私だけど、私じゃない顔。
自分でも気づかない魅力を引き出してもらえたら、もっと自信が持てるはず。葉月さんの“オーラを引き出すメイク”に出会って「自信が持てるようになった」「人生変わった」そんな女性たちのビフォアフ投稿が話題だ。
日本はナチュラル思考だけれど、ミステリアスでクールな雰囲気に憧れている人が、実は多いと葉月さんは言う。
「叶えてあげるから、おいでよ!」
そんな葉月さんのSNSに導かれるようにNullを訪ねた。

2000年8月14日生まれ。大阪府出身。グラムール美容専門学校を卒業後、美容サロンメーカー、都内美容室を経て、フリーランスのメイクアップアーティストとなる。2023年6月、〈Null〉(ヌル)所属。ビフォーアフター動画がTikTokでバズり、インスタグラムで予約を開放すると数秒で埋まるほどの人気。

メイクで”かわいい”はいくらでもつくれる。けれども、葉月さんが大切にしているのは、「好き」を引き出し、寄り添うこと。
「ダークでミステリアスな世界観に憧れがある」そんな女性は実は多い。


「カウンセリングでは、その人の内面の弱い部分もすべて出し切ってもらいます。内面を引き出していくうちに、普段はナチュラルだけど本当はダークな色が好きだったり。でも『自分には、似合わないから』と諦めている人がとても多いんですよね」
“自分の好きなことをやった方が幸せか?”
”人目が気になるか?”
その人が感じる嬉しい方を選んで、メイクで表現していく。


“印象操作”を考えたり、メイクで表現するのが大好き。ラインやチーク1つで大きく変わる自分の中のルールと、引き出した内面を融合させて、葉月流の世界観はつくられる。
「コンプレックスが多い人にはコンプレックスから聞いて、『いけるよ! 絶対かわいくなります』って背中を押します。お客さまが自分の好みを見つけることができて、私はこれだ! と自信を持って歩けるようなメイクを続けていきたいですね」

強めのメイクやダーク系メイクの需要が増えたのは、K-POPの影響だと葉月さんは分析する。毒のあるメイクやダークミステリアスな世界観は、技術力がなければ「イタい人」に見えかねない。だから技術を磨き、完璧なメイクを追求する。

サロン勤務経験後、中途半端なことをしたくないと、23歳でフリーランスを選んだ。
「選んだ道が厳しすぎて最初は苦しかったけれど、そこまでしないと私のなりたい場所に辿り着けないと思いました」
そこからは貯金が尽きるまで、SNS発信と技術磨きに自分の時間のすべてを費やした。
葉月さんの人気が広まったきっかけとなったのが2022年3月に配信したティックトックのビフォアフ動画。「オーラを引き出すメイク」の継続投稿が始まった。
翌年、葉月さんの活動を面白いと応援してくれていたフウガさんがNullを立ち上げることになり、オープニングメンバーとしてジョイン。Nullに所属したのは、代表陣(松岡 諒代表、フウガ代表、川久保直明代表)のマインド力に惹かれたからだという。

「ここなら自分を成長させる学びがあると直感しました。フリーランスの孤独な世界を知っているからこそ、チームでやる方が私には合っているとも感じていて。メイクはヘアとは別の空間ですが、出勤したらみんながいて意見を出し合える。いつも勝手に元気をもらってます」


カラフルなつけまつ毛と目元のアクセントに使うネイルパーツは
葉月ワールドならではのアイテム。
予約は1カ月前にインスタグラムで解放。数秒で埋まってしまう。
メイクのみは2万5000円〜。葉月さんによるスタイリングとメイクレクチャー、撮影も含めて6万円のコースが人気だ。
サロンでは1カ月の目標売上があり、そこを目安に予約を取りながら外部の撮影やアーティストから指名の撮影も行う。特に若い世代のアーティストやミュージシャンは感性の近い葉月さんの世界観を気に入っての指名も多く、ベテラン勢も顔負けだ。



子供の頃から絵を描くことが好き。ティム・バートンの世界にハマり、きゃりーぱみゅぱみゅが付けていた目玉リボンを付けて登校。小6で「タレ目メイク講座」ブログを書き始め、中学からの夢はずっとメイクアップアーティストだった。

「好きなことはエネルギーを使わずにできる。でも、苦手なものは無理(笑)。運動神経の良い子が努力したら全国レベルになった姿を見て、私もそうなろうと決めて。私は絵やメイクが好きだから、努力と才能の掛け算で誰も辿りつけない存在になろうと思いました」
好きなことならインプットとアウトプットでかなり自分のものにできると気づいてからは、インプットしたメイクを高校時代や美容学校の友達にアウトプット。
“儚さ”と“強さ”が共存する、『似合う』を越えるメイクはこうして生まれた。


葉月さんのところに多く集まるのは、世界観のある人。「ミステリアス、ゴシック、ファンタジー」。儚く、異質で、オシャレな空気感をまとう。

好きを貫く女性たちに刺さるメイクを打ち出しながらも、自身は「マジョリティ」と「マイノリティ」の双方を必ず意識しているという。
「コアなものが好きな人も多いし、一般的なかわいいにも寄り添わないと広まってはいかない。みんなの好きなものも意識しています。なりたい顔は人それぞれだから、流行のメイクだけではなく、いろんなメイクを幅広く知っておく必要があるので、ジャンルにとらわれず情報を仕入れるようにしていますね」
時間が空くと原宿の@cosme TOKYOに足を運び、新アイテムをチェック。購入アイテムで自身のメイクを大きく変えてみることもある。
「何者かに成り切るのが好き。自信がないときも、メイクやファッションを変えて、自分でオーラを引き出している感じです。かわいいピンクのワンピースを着ることもありますよ。メイクや服で人は変わるし、強くなれると思います」


「私自身、メイクで自信をつけてきました。メイクは私を強くしてくれた手段の1つなんです」
日本では人の目が気になったり、本当の「好き」を表現しにくい文化がある。「自分の好きを貫いた方が幸せ」と考える葉月さんのマインドをメイクを通して広めていきたいという。
「日本の女性がもっと自由に好きなものを選べる世界になってほしい。メイクで心を解放してあげたいですね」

大バズりしたビフォアフ動画は1つのきっかけ。一時的なバズりではなく、フェイスtoフェイスで顔を見て、心に触れ、内面を引き出すことを大切にしてきた。葉月さんのメイクは、訪れた人の人生を変え、多くの人の心に響いている。

「私がなりたいメイクアップアーティストは、広く一般認知を得て、日本一有名なメイクアップアーティスト。“アーティストを越えたアーティスト”になって、日本はもちろん海外でも、世界中の人の背中を押してあげられる存在になりたいですね」
