これからの美容師の新しいカタチ【LGBTQ+と本当のジブンらしさ】

これからの美容師の新しいカタチ【LGBTQ+と本当のジブンらしさ】

211

こんにちは!ママ美容師ライターの盛です!

「ハンサムショート」「ウルフカット」「シースルーマッシュ」…いわゆる「ジェンダーレスヘア」のオーダーも増えてきている昨今。

外見だけでなく多様性やLGBTQ+といった、従来の性別や、性別による役割の文化に囚われない生き方を提唱される方も、多く見受けられるようになりましたよね。

ファッションや生き方の選択肢が増えた反面、まだまだ無理解や偏見もあるトピックでもあります。

私たち美容師こそ、この自由の中での夢や不安に寄り添い、ヘアスタイルを通じて人生の後押しができる職業ではないのでしょうか。

今回は、美容師を通じてそのような生き方の後押しをされている、2人の美容師さんにお話をお伺いしました!

”ジェンダーレス美容師をやめたい”たけやんさん

たけやん / ”ジェンダーレス美容師をやめたい””男女の枠に囚われない自由型ポンコツ美容師”
Profile
たけやん

”ジェンダーレス美容師をやめたい””男女の枠に囚われない自由型ポンコツ美容師”

大阪府(t.a.g中崎町)フリーランス美容師/モデル/フォトグラファー

今回このテーマを取り上げるにあたって、「ジェンダーレス美容師」としてさまざまなネット記事で取り上げられているのを拝見してオファーさせていただいたのですが、たけやんさんの発信を拝見させていただいた時に「ジェンダーレスをやめたい美容師」と名乗られていったのが興味を引いて「やめたい」って一体どういう意図があるんだろうと 

たけやん

「ジェンダーレス」っていう言葉を使うことで自分で枠を作ってしまっているなあって最近感じて。

世の中的にも「ジェンダーレス」っていうワードのイコールの部分には「レズビアン」とか「ボーイッシュ」っていう肉体的な性と好みや性指向が違うといったイメージが当てはまるような感じになっていますが、僕は全然そういう感覚はなくて。

自分の中では普通にただの一人の特別でもない人間なんです。良くも悪くも。

それをわざわざ「ジェンダーレス」という括りを自分でちょっと良いように言ってしまっている矛盾に違和感を感じるようになったので、最近は「ジェンダーレスをやめたい」って言っています。

そう言ったイメージは世間的にありますよね。

たけやん

ちょっと例えが変かもしれないですけど「オムライス好きなたけやんです」と同じくらいな感覚なんですよ。

一般的にそう言われたら「へえ」って軽く流す人もいれば、オムライス好きな人はちょっと食いつく、くらいライトな感覚で。わざわざ「ジェンダーレス」って名乗ったところで特別な目でみてもらいたい訳ではないんです。

小学生くらいの頃からボーイッシュな格好も単純にフリフリな服より好きだからしていて、その感覚の延長っていうだけなんです。

サカリ

最初拝見した時は衝撃を受けたキャッチフレーズでしたけど、言われてみれば納得です!

たけやん

ジェンダーレスということを、心の葛藤や馴染めなくて生きづらいというようなマイナスな発信もあったりしますが、そうではなくてそんな自分が当たり前でもっとプラスに楽しんで生きていけばいいんじゃないかということを発信したいんです。

なので今「ジェンダーレス 美容師」で検索すると一番上にヒットして、このワードに惹かれてご来店される方も多いので少しでもそういう方にポジティブな想いをお伝えしたいので「ジェンダーレス美容師」を辞めたくても辞められない(ワードを外せない)現状です。

そんな深い理由があったんですね。

やっぱり心にお悩みを抱えたお客様もご来店されるんですか?

たけやん

そういう方もいらっしゃいますが、すごく悩みを抱えているというより「これから何か変わっていきたいきっかけにヘアスタイルを変えたい」と言った方が多いです。

以前は圧倒的に女の子でボーイッシュな格好をしたいっていう方が多かったですが、最近は女の子みたいな可愛いものが好きな男性も多くて。

ジェンダーレスっていうワードがウケる人たちが、年々変わってきている感じがありますね。

それはたけやんさんだから感じるリアルですね!

そもそも、たけやんさんがジェンダーレスと名乗られてどれくらいになるんですか?

たけやん

コロナ禍前くらいなので3~4年くらいですかね。

昔からお洋服はボーイッシュな服が好きでファッション関係の道に進もうとも思いましたが、メイクもヘアもファッションもトータルで出来る美容師の道に進みました。

そこでカット練習をはじめた時にメンズカットが面白すぎて。

特にメンズマッシュやウルフカットなどのショートスタイルが好きで売りにしていました

そこで、なんでこういうスタイルが好きなのかなあと向き合って考えた時に「中性的でレディースもメンズも関係なく似合う」からだなと。

ただ、僕自身は偏見があまりないので、お客様もそういった方が集まってきてくださり、沢山の性の方に出会い、色々な価値観に触れられました。

そこから、異性的な目でみられたくないとか性別に囚われないで好きなことを貫いていく生き方をしていきたいと思い、たまたま全部が繋がったワードが「ジェンダーレス」なんだなあと気づいたんですよね。

「好き」を貫いてきたたけやんさんの生き方って、いろいろな葛藤もあったかと思いますが、現在では「多様化・多様性」って言われていて、時代がたけやんさんに追いついてきた感じですね(笑)。

たけやん

その感じはありますね(笑)。

やっと世間と馴染んできたというか。

だからこそ「普通じゃね?」って思います(笑)。

そのたけやんさんからしたら普通なことも、「よくぞ言ってくださいました!」というお客様も多分すごくあると思うんですよね。

たけやんさんだからこそ、お客様にご相談されることってあったりしますか?

たけやん

やりたい髪型が自分に似合うか心配だという相談が多いですね。

やったことがないので不安になるのは当たり前なので、僕は似合うか似合わないかじゃなくて、自分が満足できるかどうかっていうところをお伝えしています。

結局似合う髪型って、幅が狭くなるしそもそもその人によって変わってくるし。

自分が好きな髪型をして周りから、褒めてくれる人が1人でもいたら絶対、自己肯定感上がるんで。自己肯定感を育ててあげたいですね。

女の子で男の子っぽい髪型をしたいと言われても、「どこまで男にするか?」とか「性指向は?」とかも切り込んで聞きます。

切ってみて違ったらまた伸ばせば良いんで(笑)。僕もめちゃくちゃ変わりますし(笑)。

別に何も構えるようなことではないので。

心と髪型ってリンクしているし、その時のお客様の状況に合わせてベストなヘアスタイルを作ることってLGBT+とか関係なしに、美容師として当たり前ですから。

そんなことバシッと言われたらファンになっちゃいますね!

カリスマ性がある美容師さんって、そういうひと押しが上手だったり、似合わせに対するお客様の不安を取り除く説得力がありますよね。

たけやんさんには、すごく濃いファンのお客様が多いんだなと感じます。

そんなたけやんさんの今後の夢や目標はありますか?

たけやん

LGBTQ+やジェンダーレスというワードだけで括ってネガティブなイメージが一人歩きしている部分もあるので、僕自身がそのジャンルにハマりきらないですし、視野を広く我慢しないで自分の基準で好きを貫いて生きていきたいですね。

そんな収まらない人間もいるんだなと興味を持っていただければと。

なので最近は「男女の枠に囚われない自由型ポンコツ美容師」って名乗ってます(笑)。

いつか美容室、撮影スタジオ、アパレル、カフェ&バー、音楽スタジオとか自分の好きを詰め込んだエンターテイメント満載の複合ビルを作りたいので、これからは楽しいことや好きなことを追求したい仲間募集中です!

当たり前のことも難しく捉えてしまう世の中で、自分らしく生きることすら息苦しくなってしまう。だけど、それは誰かの基準の中で生きているからなのかもしれない。

男と女、美容師と他の仕事、お客様と仲間。

さまざまな枠をつくらず、自分基準の好きなことをに囲まれた環境を自分で創っていく。どんな生き方でも、自分が満足して一人の人間として生きていく。

たけやんさんという、一人の人間の在り方は、ジェンダーレス、ボーダーレスという言葉すらとっぱらった、元来の人間の本質的な生き方なのかもしれないですね。

たけやんさん、ありがとうございました!

自分らしさをさまざまなジャンルで

中性的なカットスタイルが売り

中性的なカットスタイルが売り
フリーランス美容師として、ウルフカットやメンズショートを推していたのが“ジェンダーレス美容師”を名乗るきっかけに。

モデルとしても囚われないスタイルで

モデルとしても囚われないスタイルで
女性的な服装も男性的な服装もその時の気分を大切に。

ジェンダー関連本約60冊読了!阿部夏実さん

阿部夏実(あべなつみ) / ichie代表
Profile
阿部夏実(あべなつみ)

ichie代表

秋田県湯沢市
美容師歴は15年目
2児の母(未就学児)

1人目の出産後、家庭での性教育を知りたい!と思ったことをきっかけに、ジェンダー、フェミニズムについても関心を持つようになる。
今まで読んだジェンダー関連の本は約60冊。
2023年「ダイバーシティ研修」受講。(一般社団法人LGBTサポート協会主催の講座)

ママ美容師のコミュニティでもLGBTQ+をテーマにお話ししていただき、約60冊の関連本を読了されたということで、すごく熱心にこの分野のことを学ばれている中と思います!

そもそも興味を持たれたきっかけになったのはどんなことだったんですか?

夏実

出産後、もし子供が自分の性別に違和感を持った時に、親として驚かずに受け入れられるようになりたかったからです。

そのためには知識がないと飲み込めないことが多いだろうなと思い、いろいろな書籍を読み漁りました。

読んでいるうちに、LGBTQ+っていうジェンダー的なところは、今に始まった話じゃなかったなと気づいたんです。

中学生の時、学校であぐらをかいて座っていたら女性の先生に「女の子なんだから、あぐらをかくんじゃありません!」って指摘されたことにすごく嫌悪感を感じて。

そのときもし、「行儀が悪いからあぐらはいけない」と言われていたら納得していたと思うんですよ。

それが、「男子はよくて女子はダメだ」っていう考えにめちゃくちゃ納得いかなくて、その先生にすごく突っかかっていった記憶が甦って(笑)。

当時から「女らしさとは」とか「女性はこうであるべき」ということを押し付けられるのが嫌だったんだなって思い出しました。

そういうこともあり、その分野やフェミズム系に相関するところがあり、気が付いたらたくさんの本を読んでいました。

私も夏実さんも東北出身というところで、地方こそそういった固定観念みたいなところってありましたよね。

いろんな書籍を読んでる中で、元々イメージしてたところと違うところってありましたか?

夏実

一番ハッとしたのが、トランスジェンダーの場合は外見から感じとることができる方もいますが、

ゲイやレズビアンなど、恋愛対象については外見から推察することは難しい、ということ。

例えば、ゲイの方でもいわゆるオネエ系と呼ばれいる外見だけじゃなくて、見た目も男っぽいし、性格的にも。

ただ恋愛対象が同性ということは、恋愛の話をしないとわからないんですよね。

自分の性と誰かを好きになることは全く別に切り離して考えているということ。

私も生まれた時から女性で、自分も女性だと思っていて、好きになる人は男性っていうのはたまたま大多数にいるけど、組み合わせが「ただそれだけ」っていう。

カテゴリーに分けると5060くらいの組み合わせがあるって言われているんですけど。

自分の恋愛嗜好をわざわざ急に話したりしないのと同じように、特別問いただしたりしなくて良いことなんですよね。

自分が大多数に属していないと不安にはなるかと思いますが、まずはいろんな組み合わせがあるということを理解するところからですね。

そういう分野を理解して、美容師として活かしていけることってあると思いますか?

夏実

難しいですよね。

さりげなくレインボーフラッグの絵文字をSNSに載せたり、書籍を店内に置いたりしてますが。

当事者を特別扱いするのではなく、フラットな目線で接することが大切なんじゃないかなと。

もちろん、美容師として深いお話をしてくださるのは嬉しいですけど、それで改めて何か集客や活動しようみたいな感じではないです。

そもそもLGBTQ+という分野でなくとも、昔の美容業界だと「男だから女より働け」みたいな風潮があったり、芸能人の方のカミングアウトのニュースを美容師とお客様でゴシップネタとして差別するような会話があったり。

私も20代前半で知識がなかったので乗っかってしまったのは、今でこそとても反省しています。

ありましたよね~。

カスハラされるご年配の女性客に、若い男のスタッフだと気分良くなられるので付せたりとかも。

夏実

世間的には女性が男性にいびられる、会社の上層部が男性ばかり、みたいなイメージがあったりするかもしれませんが、女性が多いサロンだと若い男性スタッフがそういったハラスメントに遭っている可能性はあるかもしれませんよね。

専門学校も男女比は女性の方が多くて、先生方も無意識に「男らしさ、女らしさ」を伝えてしまう。

そういう経験から、美容師のなった時も、別にお客様はおっしゃってないのに、ショートカットのオーダーをされても、美容師側が勝手に「女性らしく丸みつけますね〜」とカットしたり…っていうのはあるあるだと思います。

もし、肉体がないものとして考えたときに、性差別ってないじゃないですか。

精神的な繋がりの話になるかもしれませんが、髪型っていう外側だけではない、お客様も言語化できない心の部分をどこまで美容師側が見てあげられるかというのはこのトピックを学んでから意識するようになりましたね。

実際いま考えてみると、モヤッとすることはありますよね。

昔勤めていたサロンも、「女性客のカルテはピンク、男性客はブルー」って決められていたり。

男性専用ブースがあったり。

コンテスト等でも「女性らしさ」のテーマを主に男性が審査したり。レディースカットとはあまり言いませんが、「メンズカット」ってわざわざ言ったり。

夏実

本当に、無知が故に無意識に傷つけてしまったこともありましたよね。

これからは、そう言ったことを身近なところからお伝えしていきたいなと思います。

子供に対する教育としても、人とフラットに接することや、

そういう話題を「お母さんは受け入れてくれるんだ」といった安心感が得られる環境づくりはしていきたいですね。

私自身も、このテーマを取り上げるにあたって理解はしていたつもりでしたが、まだまだ気づかない部分があるなと考え直しました。

本当の意味での平等というのはどんな人に対しても難しいかもしれませんが、改めて特別扱いしたりせずに、いかにフラットに古の固定観念に囚われないでいたいですね。

“普通”の難しさ。

誰に対しても「特別」も「差別」もなくというのは、これまでどんな環境やどんな人と過ごしてきたかの積み重ね。

時代の流れと共に、変わったのではなく本当のことに気づいた人が多くなったということ。

向き合い、話し合い、理解し合い、助け合って生きていくことが、私たちができることなのでしょう。

きっかけは何かは人それぞれ。夏実さんのように、考えるきっかけを多くの方に与えることで救われる方は多いのかもしれませんね。

夏実さん、ありがとうございました!

身近なことから、少しずつ。

関連本は気が付いたら約60冊!

関連本は気が付いたら約60冊!
サロンに置いて、顧客も自由に手に取ることができる。

コミュニティでも情報シェア

コミュニティでも情報シェア
ママ美容師目線で子育てやサロンワークでも考えたいことを共有。大好評のテーマだった。

特別じゃない。だけど考えたい。

聞いたことがあって、理解はしていたつもりでも、どこか自分に色眼鏡をかけてしまっていた方も多いのではないでしょうか?

本当にフラットな目線でいたら、このテーマを記事に取り上げることすらしなくていいことなのかもしれません。

人間が、外見で判断しないという本質をついた課題。

ですが、少数派な意見だからこそふさぎ込んでいる方や、無意識で他人を傷つけてしまった方もいるのもまた事実。

わざわざ探して助けだそうと言っているのではなく、隣に悩んでいる人がいたら手を差し伸べてあげること。

その取り組みが連鎖したら、どんなに素晴らしい世界になるのでしょうか。

美容師だからと囚われず。それでも美容師としてできること。

特別なことではない。だけど考えたい。

私とあなたのこと。

サカリ
執筆者
サカリ

美容師ライター。二児の母。

Prev

Next