MBTI診断で「美容師向いてない」とか言われると、反論したくなる

MBTI診断で「美容師向いてない」とか言われると、反論したくなる

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現役フリーランス美容師の、操作イトウのコラム連載。
「街の美容師さん」目線で、業界のエトセトラをお話していきます。

操作イトウ

今回のテーマは
「MBTI診断」です。

みなさんは、「MBTI診断」をご存知ですか?

韓国アイドルが「自身の診断結果」を話題に挙げたことから、若年層を中心に話題になった性格診断です。

誰でもwebサイトで無料で、カジュアルにトライできるため、友達同士や職場の同僚などにオススメしやすいことも、広まるキッカケとなったようです。

かつては「動物占い」なんかも流行りましたが、この手の性格診断は「占い」に懐疑的な方でも、やってみると「ほうほう、確かに」なんて、ほくそ笑んでしまうもの。

そんな「MBTI診断」、美容師はどう活用すればいいの?

MBTI診断ってなに?信用していいの?

まず「MBTI診断」を簡単に説明させていただくと、

16パターンに分けられる性格診断です。

web上ではMBTI診断について沢山紹介されているので、ここで細かい解説は控えますが、「こんなシチュエーションではこう考え、行動する」という、その人の無意識の“癖”を診断している、といったところでしょうか。

「シチュエーション」には4つの項目があり、二項対立した頭文字を組み合わせた4文字でタイプ分けされ、全ての組み合わせ(16パターン)には名前が付けられています。

「生年月日で割り出される」モノではなく「たくさんの質問に答えまくって測る」スタイルのため、「占い」と言うよりも「診断」です。それゆえ信ぴょう性が高く、ビジネスパーソンに利用される場面も増えているそうです。

美容師に向いているタイプはどれ?

紹介サイトには、「仕事」や「恋愛」などの独自性を交えたページも多いのですが、「転職サポート系」のサイトでは、美容師に向いているタイプは「エンターテイナー(ESFP)」と記されていました。

「社交性が高い」「人を楽しませるのが好き」など、接客業であることから向いていると判断されるのかもしれません。

ですが僕は正直、「ステレオタイプな美容師でつまらんな」と感じてしまいました。

タイプが違うから、私は美容師に向いてない?

僕がここでお話したいのは、「このタイプだから美容師に向いている/向いていない、という見立てをして欲しい」ということではありません。

まして、対照的な結果だったからといって、「私には向いていないんだ。美容師はやっていけないかも。泣」なんてことを考える必要はないのです。

僕も今回、改めて受けてみたところ「提唱者(INFJ)」と診断されました。webライターも向いている、とのこと。まさに天職やないかっ!

項目はどちらも長所。

「シチュエーション」のそれぞれの項目は、どちらも「長所」であって、「短所」としては見ていません。

どちらに振れても「長所」として捉えられています。

例えば「I(内向型)」は『一人でいることを好む』とされているため、「接客業は私には向いてないってことか」となってしまう所ですが、それもこれも相手次第。

「I(内向型)」の美容師なら、「静かに過ごしたいお客様」への共感のアプローチが上手にできると思いますし、一人一人と深いお付き合いをすることが得意なのだそうです。

このように、「私はこのタイプと相性がいいから、そういったお客様を中心に好まれる」とか、「社内でこんなポジションを取るとWin-Win」とか、そういった見方をするのが適切ではないでしょうか。

僕も「提唱者(INFJ)」ですから、美容師向いてないんかい!って感じです。自覚する部分も多々ありますが。

そしてもし、美容師が皆「エンターテイナー(ESFP)」だったなら、僕は息苦しくて美容室に出社したくなくなります。

美容師の在り方は、ラーメン屋さんに似ている

僕は以前から、美容師はラーメン屋さんに似ている、と考えています。

ラーメン屋さんは「チェーン店」より「個人店」が好まれ、「平凡」や「ステレオタイプ」である事は望まれていません。そのため、ラーメンの特徴をハッキリさせて、ニッチなお客様をターゲットにすることで、「平凡ではない味」を提供して熱烈なファンを生み出します。

美容師も同様に、「自分という商品」がマッチするお客様に繰り返し指名されることで支えられている方が沢山います。

このように、相性のいいお客様や客層をキャッチできる美容師になれば、診断結果の向いてる/向いてないは、関係なくなるのではないでしょうか。

診断結果が毎回変わるんだが、
正確に性格診断できてる?

ですが、web上のMBTI診断は簡易的なモノなのだそうです。そのため、2回目をやってみると別の結果になる事もままあります。

というのも、質問には「直感で素直に答える」必要がありますが、質問の中にはどこかで「こうありたい」「こんな自分が嫌い」みたいなバイアスがかかるもの。

やっていれば、誰しも多少の打算が混じってしまうでしょうし、その時その時で自分の心境の変化もあるでしょう。

そのため、期間を開けて何回かやってみたり、一回ポッキリでなく定期的にやると正確な診断に近づくかもしれません。

2つ3つの診断結果は多少の誤差だと思って、それぞれをかいつまんで参考にしてみましょう。

さらに、しっかりと詳細に診断してもらう事もできるようなので、気になる方はそういったサービスを利用する方が的確でしょう。

MBTI診断は鵜呑みにするべきじゃない!?

そして、多くの「性格診断」や「占い」と同じく、診断結果の全てを鵜呑みにすることはオススメしません。

診断された文面においても、バッチバチに当たっている部分ばかり見入ってしまいますが、中にはピンとこない文言もあるはずです。

そもそも、たった16パターンに括られるほど、人の思考や心理はシンプルではありませんし、人それぞれ「価値観」は統一されていません。

「お腹いっぱいだけど、スイーツは別腹」

「あの俳優の顔は好きじゃないけど、役は好き」

「コーヒーは飲めないけど、スタバ大好き」

みたいに、実は人の「価値観」には一貫性が無く、矛盾しまくっている部分もあるはずです。「これが私!」「あの人はこれ!」と断定するのではなく、あくまで目安として捉える方がよいでしょう。

診断結果はこうやって利用しよう【美容師の場合】

もちろん、診断結果は様々な部分で利用できます。

まずは、自分を客観的に見つめ直す機会として利用しましょう。診断結果は「自分の能力表」でもあります。

ゲーム上のステータス画面のように各能力を見ながら、得意を活かすこともできるし、不得意をカバーすることもできます。

例えばアシスタントであれば、「技術の覚え方」にも応用が効くかもしれません。感覚で捉える方が得意な方もいるでしょうし、理論を読み解いた方が覚えられる方もいます。指導する先輩側にも理解してもらえれば、効率のいい勉強法が身につくでしょう。

このように、自分を背中から俯瞰して見れば、美容師としての今後のキャリアを考える上でも役立つでしょう。

社内で「私の得意な役割」を発揮する

先述したように、美容師にはそれぞれのパーソナリティ(診断結果)に合う仕事の在り方があります。

そして、美容師は接客だけが仕事、というわけでもありません。社内の業務やポジションからも、「私の得意な役割」を見出せるかもしれません。

人と人とを仲介するのが得意な方は、本人は無意識であっても、実はスタッフ内のバランスを取る重要な役割を果たしています。

また、新しい薬剤への探究心が強ければ「カラーリストなどに特化する」といった方向性もありますし、細かい雑務を几帳面にこなせる方は、スタッフのケアレスミスをカバーする「縁の下の力持ち」として活躍できます。

許せない「アイツの言動」に対しても、寛容になれる

MBTI診断は、職場の人間関係にも大いに役立つでしょう。先輩、後輩問わず「相性が良くない相手」であるほど、自分が納得するための「都合のいい言い訳」にすることができます。

スタッフそれぞれの診断結果を把握すれば、相手への理解度が深まります。「あの人は〇〇だから」と寛容に受け止められれば、気持ちよく過ごせるようになるもの。

「どうしてそう考えるのか?」「なぜあんな振る舞いをするのか」など、行動原理が見えると、許せない「アイツの言動」に対しても許せるようになったり、良いところが見えるようになるはずです。

このように、ポジティブな意味で「都合よく」利用できるといいですね。

まとめ

「それって占いでしょ?」と穿った見方をしてしまう方も、MBTI診断を通して自分を深く理解したり、相手を理解できることで、仕事への向き合い方は変わるかもしれません。

更に、「自分の診断結果」を知ってもらうことで、周りからの目線も変わるかもしれません。簡単にトライできますので、まずはお試しあれ。

操作 イトウ
執筆者
操作 イトウ

東京都二子玉川を拠点にする30代美容師。 『ヘアスタイルはロジックで美しく、カッコよくなる』『ステキな美容師さんに出会ってほしい』をメインテーマにしたブログをnoteにて執筆。2020年から文春オンラインでの連載を開始、CREA等のwebメディアで定期掲載。

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