業界課題を解決する「美容師クローンAI」が初お披露目
動画マニュアル・教育、社内SNSのプラットフォームサービス“soeasy buddy”を運営する株式会社soeasyは8月21日と9月11日の2日間、「BEAUTY SALON FUTURE SESSION【おしえあインタラクティブ】─デジタルが機能するコミュニティの未来」をミツイコーポレーション東京支社(東京・天王洲)で開催した。
「おしえあうって、すばらしい」を理念に掲げるsoeasyの取り組みとして立ち上がった「BEAUTY SALON FUTURE SESSION」。これまで「おしえあイズム」「おしえあイノベーション」というテーマで次世代教育や業界越境、共創といった様々なトピックスについてゲストを招いたトークセッションを繰り広げてきた。
過去の開催
ゲームチェンジャー達が語らう教育産業の在り方
歯と髪の医者でおしえあイズム
革命児たちが語らう業界のミライ
続く今回のテーマは「おしえあインタラクティブ」。「日本の美容文化をデジタルにのせて、未来へ、世界に」を掲げる一般社団法人デジタルサロン協会(通称:デジサロ)のメンバーが登壇し、美容業界の課題が共有された。
労務環境や所得の課題、求人や教育、事業承継などの課題を解決し、美容業界の資産である「美容師」という「人」が永く活躍できる業界を導くために、デジタルツールをどう活用していくべきなのか、未来の在り方について語られた。
登壇者同士だけでなく、視聴者も巻き込んだ対話形式(インタラクティブ)で意見交換が行われる、活気あふれるイベントとなった。
8月21日のトークセッションでは、soeasyの森本和希氏に加えデジタルサロン協会メンバーの事務局長を務める森越道大氏(株式会社SENJU CEO)、プロデューサーの山内大成氏(i.グループ 代表取締役)、PRの青木大地氏(株式会社COA 代表取締役)、PRのfifth 木村允人氏(fifthグループ CMO)、マーケティングの米田星慧氏(GOALD 執行役員)の計6名が登壇。
美容業界が抱える課題とデジタルサロンが目指す未来の形をクロスさせながら、何のために美容師が主導するテクノロジーが必要なのか? デジタルサロン協会の目的が伝えられた。
9月11日のトークセッションでは、soeasyの森本和希氏、デジタルサロン協会 理事メンバーからは森越道大氏(株式会社SENJU CEO)、山内大成氏(i.グループ 代表取締役)、青木大地氏(株式会社COA 代表取締役)、内田航氏(株式会社SENJU CMO)、特別ゲストとしてVR教育を推進する寺村優太氏(iii 代表取締役)も参加。
内田航氏からは美容師が未来の美容師に技術や文化をつなぐために、進化するテクノロジーと共存していくことの必要性が語られた。他業界からAIによる美容業界の集客や求人の市場が形成される前に、デジタルサロン協会に加盟する美容室や企業とともに、美容業界が一丸となり、意見をまとめ、テクノロジーを動かしていくための協力体制が必要であることが再認識される場となった。
座談会ではSNSをうまく使えた美容師だけが支持される時代から、お客の満足度が伴った上でテクノロジーを活用するべくために何をしていくべきなのかについても意見交換された。
急速なスピードで進化するテクノロジー時代。業界課題の解決のためには、AIなどをはじめとするテクノロジーの活用が今後、必ず求められる。
今回、その一例として、株式会社Eye Universe(森越道大代表取締役社長)が制作した美容師のためのAIプロトタイプが初お披露された。
この日、お披露目したプロトタイプは、顧客がヘアスタイルの悩みや相談を担当美容師に相談できるAI。3年以上に渡り、美容師の知見を組み込み開発してきたプロトタイプは、テキスト生成AI「ChatGPT」に美容師個人の頭脳を組み込んだAIだ。
顔認証システムにより美容師個人のアバターが、24時間いつでも顧客の質問に対応する。顧客への回答は個人のSNSを学習させ、自分のAIをカスタマイズできる仕組み。今回お披露目したプロトタイプは、森越氏が代表を務める美容室・SENJYUの美容師の知能を学習させているため、SENJYUのスタイリストならではの「お悩み回答パターン」を搭載する。
英語にも対応し、美容師個人のSNSを学習し、お悩みに対する回答が自動生成されていくため、美容師それぞれの嗜好に合わせた趣味の話題、人生相談やラーメンの話などもできるようになるという。
プロトタイプは音声は入っていないが、今後は本人の声で音声による回答や、音声に合わせた口の動きもよりリアルに再現される。
顧客も自分のアバターをつくることができ、アバターに好みのファッションやヘアスタイルを着せ替えてから美容師とコミュニケーションを行うことができる。
さらに事前カウンセリングだけでなく、サロン来店時の決済や来店後のリマインド、アフターフォローなどもAIで可能になるという。
プロトタイプのお披露目ステージでは、デジタルサロン協会に加盟する利 剛広氏(Niau・群馬県 代表取締役)、和田かな子氏(NiMO・東京 代表)も登壇し、AIプロトタイプを体感して感じた疑問を受講者を代表して森越氏に質問した。
「AIに任せていることが顧客からどう見えるか?」という和田氏の質問について、人が行うべきこと、AIに任せるべきことのこれからの棲み分けについても議論された。
森越氏は「基本的には人が返答することが一番」と言い切った上で、数カ月後、すべての顧客のリピート状況を把握して、顧客に合わせたリマインドメッセージを人の力だけで送るのは客数によっては難しいと回答。
プロトタイプはいつも顧客とやり取りしているアプリ上で動かすことができるため、InstagramのDMやLINE、HP上で個人のクローンAIを成長させることができ、顧客とのメッセージのやり取りにおいて、AIを使うか人力で返信するかはその都度選ぶことができる。
半分以上の失客が「なんとなくリピートしなかった」という理由であることを踏まえると、AIのリマインド機能によりリピートのきっかけづくりに貢献することが期待される。
AIに任せられる仕事は任せ、浮いた時間を顧客に向き合う時間に費やすことで顧客の関係性を深め、美容師を助ける存在に育てていくことができそうだ。