美容室の倒産、3年連続増加で過去最多を更新 経営を襲う“三重苦”

美容室の淘汰が止まらない。帝国データバンクが9月4日に発表した調査によると、2025年1〜8月に発生した美容室の倒産件数(負債1000万円以上、法的整理ベース)は157件に達し、前年同期(139件)を上回った。3年連続で増加しており、通年でも2年連続で過去最多を更新する可能性が高い。

背景にあるのは「コスト高」「人手不足」「競争激化」の三重苦だ。美容資材や水道光熱費、テナント料の上昇に加え、フリーランス美容師の増加でスタイリスト採用は一段と難しくなっている。低賃金・長時間労働の改善を求めるスタッフの流出も進み、従来通りのサービスを維持できず倒産に至るケースが目立つ。2025年に入り「人手不足」を直接的要因とする倒産は8カ月間で9件発生し、前年通年に並んだ。

業績面では二極化が進む。2024年度決算では「口コミやSNS集客で増益を確保した」という声がある一方、約3割が赤字、さらに26.0%が減益と苦戦。物価高による節約志向で来店頻度が下がり、都市部ではクーポン発券による実質的な値下げ競争も加速した。大手チェーンでさえ減益が目立つ状況だ。

一方で、足元では値上げ戦略に舵を切る動きも出始めている。メニューごとに価格を段階的に引き上げるほか、常連客向けプログラムやプレミアムサービスで単価を確保する試みも広がる。顧客データ活用やデジタルマーケティングといった仕組みを通じ、「値上げに見合う価値をどう提供できるか」が美容室経営の新たな焦点となっている。