ブリーチに髪質改善トリートメント、酸性ストレートに縮毛矯正…
メニューが多様化し、その分薬剤の知識もより深く求められる時代になってきました。
と同時に多様化してきたのは「処理剤」と呼ばれるアイテムたち。薬剤のサポート的立場でありながら、そのバリエーションは無限に存在します。
そこでこの記事では、数々のアイドルやモデル美しく変えてきた“はるはるさん”に、教えを請いに伺いました。
よろしくお願いしまーす!
- Profile
- はるはる (遠井春彦)
Tia. CEO(東京・表参道)
とおいはるひこ/1992年10月6日、埼玉県生まれ。資生堂美容技術専門学校卒業後、都内3店舗を経て2022年3月にフリーランスに。同年6月に東京・表参道に共同代表大和たくみ氏とともにTiaをオープンさせる。
豊富な薬剤知識と縮毛矯正の施術実績があり、アイドルやモデルの施術も担当。インスタグラムフォロワーは現在11.2万人。全国でのセミナー活動も行なっている。
- Instagram : @hrhk__hrhk
「処理剤」と向き合う前に知っておきたいこと
──はるはるさんと呼ばせていただきますね! よろしくお願いします。
早速、処理剤について教えていただきたいのですが…
もちろんです!
ひとくちに「処理剤」と言っても多種多様になってきていますよね。まずはオススメされているものから試してみるのもいいとは思うのですが、実際僕が美容師さんからお話を伺うと「自分の使っているものがどんなメリットとデメリットがあるのかわからない」という声を聞くことがよくあります(笑)。
今回お伝えしたいのは、処理剤はあくまでメインとなる技術の補助的な役割である、という点です。
根本となる技術でしっかり95〜100点が取れていて、それを110点とか120点にしていくのが処理剤というイメージでしょうか。ですが、技術が70点で、処理剤で95点にする、という考え方は危険です! 本筋からブレてしまいますし、僕自身も技術と知識があってこそ「処理剤」が活きてくると考えています!
──なるほど〜。まずは「技術ありき」というのがはるはるさんの考えなのですね。賛同します!
ありがとうございます!
技術に責任を持つのは当たり前のこと。本人が何だかわからないのに髪に色々塗られるのはお客さまにとっても不安に繋がります。
そういった前提を持っていただきつつ、今回はお話させていただきますね!
──楽しみです!よろしくお願いしま〜す!
処理剤を大きなカテゴリで分類すると…?
──今回は、はるはるさんがリアルにサロンワークで使用している「処理剤」について教えていただきます!
処理剤を大きく分けると、どんな風に分類されるのか教えていただけますか?
はい!
大きく分けて、7つくらいに分けられるのですが…
1)ケラチン系
2)CMC系
3)レブリン酸系
4)疎水物系(セラック、タンニンなど)
5)バッファー剤
6)アルカリクリーム
7)その他
一つずつ、どんな役割を持っているのか簡単にご説明しますね!
①ケラチン系
よく聞かれる成分かと思います。
ケラチンは簡単に言うと、タンパク質の一種。複数のアミノ酸が結合してできています。
ケラチン系の中でも低分子・中分子・高分子の3つが存在します。それぞれの得意領域としては、
・低分子(分子量1000未満)→ハリコシ
・高分子(分子量1万以上)→柔らかさ
を補うような役割です。中分子(1万未満)は、両者の中間のようなイメージですね。
②CMC系
こちらもよく聞かれる成分だと思います。
CMCは水や油分、薬剤が通る道。また髪の水分を保ち、コントロールしてくれる存在です。
例えると化粧水のようなイメージだと思っていただけるといいかなと思います。他の成分が入りやすくなるような導入剤として僕は捉えています。
例えばカラーとあわせて使用することでムラなく発色ができたりしますね。
③レブリン酸系
レブリン酸はデンプン由来の成分です。
健康な髪の水分量は多くても約12%程度、と言われていますが、
この水分に対し、「結合水」と「自由水」があるということをご存知でしょうか?
・自由水:髪を自由に出入りする水のこと 約7%
・結合水:髪の毛の中に残っている水 約5% ⬅︎髪のダメージがあると、これが少なくなります
上記の状態はあくまでドライの状態。ウェットにした場合には+18%が増えますが、乾かすと無くなってしまいます。
前置きが長くなりましたが、このレブリン酸は「結合水」を増やしてくれるものです。
④疎水物系
ダメージすると、髪の毛にダメージホールと言われる穴があきますよね。そのダメージホールを疎水物でカバーすることで強度を補ってくれるイメージです。
セラックはカイガラムシの分泌物からつくられる物質、タンニンは種子などに含まれる成分ですね。
⑤バッファー剤
前処理か後処理で使用することが多いもの。ブリーチをした際に残っている金属イオンが残留しているとそのあとの薬剤の効きムラができたりしますが、そう言ったものを防ぐ役割として最近使われていますね。
⑥アルカリクリーム
僕の場合にはバージン毛に縮毛矯正を行うケースがありますので、その際の「ジャブ」として使用するケースが多いです。アルカリによって膨潤するので、浸透を早めたり、pHをアルカリに傾けたい時に使用しています。
⑦のその他の成分は、以下のパートで説明しますね!
はるはる直伝! リアルに使っている処理剤とその主な用途
──ここまでで「処理剤」の全体像が見えてきました!
では実際にはるはるさんが使っている商品について教えてください!
お任せください! では、
「僕が使用している意図」のポイントをメインに、お伝えさせていただきますね!
先に説明した6つの成分ごとに大まかに区分けしていますが、複合的に様々な成分が入っているという前提で、「僕的にこの商材のここの成分に着目して使用している」という認識で捉えていただけるとありがたいです!
①ケラチン系
●高分子系ケラチンのアイテム
MOUU XXX(ムー トゥレインタ)→高分子系
Fairy Tale(フェアリーテイル)→高分子系
KERA FOUCE(ケラフォース)→高分子系
はるはるメモ
これら3つは「高分子」ケラチンに分類されるアイテム。
「高分子」のケラチンは、ダメージをしっかりケアしたいとき、細毛・軟毛の方へのアプローチ、サラサラな質感にしたいときに使う。
*はるはる的使い分け
・ムー トゥレンタ → シャンプーと同時使用し「ケアシャンプー」として使う
・フェアリーテイル → カラー剤と同時使用する
・ケラフォース → 中間処理剤として使用する
puel sirop プロット(ピュエル シロップ プロット)→高分子または低分子
はるはるメモ
加温状態では「高分子」ケラチン、常温では「低分子」ケラチンとなるため、加温されるメニューか否かで使い分けている。
僕が取り扱っているアイテム中、「低分子ケラチン」となるのはこのピュエル シロップ プロットのみ。
ラポール01→ケラチン+CMC
はるはるメモ
こちら「高分子ケラチン」と「CMC」が組み合わさっている処理剤。導入剤としてのCMCの役割とサラサラな質感を狙う高分子ケラチンの役割を併せ持つ。
②CMC系
THE CMC→CMC
シェルパ ボンドメモリア リキッド→CMC
シェルパ ベースエイド ミスト→CMC
はるはるメモ
事前に使用する「前処理」としてはもちろん、「THE CMC」のようなリキッドタイプはヘアカラーと同時に使用することもでき、他のものを入りやすくする役割を果たす。
アンジー→CMC+レブリン酸
はるはるメモ
これはCMCだけでなくレブリン酸が配合されている商品。レブリン酸はヘアカラーの流出を抑えてくれたり、アイロンの熱によってハリコシを出してくれたりするので、汎用性が高いですね。
③レブリン酸系
ベホマ→軽め質感
ODIN ROYAL(オーディンロイヤル)→重め質感
はるはるメモ
レブリン酸の説明は前述したが、「結合水」を増やしてくれる役割。
上記の2つは、お客さまが仕上がりに求める重さ・軽さの質感の違いで使い分ける。
LIMITED→架橋力高い!
はるはるメモ
こちらはレブリン酸に加えて「炭酸エチレン」+「炭酸プロピレン」=炭酸アルキレンという成分が入っている。
この成分は架橋力が高い。水とのなじみの悪い疎水性部分にも浸透し、アイロンなどの熱処理でうねりを抑え、扱いやすくなる。
④疎水物系
ラポール00 → セラック配合
エイミィネクター→セラック配合
はるはるメモ
これらは「セラック」配合の商材。
・ラポール00は他のラポールライン(01、02、03)との組み合わせで使用する
・エイミィネクターは「アンジー(CMC+レブリン酸系)」や「ベホマ(レブリン酸系)」との組み合わせで使用する
ケブラリンク→タンニン配合
はるはるメモ
架橋力が高いのが魅力。しかし、ブリーチベースに使用するとタンニンの成分で赤くなるため、暖色系カラーに使用するなら問題ないが、寒色系・ペールトーンに使用すると仕上がりの色に影響が出る。
⑤バッファー剤系
シェルパ クリアアップフォーム
はるはるメモ
特にブリーチ毛やハイトーン毛は金属イオンが残っている可能性が高く、それが薬剤の効きムラに繋がることがある。前処理・後処理でこれらの金属イオンを取り除く。
⑥アルカリクリーム
PIECE ALPHA
はるはるメモ
主にバージン毛に縮毛矯正を行う際に使用。浸透を早めたり、pHをアルカリに傾けてくれる。
⑦そのほか
CHITO FORCE→キトサン配合
はるはるメモ
主に中間・後処理用。アイロンを入れる前などに振りかけることで、適切な水分量を髪に残してくれる。アウトバストリートメントとしても◎
モンキーマジック→サルファイト配合
はるはるメモ
主に髪表面にアプローチする商品。酸性系のパーマで使用することが多い。
THE CYC →システイン配合
はるはるメモ
カールをつけるパーマで使用することでリッジの強いクルンとした仕上がりに。
ラポール02→エタノール配合
はるはるメモ
ラポールは00〜03まで出ていて、01はセラック、03はCMCが配合されているが、この02は前述の成分を浸透させる役割を果たしてくれる。
まとめ
いかがでしたか?
これだけの商材があることに驚きですが、一つひとつの特徴を理解し、使いこなしているはるはるさんはさすがの一言に尽きます。
処理剤を選ぶとき、なんとなくで選ばずに
1)お客さまが求めるゴール(質感など)は?
2)それに必要な成分とは?
という2つの点で考えていくことが大切です。
加えて、似たような成分が配合されていても、処理剤同士の「相性」というものがあります。相性の良い組み合わせでないと、理想的な結果に繋がりにくいのも難しいところ。
冒頭でもお伝えしましたが、これらのアイテムは、技術をよりよい方向にブーストさせるためのものです。
日々変わっていく情報や知識をキャッチしながら、お客さまに対してより良い施術ができるよう、自分をアップデートさせていくことも大事です!a
──まずは技術の向上あってのこと、ということですね。
今回はたくさん教えていただきありがとうございました〜!