6カ月で12店舗へ。「多店舗展開が目的ではない」というSENJYUの本質とは?
今年2月に天神、函館に進出。3月には銀座でSENJYUの戦略がスタートする。急速展開する美容室・SENJYUの目的とは一体どんなことなのか? SENJYU 代表取締役 森越道大氏に聞いた。
12店舗へSENJYUカルチャーを導入
2022年9月末にGARDENを退社し、半年経たずに12店舗に広がった森越道大率いるSENJYU。
北海道から九州エリアまで、まさに全国展開だが、この12店舗はSENJYUによる「出店」ではなく、SENJYUカルチャーの導入である。
SENJYUは店舗を所有せず、「全国の美容室を借りて」SENJYUチームが営業を行う。カルチャーの導入からビジネスへ展開する新しい形を選んだ。
自社で店舗を所有しないのは、この時代に必要なことを考えたからです。
需要を上回っているにもかかわらず、美容室の数は増え続けています。
需要があるものを提供することがビジネスの本質だとすれば、美容室を自社で出店することはSENJYUとして取り組むべきビジネスモデルではないと思いました。
技術は素晴らしいけれど、集客で上手くいっていない美容師がたくさんいます。それであれば、集客に困っている人にSENJYUの力をお貸しできたらと考えました。
全国の困っている美容師、美容室と全国の美容室難民をつなげる「架け橋」になりたいと森越氏はいう。
時代が進むスピードが早く、将来の予測が困難である現代のようなVUCA時代は、これまでと同じやり方で店舗出店するよりも、美容師が経営に困って本質からブレることなく、目の前のお客さまに心から貢献できるやり方があるのではないかと考えた。
SENJYUがやりたいことは「美容室を多店舗展開すること」ではないんです。
店舗展開が目的ではなく、困っている全国の美容師と困っているお客さまをつなげ、経済的豊かさと恒久的な心の豊かさを追求したい。
そして、美容師の手でつくるAIプロジェクト「デジタルサロン」を確立し、未来に美容師の可能性をつなぎたい。
SENJYUの全国展開はその基盤になると考えています。
森越さんが共同で開発したAI「デジタルサロン」の記事はこちらから↓
SENJYUという名の「店舗」はなくていい
サロンを立ち上げるとき、誰しも良いお店をつくろうと考える。
良いお店をつくろうと思っているのに数年経って不満が生まれたり、抜ける人が出てくるのかはなぜなのだろうか?
さまざまな美容室が試行錯誤して仕組みを変えたり、スタッフが働きやすいようにはしているけれど、集客をして売り上げを上げてというビジネス設計自体が美容業界全体が豊かにならない理由ではないかと考えた。
根本的にビジネスモデルをチェンジし、美容業界の当たり前を壊して、今の時代だからできるやリ方にモデルチェンジした1つの形がSENJYUなのだ。
SENJYUのFC契約とは、SENJYUと契約する美容室オーナーが出資し、その人がすでに持っている店舗にSENJYUのカルチャーを導入する方法。
もともと働いていた美容師とSENJYUチームが1つのサロンで協働するため、FC契約したオーナーはSENJYUチームの技術や集客方法を習得できるメリットがある。
例)前述の日本地図のうち、北海道・函館、東京・二子玉川、東京・自由が丘
他にもいくつかの契約体系があるが、いずれも「SENJYU」という名の店舗は存在しない。店舗によって美容師全員がSENJYUチームの場合もあれば、一部のメンバーがSENJYUチームという店舗もあるなど、多様な契約形態が存在する。
「売り上げ」を追う時代から「本質」を追う時代へ
SENJYUメンバーは働き方を自由に選択できる。
現在、全国のSENJYUチームのスタイリスト52名のうち40名がフリーランス契約となっており、自立心を育てる教育が鍵となる。
だからこそ、森越さんが最も大切にするのがマインド教育だ。美容師としての正しい心を持ち続けることを目的に理念勉強会や全体勉強会が月に1回ずつあり、技術教育に関しては他社のオンラインサロンと提携してSENJYU用の教育パッケージをつくってもらっているという。
GARDENに所属しているときから森越氏は「SENJYUチーム」の名でチーム制を導入し、個人売上による評価ではなく、チームで売り上げをどう上げていくかにこだわっていた。
現在のSENJYUでも、個人指名や店販売上に関係なく、チームへの貢献度で給与が変わる給与体系を導入し、基本給の他に「GIVER給」と「LTV給」の2項目を設定した。
GIVER給は個人が自分が会社に貢献できることを申請し、会社への貢献度を本部がタスク管理し評価することで支払われる給与。
たとえば新しい店舗ができるとき、新店舗で技術教育を行った人は期日までにタスクを実行するとタスク表にポイントが累計される。会社が成長すると累計ポイントは溜まり、より多くの報酬へつながる。
もう1つのLTV給は、お客に対して正しいことをしたときに累計されるポイントにより支払われる給与。お客さまからのLINEにどれくらいのスピード感でメッセージを返答しているかや予約率や失客率なども評価ポイントに含まれる。
お客さまのことだけをやるのではなく、会社が成長することと、スタッフが豊かになることを仕組みとして体系化しました。
全員が会社に貢献することで会社が成長し、しいてはそれが個人の報酬にも反映される仕組みです
45店舗を目指すのは「儲け」とは別の挑戦のため
どんなに素晴らしい美容室でも、時代が変わり、人が抜けたりしてバランスが崩れたときに、美容の本質を貫くことが難しくなったりする。
だからこそ、圧倒的に利益を生むこと、キャッシュフローを健全にしてスタッフに還元できるようにすることが必要だと森越氏は考えている。
2025年4月までに45店舗へのSENJYUチームの導入を目標とし、「GIVE & プロジェクト」と名付けた。
このGIVE &プロジェクトの目的は、前述の森越氏の言葉にあったように困っている美容師とお客さまとの出会いをつくり、美容師の経済的豊かさと恒久的な心の豊かさを追求するため、そしてAI事業の基盤を築くためにある。
SENJYUの「GIVE &プロジェクト」
GIVEプロジェクトとは、全国の美容師、全国のお客さま、SENJYUの3winになるプロジェクト。
・全国の美容師:心身ともに豊かになる(経済的自由、恒久的心の豊かさ)
・全国のお客さま:信頼できる美容師チームとの出会い
・SENJYU:SENJYUブランドの確立
SENJYUは普通とは違う、少し変わったビジネスモデルかもしれません。
45店舗が目標と言うと、他店舗展開を目的とした美容室経営者としての成功を目指していると思われるでしょう。
しかし、僕の目的はそこではありません。
店舗展開が目的でも、このビジネスモデルを真似して欲しいわけでもなく、すべてのSENJYU事業は未来に美容師の可能性をつなぐためにあると考えています。
森越さんが挑戦中のAIによるデジタル革命「デジタルサロン」の記事は来月3月より『ボブログ』と『月刊BOB』誌面で追いかけます。こちらもお見逃しなく!
- Profile
- 森越道大/もりこしみちひろ
株式会社SENJYU 代表取締役
1989年4月13日生まれ。北海道出身。進学校から漁師を経て美容師へ。ハリウッド美容専門学校卒業後、GARDEN入社。2020年よりSENJYUチームとして活動し、「あなた以上にあなたの髪を想う」がコンセプトとなる。2022年4月に株式会社SENJYUを設立。2022年9月にGARDENを退社し、自店舗を持たず他社と協働し、全国の美容室で施術をする新しい形のプロフェショナルチームとしてSENJYUを急拡大中。52名の美容師が在籍する。