「縮毛矯正、がんのリスクを2倍に引き上げる?」米ホルマリン系縮毛矯正が日本ではNGの理由

「縮毛矯正、がんのリスクを2倍に引き上げる?」米ホルマリン系縮毛矯正が日本ではNGの理由

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昨年、ネットニュースに驚くべき記事が掲載された。『縮毛矯正ががんのリスクを2倍に引き上げる』というのだ。世界で発行される女性誌アメリカ版の記事を翻訳した内容だったが、驚いた美容師も多かったはずだ。


ネットニュースに取り上げられ、コメント欄には日本の縮毛矯正剤への不安や、日本には薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)があるから大丈夫などの意見があった。

今回ボブログでは、縮毛矯正剤はもちろん、サロン技術者向け・一般消費者向けに商品を企画開発・販売する(株)ハホニコ 代表取締役会長 兼 社長である酒井良明氏に話を聞いた。

酒井良明 氏 / (株)ハホニコ 代表取締役会長 兼 社長
Profile
酒井良明 氏

(株)ハホニコ 代表取締役会長 兼 社長

1998年化粧品・医薬部外品のOEM事業を展開する(株)プロテックス・ジャパンを設立。医薬品製造レベルの設備を持つ2つの国内工場(京都府・愛媛県)と海外工場(インドネシア)を展開している。2002年オリジナル製品を企画開発・製造・販売する(株)ハホニコを設立し、美容で生活の質を向上する『美・QOL』を掲げ、毛髪研究と信頼性の高い原料による製品開発を行い業界を先導している。2021年9月にはコロナ禍でのアルコールハンドジェル寄贈により(株)ハホニコが紺綬褒章を受章。

アメリカの毛髪製品とがんの研究

「縮毛矯正剤、がんのリスクを2倍に引き上げる」記事の根拠となっている研究データについて編集部で調査したところ、アメリカでは毛髪製品とがんの関係についていくつかの研究が行われていることがわかった。

いずれも、アメリカの毛髪製品に含まれる「ホルムアルデヒド」「ホルムアルデヒド放出化学物質」などの化学物質を含んだ製品の頻繁な使用が、乳がん・卵巣がん・子宮がんとの間に関連がある可能性が示されている。

●2020年の研究「Hair dye and chemical straightener use and breast cancer risk in a large US population of black and white women(米国の黒人女性と白人女性におけるへカラーと縮毛矯正剤の使用と乳がんのリスク)」「INTERNATIONAL JOURNAL of CANCER」掲載
●2021年の研究「Use of hair products in relation to ovarian cancer risk(ヘア製品の利用と卵巣がんリスクの関係)」「National Library of Medicine」掲載
●2022年の研究「Use of Straighteners and Other Hair Products and Incident Uterine Cancer」(縮毛矯正剤とその他のヘア製品の使用と子宮がんの発生)」「JOURNAL of the NATIONAL CANCER INSTITUTE」掲載

「日本の縮毛矯正が、がんのリスクを引き上げる?そんなことはあり得ません」

──アメリカでの研究を元にした記事でしたが、日本の縮毛矯正剤は大丈夫なのでしょうか?

酒井会長

記事内にあった、がんを誘発するとされている「ホルムアルデヒド(ホルマリン※1)」物質についてですが、日本では薬機法で禁止されています。

ですので、日本の縮毛矯正剤はもちろん、ヘアカラー剤やトリートメント剤などにも「ホルムアルデヒド」は一切入っていません。

ホルムアルデヒドは防腐剤としてEU、アメリカ、中国、韓国等で使用制限や配合制限があるものの使用可能となっています。もちろん日本や台湾では使用は認められておりません。

しかしながら、ホルムアルデヒド遊離型防腐剤※2に関して、日本でも薬機法中の配合禁止成分(ネガティブリスト)内で使用可能な原料が存在します。大手メーカーでも使用されていますが、自主規制で使用されない動きをとられているようです。

※1 ホルマリン…ホルムアルデヒドを含んだ水溶液のこと。
※2 ホルムアルデヒド遊離型防腐剤…食品や化粧品などに含まれ品質を保つための成分。

──「縮毛矯正=がんリスク2倍」というタイトルに違和感を覚えるとおっしゃっていましたが、具体的にどのような部分でしょうか。

酒井会長

「縮毛矯正」には様々な種類があります。世界的にみると、大きく分けて3つでしょうか。

今回この記事内ではそのうちの「ホルマリン(ホルムアルデヒド)系の縮毛矯正」が批判されているのですが、日本で主流のチオグリコール酸系縮毛矯正までもリスクが高いように見せるのは納得がいかないですね。

①苛性ソーダ系
(水酸化ナトリウム)
アメリカでは「リラクサー(ストレートパーマ)」とも呼ばれる。
②チオグリコール酸系日本で主流の縮毛矯正剤。髪の中のシスチン(S-S)結合を1剤の還元剤で切り、2剤で再結合する。
③ホルマリン
(ホルムアルデヒド)系
髪の縮れを減少させるなど、その有効性からアメリカを中心に人気に。
ブローやアイロンなど熱を加えた際にホルムアルデヒドが発生する可能性が指摘されている。

──海外で「ホルマリン(ホルムアルデヒド)系の縮毛矯正」が支持されるのはなぜでしょうか?

酒井会長

発がん性や身体に害があると知っていても、美しい髪を手にいれたいと考える女性もいる。さらに、美容師側がお客さまに対してインフォームドコンセント(施術の十分な説明や理解)が出来ていない。この2つが考えられるでしょう。

──日本では薬機法で「ホルマリン(ホルムアルデヒド)」が禁止されているので、安心して縮毛矯正していいということでしょうか。

酒井会長

そうです。ホルムアルデヒド・ホルマリンは日本国内では使用禁止とされているので、心配ありません。

ただ注意したいのは、米国食品医薬品局(FDA)のアドバイスにもある通り
①熱を加えたら「ホルムアルデヒド」になる成分
②配合成分としては「ホルムアルデヒド(ホルマリン)」ではないけれど、容器の中で水に溶けるなどして「ホルムアルデヒド(ホルマリン)」が生成される成分、例えば「メチレングリコール」など
が存在するということですね。

メチレングリコールは、日本の薬機法中の配合禁止成分(ネガティブリスト)には入っていないようですし、海外から薬剤や化粧品などを輸入する際には注意が必要だと考えます。
日本でも早急に「自主基準」をつくる必要があると思いましたね。

──妊娠中のヘアカラーやパーマ(縮毛矯正含む)が推奨されないのも、薬剤に含まれる物質という部分が大きいんでしょうか。

酒井会長

薬剤の中の物質というよりは、ヘアカラーやパーマの長時間施術の中で、椅子に拘束せざるを得ないことが問題だと考えますね。体調が不安定な中で、熱や匂いなどもありますし、何かあった時では遅いと思うのでメーカーとしても推奨はしていません。

(株)ハホニコの酒井会長からも言及があった、ホルムアルデヒドを生成する可能性がある「メチレングリコール」の日本美容業界における使用・規制状況については次回以降、取材を経て記事にする予定だ。

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増田 歩
執筆者
増田 歩

「CHOKi CHOKi」「Ocappa」「BOB」 etc.からのフリーランスライターです。ボブとショートをいったりきたり、趣味にしたいのはヨガ。

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