ミルボンは2月3日、2025年の経営方針を発表した。2024年は「スマートサロン」の全国展開を進め、導入サロンでは知販購入率が従来の15%前後から24~26%へと上昇。この成長をさらに加速させるため、2025年は知販市場の拡大と適正なプライシングの推進を軸に、サロンの収益基盤を強化する。
オンラインで開催された『NEXT VISION 2025』では、坂下秀憲・社長が登壇。市場環境の変化に対応し、知販市場のさらなる成長と業務メニューの付加価値向上による適正なプライシングの実現を掲げた。
知販市場の成長がカギ
ミルボンの戦略的対応
美容業界では少子高齢化による美容師不足、最低賃金の引き上げ、物価上昇による消費抑制といった課題が顕在化している。こうした市場環境の変化に適応しサロンが持続的に成長するには、価格競争に陥らず適正な価格で付加価値を提供することが不可欠となる。
ミルボンはまず、ヘアサロンにおけるプライシングのあり方を根本から見直す。知販市場の成長を支えるには、単に製品を販売するのではなく、サロン独自の付加価値をどのように創出するかが鍵となる。ミルボンはターゲットに応じた知販提案の精度を上げることで、サロンの収益基盤を強化する。
その一環として、ヘアカラー施術の価値をより高めるための「ターゲット別推奨カラーメニュー」を策定。顧客のライフスタイルや価値観に合わせたメニューを構築し、価格競争に陥らない高付加価値サービスの提供を目指す。特にリアル教育の強化にも注力し、スタッフの技術力向上を支援。施術のクオリティを高めることで、単価の向上につなげる狙いだ。
他にもヘアカラー単体ではなく、眉カラーやアイメイクと連動させた提案にも力を入れる。ヘアカラーとメイクの組み合わせによるトータルビューティー提案を強化し、顧客の美容意識に寄り添うことで、知販市場への波及効果を高める。
「プライシングは単なる価格改定ではなく、付加価値の創出が前提となる。サロンごとの強みを生かし、知販市場への波及効果を高めていく」と坂下社長は強調した。
知販市場の拡大に向けた新たな施策
ミルボンが展開する「スマートサロン」は、知販市場の成長を支えるインフラとして、2024年末時点で全国50都市・62サロンに拡大。2025年は、知販購入率のさらなる向上を目指し、施策を強化する。
その中核となるのが「スマートサロンビューワー」の活用だ。セット面での施術時に顧客ごとに最適なシャンプーやトリートメントをカウンセリングし、試供品として提供。顧客が仕上がりを体験した上で現品購入につなげる流れを構築する。従来の「商品棚で選ぶ」形式とは異なり、実際の施術体験を通じて購買意欲を高めることが狙いだ。
サロンスタッフの知識がより重要になる中で「ソムリエ制度」の強化も不可欠とし、専門知識を持つソムリエが体験スペースで直接顧客にアドバイスを行う機会を拡大。これにより、知販購入率のさらなる向上を図る。
さらにミルボンは「知販購入指数」および「現品購入指数」という新たな指標を導入。従来の売上ベースではなく、「知販に関心を持つ顧客数」の増加をKPIとし、成長の進捗を測定する。
スマートサロンの認知拡大と広告戦略
知販市場の拡大には消費者の認知向上が不可欠だ。ミルボンは2025年、新たな広告戦略として渋谷・梅田の駅構内に交通広告を掲出し、スマートサロンの認知を広げる。
また、サロン経営者同士が成功事例を共有する「スマートサロンサミット2025」を開催。2024年の参加サロンの約8割が知販売上の向上を実感しており、業界全体での知販拡大を後押しする。
消費者向け施策ではサロン専売品を試せる「スマートサロンガチャ」を導入。トライアル購入から現品購入への転換を促し、新たな消費者層の開拓を狙う。
付加価値創造がサロンの未来を支える
ミルボンの2025年の戦略は「技術メニューの付加価値を高め、その感動を知販市場へ波及させる」ことを軸に展開する。これは単なる売上拡大ではなく、サロンの経営基盤を強化し持続可能な成長へと導く戦略だ。
坂下秀憲・社長は「サロン経営の未来には、付加価値の創造と知販市場の成長が不可欠。スマートサロンを軸に、美容室の持続的な発展を支援する」と語る。2025年、ミルボンは美容業界の変革をリードし、サロンと共に成長する道を歩む。