密なコミュニケーションで生産性を上げる“店長力”

密なコミュニケーションで生産性を上げる“店長力”

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東京・神保町と九段下の間、企業や大学などがひしめくエリアのビル2階に佇むmoloco(モロコ)。

ぼーっと歩いているとうっかり見逃してしまいそうだが、ビルの2階へ登ると全5席のセット面はいつもお客さまでいっぱい。

落ち着いた雰囲気の大人客や、オシャレ感度の高い客など、目利きの顧客が集まっている。

そんなお店の店長を務めるのが今回の主人公・冨田絢香(とみたあやか)さんだ。

自身の売り上げも171万円(総売/2022年月平均)というハイパフォーマーながら、店舗の数字も右肩上がりに伸張させているリーダーとしての手腕も持つ。顧客層は20〜50代と幅広い。

この記事では、冨田さんのインタビューを通じて、

自分自身の数字の上げ方や、スタッフの数字の上げ方に悩む店長・リーダーへのヒントになる「店長術」をご紹介していきます。

店長として、いちスタイリストとしての「数字」との関わり方

ーーまずは、美容師として自分自身の「強み」はどのようにして作っていったのでしょうか?

冨田さん

今年でサロン歴17年目になります。
最初に勤めたお店がカット技術をメインとしたデザインサロンだったので、武器を考えるというよりもまずはカット、という感じでした(笑)。なので、ショートやボブのデザインが自然と強みになっていきました。

今のお店では髪質改善のトリートメントメニューなども導入しているので、「カット+髪質改善」のお客さまも多いです。

スタイリストになってからコツコツとストックを増やしているファイリング。時代の変遷とともにブラッシュアップしている。お客さまに直接見せてどんなスタイルがいいか選んでもらうことも。 

ーー「売り上げ」「店販」みたいな数字の目標をめざすのは得意な方でしたか?

冨田さん

どちらかというと苦手でした…。
ですが、コツコツやるのは苦手ではなかったので、
目標から逆算して「1日あたりの目標金額」を決めて、それを繰り返していくというルーティーンをつくってきました。

ーーそれはむしろ数字に強いタイプの思考な気がします(笑)。それは店舗運営にも応用しているんですか?

冨田さん

オーナーの伊藤(秀一代表取締役)とコミュニケーションをとりながら決めていったのですが、
約半年前からお店全体の数字を店舗の全員で共有するようにしました。

例えばお店の1日の数字目標に対して明日は達成が難しそうだな、という時には「プラスメニュー勧めます!」とか「ワンランク上のメニューを提案します」と言ってくれるスタッフが多いのでとても助かってます。

「共有」しても「強要」せず

ーーそれは素晴らしいチームワーク。スタイリストごとに数字を見たり、それにアドバイスしたりもするんですか?

冨田さん

あんまりそういう風にはしないですね。
お店全体の数字もみんなで見るのですが、スタイリストにその場で何か伝えるということはしません。

例えば、思うように成果につながっていなさそうだなと感じたら、個別に声をかけてアプローチを一緒に考えるようにしたいと思っています。

具体的な数字を見せた方がわかりやすい子もいれば、モチベーションが下がってしまう子もいるので、一番楽しくて面白いと思ってもらえる方法を一緒に見つけていくようにしています。

ーープラスメニューを勧めることに抵抗がある方はいないんですか?

冨田さん

お店全体として、プラスメニューに積極的な空気感があるかもしれません。

お客さまも私もいつも同じだと飽きてしまうし、「新しいことをやっている感」はいつも醸し出すようにしているので(笑)、提案するとかなりの確率で受け入れてくれます。

また、時間や予算の都合でその日が難しかったとしても、カルテに「次回やるって言ってました!」とアシスタントがメモしておいてくれたりするので、次回の声かけもスムーズです。

ーーまたも華麗な連携プレーが! 素晴らしいチームワークです。アシスタントさんも提案するシーンがあるんですね。

冨田さん

そうですね。
以前はお客さまとコミュニケーションする際に、無理やりお天気の話で間を持たせたりして「しーん」となってしまう子もいたのですが…

そんな子には「使ってるスタイリング剤の話をした方が絶対うまく話ができるよ!」と伝えると、アシスタントも「確かにそうですね!」となったり(笑)。

他の席でも商品の話をしているのが聞こえる距離感なので、むしろ店販に対して抵抗のある人はいないかもしれません。

網の目コミュニケーションで事が大きくなる前に防ぐ

ーーみなさんのチームワークの良さをひしひしと感じますが、こまめな面談とか、ミーティングとか、何か秘訣があるんでしょうか?

冨田さん

会社で行う面談は3カ月に1回で、営業時間にお茶に行って、という感じなのですが
意外と「面談」という形になると本音が出てこないこともあったりしますね…。

なので、日常的な心がけで言うと、「ちょっとテンション低めだな」と感じたらすぐに声をかけるようにしています。割としつこく聞く方かもですね(笑)。「なんでもないです!」と言われても、別のタイミングで「そんなことなさそうじゃん〜」と軽く言ってみたり(笑)。

あとは、時と場合によっては自分以外の人に話をしてもらった方がいいなと思うと、違うスタッフに頼んだりもします。

ーー自分では言わず?

冨田さん

そうです。
自分で声をかけたほうがいいタイミングや内容と、そうじゃない時も結構あると思うんです。

そう言う時には例えば、声をかけたい人がAさんだとすると、Bさんに声をかけて「Aさんに聞いてみて」と伝えたりします(笑)。またBさんに聞きたい時にはCさんに声をかけたり。それをまた私に集約するイメージですね。

ーーなるほど! 様々な方向から声をかけていく作戦ですね!

冨田さん

はい。 聞いてもらうよう頼んでみると「え〜?」と言われることもあるんですが(笑)、
「絶対私が聞くよりBさんが言ってくれた方がいいから!」と言ってお願いしたり。

こうやってちょっとずつ任せたり頼ることで、何か問題が起きる前に気づけたり、大きくなる前に対処できているのかもしれません。

冨田さん発信のコミュニケーションのイメージ。矢印がお互いの方向に向いているから自然と、会話量も増える。

まずは、「任せてみる」。

ーーとは言え、「任せる」ことは大変ではないでしょうか? 事前に説明したり、後からサポートをしたり。

冨田さん

私がやってほしいことを「任せる」のではなく、本人が興味を持ったり楽しみを感じているものごとに私もアンテナを高めて、それに対してチャレンジを促すことを大切にしています。

冨田さん

うちのお店のメニューはお店全体の会議の時に考えて取り入れるようにしているんです。

例えばスパやケアに興味があって、「やってみたい」と言う子に対しては「一緒に新しいメニューをつくろう!」とまずは一緒にやりながら、そのメニューについて調べてもらったり、POPを作ってもらったり、「ちょっと任せる」瞬間をたくさんつくるようにしています。

自分がやってみたいと思ったことを素直に意見できたり、それを叶えられる環境というのは大切にしていますね。

スタッフ発信でできたメニューの一例。
スタッフさんがつくってくれたオリジナルステッカー。かわいい。

ーー新しいメニューが増えると提案した方もやる気になるし、提案しようという気持ちも高まりますね。

冨田さん

そうです!
新しいメニューが増えるとお客さまも「今日はまた新しいメニューがあるのかな?」となりやすいですし、お客さまにもスタッフにもお店にもプラスに働くんです。

全体として数字の共有はしますが、ただ数字を伝えるだけではなかなか自分ごとになりにくい。
メニューづくりを間口にして、お店に関わってもらうことで主体的になりやすいのかなと思います。

ーー前向きに関わりやすい環境づくり、仕組みが結果的に数字につながるという理想形を叶えているのがmoloco。仕組みと環境づくりの二輪があるからこそ数字の伸長にも繋がって行くんですね。
冨田さん

そうですね。
自分で考えたものが形になったり、成果につながることで結果的に主体的になってくれたらいいなと思います。
楽しみ方を一緒に模索していきたいですね。

数字の伸ばし方≒「店舗力」をあげる

数字の伸ばし方は単なる「方法」ではない、ということが冨田さんのインタビューからも伝わってきた。その上で、必要なのは店舗全体のパワーを高めることが重要だという点。

下記にPOINTをまとめてみた。

POINT

  • 店舗の数字は全体で共有。しかし、個別の数字は個別に話す
  • MTGなどの場以外でもこまめに声をかけてみる。大ごとになる前に、課題の芽を見つけることができる
  • 自分以外の人に、気軽に小さいことから頼ってみる

小さく頼る習慣ができれば、何か大きな頼みごとをする際にも相手にも免疫ができているし、頼みやすい環境もできている。

そんな好循環によって、店舗力がコツコツと高まっていくのだ。

冨田絢香[とみたあやか] /   [moloco/東京都千代田区]
Profile
冨田絢香[とみたあやか]

[moloco/東京都千代田区]

1986年10月30日、埼玉県生まれ。国際文化理容美容専門学校卒業後、都内有名店に入社。9年間勤めたのち、2017年にmoloco入社。店長になって4年目。

カット技術を武器に、20代〜50代までの幅広い顧客を担当する。平均売上は174万円、これまでの最高売上は235万円。

確かな技術と柔らかい雰囲気で、スタッフたちを支える存在。

YAHAGI
執筆者
YAHAGI

ほぼ毎日WEB記事、ときどき単行本。

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