今、中国で最も注目を集める女性美容師といえば、北京の『VOKA Academy』を主宰するAbby Chen(アビー・チェン)さんだ。
台湾をルーツに、現在は代名詞であるデジタルパーマ「New Chinese Perm Style(新中華パーマ)」を掲げてアジア全域で講師として活動。これまでセミナーを通じて技術を伝えてきた美容師は2万人を超え、中国国内では、彼女に憧れて美容師を志す女性も少なくない。
彼女が“パーマの女王”と呼ばれるに至った経緯から、独自のパーマスタイルが生まれた背景、そして変化の激しい中国の教育論について話を伺った。
小紅書(RED):Abbyabbychen1 台湾出身。15歳からヘアサロンでキャリアをスタート。台湾のトップスタイリストとして活躍後、2019年に拠点を中国本土へ。2022年、北京に美容アカデミー〈VOKA Academy〉を創設。代名詞であるデジタルパーマ「New Chinese Perm Style(新中華パーマ)」を確立し、アジア全域でヘアショーやセミナーを展開。これまでの受講者は延べ2万人を超え、その技術力と発信力から“パーマの女王”として中国美容界をけん引している。
アビー流を確立した
「新中華パーマ」
──Abbyさんの「ニューチャイニーズパーマ(新中華パーマ)」とはどんなパーマですか
特徴は大きく分けてふたつあります。ひとつは「デザイン」ですね 。中国のお客さまが好きなリッチなウェーブ。それをベースに、韓国っぽいセクションごとに繋げないレイヤーカットや、日本特有のナチュラルなエッセンスを混ぜ合わせて今の空気感に合ったデザインに仕上げています。
そして、もうひとつが「再現性の高さ」。これが中国で支持された一番の理由かもしれません。中国ではスタイリング剤をつけるより、ドライだけで綺麗に決まるスタイルが好まれます。私のパーマは特別なテクニックを使わらずに、ただドライヤーを当てるだけでしっかりとした弾力が保てる。あまり手入れをしなくても、サロンの仕上がりをそのまま再現できるんです。
──Abbyさんのスタイルはどうやって生まれたんでしょう?
もともとは、私のキャリアのルーツにヒントがあります。私は15歳から台湾で美容師を始めましたが、転機になったのは「Sieg(シーク)」という日系サロンに入ったことでした 。当時の台湾では、アイロンで巻いたようなやわらかい質感をパーマで再現できるなんて誰も思っていなかったんです 。けれど、日本人のオーナーが「これから絶対にこのナチュラルさが流行るから、パーマを特化させよう」と。そこで日本式の繊細なセンスと技術を学びました 。
ただ、日本の“くせ毛風”は、現地の価値観では「お金を払ったのにかかっていない」とも受け取られかねません。私が持つ技術や好きなカルチャーを新たにミックスして、Abby流のパーマを創り出したんです 。世界には韓国式や日本式、ヨーロッパ式はあっても「中国式(チャイニーズ)」と呼べるパーマはなかった 。ネーミングの由来は、世界に通じる新しいカテゴリーを確立したかったからです。
※中国では美容師免許が不要なため、15歳前後でキャリアをスタートする人も多い

台湾での成功を捨て
ゼロから中国本土へ
──台湾では月商1000万円超えのトップスタイリストだったそうですね。そこからなぜ、中国本土へ?
台湾にいた頃は、月50万元(約1000万円以上)の売上がありました。1日に多い時で20人のパーマを担当し、女性美容師としてナンバーワンだった自負もあります。でも、2019年にそのすべてを置いて上海へ行くことにしました。ゼロからの再スタートに周りからは驚かれましたが、これも私の性格です。当時は教育者としてのキャリアがなかった私は、中国本土という大きなマーケットで自分がどこまでいけるか、挑戦したい気持ちが抑えられなかったんです。その後、上海でセミナーをするなかで最高のパートナーに出会い、2022年に北京に「VOKA Academy」を創設することができました。
──「VOKA Academy」ではどんなことを教えていますか?
私はカットとパーマの講師を。もうひとりの代表がSNS運用やコンテンツのつくり方をはじめ、今の美容師として必要なスキルを教えています。
アカデミーで何より大事にしているのは、教えた技術をコピーするのではなく「応用できるか」と「問題があった際に解決できるか」です。中国のSNS競争は世界一と言えるくらい苛烈ですが、そこを生き抜くには、付け焼刃ではない技術と、時代に合わせてアップデートし続ける姿勢。結局はそれしかないんです。講師である私自身も、止まってしまうのが一番怖いですから。
「女王」なんて柄じゃない
──中国では「Abbyさんに憧れて美容師を始めた」という女性が増えているそうですね。もともと男性美容師が多く、教育者も男性が多いなか“パーマの女王”と呼ばれるAbbyさんの活躍を見て、勇気をもらっている人が多いのでは?
そういう話は、たまに耳にします。でも、彼女たちの活躍は私のおかげじゃなくて、自分自身で努力した結果。今は中国でも女性美容師がどんどん台頭していますが、それは純粋に彼女たちの頑張りによるものです。私自身、自分のことを『女王』だなんて、微塵も思っていません(笑)

──今の中国美容界を、日本の美容師にどう感じてほしいですか?
中国はとにかく技術の進化が早いです。私をきっかけに、まずはその技術に興味を持ってもらえたら嬉しいですね。
これまで台湾、日系サロン、上海、北京と、いろんな場所で美容師やお客様と関わってきましたが、その積み重ねが今の私をつくっています。そのなかには日本の技術もありますし、お互いの良いところを刺激し合えるような関係になれると思います。日本でも何度かセミナーをしていますが、今年もぜひみなさんに会いたいと思っています。
──Abbyさんの現在の目標を教えてください
今は教育者として技術を伝えるだけじゃなくて、パーマ剤の開発にも力を入れているところです。いいデザインには技術とプロダクトがセットですから。ほかにも、自分の発信力を活かして代理店という立場で挑戦しています。常に新しいステージを突き詰めていきたいです。


