2020年4月、緊急事態宣言の発令以降、お客さまが1人も来ない日もあった。売り上げは昨年比60%減。
「何かしなければ・・・スタッフの雇用を守れない」
スタッフを守りたい一心で、目の前の資金を稼ぐためにYouTube投稿を始めたarea(エリア/東京都江東区) 代表取締役社長 熊坂裕一郎さん。
このYouTube投稿が髪質改善メニューを研究し、髪に長年向き合ってきた熊坂さんが次のステージに進むきっかけとなった。
それから3年、「ECが爆発的に売れ」「売り上げは4倍」。「平均客単価も上がり」「週休3日で月給100万円のスタッフ」も出てきている。
YouTube投稿を始めてから3年、熊坂さんとareaの取り組みを振り返る。
20年以上研究してきた髪質改善
areaは東京の東側、錦糸町も近い東京の下町に3店舗を構える。オーナーの熊坂さん(YouTubeネーム/KUMAさん)は、20年にわたりクセや髪質に悩む女性たちに向き合ってきた。
まだ「髪質改善」という言葉もなかった10年以上前、悩んでいるお客さまに対して思い通りの仕上がりを提供できなかった悔しさから、髪質改善メニューを徹底的に研究・開発した。
髪質のせいで人生を楽しめないお客さまを1人でも救いたい。その想いからケラチンやヘマチンを仕入れ、徹底研究。12工程のオリジナルプロセスを完成させた。
65歳のお客さま
Before
After
→ 個人差なくスタッフ全員同じ技術レベルで提供している「12工程の髪質改善メニュー」は今夏、「ボブログ」で公開予定!
現在、KUMAさんが施術する髪質改善メニューのモデルを募集しています!
以下のリンク先からLINEに友だち追加していただけると募集要項が届きます。
https://liff.line.me/1660703831-za7llkwr/landing?follow=%40144andpj&lp=Vp5VXo&liff_id=1660703831-za7llkwr
モデル募集動画はこちらから↓
※2023年6月25日加筆
ヘアカラーはハーブカラーやヘナカラーなど、刺激の少ないメニューを揃え、72歳でこのツヤ髪を実現!
本当に70代の方であることが動画を見るとわかります(動画収録時は70歳)!
YouTubeでターゲティングが明確に
YouTubeを始めた最初の半年は視聴数が全く伸びませんでした。
慣れない動画撮影や膨大な時間を使う動画編集・・・。もうやめようかと挫折しそうにもなりました。
けれども、YouTubeを始めて3カ月後にYouTubeを見て来てくれた遠方のお客さまがいらっしゃって。さらに「遠くてareaには行けないけれども、髪をキレイにしたい」など、髪に悩む女性たちの生の声を聞き、なんとかしてあげたいという思いで継続してきました。
成果を感じ始めたのは、YouTube「美容師くまのこだわりTV」を始めて半年が経ってから。
「今日は髪質改善メニューをやるわよ!」と熊坂さんの提案前から、髪質改善メニューをヤル気満々で来店する新規客が多くなった。
YouTubeを見て予約を入れてくれたお客さまは、「こうなりたい」という明確な目的を持って来店する。
熊坂さんがこれまで研究を重ねてきた髪質改善メニューが大きな実となり、コロナ禍のピンチをチャンスに変えられる未来図が見えた。
集客サイト依存型からの脱却図である。
コロナ禍の収益アップのために始めたYouTubeですが、やってみたら違う世界があるな!と気がつきました。
狙った層が多く来店するようになったことが一番の功績でしたね。
熊坂さんの客単価も大きく変わった。YouTubeを始める前は約1万の客単価だったが、現在は3万〜4万を支払う顧客が多い。
サロン全体でも6,000円だった客単価が1万6,000円まで向上した。
YouTubeの再生回数45万回の動画も出るなど10万再生を超える動画も増え、チャンネル登録数は1万5,000人になった。
【YouTubeを始めて得られたこと】
① 狙った層が来てくれるようになり、新規客の集客方法が変わった
②客単価が大きく向上
リピート率99.3%のEC
さらに、YouTubeで得た大きな副産物が物販だ。
「距離があってareaに来られない遠方のお客さまに、7年かけて販売までたどり着いた自社のシャンプーを届けたい」
「美容師KUMAのこだわりTV」の視聴者はBASEでつくったインターネットショップに飛んだ。
BASEの1カ月の購入客は約500人、リピート率は99.3%と高い。
美容室専売品だけで毎月600〜700万円を売り上げ、BASE全体のランキングで過去最高30位を記録したことも。Amazonでの販売も含むと売上額は1000万円を超えるという。
中でも、自社のシャンプー「エリアプレミアムシャンプー」は2年間で販売累計20万本を達成した。
さらにYahoo!ショッピングでは、美容以外の商品を販売したいという問い合わせが1日2〜3件くる日もあり、現在では美容以外の家電や人工芝などさまざまなジャンルの取り扱いが増え、委託の商品や自社の商品など全てを含めると物販売上の合計は2000万円を超える。
ECがこれほどまで好調な理由はどこにあるのだろうか?
・YouTubeにおける髪のプロのアドバイスが響いた
・悩んでいる人にフィットした
・商品力の高さ
絞るならこの3つかなと思います。
さらに、YouTube、LP(ランディングページ/検索や広告から流入してユーザーが最初に閲覧するWebページ)、EC、MEO、Google広告などデジタルマーケティングに関わってくれる外部コンサルティグをそれぞれに配置し、熊坂さん自身もロジックでEC売上が上げられるように、アルゴリズムを相当勉強していたことも1つの勝因と言える。
ECの発送はすべて外部委託。その他に10名のarea専属のEC外部チームがあり、受注管理や商品の画像アップ、分析などを行なっている。
YouTube投稿は2022年秋でいったん小休止し、熊坂さんはLPを用いたEC戦略の次なるフェーズに進んだ。
1年と期間を区切り、年間5億を目標にEC戦略を立てている。
【YouTubeを始めて得られたこと】
① 狙った層が来てくれるようになり、新規客の集客方法が変わった
②客単価が大きく向上
③ECが大きく売上に貢献
月給40万円が100万円に
来てくれるお客さまが満足してくれること。そして、スタッフが長く働きやすいサロンを目指している熊坂さんの営業スタイルは、「店はミニマムサイズで運営し、高い技術を提供すること」。
17〜18時には閉店するareaだが、EC売上や客単価の向上が寄与し、コロナ前の約4倍の売上を達成。
週休3日で月給100万円を実現するスタッフも2名出てきている。
areaは年数の長いスタイリストが多く、アシスタントはいません。
客数を増やして、予約をぎゅうぎゅうに詰めてでまわしていくよりも、ゆったりとした営業で、美容師が40代〜50代になっても長く働けるサロンを目指しています。
「いくつになってもツヤ髪に」がコンセプトのため、客層は30〜40代がメイン層。年配の方だと70代くらいまでの方が全国からいらっしゃいます。
髪に悩む方やパーマやブリーチで失敗されてしまったお客さまなど、中には九州から来店される方も。
「なんとかして髪をキレイにしてほしい」と願う気持ちは絶対に壊したくないという思いで、どんな髪質のお客さまがいらっしゃっても、スタッフが全員同じレベルの技術を提供できるようにしています。
【YouTubeを始めて得られたこと】
① 狙った層が来てくれるようになり、新規客の集客方法が変わった
②客単価が大きく向上
③ECが大きく売上に貢献
④スタッフは週休3日で月給100万円を実現
誰かのために生きる“KUMAミッション”
オーナーは皆、スタッフのためになることをしたいと思っています。
でも、実際は数字が上がっていないとできないことも多いですよね。
僕の場合はたまたまYouTubeへのチャレンジによってECが伸び、客単価が上がり、スタッフの給料に還元することができるようになりました。
けれどもYouTubeは労力がかかり、再生回数を稼ぐのは簡単ではありません。動画をアップし続けなければいけないし、疲弊もします。
それだったら「美容業に集中した方がお客さまのためになる」というのが、ぼくの美容師としての正直な意見です。
結局は「何のために生きるか?」ですよね。
僕の場合は、それがスタッフが長く働ける環境づくりであったと思います。
「髪質が変わって人生が変わった」
「彼氏ができた」
「年齢を重ねても若々しくいられる」
熊坂さんのところには、手紙やメッセージがたくさん寄せられる。
喜んでくれる「誰かのために生きる」。
この“KUMAミッション”があってこそ、数字は後からついてくるという。
- Profile
- 熊坂裕一郎(くまさかゆういちろう)
株式会社THREE ARROWS(東京都江東区) 代表取締役社長
1977年神奈川県生まれ。国際文化理容美容専門学校卒業。都内の美容室2店舗を経て2008年に株式会社THREE ARROWSを設立。東京都江東区に美容室areaをオープンする。現在は3店舗を展開。2011年より髪質改善メニューに力を入れ、プライベートブランド「エリアプレミアムシャンプー」の開発・販売も行う。YouTubeチャンネル「美容師くまのこだわりTV」はチャンネル登録者数1.5万人。
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