2024年3月26日付けで厚労省より各都道府県に事務連絡のあった「システアミン塩酸塩を配合した化粧品の取扱いについて」によると、システアミン塩酸塩は医薬品成分に該当することとなりました。
システアミン系のセット剤を用いてまつ毛パーマをメニュー化している美容室やアイサロンが多い今、「システアミン系は使えなくなるの?」そんな疑問に応えるべく、最新情報をまとめました。
システアミン塩酸塩は化粧品に配合できない
厚労省の通達とは?
令和6年3月26日付けで医薬品成分に該当することとなったのは「システアミン塩酸塩」。
「システアミン」と「システアミン塩酸塩」は化学的には別の成分。どちらもヘアセット料やまつ毛用セット剤の化粧品に配合されてきました。
「システアミン塩酸塩」が医薬品分類となり、医薬品は美容室やアイサロンでは基本的には使用できないため、今後、システアミン塩酸塩を使用したまつ毛用のセット剤をめぐって、アイ業界ではさまざまな情報が飛び交っています。
押さえるべきポイント
ただし、システアミン系のパーマ液はすべて使用できなくなるわけではありません。2024年6月末の基準改正までの間、システアミン塩酸塩を配合した化粧品については以下の要件を満たしていれば、引き続き製造販売が可能です。
成分名 | 100g中の最大配合量 |
頭髪のみに使用され、洗い流すヘアセット料 システアミン塩酸塩 | 8.63g |
頭髪のみに使用され、洗い流すヘアセット料以外の化粧品 システアミン塩酸塩 | 配合不可 |
つまり、
・「頭髪のみに使用され、洗い流すヘアセット料」であれば、指定容量の範囲で化粧品に配合して良い
・「頭髪のみに使用され、洗い流すヘアセット料以外の化粧品」への配合は不可である
・「頭髪」には、手足等の体毛、まゆ毛及びまつ毛は含まれない
現在、化粧品分類の登録がされている多くの「まつ毛パーマ」のためのセット剤は、システアミン系の原料でつくられています。アイサロンやまつ毛パーマをメニュー化している美容室では最新情報をチェックして、情報収集しておく必要があります。
(厚労省からの通達)
システアミン塩酸塩を配合した化粧品の取扱いについて
日本アイリスト協会の見解とは?
行政の指針に常に従いながら、まつ毛業界を安全に発展させていきたいと考える一般社団法人 日本アイリスト協会(JEA) 志太しおん代表理事に話を聞きました。
日本アイリスト協会では、今回の通達を受けて会員の方へどう伝えていますか?
令和6年3月26日付けで厚労省より各都道府県に事務連絡のあった「システアミン塩酸塩を配合した化粧品の取扱いについて」、ご心配されている方も多いと思います。
以下が厚生労働省 医薬局医薬品審査管理課に伺い、確認した内容です。
厚生労働省 医薬局医薬品審査管理課への確認事項(2024年5月20日)
1)システアミン塩酸塩(HCL)が入ったまつ毛カールセット剤は、2024年3月末で製造販売が不可。
この判断は、まつ毛カールのトラブルが理由ではなく、有効成分としてシステアミン塩酸塩を配合した医薬品が本年3月末に承認されたため。
注:化粧品基準で「化粧品は医薬品の成分(略)を配合してはならない」とされている。
薬機法は製造販売業者を規制する法律のため、今回禁止されたのは「企業が製造販売する行為」です。まつ毛カールメニューを禁止するものではありません。
2)チオグリコール酸等、システアミン塩酸塩以外のセット剤の使用を規制するものではない。
今後はチオグリコール酸等の化粧品登録されたセット剤を用いてメーカー推奨の使用方法を厳守し、安全な技術と材料の知識で施術する必要があります。
3)今回の医薬品審査管理課の対応は、あくまで化粧品基準との関係でシステアミン塩酸塩の化粧品への配合を規制したものであり、使用する薬剤の規制を通じてまつ毛カール業を過剰に規制する意図は全くない。
今回はまつ毛カールの施術自体にメスが入ったわけではなく、あくまでもシステアミン塩酸塩が配合されているセット剤の規制です。
アイリストやまつ毛カールを扱う美容室は情報にアンテナを張り、商材知識や安全な施術で技術提供することがより重要になります。
伸び続ける「まつ毛パーマ・カール」需要の理由
現在、まつ毛パーマ・カールは大変需要の高いメニューです。
日本アイリスト協会では、今後も厚
まつげパーマ・カールの利用率
「まつげパーマ・カール」の利用は年々増加しています。さらに過去1年の利用率を見ると「まつげパーマ・カール」はダントツ1位。
【アイ】過去1年間の利用メニューTOP5
なぜ、まつ毛パーマの需要は伸びているのでしょうか?
5年くらい前からお客さまニーズは高まり続けています。
その理由としては、海外から輸入された「まつ毛美容液」が日本で浸透したことが大きいのではないかと考えています。
メーカーさんの企業努力により、まつ毛美容液が急激に発展しました。
現在のまつ毛美容液は実際にまつ毛が伸びるので、自まつ毛を上げることができればエクステンションを付けなくても、満足度の高い仕上がりになります。
このような背景もあって、エクステンション以上に需要が伸びているのだと思いますね。
「まつ毛カール」のメニュー名を広めたい
まつ毛パーマの広がりを振り返ると、頭髪用パーマ液を使用したまつ毛パーマにより健康被害が発生し、厚労省から通達があったのは2004年。
パーマネント・ウエーブ用剤がまつ毛に使用されることのないよう周知・指導が徹底されました。
この時期、まつ毛パーマメニューを取りやめるアイリストが増加したといいます。
ただ、厚労省では施術自体にNGを出したことは一度もなく、使用する剤の成分のことについての注意喚起でした。
その後、化粧品登録されたセット剤が開発され、「ラッシュリフト」の名称でまつ毛パーマメニューを復活するアイサロンが増えてきましたよね。
確かに、当時はホットペッパービューティーなどの予約サイトでも「ラッシュリフト」のメニュー名が多く見受けられましたが、最近では「まつ毛パーマ」表記のアイサロンや美容室が多く、わかりやすさを優先させた結果と言えそうです。
日本アイリスト協会では、「まつ毛カール」の名称を推奨していますよね?
協会では「まつ毛カール」のメニュー名を推進しています。
「パーマネント・ウエーブ効果」を暗示すると判断される場合は「目的外使用」にあたる可能性があるため、消費者が誤解するような表現は避けたいと考えているからです。
「まつ毛カール」のワードが一般化するのには何年かかかると思いますが、なぜ「まつ毛カール」という表現を推奨しているのかも含め、繰り返し伝えていきたいですね。
事故ゼロを目指した「まつ毛カール検定」
まつ毛カールもエクステンションも、目元のギリギリのラインを取り扱う繊細なメニュー。
リスクを考えて導入をためらう経営者もいそうですが、事故自体は減っているのですよね?
事故が「減る」ことを目指すのではなく、「事故ゼロ」であってこそ、この業界が発展していくと考えています。
そのためには、やっぱり教育ですよね。
日本アイリスト協会では、1年前に「まつ毛カール検定」をつくり、アイリストの実技をジャッジして安全性を高める取り組みをしています。
協会の検定や教育制度については、講師会の石井香緒里さんに詳細を尋ねました。
「まつ毛カール検定」をつくったのは、ここ数年で一気にお客さまのニーズが増えてきているからです。
今はスクールもたくさん増えて、さまざまな手法で学ぶアイリストも増えていますが、協会の「まつ毛カール検定」では「ここだけは抑えてほしい」というポイントをまとめた試験を行なっています。
合格者には、プロの技術者としてサロンワークで活躍できる太鼓判として「JEAディプロマ」を発行しています。
技術的な認定を得ることで、アイリストもお客さまも安心して施術に入ることができると言います。
美容室でも若い美容師さんの離職の問題があると思いますが、まつ毛メニューの技術を身に付けると、すぐにデビューができるんですよ。
デビューの前に辞めてしまう若いスタッフが減り、お客さまを担当する喜びを肌で感じることができると思います。
若いスタッフの収入にもつながることなので、美容室の新しい可能性の1つとして、まつ毛メニューを取り入れてもらえたら嬉しいですね!
一般社団法人 日本アイリスト協会(JEA)
一般社団法人日本アイリスト協会(Japan Eyelist Association/通称JEA)は、まつ毛エクステンションが急速に発展する中において、まだまだ安全基準統一の意識もなく危険な状態であったまつ毛エクステンションの提供に警鐘を鳴らすため、2008年に設立。