高機能ドライヤーは美容師にも必要?〈ダイソン〉の最新機を使ってみた話

高機能ドライヤーは美容師にも必要?〈ダイソン〉の最新機を使ってみた話

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連載:操作イトウの〈美容師の本音〉

現役フリーランス美容師の、操作イトウのコラム連載。
「街の美容師さん」目線で、業界のエトセトラをお話していきます。

illustration:an

昨今、進化が著しい高機能ドライヤー。

読者のみなさんは、最新の進化に追いつけていますか?

実は今回、最新ドライヤーで毎回世間を賑わすダイソンさんから、最新のドライヤーをお借りすることができました。

ハイエンドなイメージのあるダイソンのドライヤーですが、4月に発売した最新版『Dyson Supersonic r ヘアドライヤー』を美容師目線でレビューしていきます。

ドライヤーとは思えないフォルム

この一見してドライヤーとは思えないフォルムと、絶妙なカラーリング。

従来の筒状のヘッドから『r』型にデザインが一新されたことで、業界を問わず驚きと注目を集めています。

また、“真珠”からインスピレーションを受けたというセラミックピンクは、ローズゴールドの光沢とも相まって非常に高級感があります。

さすがはダイソン。スタイリッシュすぎるデザインは、インテリアとしてドレスルームに置いても素敵です。

まず驚くのは、サイズ感と軽さ

このデザインは、人間工学に基づいています。それゆえ、ユニークな形なのに、手に持った違和感も操作性の難しさも感じません。

そして、ドライヤーとしてのサイズ感も小さめで、不快感もなし。

実際、従来機よりも30%小型化、20%軽量化され、重さはわずか 325g 。形は違えど、家庭用の小型ドライヤーと変わらないサイズといえます。

パワフルなヒーターと、直感的な操作性

『r』型になった理由のひとつが、流線形ヒーターの採用です。リリースによると、このユニークな曲線部がドライヤーから出る気流の温度のムラを防ぎ、過度な熱ダメージから髪を守ってくれるようです。

本体のほかアタッチメントの「速乾ツール」、「低温ツール」、「なめらかツール」が同梱されています。価格は税込59,000円(編集部調べ)

そして噴射口には、付け外しがスムーズな3 種類のアタッチメントが付属し、用途に合わせてカスタマイズすることも可能です。

このアタッチメントは使い分けが簡単で、ボタン操作も分かりやすいため、モード変更も直感的に理解できます。

左が風量、右が温度で各3段階で調節可能。

操作イトウの正直レビュー

では、手元に届いたDyson Supersonic r™ヘアドライヤーを、実際の営業と自宅で半月ほど利用してみた僕が、正直にレビューします!

噴射口が小さめで風を当てやすく、早く乾く

ダイソンのドライヤーといえば、風力が強いこと。最新機でも、このダイソン印は継承されています。

しかし美容師からすると、「風力が強いドライヤー」は風を当てるのが難しくなりがちです。

風の向きを少し間違えると、髪がバシバシお客さまの顔にかかってしまう、そんな乾かし方は御法度。

ですがこの点において、僕の体感では「狙った位置に吹きかけやすい」と感じました。

コンパクトで噴射口が小さめに設計されているからか、注意深く操作する必要はあまりなく、扱いやすい印象でした。

ちゃんと熱があるから、早く乾く

そしてDyson Supersonic r™ヘアドライヤーは、熱風で乾かすことができるのも、大きな強みです。

昨今、さまざまな高機能ドライヤーが販売されていますが、「ツヤツヤになる」効果を重視しすぎて、なかには風と熱が弱くなってしまうモノもあります。

風と熱が弱くなれば、乾かす時間は遅くなってしまう…。

ところが、ダイソンの場合はしっかりと熱を噴射できるため、「風力+熱+狙ったところに当たる」という、早く乾く条件をしっかり押さえていました。

モーター音が小さく、甲高い音がしない。
だから不快感もない

こちらも高機能ドライヤーによくあるのが、強風を実現するためにモーター音が大きくなる問題です。

これも「ツヤツヤになる」効果の代償です。風と熱が弱くなることをカバーするように強風のモーターを搭載するのですが、その結果、モーター音は大きくなってしまう。

そのうえ噴射口に「ツヤツヤになる」フィルターをかませているため、なかには「甲高い音」になるモノも多いのです。

ですがDyson Supersonic r™は、風の音は強いものの、モーター音自体がかなり控えめ。

「甲高い音」に至ってはかなり小さいので、不快に感じる方も少ないのではないでしょうか。

おうちでうるさいドライヤーは、不快

ただでさえ、大きな音の鳴るドライヤー。

おうちで使うとなると、ペットが嫌がってしまったり、テレビが聞こえなくなるなど、あまり好ましいことではありません。

我が家でも、赤ちゃんを起こさないように「深夜のドライヤー」にはかなり気を使っています。

もちろん美容室でも、音が大きいと会話はほとんど聞こえなくなりますし、何より「耳元でキンキン鳴るのは不快」と感じるお客さまの意見も聞くことがままあります。

そんなドライヤーの音がセーブされていることは、特に生活面でのメリットが大きいかもしれません。

気になるところもあった

さて、使い勝手の良さが際立つDyson Supersonic r™ヘアドライヤーですが、美容師としてたくさんのドライヤーを扱ってきた身としては、気になるところもありました。

アダプタが、デカい!

まず驚いたのは、コンセントに刺すアダプタが見たことないほどデカかったことです。

見た目はスタイリッシュですが、おおよそACアダプタが縦に2つ並ぶくらいの大きさがあります。

しっかりとした風と熱を実現するためのモノだと推測しますが、一般的な洗面所だと、このサイズ感はコンセントにうまく挿せないこともありそうです。

一般家庭では、コンセントが鏡に隠れた部分に設置されていることもありますから、十分なスペースがあるか事前に確認しておきたいところ。

美容師にとっては、
ブローの仕方にコツがいる

この本体の『r』型は、もちろん今まで経験したことがない形状です。ですが違和感はなく、ドライの段階では全く気になりませんでした。

ところが、美容師目線でのブローに関しては、噴射口が曲がっているため今まで通りとはいかず、少し慣れが必要だと感じました。

そこで、お借りしている間に試行錯誤してみたブローの仕方もご紹介します。

①まず、アタッチメントは「なめらかツール」を装着。風と熱はボタンでMAXに設定します。

②ドライヤーの持ち手は、ペンを持つようにするのがいいと思います。

③この時に、左の腕にコードを引っ掛けるようにしましょう。

「お客さまの左サイド」をブローする際に、垂れたコードがお客さまにぶつかりやすくなるので、左腕に絡めるとスムーズにブローできます。

ドライヤーの柄に毛束を置く、
あのワンクッションができない

ですが、解決できなかった点も一つ。

ブローの際に、「いったん、毛束をドライヤーの噴射口の柄の部分に乗せる」方も多いと思います。

この、持ち替えるためなどに使う「ワンクッション置くモーション」は、形状の都合でできませんでした。

そもそも「できなくてもなんとかなる」やり方の一つですが、このやり方を好んで使う方は、何かやりやすい方法を模索する必要があるかもしれません。

ドライヤーの技術がある美容師に、高機能ドライヤーは必要?

読者のみなさんの美容室では、どんな基準でドライヤーを選んでいますか?

正直、「ウチは5000円くらいの定番のアレだよ」というお店も多いのではないでしょうか?

高機能ドライヤーは確かに機能が優れているので、費用対効果は高いと思います。ですが一台が高級だと当然、導入する初期費用は無視できません。

美容室の規模によっては何台も必要になりますし、普段のサロンワークでガンガン使っていれば、故障のリスクも高まります。

機材の修理代って、バカにならないですよね

手が滑って落としちゃうのはもちろん、アタッチメントが欠けて使えなくなったり、髪が入って焦げたり。

修理に出せば、その間は使えなくなってしまいますし、日々「材料費の計算」に勤しむ美容師からすれば、機材の修理代はバカにならないですよね。

これが定番のモノなら、乾かすのにも充分な機能が担保されるし、丈夫で修理もあまりなく、なんなら買い換えた方が安く済んだりすることもあります。

だからこそ、高機能ドライヤーがイイものであることは理解していても、導入コストが高いため「サロンワーク用としては必要ない」と判断することも、妥当な判断だと言えます。

高級ドライヤーは、
お客さまの「体験価値」に繋がる

ですが、僕も今回の検証で改めて感じましたが、高機能ドライヤーが持つ「お客さまへのパフォーマンス」としての効果はとても大きいです。

実際、営業中にDyson Supersonic rを使用するなり、ほとんどのお客さまから「それ、ドライヤーですか??」とツッコまれました。

昨今、あらゆる分野で「体験価値」を重視したプロモーションをする商品は多くなっています。

そして、今やSNSで広く情報を得ている感度の高いお客さまにとって、高機能ドライヤーは試してみたかったモノの一つでもあります。

品質がイイのはもちろんのこと、消費者の琴線に触れるような「使うだけでテンションが上がる」「所有する喜び」を満たすモノは、とても重要視されるようになりました。

そういったモノを探しているお客さまにとって、特別な「美容室での体験価値」になることでしょう。

最新ツールでライフハック!

今回のように「最新ツール」を手に取ると、技術の進化には驚かされるばかりです。対して、美容師は技術職だからか、同じアイテムをこだわって使うことが多いと思います。

すると、実は自分が昔から使っているソレが、最新ツールの出現によって既に“オワコン化”してることもありえます。

実際にみなさんも、なんとなく使っていた“いつものモノ”を替えてみたら、「一気に作業効率が上がった!」なんてご経験、あるのではないでしょうか?

ドライヤーをはじめ、アイテム一つ一つにも定期的に目を向けてみると、思わぬライフハックに出会えるかもしれませんね。

操作 イトウ
執筆者
操作 イトウ

東京都二子玉川を拠点にする30代美容師。 『ヘアスタイルはロジックで美しく、カッコよくなる』『ステキな美容師さんに出会ってほしい』をメインテーマにしたブログをnoteにて執筆。2020年から文春オンラインでの連載を開始、CREA等のwebメディアで定期掲載。

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