リスクを避け独立志向は低下しているものの、働き方の自由度や手取りアップを求めて、フリーランスに移行する美容師が増えています。
現在、美容師のフリーランスは全国で8万人(船井総研2020年データ)。全体の美容師の約15%を占めていると言われています。
コロナ禍をきっかけに所属していたサロンを離れる人も多く、組織にしばられない働き方を選択する流れは今後も強まる気配。
モール型サロンなど、リスクが少なく出店できるやり方も出てきています。
コロナ禍まっただ中の3月、その流れを汲む新しい形態のサロン「SALON VILLAGE(サロンビレッジ)」が東京・銀座にオープンしました。
シェアサロン・業務委託との違いは? その設立目的は? 代表の山本豊さんに聞きました!
自身のフリーランス経験を生かしてつくった‶1人独立”の村
はじめまして。よろしくお願いします!
よろしくお願いします! 山本です。
いきなりですが、山本さんは美容師さん?
はい、美容免許は持っていますよ。僕自身がフリーランスになって、サロン経営して苦労して……今37歳です。
そもそもなんですが、業務委託とか面貸しとかフリーとかの違いがあまりわからず。そこから教えてもらっていいですか?
フリーランスというのは組織に所属しないという意味なので、業務委託サロンで働いている人もフリーランスなんですよ。雇用形態が違うんです。
シェアサロンと業務委託の違い
・シェアサロン
シェアサロンは美容室にある一区画を借りて個人営業するスタイル。出店時の設備投資や保証金が不要なことから、リスクが少なく、新規出店の間シェアサロンに在籍する、といった人も多くいます。ただしフリーランスとして場所を借りているだけなので、自分で薬剤を手配し、集客・顧客管理をしなくてはなりません。顧客が多い人向けの働き方です。
・業務委託
業務委託もフリーランスなのですが、サロンから顧客業務を委託された契約社員ということになります。そのため集客や薬剤の手配はサロン側がする前提です。業務委託スタッフがそのサロンで教育を受け、スタイリストビューした人が多い(例外もあります)ところは、比較的チームワークがよいと言われています。出産で現場を離れたり、特殊な事業で特定の時間しか働けないけどサロンを辞めたくない、という正社員だった方が業務委託にして切り替る、というパターンが多いと思います。
サロンビレッジは個室型シェアサロン
なるほど……で、「サロンビレッジ」はどれになるの?
形態としてはシェアサロンの一種です。ただ一般的なシェアサロンは複数の美容師でひとつの施設内を共有しますが、「サロンビレッジ」は2m×3mで区画された個室をそれぞれの契約者が専有する形をとるのが特徴です。すべてがその個室の中で完結でき、内装はある程度自由に変えてもらえます。
シェアサロンとの違いは?
登記上は同じです。ただ、一般的なシェアサロンは材料を自分で仕入れないといけないし、横のつながりはほとんどない。サロンビレッジでは、ほぼすべての材料をサロン仕入れ価格と同じで入れられますし、テナント同志の横のつながりも意識しています。ただ場所を貸すのではなくて、コミュニティをつくりたい。その思いがあって「サロンビレッジ」(サロンの村)と名付けたんです。
村! なんか女性が多いですね。テナントを覗いてみると。
はい。ひとりひとりと丁寧に向き合いたい。そんなタイプが個室型には向いているし、女性は多い気がします。僕もフリーランス時代は目の前のお客に集中したいタイプで。でも、独立すると情報が入らなくなるんですよね。それはそれで、不安だった。その実体験から、集客のアドバイスやコンサルテーションもしています。細かいことだと、名刺やホームページの作成なんかもサポートしています。1人でやると結構大変ですから。
職人がリスクを取らなくても楽しく自由に働ける世界をつくりたい
いくらくらい売り上げると借りた人はペイできますか?
理想は70万円ですね。それくらいあればテナントと薬剤などの代金を引いて、残りが40万円。25日勤務で1人3人くらいのゆとりある働き方ができるんじゃないでしょうか。僕は最初のサロンを1年で辞めて、5年間ヘアメイクの勉強をしたんです。その後、キャバクラでヘアセットの美容師をしたり、委託サロンで人数をこなしたサロンワークをしたりで、いろんな経験できましたが……頑張ってきた職人がこれからはリスクを取らなくても楽しく自由に働ける世界をつくりたいんです。
山本さん、結構波乱万丈なんですね!
はい(笑)。売り上げられる時期はあるんですが、経営を継続していくのは本当に大変でした。自分の城を持ちたいけれど、経営者にならない人がいたっていいと思うんです。シェアサロンって、稼げるようになった美容師を刈り取っているというイメージを持たれがち。独立を目指す美容師が報われるための一つの選択肢としてつくったし、教育事業も考えています。
教育も! それは気になりますね。
問題は折角美容師として頑張って厳しい修行を耐えた末、自分らしく働く選択肢としてリスクをとって独立しても、過酷なオーバーストアで今までと違う業務とプレッシャーにより、報われなくなってしまっていること。そこを変えたいんです。
14ある個室はすぐに埋まったらしいですね。
はい、おかげさまで問い合わせも多く、9月には近くに二店舗目を出店する予定です。美容師さんだけでなく、ネイリストさんやフットケアなど個室で施術が提供できる業種もスペースを契約できますし、フランチャイズ展開も考えています。ますます増えていくフリーランスの美容師さんたちに、豊かな生き方ができるお手伝いができると確信しています。
個の時代になり、お客側のニーズは『このサロンで』、ではなく、『この人に』になっています。コロナ禍がさらにそれを促進。この村は生涯美容師を全うできるコミュニティとなりうるか。今後の動きに注目です!
- Profile
- 山本 豊(やまもとゆたか)
[SALON VILLAGE(サロンビレッジ)/東京・銀座]
やまもとゆたか/1984年1月23日生まれ。千葉県出身。ハリウッド美容専門学校卒業。東京都内1店舗を経てヘアメイクを志す。生活のためにキャバクラのセット師や、フリーランス美容師として業務委託サロンに従事するなど美容師としてはイレギュラーな経験を積む。自らも業務委託サロンの経営者となり、その経験を生かして2021年3月に個室型共同体シェアサロン「サロンビレッジ」を東京・銀座にオープン。9月に同じく銀座に二店舗目を出店予定。