からサロンモデルをやらせてもらうことが多かったので、ヘアを変えることにはもともと抵抗はないタイプでした。あと、飽き性だからすぐに髪型に飽きちゃうというのもあって(笑)。でも、全頭ブリーチは初めてだったし、そのときロングからボブにバッサリ切ったので、当日はめっちゃドキドキでしたね」

「ドキドキだった」と言うが、思い切ってハイトーンに変えてみて良かったと、MANONは続ける。

「私、以前は人見知りだったのですが、ヘアをハイトーンにしてから性格まで明るくなった気がするんです。黒髪だった頃は周りから『大人しい人』だと思われることが多かったのですが、ヘアを明るくした途端、周りから“とっつきやすい人”だと思われるようになって。周りからの第一印象が『明るい人』に設定されているから、こっちもその印象に合わせて接することができて、自然と明るくなれたんです」

一時期、ヘアが青色だったときは、自然と『クールな性格』になったというMANON。そんな感受性豊かなMANONならではのエピソードは、まだまだ続く。

「ヘアをハイトーンにするときの大きなハードルの一つって、『周りの人からどう思われるか』ということだと思うんです。派手な格好をしていると後ろ指を指されることもあるかもしれないし、仕事などに影響が出ることもあるかもしれない。私もヘアを染めるうえで、そういう心配が少しありました」

そう話すMANONだが、ピンク色に染めたあとの周りからの反応は、その心配を裏切るものだった。

「私が一番心配していたのは、おばあちゃんの反応でした。なんとなく、おばあちゃんに『怒られるかも』とか、『嫌って思うかな?』と不安な気持ちがあって、会うのが怖かったんです。でも、久々に再会したら『あら、いいじゃない!』ってすごく受け入れてくれて。とてもうれしかったですね。あと、ピンク色のヘアでNHKのドラマにも出演させていただいて。“自分らしい姿”のままドラマに出演させていただいたことも、自信につながりました」

この経験から「『派手なもの=嫌われる』という偏見を持っていたのは自分自身だった」という事実に気付かされたというMANON。確かに、「自分が本当にしたいことをして周りに受け入れられる」という経験は、自信や自己受容につながる大きな一歩だろう。「ヘアスタイルを変えるということは、気軽に変えられて大きな一歩に繋がる可能性を秘めたことなのかもしれない」、MANONの話を聞いていて、そんなことを思った。

「ヘアを変えて、ファッションの幅も広がった」

黒髪、ピンク髪、青髪と、自由な感性でヘアスタイルを楽しむMANON。そんなMANONに「髪色をハイトーンにすると、今まで着ていた洋服が似合わなくなるのでは?」という素朴な疑問をぶつけると、返ってきたのは予想外の回答だった。

「意外になんでも着られると思います。それこそ、黒髪のときに着ていた大人っぽい洋服も、いまだに着られています。髪色を変えても、全然違った見え方でちゃんとハマるし、逆に新しいファッションジャンルにもトライしやすくなりました」

「ピンク色になってから、クロップド丈のトップスにミニスカートに、すごくボリュームのある靴を合わせる“超ギャルっぽい格好”にも挑戦できたり。あとは、ツインテールでヘアを巻いたりすると、めっちゃアニメ感が出ていいんですよね。黒髪のときはただかわいらしい感じになったけど、髪色がピンクってだけでちょっとスパイスが効くというか。自然とファッションの幅も広がったと思います」

さらに、「ピンク色に染めてから、差し色も効きやすくなった」と話すMANON。今日のコーディネートの差し色はケアベアのキーホルダーだというMANONだが、このキーホルダーは思い出深いアイテムだと教えてくれた。

ケアベアと「YAGI YOYO TEAM」のメンバーが作ってくれたヨーヨー

「実はこのケアベアのキーホルダーは、私が通っていた日本大学芸術学部の後輩が卒業式にプレゼントしてくれたものなんです。『髪色がピンクだからきっとピンクを選んでくれたんだろうな』と思って、うれしくて大切に使っています」

「自分がしたいヘアスタイルにすること」が自己受容に繋がる

今日の撮影は、大切な思い出が詰まった大学が位置する江古田にて行われた。ここ江古田は、MANONが黒髪時代からピンク髪時代まで、大きな心境の変化を伴う時期を過ごした思い出の土地でもある。

最後に、そんな江古田の町を歩きながら、ヘアスタイルとアーティスト活動の関係性、そして11月にリリースされた楽曲『成長痛』の制作秘話まで幅広く伺った。

 

──髪色をハイトーンにしてから性格が変わったと仰っていましたが、アーティスト活動への影響は何かありましたか?

かなり影響していると思います。私の音楽はジャンルでいうとハイパーポップなのですが、黒髪のときよりも今の方が親和性が高いと感じているし、「ピンク髪の子」って覚えてもらいやすかったりもします。

──楽曲のジャケットにもピンク髪のキャラクターを使用していたりしますよね。

そうですね。以前マネージャーさんと話していたときも、「MANONの音楽ジャンルだったら、黒髪の子が歌っているより、ピンク髪の子が歌っていた方が説得力が増すような気がする」と言われたこともあって、ヘアスタイルがアーティスト活動に影響を与える部分は大きいと感じています。

──11月にリリースされる新曲『成長痛』は、黒髪だった頃にリリースされた『18』をリライトした楽曲だそうですが、その頃の自分を回想して、何か変化は感じますか?

『成長痛』も『18』と同じく葛藤を歌った楽曲なのですが、別ジャンルの葛藤を歌っているんです。『18』は大人と子どものはざまで揺れ動く気持ちを歌った楽曲で、『成長痛』は大学を卒業する年齢になってそれぞれ異なる進路に進んだり、異なる人生のステージを迎えたりするなかで感じる迷いや孤独などを歌った楽曲です。たぶん、より多くの方に共感していただける内容になっていると思います。

ジャケット写真は『18』と同じポーズ、同じ構図で撮影したんですが、2枚のジャケットを並べてみると髪色が全然違うんですよね。自分の芯の部分は変わっていないけど、葛藤の種類や考えが変化しているので、それを髪色で表現できているようで面白いし、ぜひリスナーにも並べて見てほしいです。

 

──では最後に、アーティスト活動にも私生活にも、ヘアスタイルが大きく影響を与えているMANONさんにとって、ヘアスタイルを楽しむ意味ってどんなものか教えていただけますか?

ヘアスタイルは、周りからの印象も、自分の内面も、ファッションも変えてしまうものだと思います。単純に飽き性っていうのもあるけど、今後も変化を楽しむためにも、いろいろなヘアスタイルを試していきたいです。

あと、ずっと同じヘアスタイルでいる方にとっては「変えること」は勇気がいることかもしれないけど、純粋に変化は楽しいし、私が体験したみたいに「自分がしたいヘアスタイルにすること」が自己受容に繋がることもあるかもしれない。もしもやりたいヘアスタイルがあるなら、やってみちゃうことが大事だと思うし、「私はこうしたい」って自信を持ったら、誰も否定なんてできないと思います。


さまざまなヒトのヘアを通して、生き方や考え方、ファッションとの繋がりを紐解く「ヘアが語るワタシ」。次回もお楽しみに。

Digital Single「成長痛」 MANON
Digital Single「成長痛」
MANON
配信日:2024年11月15日(金)

https://orcd.co/manon_growing_pains

那須 凪瑳
執筆者
那須 凪瑳

フリーランスライター、編集者。日本美容専門学校夜間部卒業。美容師免許保有。

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