60代以上の人口は総人口の29.1%を占め、超高齢化社会といわれる日本。(※ 2023年統計局「統計からみた我が国の高齢者」より)
美容室にとっても、顧客が高齢化していくという点から他人事ではありません。60代以上の顧客の心をつかむ対応力アップは急務!
では、どうすれば60代以上の顧客の心をつかめる対応力が身につくのでしょうか?
突然ですが、こんな「おばあちゃん仕上げ」で帰していませんか? このままじゃなぜダメ?
こちらの女性たちのヘアメイクとコーディネート。どう思われますか? いわゆる「ミセスヘア」。清潔感があって上品で美しいですが……
「今の60代は『おばあちゃんヘア』ではリピートしません」
そう言い切るのは、シニアに特化した「えがお美容室」を運営する株式会社サンクリエーションの太田明良代表。
- Profile
- 太田 明良
株式会社サンクリエーション 代表取締役
1979年、石川県生まれ。ファッションスタイリストとして活動後、2014年に株式会社サンクリエーションを設立し、「えがお写真館」をオープン。現代のシニアニーズに特化したビューティ&ファッション事業「EGAO」を展開。さらに、シニアをターゲットにした企業やプロジェクトへの企画・制作・コンサルティングなどにも事業を拡大している。
- Instagram : @ota.akiyoshi
今の60代は10~20年前の60代に比べて若々しいセンスで、価値観も多様化しています。60代だからといって女性らしさ・華やかさ・ゴージャス一辺倒の「ミセスヘア」を提案すると「おばあちゃん扱いされた」と違和感を覚えるお客さまが多いはずですよ
そんな「えがお美容室流」の今どきシニア像とは?
ヘルシーで若々しくも無理がなく、抜け感あるナチュラルなヘアメイク&コーディネートです♪
「その人の日常の延長線上にある美しさ」がEGAOのコンセプトです!
なぜシニアは年々若々しくなる? 今の60代が育った背景を探る
「こんなオシャレなおばあちゃんは田舎にはいない」
そんな読者の声が聞こえてきそう。
そんなことはありません! これからの60代は今までと明らかに違う価値観を持っているんです
若い頃から海外カルチャーに親しみ、日本経済が元気な時代に青春を謳歌しているのが今のシニアです。本来感度が高く個性的な世代なのに、60代になったからといっていきなり「おばあちゃん」や「ミセス」にはならないと思うんですよ
なるほど!
「国民的長寿アニメ『サザエさん』のフネさんは50歳前後だというけど、今の感覚だと50代より遥かに上に見える」みたいな例もあり、少なからず読者のみなさんにも「シニアは年々若々しくなっている」という実感があるはずです。
「60代=高齢者」とおばあちゃん扱いすると、お客さま自身の「キレイになりたい」「オシャレしたい」という気持ちを引き出せなくなってしまいます
シニア客の「私はおばあちゃんだから」とオシャレを諦めてしまう原因はそんな“決めつけ”にあるのでは……? 美容師側が“決めつけ”を捨てることが重要といえそうです。
80代も予約サイトで美容室を探す時代! シニア客は困っている
シニア特化型サロン「えがお美容室」の始まりは、写真館を利用するシニア客の悩みに触れたことがきっかけでした。
写真館でヘアメイクをしてキレイになったお客さまから「髪は切ってくれないの?」と聞かれることがとても増えたんです。そして、多くのシニア女性が美容室に悩みを抱えていると知りました
どんな悩みを抱えていたんですか?
エイジングの悩みが出るようになり、若い頃から行っているオシャレな美容室に居づらくなってきたという声を聞きました。それで、シニア向けの美容室を探すけれど、予約サイトやSNSは若者向けのヘアスタイルばかり……
技術、サービス、居心地など、安心して通い続けられる美容室を探しているシニアは大勢いらっしゃるんです
取材中、お客さまの中に娘さんに手伝ってもらいながら予約サイトで美容室を探していたという80代の女性にも出会いました。
えがお美容室の顧客は「もともとオシャレな特別な人」ではなく、悩みを抱える等身大のシニア客なのです。
ヘアがキレイになるとアクセサリーや洋服も変えたくなる。洋服が変われば爪も、エステも……というふうに、「キレイになること」を通してニーズが引き出されていくんですよ
シニア特化型サロンが再構築したシニアベーシックを21日で学び直し!
「だからこそ、全国の美容師さんに同様にシニア客の悩みに応えてもらいたい」と太田社長は続けます。
美容室を出店したことで美容業界が抱える雇用や売り上げの課題を知りました。長く働いてくれているスタッフを大事にしたいけど、40代以上のスタッフの活躍の場を創出できず悩んでいるサロンさんが多いということも聞きました
シニアビューティには確かな技術とキャリアが必要。ベテランスタッフこそ、少し発想をアップデートすれば長く活躍できる分野なんです
そこでえがお美容室は、シニアに特化した技術のベーシックをまとめた『21日で学び直し シニアベーシック』を上梓。カット・ヘアカラー・パーマ・フィニッシングなど、サロンワークでシニア客に提案するための“アップデート”を技術的な観点で網羅してサポートします。
監修はえがお美容室オープニングメンバーであり、同店ディレクターのテルイタカヒロさん。
シニア向けの技術で最も大事なのはやはりカットです。削ぎに頼らずねらった形をつくること、さらにその形が今求められている女性像やイメージに合っていることが求められます
当書ではまず、冒頭で説明した「今どきシニア」が求めるヘアデザインの違いを学びます。
そのうえで、従来のベーシックに比べたシルエットの違いやプロセスの違いを解説し、シニアヘアをつくる「目=センス」と「手=技術」をともにアップデートできる構成です。
ヘアカラーのアップデートも重要です。白髪をただべったり染めて隠すのでも、何もしないで伸ばしっぱなしにするのでもない、4つの基本パターンを解説します
美容室が白髪を染めに行く、伸びたから髪を切りに行く……という仕方なく行くメンテナンスの場ではなく、若い頃と同じようにヘアデザインを楽しめるように技術と提案を磨いていきましょう!
若い頃と同じ、あるいはそれ以上にヘアを通してシニアがオシャレを楽しめる美容室は、顧客にとっても美容師にとってもハッピーな場所になるはずです。
「60代以上=おばあちゃん」というラベルをはがし、今の60代が求めるシニアヘアへ! ベーシックからアップデートし、長く強く続く信頼関係を築く1冊。ぜひご一読ください!
- 21日で学び直し シニアベーシック
- えがお美容室が「今のシニア(60代以上)」に特化するために再構築したカット&ヘアカラー、パーマなど技術をすべて公開。スタイリストデビューするためのベーシックとは違う、シニアならではの「形・色・質感づくり」といったヘアデザインのすべてまとめました。
■ 顧客が増える!=70・80代も口コミサイトで美容室を探す時代。潜在顧客は十分!
■ おしゃれで楽しい! =「お年寄り」「おばあちゃん」扱いをやめればヘアデザインでリピートする関係になれる
■ 生涯ヘアデザイナーに = 40代からのキャリアも顧客と共に。永く働くことができる!