やる気がゼロの時、あなたはどうしてる?

やる気がゼロの時、あなたはどうしてる?

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連載:今日を生き抜くヒント

美容師ライター、操作イトウが日常の“サロンワークを乗り越えるヒント”を探るコラム連載「今日を生き抜くヒント」がスタート。第1回のテーマは、『やる気がしない日のモチベアップ方法』。目覚めた瞬間から感じる“やる気ゼロ”な日の自分に、どう向き合う?どう一歩を踏み出す?その答えは、まさにあなたの中に潜んでいる。

イラスト:モリスン

「 練習する気が起きません。 」

毎日の積み重ね、日々の練習。自分の成長のためとはいえ、プライベートの事に振り回されると、やる気が起きない時もありますよね。

失恋したり、眠れない夜を過ごしたり、理不尽なことが降りかかってイライラがおさまらなかったり。

あなたはこんな時、どうしてます?

操作イトウ /
Profile
操作イトウ

東京都二子玉川を拠点に活動する30代フリーランス美容師。2022年からフリーランスに転向し、美容師業とライター業を両立。2023年には第一子誕生を機に「セルフ育休」を実施。サロンワークの傍ら、業界の多様な働き方について積極的に発信する。

ガンガン進む?
それとも、じゅもんせつやく?

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やる気が起きない。そんなこっちの「くすぶった気持ち」なんてお構いなしに、多くのヘアサロンは根性で突き進む「ガンガンいこうぜ」なマインドが主流です。もちろん会社ごとにカラーはあるけれど、熱血で自己啓発好きな体育会系ノリが強い業界です。

それがハマる人にはいいんだけど、苦手な人にとっては、正直しんどくないですか?実はこの「ガンガンいこうぜ」は、人によってかなり向き/不向きがあるようです。

僕が一番モチベーションが上がらなかった経験は、新卒1年目のとき。最初に勤めたヘアサロンは「ガンガン〜」な雰囲気で、初めのうちは感化されて何度もチャレンジしました。

でも結局、マッチできず苦しくなって丸1年で退社。僕にとってはドロップアウトの気持ちでしたが、ガンガンスタイルで挑んで、身も心もボロボロになってしまったのです。当時の僕は、自分のメンタルとちゃんと向き合えていませんでした。

僕が居心地よく成長できたのは、むしろ「じゅもんせつやく*」なマインドでした。あなたはどんなタイプですか?今、自分を見つめ直してみると、やる気が出ない理由もわかるかもしれません。

*「じゅもんせつやく」は『ドラゴンクエスト』シリーズの作戦で、「無理せずエネルギーを節約して戦う」意味。

覚え方で、やり方をチューニング

さて、練習へのモチベはメンタル面だけじゃなくて、練習や勉強自体の難しさもありますよね。そして同期や身近にめっちゃできる人がいると、「私が向いてないってこと?」ってつい比べてしまいがち。

僕も覚えるのが人より苦手でしたが、その原因の一つは「自分に合った覚え方」を見つけるのが遅かったんじゃないか、とも感じています。

そんなわけで、僕が見出した練習法をいくつか紹介します。あくまで僕のやり方だけど、皆さんも自分なりのスタイルを見つけるヒントになれば嬉しいです。

例えば、座学。

「成分」にめっちゃ詳しい先輩、いますよね。カタカナ多めの用語をつらつらと呪文のように唱えられるのは職人の鑑ですが、僕はだいぶ苦手でした。

そんな僕は「お客さまに伝えるシチュエーション」を意識したことで、覚えられるようになりました。

というのも、その知識を実際に活用する場面は「筆記テスト」じゃなく、「お客さまとの会話」なんです。お客さまに「〇〇酸」なんて伝える必要はほぼ無いわけで。だから例え話にしたり、図解を身近な現象に置き換えたりして、「こういう原理なんです」と説明できれば、自分がその理論を理解していることになる。

こうして自分が「覚えること」を、「知らない人に教える」想定にした結果、理解が格段に深まりました。

技術練習、苦手分野はやる気オフになりがち

練習中に「やってても楽しくない」とか「上手になった実感がない」と、何のためにやってるのか分からなくなっちゃう。

そんな時は技術の“旨み”を知って、いかに“面白がる”かを重視!「これ覚えたら、こんなこともできるじゃん!」と応用するパターンを考えたり想定すると、ちょっとやる気になります。

僕はとにかく「なんとなくやる」練習を避けていました。「いのちだいじに*」タイプな僕は、モチベーションや体力を常に全力で使うタイプではなかったので、ペース配分を意識したんです。

*「いのちだいじに」は、ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズでの作戦の一つで、「無理をせず安全第一で行動する」ことの意味。

朝練/夜練といった毎日の練習ルーティンはキープしつつ、集中が切れたらさっさと切り上げて、そそくさと帰宅。あとは先輩後輩にどう思われてもお構いなしで、「明日のわたし」の気力と体力を回復させることを優先しました。

このおかげで、次の日もポジティブに向き合えるようになりました。

また、闇雲に時間をかけないためには「タイムアタック」が有効。序盤からゲーム感覚で時間を計って、クリアしたら上手くいかないところを先輩に聞いていました。手近な階段から登るように、[教わったことを練習→また質問→教わったことを練習]を繰り返すと、進んでいる実感が湧きます。これなら先輩からも上達を見守ってもらえるし、必要以上に時間をとらせることもなくなりますよ。

教えがピンと来ない時は、丸パクリ

今やSNSには著名な美容師たちが最新技術を惜しみなく教えてくれて、スマホひとつで独学も余裕の時代。つくづくいい時代だな、と思います。でも実際の現場は、いまだに「直属の先輩から教わる」のが基本なんです。

こう言ってしまうと角が立つけど、「誰に教わるか」は、かなり重要です。相性バッチリな先輩と出逢えれば、とてもいい関係を築けるはずです。

一方で、「先輩ガチャ」なんて言葉あるように、教えるのが得意な人もいれば苦手な人もいるんです。だって先輩も、「先生になるため」に技術を教わったわけじゃないですから。だから時に、先輩のやり方が「何言ってるかわからない」なんてこともあるはずです。

そんな時は、潔くその「先輩の作法を丸パクリ」してみるのもアリです。先輩の作法には、その人なりの「大切にしているポイント」が詰め込まれているから。それをフルコピーすることで、先輩が言語化できない、そして自分が思いつかない角度の発見を得られる場合があります。

このコピー戦略は、サロンの先輩だけじゃなく、全然関係ないほかの業界でも使えるテク。いろんな人の作法をコピーしておくと手札や球種が増えて、困った時に思い出して使えるかもしれません。

技術もいいけど、肉眼が最強説

技術を教えてもらう時、「あとでスマホで見返せるように」と動画を撮る方も多いですよね。これ自体はとても良いことだと思う反面、「ちゃんと“リアル”な目線で見れていないのでは?」と、感じることがあります。

例えば、花火大会で動画を撮る時、スマホの画面ばっかり見ていませんか?ディズニーランドのパレードも、スマホ越しに観てしまったり。

しっかりフレームに収めたくて、ついついスマホに目が行きがちだけれど、絶対肉眼の方が綺麗だし、臨場感もありますよね。

技術を教わる貴重なその一回も、画面越しで眺めていると大事なポイントを見落としてしまうかもしれません。三脚で固定しておくとか、一度デバイスは置いて肉眼で見る姿勢を意識してみるのをオススメします。

まとめ

美容師の手さばきは、お客さまと世間話をしていてもクオリティを落とさないですよね。僕はこの「無意識」にできることが職人の「技術」だと考えています。

でも「無意識」になるまでには、毎回毎回「意識」し続ける必要があり、根気がいるプロセスです。残念ながら、どんな技術も一朝一夕では身につかないものです。

とはいえ、繰り返しの練習が苦手な人に朗報です。世界的な睡眠研究学者、柳沢正史教授がはこう提唱しています。

『よく眠ったほうが記憶は整理され定着する。スポーツもただ練習するだけでは技能向上は頭打ちになる。そこで一晩寝ると次のレベルにいける。』

讀賣新聞オンライン

つまり、しんどい時のあなたのその練習も、ムダじゃないんです。今日できなかった動きは、ちゃんと寝て起きることでちゃんと身体が覚えるのです。

それって、「信じて寝て待て」ってこと?いや、過信しないよう、たくさん練習しましょうね。

操作 イトウ
執筆者
操作 イトウ

東京都二子玉川を拠点にする30代美容師。 『ヘアスタイルはロジックで美しく、カッコよくなる』『ステキな美容師さんに出会ってほしい』をメインテーマにしたブログをnoteにて執筆。2020年から文春オンラインでの連載を開始、CREA等のwebメディアで定期掲載。

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