GOALD米田星慧の「もしも僕が専属マーケターだったら!?」★Vol.2 ICHIGO[TRISH/The TEN代表]
人気メンズサロンGOALD(ゴールド)のCMO米田星慧さんが「もし専属マーケターだったら?」という視点で、注目サロンの課題解決のアドバイスをするトーク連載。
ヘアサロンという「対面ビジネス」に特化したマーケター的経営視点で、ゲストのお悩みを解決していきます!
今回のゲストは…
全国から300名の受講生が殺到する
アイラッシュ&アイブロウ講師
- Profile
- ICHIGO
TRISH/The TEN代表
1989年7月9日、中国・大連生まれ。学生時代に千葉県に移住し、美容師を志しパリ美容総合専門学校へ。就職した美容室在籍中にアイラッシュ&アイブロウを独学で学び始める。2014年に独立し、アイラッシュサロンTRISHをオープン。個人店だったが次第に評判を呼び、千葉県を中心に出店拡大。「毎週通える」をコンセプトにしたスピーディ&低価格のブランドThe TENも展開する。サロン事業のみならず、新しアイブロウメニュー「インプットブロウ」や新感覚の脱毛ワックス「Minminワックス」など、現場目線のメニューや商品開発に定評がある。
- Instagram : @yoshino_minmin_ichigo
その人気の理由は?
──米田さんが今回、ICHIGOさんをゲストに招いた理由を教えてください!
実はICHIGOさんとは、すでに僕のマーケティングチーム「fureru.」でコンサルティングに入らせてもらっているんです。ですが、最近ご一緒するようになったばかりですし、何よりICHIGOさんのビジネスモデルが面白いんです!
業界を問わず勉強になるのではないかと思い、指名させていただきました。
本当ですか!? 嬉しい♪ よろしくお願いします!
──ICHIGOさんはアイサロンの運営と商品開発、セミナーなどを中心に活動されています。まず、どんな想いで経営をされているか教えてください。
元々会社を経営したい!と思ったのではなく、自分の理想とするアイラッシュを追求したいという想いからの独立でした。
最初に勤務したサロンで独自にアイラッシュ施術を始めたのですが、それがお客さまに好評で。技術も営業スタイルも、もっとお客さまが求める形にしたいと思い、家賃11万円の小さな部屋を借りて1人で始めたんですよ。
──なるほど。人を雇って会社として展開していくきっかけは何だったのでしょうか?
集客サイトを見て求人の問い合わせがあったんです。集客を頑張ってすぐに売り上げは軌道に乗り、半年先まで予約が埋まってしまっている時ような状況だったので一緒にやってみよう!と思って。そこからですね。
顧客からスタッフになったり、前のサロンで一緒に働いていた子が合流したりして、仲間が増えていきました。
ICHIGOさんの魅力ってまずここなんですよ。今のセミナー業にも表れていますが、自然に人が集まってくるんですね。
人には恵まれていると思います。うちのスタッフは本当にみんな可愛くて、私が男だったらみんな彼女にしたいくらい大好き♡
見ての通りパリピなんですよ(笑)
人と人が一緒に働く以上、辛いことや裏切られたと感じたこともあるのは事実ですが、仮に裏切られたとしてもそばで支えてくれるのもスタッフなので。お給料も技術もできることは全部やってあげたい、という想いです。原動力はそこですね。
人に対する愛情がハンパなく深い方。経営者にとって最も大事なことだと思います。
営業時間8時〜23時、料金10分1,000円〜
“革命的ビジネスモデル”誕生の背景とは?
──「技術や営業スタイルを求める形にしたい」というお話がありましたが、具体的にどんなビジネスモデルなんでしょうか?
まず、営業時間ですね。TRISHというブランドの方は朝8時から夜の11時まで営業しています。
独立前、アイラッシュ施術は私しかできなかったため勤務先のサロンではなく別のお店に行っていたのですが、休日にわざわざ行かなければならないのが不便だと感じていました。その体験から、仕事前後に通えるハイクオリティサロンというイメージで展開しています。
──まさに自身の実感が活きているんですね。もう1ブランドThe TENというアイサロンも運営されています。違いを教えてください。
The TENは10分1,100円〜というシステムで、TRISHに比べてスピード施術&お手頃価格のブランドです。ラッシュは1枠40分以内、眉毛は20分でお帰しできます。
驚異的に早いですよね。TRISHとThe TENのブランディングの違いはどんなふうに設計されていったんですか?
技術自体が早くなったきっかけはダブルブッキングしてしまったことで……。絶対やらなきゃいけない状況の中でやったら、1枠120分のところが20分で綺麗にできてしまった、という感じです。
アクシデントからだったんですね。もちろん、元々技術が高かったからなせる技だと思いますが。
まつエクは1枠このくらいが相場、という固定観念にとらわれていたんだなと気づきました。そこからそのスピードを体系化してウリにしたThe TENを出すきっかけはコロナでした。
──と、言いますと?
コロナ禍の休業明けに100%お客さまが戻って来なかったんです。まずは感染リスクの懸念。さらに、接客や飲食業界のお客さまの中にはお仕事がなくなったり減ったりして収入が減ったので行けないという方もいました。少し来店周期が延びてしまう方も…。
そんな、さまざまな事情を抱える方にも今まで通り、あるいは今までよりも手軽にアイラッシュを楽しんでほしいと思い、スピード&お手頃というコンセプトにしたんです。
このコンセプトは僕がマーケティングサポートに入る前につくられたものですが、まさにブランドマーケティングの模範解答です。
ブランドとは、サービス提供者の特技や特性からではなくお客さまのJOB(課題)を元に生み出すものです。
JOBとは単なるニーズではなく、お客さまが心のうちに抱える“ジレンマ“のこと。それを的確に突いておられるなと感動しました。
本当ですか? マーケティングの勉強はまったくしてこなかったから、無意識です。
小手先のセールスマーケティングをやってこなかったらこそだと思います。
マーケティングというとどうしても数字やノウハウの理論のように思われますが、本当はお客さまの心の奥底のジレンマに向き合うことなんです。
支持されている美容師さんやアイリストさんなら、無意識のうちにやっていることを言語化したものなんですよ。
そうなんだ! それだったら私も楽しく勉強できそう。これからいろいろ教えてください!
インプットブロウ、ミンミンワックス……
人気商品も理由は的確な“What”にあり
──ICHIGOさんは新しいアイブロウ技術「インプットブロウ」や脱毛ワックス「ミンミンワックス」など、技術や商品開発の手腕も優れておられます。それぞれどんなものかご説明いただいてもいいですか?
はい。まず、インプットブロウはヘナでもティントでもない、新しい眉メイクのメニューを模索するところから始まりました。
素材としては元々ヘナタトゥーに注目していたんですが、自分がヘナアレルギーだということが判明して! 肌が弱い人でもサロンブロウを楽しんでもらいたいと思い、こだわって開発しました。
ヘナやティントという既存の方法じゃないものを模索していたのはどうしてですか?
ヘナやティントは着色の放置時間が長いので、ビジネスモデルとして難しいと思ったからです。また、アレルギーなどのトラブルも後日発覚してクレームになりやすく、生産性とリスクの観点からちょっとな……と。
インプットブロウはお肌に優しい成分で着色する分、5日程度で色落ちが始まってしまいますが、施術した部分をガイドにご自分で描き足していただくことで、何もしないときよりも快適にアイブロウメイクを楽しんでもらえます。
ヘナやティントの「持続性」というベネフィット(価値・強み)を逆手に取った発想ですね。これも「肌が弱いからアートメイクができない」というJOBをしっかり捉えているから逆転の発想ができているのだと思います。
ありがとうございます!
実はミンミンワックスも発想は同じで、私が肌が弱いから自分が納得いくワックスがつくりたかったのがきっかけです。
あと、脱毛ワックスって痛いのがイヤだなって。だから最初は自社だけで使っていたんですが、インプットブロウのセミナーで使用した受講生のみなさんが「これほしい!」と言ってくださり、他社さんに販売するようになったという経緯ですね。
この商品が売れていく経緯にもマーケティング的に重要なポイントがあります。
マーケティングではプロダクト(商品やサービス)に価値を感じて購入してくれる対象「Who(誰に)」に向けてブランディングをしていきますが、この「Who」には2段階あります。
Who❶「JOBを抱える人」と
Who❷「商品のベネフィット(価値)を誰よりも理解して伝えてくれる人」
という構造になります。これをインプットブロウやミンミンワックスに当てはめると……
スタッフや受講生のみなさんがWho❷なんですね。
サービスや商品を通してお客さまに喜んでいただきたいのはもちろんですが、提供するスタッフや受講生のみなさんがハッピーになってほしいと思っているから、そう分析してもらえて嬉しいです!
アイサロンだけでなく美容室も、美にまつわる対面ビジネスにとってWho❷の存在はかなり重要です。
価値を見極める目と語れる言葉がある人……たとえば美容クリニックのスタッフやエステティシャンなど、同業界別分野のスペシャリストをWho❷に設定してコンセプトづくりをするという戦略もいいですね。
発想もコミュニティづくりも完璧!
次の段階では企業の“MVV”を明文化してもっと強い組織に
──潜在的にブランドマーケティングの極意をおさえているICHIGOさんに、マーケター視点でアドバイスできることはありますか?
そうですね。前回の小林社長は「How」の達人と紹介しましたが、ICHIGOさんは「What」づくりの達人だと思います。
ご本人の抜群の発想力で会社を引っ張ることができていますが、同じレベルで「What」を生み出せる仲間を育てるために会社の「MVV(ミッション・ヴィジョン・バリュー)」をつくっていきましょう
今まさに「fureru.」さんの宿題で考えているところです。想いを言葉にするのはとっても難しい……!
簡単なことじゃないですよね。美容業界内でもMVVの要否は議論になり「つくっても形骸化してしまう」という意見もしばしば目にしますが、経営者が本気で自身の顧客やスタッフを見つめて絞り出したMVVは形骸化しません。
形骸化してしまうのは運用やスタッフのせいではなく、顧客やスタッフ、ご自身の想いの掘り下げ方が足りなかっただけだと僕は思います。
確かに! 私のこだわりや想いが誰にでも伝わるような言葉を生み出せるように頑張ります。それが何よりスタッフのためになるんですね!
そうですね。そして、対お客さまにとってもMVVの掘り下げは重要です。「Who」と同様に「What(価値)」も二段構えになっているんですが……。
「What❶=お客さまの望むもの」に
「What❷=企業がお客さまに伝えたい価値」を掛け合わせることで、短期的な成果だけで終わらず継続的に成長していくことができます。
この「What❷」を、ぎゅっと中身の詰まった「お客さまにとっても価値のあるもの」に導いてくれる土台がMVVなんです
目指すはインプットファミリー1000人!
予測できないことも楽しみながら成長していきたい
ー最後に、ICHIGOさんの今後の目標をお聞かせください!
人生の目標は今はないんです、目標を立てて予想できる人生は面白くないなって思うので!
マジでパリピなんだよなぁ
でも、直近の目標はインプットファミリーを1000人に増やしたいです! アイ業界って個人事業主が多くて、人を雇うのは怖いと躊躇する方が多いんです。でも、歳を重ねていくと自分でできなくなってしまう技術でもあるから、本当は企業化して後進を育てていくべきなのになって。
しっかりとした技術とノウハウを提供しながらファミリーとしてつながって、アイサロン経営者として活躍する仲間が増えたらいいなって思います!
ICHIGOさんとお話して、これまでのアイ業界のアベレージを超える高生産性と長期的成長を両立できるビジネスモデルだと改めて感じました。アイ業界に革命が起こせると思っています。楽しみです!
マーケター米田の結論!
① 消費者の「ニーズ」や「ウォンツ」の奥に潜む「JOB(課題・ジレンマ)」を探れ!
② コンセプトを届ける「Who」は「ジレンマを抱える人」と「コンセプトを強く理解してくれる人」の二段構えで設計するとファンが離れない!
③ JOBから生み出す「What」に企業がブランドを通して伝えたいことに基づく「What」をかけあわせることで、継続的に支持されるブランドになる!
天才的ともいえる発想力と明るさのICHIGOさん。アイデザインでお客さまとスタッフをハッピーにしたいという強い気持ちをその奥に感じました。
そんなICHIGOさんの生み出すプロダクトや技術だけでなく、“イズム”をしっかり伝えていくのに必要な「MVV」という共通言語の重要性。マーケティング思考は「売れている人の売れている理由を“翻訳“してくれるもの」。改めてそう思いました!
- Profile
- 米田星慧
GOALD CMO/マーケティングチーム fureru. LS
1993年2月17日、神奈川県相模原市出身2019年GOALDオープニングに参加。27歳で店長に就任後、サロンワークだけでなく、2019年から3年かけて行政にアプローチした「校則改革」や、2021年のメンズメイク検定の監修など、日本初・業界初の挑戦を多数実行し形にしてきた。 現在はGOALD CMOの傍ら、マーケティングチーム「fureru.」で、マーケティング&コンサルティング事業も展開。多数クライアントを抱え、業界初の“美容師出身マーケター”として活躍している。
- Twitter : @yonedaseie
- Instagram : @yonedaseie_marketing
★米田さんの「美容室に特化したマーケティング理論」が本になりました♪
- なぜお客さまはあなたを選ぶのか?
- 美容師として支持を集め実績を残しながらいち早く本格的な「ブランド・マーケティング」を学び、美容業界内外のクライアントに対して多数の実績を持つGOALD執行役員・米田星慧氏が“美容師による美容師のためのマーケティングの教科書“を上梓。
自身の学んできた本格マーケティングの思考と理論を、美容業界に落とし込んで、よりわかりやすく初歩から学べる基礎読本です。