競争の激しい中国の美容師教育。SNSでバズれても1〜2年で消えることも多々ある上海で、“傷みにくいハイトーン理論”をベースに、圧倒的信頼の厚い美容師がいる。
2009年にイタリアに渡り、現在は上海にアカデミーを構える2046(アェーリンスーリュウ)さんだ。
イタリア・ミラノでアジア人の黒髪をハイトーンにする研究をスタートさせ、現在は上海を拠点に活動。1年間で2万人の受講生を輩出している、2046式ハイトーンカラーの“考え方”に迫る。
TikTok:2046技术研修 2002年、上海でサロンワークをスタートし、VIDAL SASOONのアカデミーを修了。カットを武器に2009年にイタリアに渡り、2015年、ミラノにヘアサロン〈Salon 2046 Studio〉(サロン 2046 スタジオ)を創業。欧米人のような髪色を目指すアジア人のヘアカラーを研究し始めたことがきっかけで、ハイトーンカラーに特化。2020年に上海に戻り、アカデミー「2046チーム」を創設。国内向けはTikTokを中心にハイトーンテクニックを配信。フォロワーは約53万人。Instagramのフォロワーは24万人。ブリーチセミナーは国内だけでなく、東南アジア・台湾・香港・韓国でも人気。2024年には大阪でも講習。上海のオンライン教育サービス『三色灯』の株主の1人でもある。
これまでの常識を覆す
チームで年間2000回のブリーチセミナーを行い、受講後に確実にスキルアップできることで知られている「2046チーム」。このチームの創設者・2046さんは言う。
「これまでは髪が傷むという理由で、中国では圧倒的にブリーチカラー客のリピートが少なかったんです。そこで僕は、ブリーチの理論やテクニックを刷新。ダメージしにくい、頭皮に優しいハイトーンカラー理論により、上海のハイトーン客のリピートは急増しています」
これまでの常識を覆す「2046式理論」を勉強したサロンは、ダメージを軽減できるハイトーンカラーがブランティングの柱になっている。小紅書(RED)など集客目的のSNSに、「2046式」の売りを大きく打ち出すサロンも少なくない。
そこにニーズがある限り、外せないのは“理論”
「中国では若い女性を中心にハイトーンカラーのニーズが広がり、とあるデータでは130%増を超えると言います。お客さまのニーズがある限り、“どうやったら傷ませずにブリーチできるのか”その理論を突き詰める必要があると考えます」
中国ではサロンを持たず、ミラノのみでヘアサロンを経営する2046さん。小紅書(RED)は運用せず、国内の美容師向けに中国版TikTokを活用。53万人のフォロワー数からも、ダメージを軽減できるハイトーンカラーの学びが、中国全土で広がっていることがわかる。

中国では近年、カラー講師が増え、バレイヤージュだけを教える先生、ブリーチを使わずライトナー施術を強みにする先生など、セミナー内容も細分化した。アカデミー間の競争が激しいからこそ、「確かな理論」と「目的を分けたSNS活用」が欠かせない。
現在、「2046チーム」には5人の講師がいる。新メンバーには思考・テクニック・センスを自ら教え、作品のBefore&Afterチェックは2046さんがすべて行う。
「SNSのセンスがある人、SNSのセンスがない人もいるので、SNSも含め、セミナー講師としてバズれる教育を徹底して行います。僕たちのチームのコンテンツを勉強したサロンが、本当に現場で役立つ内容になっているのか、これが最も大事なことだと考えています」

ミラノでのハイトーンニーズが美容人生の転機
上海で美容師をしていた20代の頃はカットが得意で、VIDAL SASOONのアカデミーにも通った。2009年、のちに妻になるガールフレンドがミラノでキャリアをスタートさせることになり、自身もイタリアへ渡ることを決意。
渡伊して3カ月後には、ミラノにヘアサロン〈Salon 2046 Studio〉(サロン 2046 スタジオ)をオープンした。

ショートカットが強みだったこともあり、オープン当時は、カットの再現性を求めてイタリアに住むアジア人経営者や大人女性が多く来店したが、次第に、欧米風の明るいヘアカラーに憧れるアジア人や20代の顧客が増加。お客さまのために何ができるか、ブリーチカラーをオリジナルで研究した。
「どうしたら、傷ませないか? どうしたら頭皮が痛くならないか? 色持ちが続くか……。何パターンもケースバイケースで染まり方を実践し、現場ベースの研究から理論を仕上げていきました。時間を費やして苦労した分、自分だけでなく、たくさんの美容師にこの理論を知ってもらいたいと思い、セミナーを始めたのが講師活動のきっかけです」

大事なのは、数字よりも“思考”
中国は市場の変化が近隣アジア諸国に比べて早い。だから、これまで習った基本が“本当にそれで良いのか”を多角的にとらえ、ニーズによって、理論やテクニックを更新していく必要があるという。
「たとえば、中国ではブリーチはネープから塗布するのがセオリーでした。でも僕は、ダメージを考慮して、表面から塗布します」
研究に基づく独自の視点を信じて、改革を恐れないのが2046流だ。
2046が提唱する、3つのハイトーン理論
① ダメージしにくい
切れ毛、質感を改善するためのブリーチ剤の使用方法。カラー剤の正しい見分け方と塗布順序、使用方法。
② 頭皮に配慮
ブリーチによる炎症、痛みの改善。ブリーチの扱い方
③ 色持ち
ブリーチカラーの色持ちが続かない原因と解決策。カラー剤の正しい見分け方


国内だけでなく、海外にも広がっている2046さんのセミナー。日本では2024年に大阪でセミナーを開催。台湾・香港・韓国・シンガポールからも引き合いが多く、国内向けのコンテンツを再編集して、Instagramで発信している。
セミナー依頼が増え続け、サロンワークに立つ時間は持てない2046さんだが、常に時代のニーズを捉えることは欠かさない。
「技術を極めるのが大好き。でも、それはお客さまのニーズがあってこそだと思っています。世界的にSNS時代の今は、“ネット感覚”を持っていることがとても重要。SNSやネットからニーズをとらえ、お客さまのニーズに合わせて、何が必要かをいつも考えています」

「2046式のハイトーンカラーを学び、純利益が10倍なったなど、数字の事例はよく聞きます。客単価がどれくらい伸びたかを宣伝する講師も多いですが、僕はそれをあまりやりたくないんです。なぜなら、それはハイトーンカラーのテクニックだけじゃなく、美容師の“思考”によって変わるものだから」
客単価アップは講師活動において最も売りになりそうなトピックだが、2046さんは、“考え方”を何より重視する。
「長く美容師を続けるためには、“考え方”が重要。テクニックも大事ですが、それ以上に僕は“考える力”のある美容師を育成したいと考えています。2046チームではこれからも、長く美容師を続けていけるための教育を推進していきます!」

