日本式から欧米式へ ボートがつくる中国人のためのハイライト

日本式から欧米式へ ボートがつくる中国人のためのハイライト

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上海を拠点に、独自の欧米式ハイライトで人気を集める美容師がいる。2024年10月に独立し、上海のデパート内にカラー特化サロン「GW HYGGE」をオープンしたボート(BERT)さんだ。

スタッフ50人全員が26歳以下、メニューの100%がカラー。日本式でも韓国式でもない、中国人の肌色に合わせたハイライト技術を体系化し、若い客層からの支持を集めている。14歳で給料ゼロの住み込みからスタートしたキャリアと、その技術の中身に迫った。

BERT(ボート) 小紅書(RED):ChuYi548 1999年生まれ、貴州省出身。14歳から地元サロンで働き始め、17歳で広州へ。複数のサロンで経験を積む中でブリーチカラーに出会い、2016年に上海へ拠点を移す。スタイリストとしてキャリアを重ねた後、2024年10月に独立。上海・静安区のデパート内にカラー特化サロン「GW HYGGE」を共同創業し、技術店長を務める。デザインカラーに加え、アメリカ式ハイライトを打ち出し国内で注目を集める。

上海のヘアカラーを塗り替える
アメリカ式ハイライト

ボートさんが中国で有名になったのは、自ら研究したというアメリカ式ハイライトの存在が大きい。顧客だけでなく美容師からもその技術は注目を集め、広がりを見せている。このハイライト技術は、一時期中国で中心となっていた日本式ハイライトとバレイヤージュへの課題感から生まれたという。

ボートさんのREDには投稿一つに約5万のいいねと1000件近いコメントが寄せられることも

「自分も日本式のスタイルに惹かれて研究していました。ただ日本式はとても細かいから、どうしても時間がかかりすぎるのがネックでした。僕自身が欧米系のスタイルが好きなのもあって、中国人の肌色に合った、ちょうどいい落としどころを探していたんです」

行き着いたのが、欧米のハイライト技術をベースに中国人の肌色へ合わせた独自のアメリカ式ハイライト。チップは太め、トーンは白すぎず(中国ではより白髪っぽい見え方を嫌う)、さらに2パターンに整理して打ち出している。トレンド重視の発色鮮やかなタイプと、OL向けにオフィスでも通用するトーンを落ち着かせたタイプだ。

「僕のお客さんは若い人が中心なので、この2つがあれば大体カバーできます。黄みがかった中国人の肌色に合わせて設計しているのが、支持されている理由だと思います」

客層は18〜25歳が中心で、メニューの約70%をこのハイライトカラーが占める。客単価は2000〜3000元(約4〜6万円)と上海でも高価格帯に位置し、集客はRED(小紅書)とTikTokが中心だ。

田舎町、給料ゼロの
住み込みから上海へ

ボートさんの出身は中国南部にある貴州省。14歳の時に地元のサロンへ「給料はいりません、食事と寝る場所だけください」と飛び込んだ。

シャンプー、カラーをそれぞれ1週間で合格し、異例のスピードで技術を叩き込まれ、1年が経つ頃には一通りの技術を身につけた。17歳で中国の三大都市のひとつ、広州へ。大手チェーンサロンに入り、ランク制度の本格的な教育環境で一から技術を学び直す。しかしサロンが買収され転職を余儀なくされ、その空白期間に参加したセミナーで出会ったのがブリーチカラーだった。

「ブリーチでこんなに綺麗な色が出せるのかって衝撃を受けましたね。自分がこの業界で何をやりたいのか、初めてはっきり見えた瞬間でした。もっとカラーに集中できる環境に行きたくて上海へ移ったんです」

50人全員26歳以下
若さとカラーで勝負するサロン

いくつかのサロンでスタイリストとしてキャリアを積んだあと、ボートさんは2024年に独立。上海のなかでも高級ショップが並ぶ静安区のデパート内に「GWHYGGE」をオープンした。200平米という広い空間に、スタイリスト約30人の全員が26歳以下。約20人いるアシスタントも平均年齢18歳で、ボートさんをはじめとするスタイリストのSNSを見て応募してくるという。

「若い人が入ってきたいと思える場所を作りたかった。そして入ってきたスタッフ全員が、技術にこだわり続けてくれる環境を守りたい。その先にあるのは、お客さんの体験そのものを1番大事にすること。技術やスタイルはみんな発信していると思いますが、僕はサービスやホスピタリティもウリにしていて、SNSでも施術者視点でサービス全体が伝わるように工夫しています」

ボートさんは技術責任者として教育と品質管理を担いながら、今も現場に立ち続ける。自身が中国に広めるアメリカ式ハイライト。今後の目標は、その技術をもっと広く届けることだという。

14歳で美容に飛び込んだあの日からさまざまな場所で技術と向き合ってきたからこそ、次に続く技術重視のスタイリスト育成にも心中を注ぐ。その姿勢が今の上海の若い客層と美容師を引き寄せている。

木村 麗音
執筆者
木村 麗音

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