ボブログからBOBさんに質問!美容室ECを成功させる“DX化”3つのヒント

ボブログからBOBさんに質問!美容室ECを成功させる“DX化”3つのヒント

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美容の技術売上には限界がある。ECやDX化などのテクノロジーを通して、美容師がもっと豊かになる可能性を探りたい。

ECを導入したものの「提案しきれていない」という声も聞こえてくる美容室EC。

その背景には、「サロンでの店販売上」と「ECによる店販売上」を融合させてスタッフを評価できないなど、評価の問題もありそうだ。評価を可視化し、現場の美容師がより商品が勧めやすく、モチベーションが上がる店販のあり方はないだろうか? 


今回は業界外に視野を広げて、アパレル業界を中心に2,100以上のブランドが利用するスタッフDXアプリケーションサービス「STAFF START」を開発したBOBこと、株式会社バニッシュ・スタンダード 取締役CXO 大貫BOB隆之さんにアパレル業界のECの取り組みやDX化について尋ねた。

ボーリー

「BOBさん」とお呼びしてよいですか?  BOBつながりで、いきなり親近感です(笑)。

BOBさん

学生時代からみんなにBOBと呼ばれてまして(笑)。自分の名前が媒体名って、なんだか照れますね・・・(笑)。

大貫 BOB 隆之 / 取締役CXO
Profile
大貫 BOB 隆之

取締役CXO

1989年9月7日茨城県生まれ。2012年よりグリー株式会社にて大規模ソーシャルゲームの開発、ゲーム内新規企画のディレクションに従事。その後、株式会社VASILY(現 株式会社ZOZOテクノロジーズ)にて数百サイト規模のクローラーやアフィリエイトシステム等を開発。アパレルブランドのEC開発、フリーランスを経て2016年株式会社バニッシュ・スタンダードに参画。STAFF START開発責任者としてUI/UX設計から開発までを行い、2018年 取締役CPOに就任。2022年より現職。

Contents

店舗売上の100倍! 売れるECの共通項

BOBさんに聞いた、アパレルブランドで「スタッフ投稿から売れているEC」のポイントは3つだと言う。

【スタッフ投稿から売れているECの共通項】

①投稿数………投稿数が売り上げを左右する

②投稿クオリティ……実店舗の接客のようにお客さまのニーズに答えられている投稿

③商品カバー率……EC上の多くの商品に写真やコメントの投稿が多く紐づいている

いずれも「継続力」にかかっており、習慣化が鍵となる。



BOBさん

ECにおける投稿クオリティとは、単純に写真を撮って投稿するだけでなく、実店舗の接客を意識した投稿をどれだけしているかということ。

美容師さんも同じだと思いますが、普段から美容室でお客さまと話しながらニーズをつかんでお勧めして、商品を購入してもらったり、メニューをプラスしたりしていますよね。

美容室で聞かれそうなことを写真や動画で伝えてあげられていることが、投稿クオリティの高い人の特徴と言えます。

同社が提供するスタッフDXアプリケーション「STAFF START」を利用する企業の中には、月間500万円以上を売り上げるスタッフが731名月間1000万円以上を売り上げるスタッフが235名(2022年8月末時点のデータ)おり、店舗売上の100倍の個人売上実績を記録する店舗スタッフも出てきているという。



「STAFF START」は同社代表取締役 小野里寧晃氏がECベンダーとしてバニッシュ・スタンダードを設立した当初から温めていた新事業。店舗も喜ぶECのあり方を目指したいという思いのもと、店舗スタッフの活躍の場を広げるために発案された。

BOBさん

当時フリーランスだった僕も「現場の第一線で仕事をしている人を守りながら、ブランドが伸びていく形を構築したい」という小野里の想いに共感し、「じゃあ僕も一緒につくります」と(笑)。

2016年にサービスをローンチし、そこから「コーディネート投稿機能」や「商品レビュー機能」などさまざまな機能を追加してきました。

根底にいつもあったのは、「働く人を守る」ということ。

これまで評価されにくかった店舗スタッフのオンラインでの接客やSNSの頑張りが、徐々に評価につながり始めました。



こちらはSTAFF STARTのサービスビジョン。

好きで選んだ仕事を諦めずに続けられる仕組みを「STAFF START」を通して提供。

現在ではアパレルブランドだけでなく、コスメブランドや食品業界、サービス業界など、多くの業種で「STAFF START」が採用されている。

【スタッフDXアプリケーションサービス「STAFF START」】

2016年9月からサービスがスタートした「STAFF START」には、それまで商品と説明、価格が並んでいただけのECサイトにプラスして、「店舗スタッフを軸に」商品の魅力がもっと伝わる機能が多く搭載されている。

「STAFF START」はスマホに導入する業務用アプリ。契約した企業の店舗スタッフは自分のスマホにアプリをダウンロード。店舗スタッフ個人がアプリを通して簡単に投稿ができる。

バーコードを読み込むことで簡単に商品を紐付けることができ、各ブランドの承認フローを経て、自社のEC上に投稿が表示される仕組み。

Instagram投稿もでき、SNSでの発信も同時に行える。


美容室の場合だったら、お勧めした商品をお客さまが店頭で購入しても、商品のQRコードを渡して自宅でECで買っても、LINEで買っても、InstagramやTikTokを経由して買っても誰の成果かを一元化できる。

アパレル業界でオンライン接客やSNSの評価があたり前になる文化がつくられてきた背景には、店舗スタッフを主役にする「STAFF START」の存在があり、現在ではオンライン接客経由の売り上げの7%をインセンティブとして付与しているアパレルブランドもあるという。

BOBさん

投稿からの売上計測だけでなく、SNS計測機能もあるので、個人のSNS発信や物販の金額も計測できます。

SNSで呼んだ集客も測れるので、今後は物販だけじゃなく、美容室の予約の計測なども可能です。

【「STAFF START」の好循環スパイラル】

・EC売上が還元されるから、モチベーションが上がる
・優秀な人材が集まる
・店舗の売り上げが上がる
・ECの売り上げが上がる



【コニュニケーションに特化した「LINE STAFF START」】

2021年11月よりスタートした「LINE STAFF START」は、LINE株式会社との協業サービス。

店舗スタッフがLINEで顧客とつながり、商品を紹介して購買されることで評価につながるサービスで、企業がスタッフと顧客のやり取りを把握できる。

アパレルの店舗スタッフは顧客にセールの案内をLINEで送ったりすることもあるため、LINEでのコミュニケーションも評価に含まれ、企業側もやり取りが可視化できるコミュニケーションツールが必要だと開発された。

※画像はイメージです。

顧客と密なつながりがある業種や、顧客に合う商品をカスタマイズしてお勧めする業種と親和性が高いサービスのため、美容室ECと相性が良さそうだ。

離れていても“親身”

同社が目指す店舗スタッフの価値向上には「富と名誉」が重要だと考えている。「STAFF START」によって「富」を提供し、名誉をつくるのが接客コンテストの『STAFF OF THE YEAR 』。

店舗スタッフの人間性や接客技術、アパレルが好きだという想いを評価し、未来の店舗スタッフを増やすことを目的に、2021年から開催している。

2022年度は1,300ブランド、8万人が参加。一次予選、二次予選を勝ち抜いたファイナリスト16名がステージで日頃の接客シーンを披露。LIVE視聴者は約19万人となり、話題となった。

『STAFF OF THE YEAR 2022』ファイナルは3つの審査を経て、グランプリが決定した。

LIVE接客(2分間)・・・ LINE LIVEを使用して視聴者のコメントに応えながら、いかに商品を購入したい気持ちにさせることができるかがポイント。

接客ロールプレイング(4分間)・・・お客さまのニーズを汲み取りながらアイテムを提案する。審査のポイントは汲取力。

③自己ピーアール(90秒)・・・店舗スタッフとしての自身の想いをスピーチ。



評価されるのは、接客力だけでなく、人間力や店舗スタッフとしてどういう想いで仕事をしているかという姿勢。

モデル・タレントのアンミカさんなど4名の特別審査員の得点とLIVE視聴者や会場からの一般投票を合計した点数が最も高い店舗スタッフがグランプリに輝いた。

グランプリに輝いたBEAMS/ビームス 恵比寿のHeg.さんは、実店舗もECもどちらも「楽しむ」ことにこだわった接客スタイル。

授賞式では「店頭にいる私たちがデジタル接客をするから伝えられることが必ずある」と、前向きに仕事を楽しむ様子が伝わるコメントが会場の共感を呼んだ。

ECでは距離を感じさせない親身な接客で、手元に商品がなくても自信を持って購入できるように「安心と自信」を与えられるデジタル接客を心がけたという。

続けていれば、どこにいても、誰でもチャンスがある

「STAFF START」経由のスタッフ1人あたりの売り上げが高い地域は富山県が1位。2位は群馬県、3位は栃木県と続く(2021年9月〜2022年8月のデータ)。

BOBさん

地方や郊外でInstagramのフォロワーが多い人もいる時代、東京の店舗スタッフだから売れるとか、地方だから不利とかはもうないですよね。そこはフラットかなと思います。

都心だけじゃなく、どこにいてもチャンスがあるEC。

さらに、今の時代は9頭身モデルのようなカリスマ店員じゃなくても、個性が輝く共感型カリスマ店員も多いという。

前述の『STAFF OF THE YEAR 』で5位を受賞した23区のAYANOさん。

AYANOさんは自己PRで「富山という地方に住んでいて、背が低くて、ファッションの参考にならなそうな人がここまで来れたのはSTAFF STARTでコーデを毎日あげ続けた発信力が大きい」とスピーチ。継続することの大切さと店舗スタッフの仕事の可能性を広めた。

BOBさん

憧れがあってファン化する場合もありますが、今は自分と近い悩みや特徴を持つ“身近な存在”がどんどんカリスマ化しています。

背が低いとか体型の個性があって、お悩みを一緒に解決できる人が支持される時代になっていることはSNSを見ても感じますし、データとしても出ています。

美容室もきっとそういう時代になってきていますよね。

DX化3つのヒント

店販を勧めるのが得意ではない美容師も、コミュニケーションが苦手な美容師も、お客さまの悩みを解決する知識や手法はたくさん持っていたりする。

集客のために自分の時間を削ってSNSに注力している昨今だが、仮に店販比率が30%を超え、労働集約型産業からの脱却を目指すことができたら、少ない客数で技術や接客の精度を高めることもできる。

美容室のECやDX化は、美容師と顧客双方の時間価値の向上にもつながる取り組みなのだ。

BOBさん

テクノロジーを駆使することで、実店舗の場合は1日100人しか来られなくても、ECなら何万人との接点が持てます。

だけど、僕たちが提供しているテクノロジーはあくまで補助だと思っていて。テクノロジーで対象を広げることはできますが、そこで最後にお客さまに伝えているのは現場の人たちなんです。

機能面の好みはデータ化できるけれど、感情が入るものをシステム化するのは難しく、「直感的な好き」や感情で判断しているものは数値化できない。だから最後はやっぱり「人」なんですよね。

美容師さんの個性で人を集めたり、商品を紹介したり、これは美容師さんの力じゃないとできないことだと思います。


【まとめ】EC成功の鍵をにぎる3つのヒント

①DX化で「評価」を一元化
②投稿の「継続力」
③最後は、やっぱり「人間力」

YAHAGI
執筆者
YAHAGI

ほぼ毎日WEB記事、ときどき単行本。

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