100円均一でおなじみ、ダイソーの着せ替え人形エリーちゃん。
このエリーちゃん、実はすごいクセ毛の持ち主。さらに、生え際の髪はすべて浮いており、全頭にランダムに配置された毛穴のせいで分け目は変えづらく、毛量調整も困難を極める、まさに美容師泣かせの女性です。
エリーちゃんの難しすぎる髪に対応できる美容師さんって、存在するの!?
この美容業界に多数存在する、名だたるコンテストを制した“コンテスター”であれば、エリーちゃんの髪をも制することができるかもしれない。
「100均のエリーちゃんを、本気でかわいくしてもらえませんか?」
第4回目は、東京・赤坂にSalon Ryuをかまえるオーナー・スタイリストでありコンテスターでもある京極 琉さんにお願いしました!
2018年 世界中から選ばれた美容師が出場する「Salon International」inロンドンにて、第2位入賞。
2019年 「Salon International」inロンドンにて、世界第1位を獲得。
2017年、2019年「JHA」NEWCOMER OF THE YEARノミネート。
今年2020年「JHA」JAPAN HAIRDRESSER OF THE YEARノミネート中など、その実力は本物です。
普段のエリーちゃんとは違う、僕の世界観で表現してみました
斬新なエリーちゃん像から透けて見える、美容師・京極 琉とは?
人気連載「100均のエリーちゃんを本気でかわいくしてもらえませんか?」 今回もインタビュー形式でお届けします。
――今回のエリーちゃんのテーマ「Dusk idol」はどういう意味でしょうか。
京極:かわいい雰囲気のエリーちゃんの「ダークサイド」と「力強さ」を表現したいと思いました。Dusk は「暗い」という意味で使用しています。エリーちゃんの華やかな顔の印象に負けず、ヘアスタイルが目立つようにデザインしています。
――いつも独特の世界観で唯一無二な作品を発表されていますが、大切にしていることはありますか?
京極:自分の世界観を表現することとオリジナリティですね。あとは、楽しむことと結果を残すことでしょうか。
――ヘアデザインや作品テーマはどのようにして思いつくことが多いですか?
京極:どのコンテスト、撮影も同じなのですが、衣装は1カ月前くらいから構想を練ります。ヘアスタイルやヘアカラー、メイクは前日くらいにモデルさんに会うので、その時に決めます。
コンテストは美容師にとっての原動力。100回以上コンテストに参加して分かったこと
――京極さんが初めて参加したコンテストは何ですか? 出ようと思った理由も教えてください。
京極:モデル部門で参加したのは、僕が20歳の時。「和楽」さんのコンテストが最初です。学生時代からウイッグではコンテストに参加していましたが、モデルさんへのメイクとヘアとのトータルバランスで勝負したいとずっと思っていたので参加しました。やるからには結果を残したいと思ってのぞんだ結果、優勝を勝ち取ることができました。次の年も挑戦し連覇を成し遂げられたのは嬉しかったです。
――今までどれくらいコンテストに参加されていますか? また、たくさん参加される理由を教えてください。
京極:約100回くらいでしょうか。自分の個性を確立するためにコンテストには参加しています。僕は18歳の時から「世界の歴史に名をのこす」ことをテーマにしていて、そのために個性は必ず必要だと思うから。優勝や世界1位という肩書きがすごいとは全く思っていないのですが、その肩書きをいかに次につなげるか。誰もが驚く賞を取ってから、やっと美容師としてのスタートだと思っていたので、たくさんのコンテストに今まで参加してきました。
――過去に参加したコンテストで、印象深いコンテストを教えてください。
京極:ロンドンで毎年開催される、ヨーロッパ最大のヘアショー「オルタナティブへアショー」と同時開催される「サロンインターナショナル」で2018年に第2位、2019年に1位を取ったことです。世界の美容師さんが集まる場所、参加するコンテストで結果を出せたことは、僕のテーマ「世界の歴史に名を遺す」ことに一歩近づいたと思いました。
――世界のコンテストに挑戦しようと思った理由を教えてください。
京極:一番は世界のレベルが知りたいと思ったから。新しい世界に飛び込むのが好きというのもあります。現場で他の国の美容師さんの技術も見て、上手い人はめちゃくちゃうまい。ただ技術や世界観にこだわりきれていない人が多いと思いました。
――コンテストに入賞するためのコツ、なんて存在するのでしょうか。
京極:コンテストごとに「こういう作品が入賞しやすい」という傾向はもちろんあります。でも僕は、そういうものは絶対つくらないと決めています。そこには僕のオリジナリティがないと思っているので。唯一無二の世界観の作品かどうかは、常に意識しています。コンテストに入賞することだけを目的にはしていません、なぜならコンテストでたくさん賞を取っている人が世界中から知られている美容師ではないと思うからです。
―-今後もたくさんのコンテストに参加する予定がありますか?
京極:そうですね、勝って満足して辞めるのはダメだと思うので参加し続けます。ただし、コンテストの技術だけではお客さまに支持されない場合もあると思うので、トレンドスタイルを切るための技術やセンス、人間力の部分もさらに高めていきたいと思っています。
――京極さんにとって「コンテスト」とは何でしょうか。
京極:美容師にとっての、原動力じゃないでしょうか? だから、参加しない理由がないんです。
マジメにコツコツ、天才ではないからこそできること
――京極さんを実際に取材すると、SNSやつくる作品と、いい意味でギャップがあります。普段、ご自身の仕事についてどのようなことを大切にしていますか。
京極:まずは行動に移すこと、失敗しても経験だと思っているので、行動しない理由がないんです。また、大きな失敗を経験している人ほど成功していると思うので、失敗も成功のうちだと思います。
――京極さんが今までぶつかった壁、はありますか?
京極:僕は中国・上海出身で12歳から日本に住んでいますが、日本に来てからの6年間は言葉の壁にぶつかりました。これは、大きな失敗にも値するほどだと思っていて、それくらい言葉が通じずコミュニケーションが取れないのは辛いことでした。しかし、そのおかげで今の僕があるとも思います。もう1つ。アシスタント時代にみんなと同じことを学び表現しなければならないことも、大きな壁でした。それがあったからこそ、ロンドン留学への道、サロンオープンへと踏み出せたともいえます。
――京極さんの技術は、どのように身につけたものでしょうか。
京極:自分が上手いと思う美容師さんのセミナーや教室に通いつめました。技術の本も読んでたくさん練習をしました。努力は3段階必要だと思っていて、1段階目は練習量、僕も1日8時間は練習していました。2段階目は、上手いと思っている人の技術を目で見て手を動かすこと。これも数が重要です。3段階目で、時間の長さよりも1つ1つの技術を完璧にしていくこと。感性はそれとは別に、目でいいものを見ることと時代の流れを感じること。目でいいものを見て、それを手が動いて表現できればよいので、そこには才能は関係ないと思います。
――どちらかというと、京極さんは天才型だと思っていのですが、そうではないということですね。
京極:全く違います。僕は輪ゴムで髪の毛も留められないくらいの不器用さだったので……(笑)。それでも世界1位になれたので、結果を出すために必要な努力3ステップはぜひ参考にしてください。
- Profile
- 京極 琉
Salon Ryu(サロン リュウ)/東京・赤坂
1994年10月10日生まれ、中国・上海出身。12歳より日本在住。国際理容美容専門学校卒業後、ヘアカット専門店や銀座のサロンを経てロンドンに留学。2017年、東京・赤坂にSalon Ryuをオープン。2019年JHA新人賞ノミネート。
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- 100均のエリーちゃんを、本気でかわいくしてもらえませんか?【連載④】京極 琉(Salon Ryu)
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