編集部では、112サロン・計206名の美容師に「2023年最も売れた店販商品」についてアンケート調査を実施した。カテゴリは「シャンプー・トリートメント」「スタイリング剤」「美容機器」の3つ。その中で今回は「シャンプー・トリートメント」部門の結果発表を行う。
1位はミルボンのプレミアムブランド「オージュア」が獲得。続く2位はロレアルプロフェッショナルの「ケラスターゼ」、3位はタイでホーユープロフェッショナルの「バイカルテ」とテクノエイトの「オッジィオット」が並んだ。
なお、今回は番外としたもののOEMのプライベートブランドが好調のサロンも多く見られた。近年コンシューマー製品におけるプレミアムケアの伸長が目覚ましい中、サロン店販ではパーソナルな提案ができる豊富なラインナップや、ウリ・推しポイントが明確なブランドが印象に残った。
以下に各順位で売れた理由やその取り組みを紹介する。価格は編集部調べ。
今年最も売れた店販商品
シャンプー&トリートメント部門
《1位》「オージュア」ミルボン
堂々の1位に輝いた「オージュア(Aujua)」は17ライン・100アイテム以上(2023年12月現在)という豊富なラインナップから、認定サロンでカウンセリングを通じて様々な髪・地肌の悩みに対応したケアができる“パーソナルヘアケアプログラム”が特徴。
インメトリィは今年2月に発売されたラインで、ツヤ・まとまりが出にくくなる要因となる「毛髪のゆがみ」に着目。不均一に欠落した毛髪内タンパク質をミルボン独自の補修効果の高い成分で補い、毛髪のゆがみを整え、乾かすだけでまとまり輝く髪に導く。
アンケートでは「悩みに対してピンポイントで狙える、種類の豊富さ」といったパーソナルな提案ができることが購買へつながったという回答が最多に。他にもMILBON エデュケーションiDに代表される教育サポートによる製品知識への理解促進や、キャンペーンを利用した販促施策が項を奏したという声も多く挙がった。
《2位》「ケラスターゼ」ケラスターゼパリ
国際的にも人気の高いケラスターゼ(KERASTASE)が2位にランクイン。プレミアムケアの中でもラグジュアリーな要素が強く、パッケージにも現れている。使うだけ、持ってるだけでも“贅沢感”で満たされるイメージだ。
黒を基調とした、一際高級感を放つパッケージのクロノロジストは、ケラスターゼの中でも最高峰ラインとして“ハイブリッド”なヘアケアを謳う。ヒアルロン酸Naを含むテクノロジーで頭皮と毛髪両方を保湿し、健やかな状態へ導く。
アンケートでは、オージュア同様に「種類が多くて様々なお客さんにすすめやすい。」といった声が多く見られた。他にも「クロノロジストのしっとりした質感がいい」など、洗い上がりの手触りといったシャンプー直後の効果実感が店販につながっているようだ。「店舗のキャンペーン実施で一気に売れる」といった声も。
《3位タイ》「バイカルテ」ホーユープロフェッショナル
3位タイは、“シスチン”に着目し素髪のような髪質を再現するバイカルテ(BYKARTE)のホームケアシリーズだ。
補修効果の高いPPT系洗浄成分を豊富に配合しながらも、アミノ酸系などの洗浄成分をバランスよく組み合わせることで泡立ちの良さを両立。軽いのにまとまる独特な質感や髪に芯ができる働きがヘアデザインをサポートする。
アンケートでは「高級な香水のような、他のシャンプーにはない香りでお客さまが喜んでくれる」「お客さまから『髪が素直(扱いやすく)になった』と言われる」といった声が上がった。素髪のような質感と香りの高いスペックがそのまま店販に繋がっているようだ。
《3位タイ》「オッジィオット」テクノエイト
バイカルテに並んで3位はオッジィオット(oggi otto)。“高濃度美容液で髪を洗う”という発想で作られたセラムは美容成分PPT系界面活性剤が40%以上を占める唯一無二の配合。髪に必要な栄養を補いながら洗い、ダメージの補修と予防ができる“魔法のシャンプー®”としても話題に。また、合成香料を使用せず、精油のみで香りづけするなど、細部までこだわり抜いている。
一般ユーザーを対象とした“本社 オッジィオット ベーススタジオ”での定期イベントや大型商業施設でのポップアップショップ開催など、独自の取り組みも行いファンを増やしている。
アンケートでも「美容液でシャンプーができるというウリが明確で推しやすい」「希少価値があり、既存顧客のリピートが多い」といった、商品力や希少性を評価する声が多く上がった。
番外編
「スティーブンノルプロフェッショナル」コーセー
番外編はスティーブンノルプロフェッショナル(STEPHEN KNOLL PROFESSIONAL)。ランクインは逃したものの多くの票を集めた。コアリニューシリーズは軟毛化や強度が失われている髪に特化し、髪質を高めながらスタイリングしやすい髪質へ導く。
アンケートでは、「ブリーチ毛に効果が高いという点で購入してもらえる人が多かった」といった声が多かった。ハイトーンカラーの人気が後押しし、施術の効果実感からそのまま購入へとつながっているようだ。また、いわゆるプロ用製品の中では手の出しやすい価格帯であるため、幅広い客層に売りやすいといった回答も見られた。
「プライベートブランド」
単体ではなく、プライベートブランド(以下PB)全体でみるとメーカー製品に劣らない票を集めた。サロンの看板を背負っている安心感に加え、基本的に他店で取り扱いがないため一度販売に成功すると継続して購入してもらいやすい。さらに価格面も抑えて販売できるケースが多く、普段サロンで使用するメインシャンプーとしても顧客に触れる機会も多いことから、自然に売れていく流れを構築できるのだという。
編集部分析
1位のオージュアと2位のケラスターゼ。両者とも売れた理由には、「種類の豊富さ」が目立った。悩みがある人にとって店販はソリューションであり、商品は処方箋となる。髪悩みに対して適切な製品を提案できるラインナップの豊富さはそれだけで武器となっているようだ。加えてオージュアには使い心地や機能面が、ケラスターゼではラグジュアリーさや満足感といった、それぞれ異なる理由で売れていることもわかった。
バイカルテやオッジィオットは種類の豊富さでは上位にこそ及ばないものの、どちらも「使えばわかる」効果実感が店販につながっている。バイカルテは、コンセプト通りの扱いやすさが顧客からの評価が高く、店販においても自信を持ってアプローチができるようだ。一方のオッジィオットも本格ケアとしてケアへの感度が高い顧客に刺さりやすく、高いリピート率を誇る。多くを語らずとも伝わる商品力は、提案を通して美容師と顧客との信頼構築にも寄与する。
コロナ禍を経て盛り上がるも
急変するサロン店販のカタチ
サロン店販全般に言えるが、コロナ禍を経たことでマーケット全体は盛り上がりを見せている。その理由には商品の幅の広がりや、プロのアドバイス・体験を経て購入したいという消費者ニーズ、自宅におけるプレミアムケアの需要増が挙げられる。そして同時にECも急激に浸透し、既に対面販売という天井は取り払われた。サロンは「何を売るか」より「どう売るか」を重視し、その傾向はシャンプーをはじめとした継続購入が期待できる基礎物販においてより強くなっている。
これはメーカーの取り組みにも現れている。どんなに優れた商品でも、商品力だけで店販売上を伸ばすというのは難しい。そのため実際には売り方そのものにおける、サロンの経営課題に寄り添った提案が欠かせない。また、独自の商習慣をもつこの業界では、サロンとの協業や代理店との関係性もカギとなるだろう。もちろん、対面で発揮する商品力は今後も無視できないが、サロンが新しい店販のカタチを模索する中で、どのようなフォーメーションを構築し商品を配荷していくのか。その仕組みや変化にも注目したい。
次回は《スタイリング部門》×《美容機器》の結果発表を行う。
- 執筆者
- 木村 麗音
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