【Xでディスられまくる】接客あるあるは間に受けるべき?

【Xでディスられまくる】接客あるあるは間に受けるべき?

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連載:操作イトウの〈美容師の本音〉

現役フリーランス美容師の、操作イトウのコラム連載。
「街の美容師さん」目線で、業界のエトセトラをお話していきます。

操作イトウ

今回のテーマは、
「美容師の接客あるある」です。

突然ですが、皆さんはメディアやSNSを通して知った「美容師接客あるある」に反論したくなったことはないですか?

X(旧Twitter)でも往々にして皮肉ったバズツイートが出てくるのですが、接客の仕方に「美容師の常識」と「一般人の認識」が乖離していることもあると思います。これらを見ると、身につまされる思いにもなりますが「コチラの事情は理解されていないな」と感じることが多いのも事実。

そこで今回は、現役美容師として「接客あるある」についてを語ってみます。

【バズツイート集】
貴方はどう感じますか?

美容師に限らずとも、仕事の取引先やあらゆる人間関係にズレが起きると、粛々と受け止めたり、改善策を考えたり、大目に見たりするものです。

ですが美容師が一生懸命に取り組んでいても、お客さまの「斜に構えた」目線では簡単に揚げ足を取られてしまいます。

そこで、共感されたツイートをいくつかピックアップしてみました。はすに構えて腐した内容はにメスを入れつつ、ツイートに対して僕はこう感じる、という感想をお聞きください。

「この後はどこか行かれるんですか?」
聞かれるのは気まずい?

これは、美容師さんならよく言う一言ですよね。

マニュアル化された文言な訳ではなく、こちらからすれば「ご予定に合わせてスタイリングを変えますよ」といった切り口で聞くことが多いです。また、その後の予定によって時間制限がかかる場合もあるから、セーフティネットを敷くつもりで聞いています。

なので美容師は「家に帰る」という返答も想定の範囲内なので、微妙な空気にはなりにくいはずですが、微妙な空気だと感じ取ってしまうお客さん側が、「キレイにしたのに、家に帰るだけ」という状況に後ろめたさを感じてしまうようです。

「置かれた雑誌あるある」は絶滅寸前かも

明らかに歳上の世代のファッション誌を新人のアシスタントに置かれて、「え、私ってそんなに老けて見えてるの?」といった感じになるのは、確かに「美容室あるある」でした。

仕事、年代、趣味嗜好などを外見から汲み取って雑誌を用意するには、各雑誌のターゲット層を理解しなければならないので、新人アシスタントには結構難しいタスクです。

ですが、最近では雑誌を用意する美容室も減りましたね。今はタブレットを置く美容室が多いでしょうから、そんな煩わしい気配りをする機会も減ったものです。

それでも、アシスタントは先輩スタイリストからお客さん情報を得る機会が多いので、「〇〇さんは猫好き」程度には聞いていたりするもの。そして、僕はむしろ「ねこのきもち」を常備している、その美容室がすごいなって思ってしまった。

「マニュアル化された定型文」は不必要な呪文

これは「日本の行き過ぎた接客」の典型ですね。全国の美容師さんが当たり前に「マニュアル化された定型文」として言っているはず。以前にもお話しましたが、昭和的な風習によって「サービスレベルの向上」や「おもてなし精神」を培った日本のサービス業。

ですが、本来の言葉がけの意図は形骸化して、呪文のように唱えている方も多いはず。

シャンプーの技術がしっかりしていれば、あえて言わなくてもいいのでは?と思いますし、僕は寝ているお客さまに声をかけるのは適切だと思わないので、随分前から言わなくなりました。

詳しくはコチラ↓

値上げ時の 「常連のお客さまへの説明」は
とってもセンシティブ

このご時世、物価高は深刻なので値上げに踏み切る美容室が多いと思いますし、「常連のお客さまへ説明」する際にはこのように感じるお客さまも増えているかもしれません。

ですがこの場面の場合、言い方が難しいですが、美容師からすると「お客さまをふるいにかけている」段階です。美容師にとってはキャリアアップのための値上げで、「技術を安売りせずに高級層を狙う」という戦略上、料金を改定した場合の反対意見は仕方がないことでもあります。

とはいえ「常連のお客さまへの説明」はセンシティブな問題なので、上手にお伝えするのはとても難しいですよね。

住宅エリアの美容室では
「美容室はパパッと済ませたい」という方も

これは「繁華街の美容室」では少ないかもしれませんが、「住宅エリアの美容室」ならあり得ることです。

手間をかけてでも訪れる繁華街の美容室とは違い、住宅エリアの美容室では「美容室に行くのは億劫だから、パパッと済ませたい」といった方も多いので、ご近所さんならではの感覚かもしれません。

かつて働いた美容室では、テナントの上のマンションに住む方が、パーマの放置時間中に「ちょっとお家に戻る」と言って、ロッドとタオルを巻いたままの頭でお店を出て行く方がいました。

「恥じらい」の意識も、人それぞれですね。

施術中のお客さまは
ずっとメガネを取り上げられている状態

これは、美容師としてついついやってしまうことですね。

仕事に没頭する余り、お客さまが「見えていない」ことを忘れてしまう。特に、カットの途中で長さなどを確認する時には、やってしまいがちです。

僕も目が悪いので、メガネで美容室に伺うとマジで何も見えないことを実感します。施術中、お客さまはずっとメガネを取り上げられている状態なので、雑誌やタブレットも目を通しにくいし、快適とは言い難い空間になってしまいます。

そもそもSNSでの批判は、
間に受けるべきではない?

話題になったツイートを取り上げてみると顕著ですが、今やSNSは、日常を面白おかしく切り取った「すべらない話」で溢れています。

特にXでは「バズらせる」ことが目的化していて、すべらないエピソードトークの戦場と化しています。また、「IPPONグランプリ」のようにお題に対してツッコミ入れるようなスタイルも多い。

そして、Xは文字数の制限があるため、過剰に断言した言い方になったり、盛って話したりということが当たり前。これでは、実際はどうなのかの精査もできません。

この「クスッとさせたもん勝ち」のゲームの中では、「フェイクニュース」ならぬ「フェイクエピソードトーク」かも、判別がつかないのです。

美容室/美容師はあるあるの宝庫!?

少し前に岡崎体育さんのツイートも話題になりましたが、とりわけ美容室/美容師は、一般の方にとって日常のあるあるが起きやすい現場です。

他の接客業より接する時間も長く、また行く回数も多い、まさに普遍的なシチュエーション。

美容室の「お洒落で“ステキな”人と空間」は、「カッコつけてて“いけすかない”人と空間」にもなり得るし、実は槍玉にあげられやすい職種かもしれませんね。

今回のまとめ

いかがでしたか。

美容師と一般人の間に「間違った認識」が起きること自体は、珍しいことではありません。そして「ここにある声」を全てを真実として受け入れるべきかどうか、いささか疑問もあります。

ですが僕自身、反省する点も多くありました。「僕もやっちゃってるな〜」とか、思っちゃってます。

そんな「ここにある声」、貴方はどう感じましたか?

操作 イトウ
執筆者
操作 イトウ

東京都二子玉川を拠点にする30代美容師。 『ヘアスタイルはロジックで美しく、カッコよくなる』『ステキな美容師さんに出会ってほしい』をメインテーマにしたブログをnoteにて執筆。2020年から文春オンラインでの連載を開始、CREA等のwebメディアで定期掲載。

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