サロンで働く私たちが知っておきたいLGBTQ+の話
聞いたことはあるけれど、いまいちよくわからない人が多い『LGBTQ+』。
けれども、多様化が進む現代では絶対に抑えておきたいトピックです。
今回は、多様化の進む令和だからこそ、知っておくと勉強にもなる「LGBTQ+」の人権問題についてクローズアップします。
助っ人として協力してくれたのは、社内外でSDGs活動に取り組み地球と世界をよりよくしようと活動する、Lond代表 石田吉信さん。
美容師が知っておくと役立つ知識をまとめました♪
LGBTQ+ってなに? 美容師に関係あるの?
多様化が進む今、上記のようなセクシュアリティの存在は当たり前になりつつあるのかもしれません。
では『+』とはなんでしょうか?
いろいろな考えが認められるようになった現代。そんな今だからこそ、美容室にはさまざまな人が共存しています。
当事者ではなくても「関係ない」訳ではありません。
「LGBTQ+」について少しでも知って、色んな価値観に触れてみましょう。
でもやっぱりイメージしづらい……
ではここで、LGBTQ+のリアルについて知りましょう!
インタビューに答えてくれたのは、美容師であり当事者のひとりであるLond omotesando アシスタントのちなみさん。
あくまでも、ひとりの答えとして参考にしてみてくださいね◎
――まず紹介できる範囲での自身のジェンダーの紹介をお願いします。
私のジェンダーはパンセクシャル(全性愛)です。あまり聞いたことがない人の方が多いのではないでしょうか?
職場の人や周囲の友人にはカミングアウトしています!
パンセクシャル(全性愛)とはバイセクシャル(両性愛)と対になるジェンダーのこと。
好きになる対象が「男性or女性」に制限されるバイセクシャルに対して、パンセクシャルの恋愛対象は限定されないため、すべてのジェンダーが対象なのです。
私の場合、専門学生の時に好きな人ができて、自分のジェンダーを意識しはじめました。感覚としては「好きになった人が○○だった」という感じ。性別は後付けというイメージをしてもらえるとわかりやすいと思います。
私にとっては好きな人の性別は意識しない領域にあるんです。
なるほど、恋愛対象においてはその人自身を見ている……素敵な考えですね。
――「LGBTQ+」に感じて自身がモヤっとしたことはありますか?
あります。
私のカミングアウトを聞いた女性の方に「自分なら(恋愛対象に)いけそう?」と聞かれたときは、モヤっとしてしまいました。
私の周囲は理解しようとしてくれる方が多いので、とても居心地が良く本当に感謝しています。
――ジェンダーのカテゴライズ化についてどう思う?
私個人の意見としては、今まで不思議に思っていた自分の考えに名前が付いて、納得したし安心感がありました。
だからこそ「私は私」だと自信が持つことができています。
でも、私のように安心したり前向きになる人だけではないと思います。日頃からいろいろな考えの中で生きているということを忘れないようにしたいですね。
セクシュアリティの考えは本当に”人それぞれ”なのです。
令和の美容室だから気を付けたいこと
悪気はないのだけれど、自然と発したひとことや、ちょっとした行動で相手を傷つけてしまった。このような経験は人間なら誰でもあると思います。
しかし、日頃から多くの人と接する美容師にとっては、人一倍気を付けたい部分……お客との会話に影響してしまうとクレームや失客につながりかねず、スタッフ同士の場合は関係性がこじれてしまうこともあり得ます。
今までの世間や考えから生み出される「無意識の偏見」はできるだけなくしたいですよね。
ここで、令和の美容室で気を付けたいことを紹介します!
自身のサロンワークを振り返って、是非チェックしてみてください。
トピックはこちら↓
令和の美容室、これに気を付けよ!
★ お客との会話は、恋バナに頼らない
★ 「女性だから●●、男性だから●●」の型にはまらない
おまけ
★第三者もなんだか不快、アウンティングに要注意!
お客との会話は、恋バナに頼らない
「彼氏(彼女)いるんですか?」
この手の会話、あるあるですね~。なぜ人間は恋のはなしになると意気投合できるのでしょうか?
素敵な内容の恋バナもありますが、
実はこの会話、乱用するとだいぶ危険です。
今は、女性であっても彼女がいる方・男性であっても彼氏がいる方・その他たくさんの考えを持った人で溢れています。
決めつけとも取れる表現は控えると◎
また、この手のはなしが苦手な人もいます。お客さまとの距離感や関係性を考えて、話題はきめましょう。
お客さまが恋愛トークしたい場合は一緒に楽しんでください!!!
【ポイント】
→「恋人はいるんですか?」「好きな人はいるんですか?」
ただ、赤の他人にプライベートを聞かれて嫌な気分になる人はまちまち。恋愛ネタは盛り上がる可能性を秘めた薬だが、お客の趣味や世間の話題などで盛り上がれるといいですね。
「女性だから●●・男性だから●●」という型にはまらない
最近は女性がジェンダーレスカットとして、刈り上げなど、かなり短いヘアスタイルにすることも珍しくないですよね!
そんな中で、美容師にショートカットをお願いしたら「希望の長さより長かった」や「ボーイッシュにしたかったのに丸みのあるフォルムになった」などの声が多いといいます。
美容師はたくさんの人と関わる職業。
「〇〇であるはずだ!」という偏見がきっかけで、不信感につながってしまうこともあります。事前のカウンセリングの大切さを再認識できますね!
【ポイント】
施術前のカウンセリングをしっかりする。
「女性だから(男性だから)○○○○だろう」という考え(無意識の偏見)は捨てる!!
お客の気持ちに寄り添う施術が理想的◎
第三者もなんだか不快、アウンティングに要注意!
「Aくんって男が好きらしいよ」
↑これ、アウンティングしちゃってます。
この行動は「人と違う」性的マイノリティを持つ人たちへの嫌悪感や偏見から来ることも。
しかし、そもそも『アウンティング』という言葉と意味を知らず、当事者にとって性的思考が守られるという重要性を分かっていない人が多くいるのも現状です。
「アウンティング」は以前事件にもなった大きな問題です。
僕自身、相談役にまわることが多いので、こういったカミングアウトをされることがあるのですが、そのときの僕の感想は「へぇ、そうなんだ」ですね。
社会にはいろんな人がいます。そう考えると、いい意味で何も特別なことなんてないんです。
少しでもこの言葉が広がって、少しでも多くの人が「みんな違っていいマインド」を持てることを願います!
じゃあ、結局なにをどうすればいいの?
やはり、気を付けるべきところは「会話」でしょう!
……という訳でLondのみなさんに「サロンワーク中のお客さんとの会話、何に気を付けている?」
という、リアルな意見を聞きました。共感できる部分が多いのではないでしょうか?
――まず、サロンワーク中、お客と何を話している?
私は、美容やコスメ・趣味の話が多いですね。休日の過ごし方や、私の勤務するLond omotesandoの近くのグルメを紹介したりしています!
あとは、やっぱり美容師としてヘアケア事情の相談に乗ったりアドバイスをしたりして、お客さまとの時間を楽しんでいます。
――気を付けていることはある?
偏見を持たないように接すること。自分のものさしで判断せずに、お客さまとの信頼関係が構築できるまではパーソナルな内容には触れないようにしています。
もし、パーソナルな内容を話せる関係性になったとしても、お客さまだけではなく自分自身のパーソナルな部分も開示すると、より安心感や信頼感につながると思います!
この方が会話のキャッチボールができているのではないでしょうか?
セクシャリティを特定するようなワードチョイスはしない!下記のようなワードは言い換えをしています。
●女性らしい→丸みがあってやわらかい印象
●男性らしい→シャープでかっこいい印象
恋愛関係の話題は「お客さまから話題を触れたとき」だけ。このような話題を話したくないと思うお客さまも一定数いるので、コミュニケーションを取りながら空気を読んでいく。
逆に話題が出た時は、お客さまの価値観を知れるチャンスなので話を広げています!
(自分の発言には十分に注意)
私の客層は「自分の性別を断定したくない」方が多いです。だからこそ、男性客・女性客ではなく「1人のお客さま」として、その人個人を見て対応することを意識しています。
たとえば、女性扱いを希望するお客さまもいれば、してほしくない方もいます。そのような方々の気持ちを瞬時に見分けるのは不可能。
丁寧な会話を通して上手く探っていきましょう!
ここからは
Lond がSDGsに取り組む理由を探る!
今回の企画に協力していただいた Lond 石田吉信さん。代表取締役のひとりでありながら、SDGs に積極的に取り組み発信する姿が印象的。
しかし彼は、何もたったひとりで頑張っているわけではないのです。
実は、SDGsの活動はLondとして会社で推進中。その活動を知り、入社してきた若手スタッフもいるほどだといいます。
なぜ、ここまで環境や人権問題に関わるのか。ここからは、石田さんの熱のこもったインタビューをお届けします!
――SDGsに興味を持ったきっかけは?
ごりごりの社会派映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』を見たことがきっかけです。激震が走りましたね(笑)
自分の中に今までなかった価値観が盛り込まれていて「お前はなにができるんだ?」と問いかけられている気がして。「自分は何を成し遂げたいのだろう?」とふと思ったんです。
というのも、僕は2013年に起業してからずっと、1日13時間のサロンワークをただがむしゃらにしていました。
美容師として掲げたビジョンはあったけれど、個人的なビジョンがなく、新たな出発点を探しているところだったんですかね(談)。
――なぜLond で社会問題を取り上げるの?
実は始めは美容室の会社で社会問題に取り組めるとは思っていなかったので、NPO(非営利団体)を立ち上げようと考えていたんです。
しかし、CSR(企業の社会的責任)という言葉に出会い「企業で」社会問題にアクションできると知って。何かを変えたり大きなアクションを起こすならLond で、美容業界全体を巻き込みながら、未来について考えて行動を起こしていけたらと思ったのが理由です。
――具体的にどのような活動をしているの?
具体的にやっている活動はこちらです。
① 児童養護施設へのシャンプートリートメントの寄付・ボランティアカット
② Londに来店されたお客さまが閲覧できる「Lond サスティナブル マガジン」の発行
③ サスティナブルなシャンプー&トリートメント開発
④ 脱プラスチックを推進するシャンプー量り売りプロジェクト
⑤ ヴィーガン対応のカラー・トリートメントメニューの展開
⑥ 全店が JHD&C 賛同サロン
などなど……まだまだありますよ!(談)
――活動を加速させる原動力はなに?
これというピンポイントであるわけではないのですが、世の中で何を変えたいかと考えたときに「生い立ちは選べない」という悲しくも確かな事実を変えたい、と思いました。
活動のルーツでいうと「子供ども」です。現代日本では、子どもの9人に1人が貧困に陥っていると言われています。
こう考えると、僕は何不自由な暮らしてきて、恵まれていると改めて思います。だからこそ、生まれを想う人に手を差し伸べたいし、できることはやりたい。
これからも活動の場を見つけて、たくさんポジティブが生まれるアクションを起こしていきます!(談)。
- Profile
- 石田吉信(いしだ よしのぶ)
Lond 代表取締役
1985年7月1日生まれ。東京都出身。日本美容専門学校を卒業し、当時同級生だった6名で2013年、東京・銀座でLond を創業。美容業界で初のサステナ経営検定1級を取得。
サステナビリティ部門とサロンビジュアル部門・ウェブ部門を主にディレクションしており、サロン内外で活躍の幅を広げている。Lond のサステナブルマガジンの編集長も務める。
- Profile
- 鹿嶋ちなみ
Lond omotesando店 アシスタント
2002年12月3日生まれ。資生堂美容技術専門学校を卒業し、Lond に入社。巻ける縮毛矯正や韓国レイヤーカットを得意とする。今年中にスタイリストデビューを目指し日々「可愛い」を届ける。
- Instagram : @chinami_lond
- 執筆者
- ishikawa ayaka