休みはもっぱらDJ!AMANEとめぐる、古着と音楽ディグなショーの舞台裏

休みはもっぱらDJ!AMANEとめぐる、古着と音楽ディグなショーの舞台裏

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Photo_名古屋優、haruka yoshida

昼はサロンワーク、営業が終わればDJの現場へ直行。少し眠って、起きてまたハサミを握る。この日常を7年間送っているのは、〈LECO〉の店長・AMANEさん。

美容師とDJ、どちらも全力で続けてきたからこそ境目がない毎日を送っている。

今回はへアショー本番までのAMANEさんに密着。下北沢でのアイテム探しや主催イベントへ同行して、美容師の合間を縫ってDJをこなす彼の原動力を探ります!

AMANE
1998年生まれ。茨城県出身。国際文化理容美容専門学校渋谷校卒業。2019年に 〈LECO〉(レコ)初の新卒として入社。LECOの店長を務めながら週1~2回、営業後にDJ活動もこなす。

ヘアショーのアイテム探しに、古着の街・下北沢へ。衣装テーマは「ビジネスマン」。デザインはシンプルだが、少し使い込んだような質感がイメージとのこと。

私服のほとんどが古着のAMANEさん。「学生の頃から買い物や衣装探しできていたので、もう慣れ親しんだ街です。」と、古着屋が並ぶ路地を迷いなく歩いていく。

まず最初に向かったのは、とにかく洋服や小物が安価で手に入る『たんぽぽハウス』に。衣装で使うネクタイと、リメイクとして使えそうな服を探しにきた。

「へアショーやコンテストの衣装はほとんど手づくり。服を解体して、つなぎ合わせて他と被らないデザインにしてます。」と、入社以来〈LECO〉で叩き込まれた“細部へのこだわり”がにじむ。

「今回はネクタイですが、シンプルだからこそ妥協できない。今日のたんぽぽは収穫なしですね(笑)」。今回は理想の形に出会えず、笑って店を後にした。

次に向かった先は、古着屋「シャフ(shaff)」。店長のリョータさんは、AMANEさんが18歳からお世話になっている先輩だ。服の着こなしやカルチャーの面白さを教えてくれ、DJを始めるきっかけをくれたのも、この人だった。

「もともと、音楽をプレイする側に興味があって遊びで機材をいじってたんです。リョータさんがそれを知ってくれていて、主催するイベントに誘ってくれたのがデビュー戦でした」

連日忙しくて顔を出せていなかったこともあり、この日は久しぶりの挨拶もかねて店へ向かった。

「上京したてのAMANEはダサかったね(笑)」と、学生時代を振り返る。当時、リョータさんが働いていた古着屋は原宿。ファッションの発信地で、AMANEさんもそこで徐々に垢抜けていった。

「お店に遊びにいくと、業界の方やファッション感度が高い方と会うことが多くて。服をより意識し始めるようになりましたね」

多いときは週7で学校終わりに通って、放課後を過ごしたという。〈LECO〉の面接前にも訪れて、服装の相談をしたエピソードも残っている。「面接でクリエイティブを問われる課題があるんですけど、それもリョータさんに!大事なときの前に来て、背中叩いてもらってました」

衣装やスタイリングに悩んだときは、人に会って相談するのがAMANEさんのやり方だ。「今回のテーマでこの衣装ってどう思います?」長年の付き合いから、リョータさんはAMANEさんの好みを踏まえつつ、的確にアドバイスをしてくれる。

リョータさんに相談すると、返ってきたのは”フォーマルの基本”」「柄が派手すぎると軽く見えて、スーツの色に合わないと浮くと思うよ。」AMANEさんも「確かに。あくまでもシンプルが大事ですよね。」と頷く。

相談に来たつもりが、いつの間にか私服を試着。
「シャフ」はポップアップという形を続けたのち、約1年前に実店舗を構えた。

紙袋を持たずに店を出るAMANEさん。「今日は収穫なしでしたね(笑)」と肩をすくめる。アイテム探しはひとまず終了。次に向かうのは、1週間後に控えた自身のDJイベントに備えたレコード探しだ。

訪れたのは、ビルの2階にあるレコード屋「JET SET 下北沢店」。

「僕好みのレコードが入荷するお店で、セレクトが最高なんです。DJあるなしに関係なく、オンラインサイトもマメにチェックしています」そう話すAMANEさんにとって、ここは必ず立ち寄る店。DJイベントで参考にしたい曲があり、すでにオンラインチェック済み。今日はその現物を求めて、店を訪れた。

今回のイベントはAMANEさんが主催する「ボイタ(Voita)」の復活祭。約5年前から毎月1回月曜日に開かれていたが、しばらく休止していた。久々の開催となる今回は、海外からゲストDJも迎えるだけに気合いも十分だ。

レコード棚に並ぶ盤を一つひとつ手に取って、針を落とすイメージを頭の中で組み立てていく。

「レコードはかれこれ5年くらい集めてます。価格もずっとあがり続けてるけど、やっぱりアナログの音質が良くて止められないですね。」

下北沢での予定は終了。

アイテム探しとレコード、どちらも購入には至らなかったが「探して見つかる方が少ないです、だからこそ出会ったときがたまらないんです(笑)」と、その表情は楽しげだ。

撮影を終えると、「これからヘアショーの打ち合わせでサロンに戻ります!」と、足早に駅へ。準備の一日はまだ続いていく。

DJイベント当日、場所は中目黒。

扉を開けると4つ打ちのリズムが聴こえてきた。営業を終えて駆け込み、ハサミを置いたAMANEさんはDJに切り替わる。

約1時間のプレイタイムが終わると「来てくれてありがとう!」とひとりずつに声をかけて回る。その丁寧さに、自然と人が集まってくる。

そんなAMANEさんに惹かれて、サロンに通う人もしばしば。「アシスタント時代は、カット・カラーモデルが必要なので、知り合った人に声をかけまくってました!DJでつながった友達や先輩に支えられましたね。僕が美容師ってことを明かすと、応援の意味も込めて来てくれて、今でも通ってくれてる方が多いんです」

DJデビューは専門学生のときだが、自ら動くというよりは場数を増やす。リョータさんのつながりや学生が集まるイベントで回していた。

本格的に取り組み始めたのは美容師になってからだ。外部から声もかかるようになって「入社当時から自分のDJ活動も知ってくれていて、内田さん(代表)や先輩も肯定的でした。むしろ“無理してでもやれ!”って背中を押してくれたくらい(笑)」

サロンワークとの両立はかんたんではないけど、それを上回る楽しさがある。実際〈LECO〉7周年のイベントではDJのディレクションを任された。「自分が好きでやっているDJ活動で、会社に貢献できるのは嬉しかったですね。今までで、1番大きいイベントだったと思います!」

8月18日。下北沢の準備期間を経て、いよいよへアショー本番を迎えた。

「jungreet congle(ジャングリート コングル)」オフィスを模したステージに、学生を含めた約300名が集まり、〈LECO〉と〈QUQU〉のスタイリストたちが出演した。AMANEさんもそのひとりとして、2体のモデルを仕上げる。照明が落ち、いよいよ本番が始まった。

これまでの明るい雰囲気とは変わって、真剣な面持ちのAMANEさんが登場。コンテストで場数を踏んできた彼でも、「本番は毎回緊張します」と語る。清掃員に紛したAMANEさんがハサミを入れるたび、会場の空気が張り詰める。仕上げはスタイリング剤で、前髪にうねりを効かせて仕上げた。衣装はセットアップのスーツに灰色のネクタイで、オフィスワーカーそのものだ。

ヘアショーを終えたばかりのAMANEさんに声をかけると、開口一番「ネクタイ、ちゃんと見つかりました!(笑)」と報告。後日、たんぽぽハウスで手に入れたという。

一息ついたところで感想を聞くと、「自分のパートは無事にミスなく終えられました!でも進行が遅れてしまったので、チームでの動き方や連携は改善点ですね」と、店長らしい全体に向けた視点で振り返る。

実は〈LECO〉で初めての新卒採用がAMANEさんだ。店長になった今でも、コンテストやヘアショーに積極的に挑み続けている。コンテスト前は深夜2~3時まで残ることもあり、スタッフ間で支え合い、直前まで調整を重ねる。粘り強くクリエイティブに向き合う姿勢は、彼を筆頭に確実にサロンで受け継がれている。

「いい意味で、妥協ができない環境です。先輩たちのそういう姿をみて育ってきたので、それが当たり前になっています。趣味もサロンワークも本気で挑める、その波を全力で乗りこなそうと思います!」

ショーで担当したモデルたちと記念の一枚

3日間の密着が終わった。

常に全力で美容師もDJも、どちらも楽しんでいる。サロンに立ち、仲間と古着を選び、夜はフロアで音を鳴らす。どの場面でも、AMANEさんのそばには人がいて、笑い声や音楽があった。

その原動力はどこから来るのか。最後に、AMANEさんが自分に課している“人生のマイルール”を教えてもらった。


🏪 JET SET 下北沢店
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-33-12 柳川ビル201号
電話番号:03-5452-2262
🏪 shaff
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-8-12本多ビル1階
電話番号:03-6804-9731
ボブログ編集部
執筆者
ボブログ編集部

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