ヘアサロンは生成AI画像を使っていい? 活用の注意点や課題まとめ

ヘアサロンは生成AI画像を使っていい? 活用の注意点や課題まとめ

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美容師が広告や営業に生成AI画像を使うのはありなのか?使うとしたらどんなことに気をつけるべきなのか。
さまざまな角度から考えていきます。

めまぐるしいスピード感で進化を遂げるAI(Artificial Intelligence:人工知能)技術。リサーチやライティング業務、問い合わせ対応などにすでにChat GPTを活用しているサロンもあるかもしれません。

それだけでなく、写真やイラストなどの画像をAIで精巧に生成することも可能に。昨年、手塚治虫プロダクションがAIを使って描いた新作『ブラック・ジャック』が公開されたことでも注目を浴び、議論を巻き起こしました。

美容室も、SNSや集客サイトで画像や動画を扱う業種です。美容師は広告や営業に生成AI画像を使っていいのか? どんなことに気をつけるべき? さまざまな角度から考えていきましょう。

生成AIをヘアカタに使うのは
「詐欺」?

今や画像ジェネレーターを使って、実際にヘアスタイル撮影をしなくてもモデル撮影したかのようなヘアスタイル写真をつくることができます。

そんな今、AIで生成したヘアスタイル画像を使っていることに対して消費者からさまざまな声が上がっています。

基本的には不快感を示す消費者が目立ちます。直近1年分の投稿をリサーチしましたが、生成AIヘア写真にポジティブな消費者の声は見つけられませんでした。

集客サイトやSNSで美容師がアップするヘアスタイル写真は「美容師が実際につくったもの=どんな腕前やセンスかわかるものであってほしい」というニーズが強くあることがわかります。

そういった前提を考えれば、「自分でつくっていない写真を広告に使う=詐欺だ」と不信感を抱く理由も納得できます。

一方で、ヘアスタイル写真で次したい髪型を考えるという、昔ながらの「ヘアカタログ」的な使い方をする人も。

しかし、その使い方でも「実際にありえない髪型」をオーダーされてしまった……というケースもあるようです。

生成AIヘア写真のサブスクサービスも……
利用する美容室の事情は?

顧客にとって「ヘアスタイル写真=その美容師が担当した場合の仕上がりの品質を示すもの」という認識が色濃くわかりました。

しかし、その一方、生成AIのヘアスタイル写真を販売するサービスもたくさんあることもわかりました。

なぜこういうサービスがあるのか。それは、美容室側には従来から「ヘアスタイル写真=客層や女性像を示すイメージ広告」という認識の企業もあるからだと考えられます。CMモデルのようなイメージですね。

そのため、生成AIでの問題が話題に上がる前から、美容業界には広告用の写真を販売するサービスがありました。

<広告用の写真を販売するサービス>
Beauty Stock Photo
HAIR MODEL BANK

こういったサービスが元々ある側面からみると、生成AIのスタイル写真を販売するサービスや、それを使うことだけを「詐欺」と言い切ることは難しいと感じます。

これらを活用する背景として、ヘアスタイル写真を撮影する美容師の負担軽減というメリットがあります。撮影機材、モデルのブッキング、謝礼や材料費……それらをサロンワーク以外の時間でこなすことが求められます。そういった手間・暇・コストを軽減しようと、「広告」として生成AI写真を選択をするサロンもあるのです。

「ヘア写真=美容師の作品」
なったのはいつから?

つまり、消費者と美容師・美容室の「ヘアスタイル写真」に対して認識の食い違いが起きていることがわかります。この食い違いは、なぜ大きくひらいてしまったのでしょうか。

それは、今でこそ美容師がヘアスタイル写真を自らディレクションし撮影するのが当たり前のように感じられますが、その歴史はさほど古いものではないからです。

1990年代後半~2000年にカリスマ美容師ブームが起こり、「ヘアカタログ」が盛んに出版されるようになったことで「ヘアスタイル写真=担当美容師の腕前を示すもの」というイメージが強固になったと考えられます。

しかし、その間も機材や人員などコストの関係で、自店で撮影をできない美容室や美容師が大半でした。そういったサロンは、自店の看板やPOPに使用するためにヘアスタイル写真を購入していました。

それが、2007年にホットペッパービューティーのWEBサービス化を皮きりに、美容室の集客サイトが台頭。ヘアスタイル写真をどんどん更新することで上位表示され、集客のために美容師自身がヘアスタイル写真を撮影する文化が広く定着し、「ヘアスタイル写真=美容師自身がつくったもの」というイメージをより強固にしたと考えられます。

もちろん今ではスマホで気軽に写真が撮れる時代にはなりましたが、集客サイトでもSNSでも目を引く写真やお店のイメージにぴったりと合ったトーン&マナーに揃えなければ集客効果がありません。

そして、集客サイトやSNSの大きな弱点として、顧客の目に留まりやすいのは「髪型の上手さ」より「写真の良さ」の方だということです。この点に、美容師や美容室は大きなジレンマを抱えてきました。

ヘアスタイルづくりよりも写真にこだわった方が効果が上がるとあれば、「広告」は購入でも良いと考えるのは、背景を考えるとうなずけることです。

予約サイトやSNS集客の全盛期には「売れるには練習より編集」と教えられたと振り返る美容師も。

集客サイトやSNSの特性上
「ヘア写真=広告イメージ」は無理がある

とはいえ、繰り返すように、消費者にとって「ヘアスタイル写真=美容師自身がつくったもの」というイメージが強く定着している今、単なる「広告」とする主張は今後通らなくなる可能性が高いのではないかと思います。

ほとんどの集客サイトがヘアスタイル写真をクリックすると「担当スタイリスト」と紐づいていて、これらを「広告はイメージです」とするならばその表記が必要になるなど、美容室の広告にまで規制が強化される可能性もあります。(参考:消費者庁「表示規制の概要」>「優良誤認とは」

最後に、生成AIのヘアスタイル写真があふれる今、美容師はどうやって信頼を獲得するか? 活用方法は? という観点で考えてみたいと思います。

解決策❶
技術的信頼はBefore/Afterやカウンセリング動画

まず、”生成AIを使った広告に勝つ”手段を考えます。

それは「本当にこの美容師がつくった」と確証づける発信だと思います。それは、Before/Afterが明確にわかる投稿やカウンセリング動画など。InstagramのリールやTikTokで動画が主流ですが、写真で見せることも可能ではあります。

消費者の読者のみなさんにとっても、Before/Afterやカウンセリング風景の投稿なら「確かにこの人がつくった」と信頼できると感じるのではないでしょうか。

ボブログでも過去に顧客とのリアルなやりとりや施術を発信することで支持を集めている美容師を紹介しましたので参考にしてみてください。

解決策❷
生成AIの方がモデル写真より自由? ヘアカタ活用

生成AIは自在に好きなヘアスタイル写真をつくることが可能なのは魅力的です。モデル撮影の場合は似合わせること、顧客同様にカウンセリングをして似合わせることが必要ですが、画像ジェネレーターでつくった人物写真ならそのプロセスをショートカットできます。

得意なスタイルや実現可能なスタイルをたくさん作って、ヘアカタログ代わりに使うのは顧客にも美容師にもWin-winな使い方だと思います。カウンセリングでデッサンを使う美容師さんもいますが、生成AIを使いこなせれば、画力がなくてもオリジナリティのあるヘアスタイルを表現でき、お客さまによりオートクチュールな提案が可能になります。そういう使い方だったら、顧客にとっても納得がいくのではないでしょうか。

まとめ

生成AI問題は
美容師にとっての「商品」を見直す機会

生成AIであるなしに関わらず、美容室の集客では「ヘアスタイル写真を気に入って来店したスタイル写真のようにならなかった」というミスマッチが絶えず起こり続けているという側面もあります。

生成AI画像に関する問題は、そんな「ヘアスタイルで美容室を選ぶ」という習慣のひずみを顕在化したきっかけにすぎないのではないでしょうか。

美容室の広告のあり方と顧客の美容室選びの手段をアップデートしていくきっかけにし、AI技術もうまく活用して、顧客との信頼が深まる使い方を見出していくべきときなのだと思います。

おまけ
「美容師が集客サイトで生成AI使うのどう思う?」
Chat GPTに聞いてみた

最後に……。この記事を執筆する前に、Chat GPTに意見を聞いてみました。

実は筆者自身、書籍の構成を考えたりインタビューコンテを考えるとき、しょっちゅうChat GPTを活用しています。元々ゼロから何日もかけて組み立てていたことのヒントをくれるので、便利なんですよね。

Chat GPT

現状、Chat GPTも美容師が集客に生成AI画像を使用することには「考慮事項がある」としています。「顧客の信頼性や透明性を確保することが重要」と、Chat GPTは言っています。みなさんはどう考えますか? これから業界で議論していくきっかけになればと思います。

ななしま
執筆者
ななしま

直毛一族の末裔。毛髪科学、色彩学、財務が得意です。好きなものは宝塚と世良真純、さらば青春の光。

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