誰もが知るとおり、いま「K-〇〇」が世界中にあふれている。K-pop、K-beauty、K-fashion、K-food…、最近では、建築やインテリアにまで“韓国風”という言葉が使われるようになった。SNSで見るだけでなく実際に韓国に渡ってヘアやメイクを学ぶ人も増え、その影響力はもはや説明のいらないほどだ。
一方で、韓国から日本へ学びにくる美容師も実は少なくない。ソウルに次ぐ韓国第2の都市、釜山(プサン)出身のラユンさんもそのひとりだ。韓国最大級の名門サロン「JUNO HAIR(ジュノヘアー)」でデビューした後に日本へ渡り、約7年間の留学を終えて地元・釜山へ戻った。
日本と韓国を行き来しながら感じたこと、学んだことを率直に語ってもらった。

──韓国から渡って日本へ渡ろうと思ったのは、どんなきっかけでしたか?
韓国でスタイリストデビューをしたあと「PEEK-A-BOO(ピークアブー)」のセミナーを一度受けたことがありました。そのカット理論が衝撃的で、スタッフたちもとにかくカッコよくて、現地でもっと深く学びたくなって26歳のときに日本へ行くことにしました。今でこそ韓国ヘアはトレンドですが、韓国には私と同じように「日本の技術を学びたい」という人がたくさんいます

──実際に日本へ来てからは、どのように学び始めたんでしょうか?
日本語がまったく分からなかったので、とりあえず飛び込んでみようと思って、語学学校に通いながら表参道のヘアサロンでアルバイトをしていました。同時に「PEEK-A-BOO アカデミー」でカットを学んで、美容学校にも通って免許も取りました

──韓国で受けてきた教育と比べて、日本の技術はどう感じましたか?
韓国では「JUNO HAIR」という大きなブランドで働いてました。アカデミーで2年半ほど学んでからデビューするのですが、英ヴィダルサスーンアカデミーとも連携していて、どちらかというと重めなスタイルが中心でした。日本では似ているところも多かったですが、軽さのあるスタイルや繊細なテクニックを多く学べたと感じています

──実際にサロンワークでは、どんな変化がありましたか?
語学学校に通っていたとはいえ、日本語がペラペラなわけじゃなかったので「ここだったら自分を活かせるかな?」ってK-beauty系のヘアサロンに入りました。ちょうどそのあとにコロナ禍が来て、韓国ドラマが流行って、韓国ヘアが一気に広がっていって。気づいたら韓国ヘアがメインになっていました。
コロナ禍の大変な時期でしたけど、月間売上200万円を超えて4店舗あるサロンのなかでトップにもなりました。正直、運にも恵まれたと思います。

──あとから振り返ってみて、1番大きな学びはなんだったと思いますか?
技術ももちろんなんですけど、それ以上にお客さまとの向き合い方とか、接客の姿勢はすごく私を成長させたと思います。最初はあまり言葉が通じなかったので、態度とか表情がとっても大事で、その経験が今の私をつくっている気がします。
サロンワークも同じで、最初からみんなに認めてもらえていたわけではありません。毎日朝早く出勤して掃除を率先したり、できることは自ら動いて、その積み重ねが認められたとき「ここでやっていけそうだな」って思えたんです。

──韓国へ戻ってからは、どこで働いていますか?
東京に7年くらい住んだあと、2024年の10月に地元・釜山に戻りました。今は「WENEED HAIR STUDIO(ウィーニード ヘアスタジオ)」のソミョンロッテ店でディレクターを勤めています。日本ではずっとフリーランスだったので、近いスタイルで働ける場所を探していて。働き方をコントロールするというのは韓国ではまだ珍しいですし、多分釜山でもここだけじゃないかな


──久しぶりに韓国に戻って、いちばん戸惑ったのはどんなところですか?
戻ってきてまず感じたのは、SNSやブランディング、新規の流れとか、ヘア以外に考えなきゃいけないことがすごく多いな、ということでした。日本ではカラーのお客さまが多いですけど、韓国はパーマが主流で、来店周期が3ヶ月とか、長いと半年くらい空いてしまうことも普通なんです。そうなるとずっと新規顧客をたくさん探さなきゃいけなくて。そのためのマーケティングはより大事になったと思います。




(ラユンさんのインスタグラムから)
──集客や評価の仕組みも、日本とはかなり違いますよね
日本の「ホットペッパービューティー」みたいな存在に「NAVER(ネイバー)」があるんですけど、AIによってだいぶ左右されてしまいます。ネイバーペイでお客さまに支払ってもらわないと、おすすめのスタイルが表示されなくなったりしてしまうこともあって。人気のスタイルやメニューが出ていないと「この人はあまり人気がないのかな」と思われてしまいます。
逆に、自分のお客さまが積極的にネイバーペイを使ってくれていると、スタイルがサロンのなかでも上位に表示されやすくなって、指名にもつながりやすくなります

──そうした仕組みも含めて、日本と韓国の違いをどう感じていますか?
日本のお客さまは、美容師の性格とか、態度みたいなところをよく見ているなと思います。安心できるかどうか、みたいな部分ですね。韓国はウエイトの位置とかラインとか、仕上がりに対してかなりシビアなお客さまが多いです。その分、接客についてはそこまで重視されないことも多い気がします。
あとは、みんな本当にせっかちです(笑)。とにかく早く、早く、という感じで。そのスピード感に慣れるまでは、ちょっと戸惑いました。

──最後にこれからの展望を教えてください
今働いている「WENEED HAIR STUDIO」は、フリーランスでも教育を大事にしているサロンです。日本には名古屋に1号店もできて、これからセミナーやコラボレーションの機会も少しずつ増えていくと思います。日本と韓国を行き来してきた自分だからこそ、自然にできる関わり方があればいいな、という気持ちもあります

まだまだ、学ぶことだらけですけど、実際に現地で働いて生活してみると、外から見ているのとは全然違う発見があります。技術だけじゃなくて、文化ごと学べるので。もし迷っている人がいたら、私はおすすめしたいです
- 執筆者
- 木村 麗音
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