株式会社ミルボン(坂下秀憲社長)が2月15日、2023年12月期(第64期)の連結決算を発表した。売上高は前期比5.6%増の477億円、営業利益が同26.8%減の55億円、経常利益が同28.6%減の55億円、純利益が同28.3%減の40億円と増収減益となった。
コロナ禍で伸長したカラー需要が高止まりし、その影響を受け減収となったものの「オージュア」「グローバルブランド」が堅調に推移した。利益面においては国内で投入したドライヤー「エルミスタ」の在庫評価損、原材料価格高止まりの影響で低下となった。
部門別では、ヘアケアが同7.8%増の283億円。プレミアムブランドが同12.6%増でヘアケア市場全体の伸長を追い風に、「オージュア」の新商品「インメトリィライン」や米国を中心とした海外、国内で着実に成長を続ける「グローバルミルボン」が成長を牽引した。「エルジューダ」の新サンケア製品「サンプロテクト」も年間目標を28%上回って着地した。同社が運営するBtoBtoC向けECサイト「milbon:iD」の登録者数は67万人、登録サロンは5,930件、EC売上16.4億円と計画通りに進捗した。
染毛剤は同1.9%増の169億円で、国内のみでは同0.8%減となった。グレイカラー、オルディーブクリスタルの新ライン「オルディーブ クリスタル ハイブライト」が年間目標を66%上回る着地で好調だったものの、主力の「オルディーブアディクシー」等の減収をカバーするには至らなかった。海外では同9%増で、主力の韓国が堅調に推移したほか、米国において欧米専用ヘアカラー「ソフィストーン」が好調だった。
化粧品は同0.1%減の5億円。美容室直送型ブランド「インプレア」が好調だったものの、昨年4Qにスターターキットの見直しに伴う窓口件数の大幅増加の反動減により、減収となった。7月に発売した代理店配架型ブランド「アイエム」の「ビューティーアップミスト」」の好調により、化粧品カテゴリ全体の売上はほぼ横ばいとなった。
その他ではパナソニックのドライヤー「エルミスタ」が1億円。同社の11月の業績予想修正で売上目標は3億円から下方修正された。ビューティサプリメントの「アラナス」は年間目標を30%下回る着地となった。
海外では主要3カ国の実質増減率が、アメリカが同13.3%増、中国が同3.8%増、韓国が同7.4%増と成長し、売上高における海外比率は21%にのぼる。
2022年から展開している、連結売上580億円、連結営業利益108億円(営業利益率18.6%)を目標に掲げる中期事業構想(2022-2026)のシナリオは、売上は順調に進捗しているものの、利益の進捗に遅れが生じている。営業利益については、コスト課題への対応策として高付加価値商品の投入、原価率低減や既存品の価格改定、設備投資の再検討を行い改善を図る。
2024年の国内戦略は、ミルボンカラーとアイブロウを組み合わせた、美容室ならではの髪と眉のトータルカラー提案の推進と、オーガニックブランド(ヴィラロドラ)によるメニュー提案で高価値ヘアカラーを推進する。
また、店販(知販)購入客の向上を目的とした「スマートサロン戦略」を今年度より本格的に提案を推進。2023年実績23軒から2024年100件を目標に掲げる。「milbon:iD」においても新機能の拡充でECプラットフォームの魅力・価値向上を図り、2023年実績67万人から、2024年87万人を目標にし2026年には100万人を目指す。
24年12月期連結業績予想は、売上高が前年比6%増の506億円、営業利益が同19.5%増の66億円、経常利益が同17.4%増の65億円、純利益が同16.2%増の46億円を見込む。
なお、「通期決算説明会」は大和カンファレンスホールA(東京・千代田区)にて開催され、オンラインでの視聴も行われた。
佐藤龍二会長は「ミルボンがより花開くのはこれから」と、短期的な施策ではなく長期的な目で成長を考えていることを強調した。
本年度より坂下秀憲氏が社長に就任。同社の今後の施策に期待したい。
連結 経営成績
※以下の単位は百万円、カッコ内は昨年実績と比較した増減率
売上高は、国内外へのヘアケアの好調による増収で過去最高を更新するも、染毛剤の伸長鈍化によって計画未達。ともに製造原価の悪化・原材料価格の高騰・染毛剤の売上が計画を下回ったことによるプロダクトミックスの悪化・営業活動活発化に伴う販管費の増加により、利益も未達となった。
また、エルミスタ販売見通し引き下げに伴い、9億円の評価減を計上。
◾️当期売上高=47,762(5.6%)
◾️当期売上総利益=29,525(0.1%)
◾️販管費=24,000(9.3%)
◾️営業利益=5,525(△26.8%)
◾️経常利益=5,586(△28.6%)
◾️親会社株主に帰属する当期純利益=4,001(△28.3%)
カテゴリー別売上高
ヘアケア用剤①
◾️当期販売実績 28,355(7.8%)
milbon:iDの登録者は67万人・登録サロン5,930軒・EC売上16.4億円(2022年11.6億円)と概ね計画通り進捗。
国内売上は前年同期費+4.9%で、国内業務用ヘアケアの市場全体の伸長を追い風に、「オージュア」の新商品「インメトリィライン」の投入等により増収となった。
また、海外売上は前年同期費+19.4%。米国・中国・韓国を中心とした「グローバルミルボン」の伸長が増収に貢献した。代理店セールスを巻き込んだ美容室への展開活動・美容師のブランドファン化を目論んだイベントなどの施策が功を奏した。
ブランド別では、プレミアムブランド売上が前年同期比+12.6%。プロフェッショナルブランドが前年同期比+0.5%となった。
ヘアケア用剤部門② 新商品
23年2月発売 オージュア ヘアケアシリーズ インメトリィライン
◾️当期実績1,193(達成率108.5%)
23年4月発売 グローバルミルボン ミルボンアンド アロマティックシリーズ
◾️当期実績129(達成率51.8%)
ヘアケア用剤部門③ 新商品
23年3月発売 ミインカール アイロンキープ プライマー
◾️当期実績171(達成率114.9%)
23年3月発売 エルジューダ サンプロテクト
◾️当期実績514(達成率128.5%)
ブランド別情報
オージュア
新商品「インメトリィ」が成長をけん引。24年のスキャルプケアの新商品投入で更なる成長を見込む。
◾️窓口軒数 6,844軒(13.6%)
◾️当期販売高 11,256(9.4%)
グローバルミルボン
米国を中心とした海外、国内での着実な成長が継続。美容室への更なる導入を見込む。
◾️窓口軒数 13,381軒(24.3%)
◾️販売高 6,388(19.6%)
染毛剤部門
代理店の在庫調整は収束した一方で、コロナ禍で伸長したヘアカラー需要が一巡した影響を受けた。国内売上は前年同期比△0.8%。新商品「オルディーブクリスタル ハイブライト」が好調であったものの、主力の「オルディーブアディクシー」等の減収をカバーするに至らず。
海外売上は前年同期比+9.0%。染毛料が主力の韓国が堅調に推移。米国においては欧米専用ヘアカラー「ソフィストーン」が好調だった。
◾️当期販売高 16,953(1.9%)
新商品
オルディーブクリスタル ハイブライト
◾️当期売上高 249(166.3%)
ヴィラロドラ
染毛剤の進捗続きで販売高は堅調に推移。
24年は「ヴィラロドラカラー」の活動体制を大幅に強化し、売上拡大を見込む。
◾️窓口軒数 13,679(9.8%)
◾️販売高 1,359(2.4%)
新商品
ヴィラロドラ レーノボ テンプス/フルジェンス
◾️当期実績 69(69.1%)
化粧品部門
◾️当期販売実績 571(△0.1%)
全体の売上は、7月に発売した「アイエム」の「ビューティーアップミスト」の好調で、昨対ほぼ横ばいに。
本年度2月より、ヘアカラーと連動する新商品「ブロウ&ラッシュ カラーマスカラ」「カラーレタッチ CCムースファンデーション」を投入し、売上拡大を図る。
「インプレア」については、ヘアと連動し美容師が顧客に勧めやすい新商品が好調だったものの、昨年4Qのスターターキットの見直しに伴う窓口軒数の大幅増加の反動減により、減収。
新商品
23年2月発売 インプレア ミルキースフレ UV
◾️当期実績 53(達成率168.5%)
23年7月発売 アイエム ビューティアップミスト
◾️当期実績 40(達成率204.7%)
インプレア
新商品は好調だが、既存品の成長鈍化によって昨対減収。
◾️窓口軒数 1,970(23.0%)
◾️販売高 558(2.4%)
その他・ヘルスケア
新商品
◾️23年4月発売 エルミスタ
当期実績 119(達成率99.9%)
◾️23年9月発売 アナラス
当期実績 48(達成率69.2%)
連結 国内・海外の売上高
◾️当期実績 47,762(5.6%)
日本:36,502 構成比76,4%(3.3%)
海外:11,260 構成比23.6%(8.8%)
2024年度の取り組み
①高価値ヘアカラーの推進
オーガニックブランド(ヴィラロドラ)による大人の高付加価値ヘアカラーの提案。サロンワークメニューへの落とし込みで成功ノウハウの拡大を図る。
◾️国内窓口軒数
2024年目標 14,700軒(昨年 9,700)
◾️国内出荷額
2024年目標 14.4億円(昨年 10.6億円)
②店販購入客の向上
スマートサロンのテストマーケティング期間を経て、本格的に提案を推進。
◾️国内窓口軒数
2024年目標 100軒(昨年 23)
ミルボンiDは会員数等順調に成長。新機能の拡充で、ミルボンならではのECプラットフォームの魅力・価値向上を図る。
プライシング
顧客価値から逆算した新商品のプライシングを行い、新商品の新陳代謝を促進することで、原材料の価格変動リスクを吸収してき同社。
今後は、想定以上のコスト増に対応すべく、2025年度より、原価率が上昇している既存品の価格改定を実施して収益改善を図る。なお、海外での既存品価格改定は市場の状況に合わせてすでに実施。
対象品目
ヘアケア用剤の一部(シャンプー・トリートメント等の店販品)
価格改定インパクト
希望小売価格を+10%アップと想定。売上総利益率を+0.5〜+1.0ポイント押し上げる見込み。
2024年度 売上目標
2024年度売上高目標は50,620(6.0%)。
カテゴリ別
◾️ヘアケア用剤 30,200(6.5%)
◾️染毛剤 17,600(3.8%)
国内:「ヴィアロドラカラー」の活動強化・コスメと連携した高価値カラー提案による増収を見込む。
海外:韓国における安定的な伸長、米国・中国における活動強化による増収を見込む。
◾️パーマネントウェーブ用剤 1,480(1.1%)
◾️化粧品 820(43.4%)
「アイエム」より、ヘアカラーと連動したコスメ新商品を投入。活性化を図る。
◾️その他 520(24.4%)
「エルミスタ」は引き続き販売。サプリメントでは新商品を投入する。