“緑の店長さん”なだけじゃない、千田ひなのが積み重ねる本当の強み

“緑の店長さん”なだけじゃない、千田ひなのが積み重ねる本当の強み

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photo_chie fukami

大阪・梅田、兵庫・西宮を拠点に13店舗を展開する〈artefice〉(アルテフィーチェ)。その公式TikTokで“緑の店長さん”として注目を集めるのが、〈HERMITAGE〉(エルミタージュ)店長・千田ひなのさんだ。

デザインカラー×美髪を武器にデビュー2年で指名売上300万円を記録すると、昨年12月には自己最高の500万円を突破。高単価プレイヤーとして活躍しながらチームを率い、育成にも力を注いでいる。彼女のブランディングと、〈HERMITAGE〉の立ち上げに込めた想いを聞いた。

千田ひなの  @hina_greeneyes_chi 千田ひなの/1998年生まれ、沖縄県出身。沖縄県専修学校ビューティーモードカレッジを卒業後、新卒で〈artefice〉に入社。2022年3月にデビューしデザインカラーと自己ブランディングを武器に2年で指名売上300万まで伸ばすと、翌年3月から〈HERMITAGE〉店長として立ち上げに携わる。TikTokでは「緑の店長さん」としても知られる4人兄弟の長女。

千田さんのサロンがある中崎町は、大阪・心斎橋と梅田の北にあるクリエイターや個性的なセレクトショップが集まるエリア。〈artefice〉初のデザインカラー×美髪特化サロンとして、2024年3月の立ち上げから千田さんが店長を任されている。そんな彼女のトレードマークが“緑のファッション”だ。

「SNSでは“緑の店長さん”って言われてるんですけど、サロンワーク中は100%緑を着ています。美容師の名前って覚えるのは難しいけど、“あの派手な緑の人”とかだったら印象に残りやすいので、デビュー当時から続けてるんです」

〈artefice〉のTikTok。「#緑の店長さん」で登場している

そんな千田さんが得意とするのは、ダメージレスなデザインカラー。学生時代からハイトーンが好きだったが、新卒で入社した当時〈artefice〉にはハイトーンサロンもなく、特化したスタイリストもいなかったという。

「もともとのんびりで不器用だったので、しっかり技術を学べる教育サロンで働きたくてここに辿り着いたんです。沖縄から出て大手のハイトーンサロンで競う勇気は正直なかったけど、自分の強みをつくりたいって気合いだけはあって。ここで私がハイトーンを学んでスタイリストになれば一発目になれるかも…って、ちょっとずる賢いことも考えてました(笑)」

千田さんのインスタグラムから、ツヤ感のある美髪ハイトーン。

アシスタント時代、営業でブリーチに携わる機会も少なかった千田さんは、モデルを呼んで猛練習。いろんなカラー材を買っては試し、失敗を繰り返しながら引き出しを増やし、同期で一番最後にデビューした。

デビュー後はメキメキと顧客を増やし、2年目には指名売上300万円を突破。次回予約率は9割を超え、セミナーの依頼も届くように。“緑の店長”というビジュアルに目がいきがちだが、それを支えているのは関係性と提案力だ。

「好みや会話の続きをメモしたり、インスタを教えてくれた人にはリアクションを送ったり。コツコツ関係性を続けてくなかで、結果売上もついてきたんだと思います。

来てくださるのは華やかな方ばかりではなく、控えめな方も多いんです。私自身、中学生のころは今より20キロくらい太っていて、ずっと容姿に自信が持てなかった。そんなとき美容師さんに『前髪切ったら似合うと思うよ』って、変わるきっかけをもらって。それから少しずつキラキラしていく喜びを感じるようになったんです。だから私も憧れだった美容師さんみたく『あなたは素敵だよ』と伝えられる存在でいたい。その人が自分を肯定できるきっかけになれたら嬉しいですね」

シザーケースも緑。反対にサロンの外では水色とピンクが多いそう

千田さんは、長く通ってもらえる関係性を築くために、デザインカラー以外の技術にも取り組んできた。

「学生さんが多いので、暗髪や髪質改善などハイトーンを卒業したあとの出口も用意しています。昔は髪質改善もやるなんて思って無かったんですけど、ハイトーンだけじゃなくて武器はなるべく多く、全部できるようになっておきたくて。いろいろチャレンジさせてもらえる環境だったのが、いま振り返るとすごく大きいですね」

もちろん、“緑の店長さん”としての一面も千田さんの強みだ。おととしの夏に初めて以降TikTok経由での新規客が増え、昨年12月に自己最高の500万円を記録した要因にもなっている。

千田さんのインスタグラムから、中明度や透明感のある低明度も人気。

「やっぱりTikTokの影響は大きいと思います。〈HERMITAGE〉がまだできる前に、リクルート目的で会社のTikTokアカウントを5人で始めたら、それを見た美容学生だけじゃなく、一般のお客さまも来てくれるようになって。最初は自分が出ることにかなり抵抗があったんですけど、今では“教育係”みたいなポジションで、台本なしでみんなで撮っています(笑)」

デザインや本人のビジュアルに注目が集まりがちだが、彼女のブランディングを支えているのは、そのキャラクターを活かした誠実な積み重ね。それが高単価・高リピートにも結びついている。

「オーナーの船越から『ハイトーンサロンをやるから店長やって』って声をかけられたのが〈HERMITAGE〉の始まりでした。そのとき私は自分の売上のことだけしか見えてなかったんですけど、背中を押される形でチャンスをいただいて、2024年の3月にオープンしたんです」

〈HERMITAGE〉は、〈artefice〉のノンダメージサロンとしての方針を踏襲しつつ、「ノンダメージでつくるブリーチカラー」をテーマにケア&デザインカラーを打ち出した。特に若い世代から高単価での支持を集める。

「サロンとしてデザインカラーを掲げるようになって、より繊細な髪質の方が増え、ケミカルの知識も技術も全体のレベルが底上げされました。オープンからは本当に大変で、はじめてインカムで戸惑ったりして、オペレーションを組み立てるのに半年はかかりましたね」

セット面は5席。千田さんひとりで最大で7枠担当することもあるため、営業はパズルのような作業だ。フロアが分かれていることで連携も複雑、アシスタントの成長も欠かせない。

「でも、本当にスタッフに恵まれたと思います。私は『待ってる』っていう感覚をお客さまに与えたくなくて、私が施術していないアシスタントとの時間も“このお店に来た目的の一部”として楽しんでほしいんです。その意識を全員が持ってくれているから、アシスタント指名にもつながっているし、安心して任せられる。本当に優秀です」

〈artefice〉では、全店でアシスタント指名制度を導入しており、〈HERMITAGE〉はその中でも特に指名率が高い。次回予約の際には、スタイリストと同時にアシスタントの指名も受け付けている。

今年のハロウィンは〈HERMITAGE〉スタッフで「ヴェネロペ」に仮装して営業。千田さんのインスタグラムから

「やらなきゃいけない状況に置かれているというのもあるし、任されているっていう実感から責任を感じてくれてるんだと思います。待ってる感覚もしないし、私たち“みんな”に会いに来てくれるようになっていい循環が生まれてると感じます」

忙しい背中に任せられるからこそ主体性も生まれる。最後に、そんなチームを率いるリーダーとしての展望を聞いた。

「いまの店舗のジュニアスタイリストたちを、いずれ〈artefice〉のいろんな店舗の店長に育てること。私自身が、サロンの中でも外でもいろんな経験をさせてもらって今があるので、彼女たちにも同じようにチャンスを広げたいです」

木村 麗音
執筆者
木村 麗音

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