最短距離で、最大火力!23歳・カケルが挑む1000万の壁

最短距離で、最大火力!23歳・カケルが挑む1000万の壁

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特集:次世代エース

photo_相原サン

東京・渋谷の〈VIEW TOKYO〉(ビュー トウキョウ)に注目の若手がいる。23歳のスタイリスト、カケルさんだ。

彼は昨年22歳でスタイリストデビューを果たすと、およそ1年後の今年10月には月間売上550万円を叩き出した。似合わせショートと顧客のニーズを掴んだカウンセリング動画を武器に、12月現在も予約枠3枠で1000万円の壁に挑んでいる。

そのスピード感と数字の背景には何があるのか。これまでの選択と歩みを聞いてきた。

カケル  @kakeru_view 2002年生まれ、富山県出身。専門学校金沢美専を卒業後、新卒で〈i.(アイドット)〉に入社。似合わせを軸にしたカウンセリング動画で注目を集め、デビュー10カ月目にして最高ランク「プレミアムスタイリスト」に最速昇格。2025年、同グループから独立して発足した〈VIEW〉に移籍し、10月に自己最高売上550万円を記録。12月は売上1000万円に挑む。

「早い」「若い」「売れている」。そう聞くと、最初から溢れんばかりのバイタリティやカリスマ性を備えた人を思い浮かべがちだ。けれどカケルさんは、そのイメージをあっさり否定する。

「美容師を志してたわけじゃないんです。工業高校を卒業するとき、就職はしたくなかったけど、寝坊ばかりで大学に行く内申点もなくて。資格が取れる自動車か美容の専門で迷って、飽き性だしまた工業系に進むのは嫌で美容にしました」

進学先は消去法に近い選び方だった。地元・富山から近い金沢の美容学校に進学するも、本人いわく「なにもやってない」という学生時代。周囲が就活を始めるのを見てようやく焦ったという。

「でもやるからには地方じゃなくて、東京で日本一を目指したいなって思ったんです。先生に日本一のサロンを聞いて、そこで働いている先輩につないでもらって都内のブランドサロンを受けました。でも履歴書に書いたサロン名のつづりを間違えて、最終面接で落ちちゃって」

その後、先輩に勧められ受けたのが「i.(アイドット)」だった(現在は同グループから分かれ発足した「VIEW」に所属)。

「面接でめちゃくちゃ歌熱唱して合格しました(笑)。入社したあともその勢いのまま、まずはカリキュラムを1番最初に終わらせようと思って毎日終電まで練習して。でも寝坊癖が抜けなかったのと、技術も何度かつまずいて、結局2年3カ月かけてデビューしました。最速ではあったんですけど、次の代ですぐ抜かれましたね」

デビュー初月の売上は50万円と、「ぜんぜんだった」と話すカケルさん。ここから、アシスタント時代は一切やってなかったSNSに取り組み始める。似合わせを軸にしたカウンセリング動画を投稿し始めること2カ月、8本目にして早くも500万再生を超えるバズが生まれた。毎日投稿が正解とされるなか、量よりも質にこだわったという。

カケルさんのリール動画。

「アシスタントの頃は、下手な技術を出して『下手な人』ってレッテルを貼られるのが嫌で。だったらSNSよりも練習に時間を使いたかった。取り組み始めてからも、毎日投稿しようとすると質が下がるし自分も疲弊する。それって結局お客さんに影響が出ちゃうと思ったので、頻度を縛らない代わりに、一球入魂で。自分が面白いと思うまで編集をやめないから、今でも1週間以上かかります」

SNSをきっかけに売上は4カ月目で130万円まで跳ね上がり、その後も数字を積み重ねていく。10カ月目には、“技術売上3カ月連続260万円以上”が条件の「プレミアムスタイリスト」に最速で昇格した。

カケルさんのリール動画の強みはただのビフォア/アフターではない。似合わせに至るまでのやり取りそのものと、つい見てしまうテンポ感のいい編集が見る人を集めている。

編集のヒントは『イッテQ』などテレビ番組も参考にするという。

「カウンセリングは掛け合いを大事にしてます。リールを見てもらうと、他の人のカウンセリング動画と比べて、ぶっちぎりで僕が喋ってると思います。お客さんが何を求めているのかを掴んで似合わせていく。その過程を僕という美容師ごと見てほしいんです」

顧客層は、小学生からシニア層まで幅広い。なかでも多いのが、40〜50代の、子育てが一段落した世代だ。「耳かけショート」をうたっているカケルさんだが、技術はオールマイティを大事にしている。

カケルさんのインスタグラムから。

「最初からショートをやってたんですけど、スタイルとか年齢層にこだわりがあったわけではないんです。『最速出世・最高売上』で一番になりたくて、だったら若い世代だけじゃなくてお母さん世代まで来てもらえるショートが一番幅広いかなって。でも技術はオールマイティに。ショートだけじゃなくてボブでもミディアムでもロングでも、似合うバランスを理解しているからこそ似合わせができると思ってます」

今年10月、最高売上550万円を記録。総客数280人のうち新規は約100人で、次回予約率は全体で6割。新規客のみでも4割を超え、15店舗ある「VIEW」全スタイリストの中で2位の次回予約率を誇る。

昨年12月は1枠で200万円だったところ、今年9月から予約枠を3つに増やし、12月1000万円の壁に挑んでいる。取材時点(11月)の次回予約分ですでに600万弱。そしていま力を入れているのが「店販」だ。

「来てくれた日にキレイにするのは、正直そこまで難しくなくて。大事なのは家でどれくらい再現できるかとか、どれくらい保つか。そこを考えるとやっぱり店販だなって。1000万は技術売上だけの目標なので、不必要なものを売る気はないですけど全体の10%〜20%は届くように提案したいですね」

最近は店販のセミナーにも足を運ぶ。分野は問わず「すごい」と思った人のところには、アシスタントも一緒に連れていく。カケルさんの視線は単純に売上を追うことよりも、常に自分の後ろにいる後輩たちに向いている。

サロンのウェルカムドリンク。手書きのメッセージを書き加えるのがサロンのカルチャー。

「後輩の成長を考えたとき、尊敬する対象って3種類あると思っていて。①自分の延長線上にいる人、②まったく違う分野で活躍している人、③一緒に何かをつくっていく人。そのなかで、いまの僕はたぶん①。でも後輩が売上を出して同じフェーズに来たとき、②の存在が近くにいないと、目指す背中が見つからないと思うんです」

②は美容師としての成功だけでなく、別の事業や外部でも活躍する存在。理解が追いつかないからこそ尊敬が生まれるという。いまはサロンワークに軸足を置いているカケルさんも、来年は地元・富山に駄菓子屋をつくる予定だ。

「駄菓子屋は『老後に虹色の髪の毛で駄菓子屋のおばちゃんやりたい』っていう母親の夢です(笑)。意味わかんないんですけど、それも含めていいなって。僕自身は正直まだ夢がなくて、売上1000万もゴールじゃない。でも、そんな先輩が近くにいたら後輩はもっと大きいところを見れるし、僕がまったく別のことでも結果を出していたら、もう一段尊敬が生まれる。僕一人で、その背中をつくれたらと思ってます」

③の「一緒に何かをつくっていく人」は、〈VIEW〉の共同代表のような関係性。ただそれはまだまだ先の話。まずはすでに始まっている勝負の12月、目の前の目標に突っ走る、

木村 麗音
執筆者
木村 麗音

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