インスタの投稿は「見せ方」だけでは終わらない。どう知ってもらい、どう予約につなげるか。日々のアカウントの動かし方で、結果は大きく変わってくる。
そうした工夫を自分のやり方で形にしてきたのが〈COA〉注目の若手、敬太さんと星 那(セ ナ)さん。敬太さんはストーリーズやプロフィールを徹底的に組み立て、フォロワー数に左右されず次々と予約を呼び込んできた。一方、星那さんは高校時代からインフルエンサーとして培った発信力を美容師としての見せ方につなげ、存在感を増している。
同世代だが、異なるアプローチを選んだ2人の視点から「予約につなげるインスタの届け方」を探っていく。



お客さまとの接点の入り口はTikTokですが、あくまでも集客につながるのはインスタ。この2つの特性を把握すれば、予約への道は開けます。
動画は写真よりも人柄や空気感がリアルに伝わる分、同じ内容が続くと見飽きられてしまう。なので、リール動画の種類を増やして変化を持たせることがポイント。TikTokを入り口にして、インスタで人柄や技術をより知ってもらうことが大事です。


デビュー後はすぐに“技術・カウンセリング・仕上がり”の3種類をほぼ毎日投稿していました。技術では特化しているメニューが分かり、カウンセリングでは人柄を知れて、最後にリアルな仕上がりを確認できる。プロフィールに並んだ写真を見たときに、タテに同じコンテンツが並び、ヨコには異なるコンテンツが並ぶようにしてひと目で全体像が伝わるように意識していました。特にカウンセリング投稿は、人柄を感じてもらえる大切な要素で、欠かさず発信してきました。


再生数はもちろん大事ですが、最初のうちは数を重ねることを意識していました。編集に3時間かけた1本を狙うより、30〜60分で作った動画を複数投稿するほうが近道です。
実際に1日15投稿していた時期は「再生数1000×投稿数15=1500再生」の考え方で、毎日営業終わりに編集作業をして、数ヶ月続ける生活をしていました。こうして数を出し続けることで編集の練習にもなるし、活発なアカウントと認識されて認知度も上がりやすい。まずは名前を知ってもらうことが大切だと思います。




インスタのストーリーズは、プロフィールを見た人が最初にタップしやすい場所。だからこそ、ここに予約につながる要素を集めています。
まずは「Before→After」で技術を見せて、僕のこだわりを載せる。そして、予約の空き状況とリアルな口コミを重ねたら、最後は「この人に切ってもらいたい!」と思ってもらうために、日常や素の自分を見せる。
実際に毎日5投稿を2年間続けた結果、デビュー後に1日20~30人増え続けて、2年後には毎月の新規予約が100人ほど安定しました。正直すぐに結果が出ず焦りましたが、1度の大きなバズりより地道な努力を毎日続ける継続力が大切ですね。



ストーリーズ設計だけでなく、プロフィールこそ逃せない予約の入り口なんです。
実は最近、プロフィールを整理してみました。メインで使っているアカウントとは別に、下の図のように4つのアカウントを作成。メインは、これまで保存されることが多かったまとめ投稿などに絞って、現在は6投稿。これによって、新しく予約を希望している方の興味を引き、自然に他の紐づけアカウントもチェックしてもらいやすい。
これは、さっき紹介したストーリー設計の考え方を応用しています!ストーリーズで一度目を引いたあと、プロフィールや関連アカウントでさらに関心を深めてもらう流れを作れるので、結果として予約動線がすっきりします。



実はデビュー初月にある事件を起こして(笑)
当時フォロワー数が8000人いて、予約も徐々に埋まり始めていました。でもそれだと「フォロワー数=売上」の型にはまってしまうのが、どうも気にかかって。今頑張ってる後輩たちの選択肢を広げたいと思ったんです。
約6時間ほどかけて、友達以外のアカウントを全部消しました。当時、お客さまにも説明すると、むしろ応援してくれたのも良いモチベーションになりましたね。このポイントを押さえれば、バズらなくても予約動線を確保できます。
そして、この経験があったからこそ、「バズらなくても集客できるSNS運用」で月2~4回ほどセミナーも行っています。新しい形で切り開けたのは大きかったです。




僕は高校1年生のときにTwitter(現・X)で大きくバズり、そこから約9年間インフルエンサーとして発信を続けてきました。SNSのノウハウはある程度身についていましたが、美容師としてアカウントを持つときは状況が違いました。サロンの名前を背負い、コンテンツも改めて考え直す必要があったんです。
いまもフォロワー数は昔のアカウントの方が多いですが、その差は1.1万人ほど。両方のアカウントを応援してくれる人がいることで、世代や男女を問わず幅広い層に届いている実感があります。
そこで感じるのは、フォロワーのニーズと自分が描く美容師像をどう交差させるか。その重なりを探すことが、僕にとってSNSを続ける面白さになっています。


これは美容師になってからつくったアカウントのフォロワー変遷です。常に動画や投稿は上げ続けているのですが、スタイリストデビューして3か月で1.5万人まで増えました。当時はカウンセリング動画が流行っていたので、海外から来てくれたお客さまを投稿して一気に伸びた印象です。また、シャンプーやカット中の音に焦点をあてたASMR動画も英語字幕がついていました。またもや日本だけでなく海外の方からも注目を集め、3万人に到達しました。
逆にアシスタント時代は修業期間として、投稿を月1~2回でしたね。そこで若干減ったほどで、基本的には下がることなく順調に伸びています。



これまでのSNS活動があったおかげで、デビュー前から応援してくださるお客さまが多く、実際に足を運んでもらえることもあります。ただ、現場ではフォロワー数や再生回数だけでは通用しない部分も多い。実際に来て「思ってたのと違う」と、悪いギャップを感じさせてしまうのは一番避けたいことです。
だからこそ、SNSで描いたイメージとリアルな自分の姿を一致させることを意識しています。僕の場合は“アイドルのようにキラキラした存在”を目指しているので、その姿を保つことが大切。僕の大きな原動力になっています。



フォロワーが全員お客さまになるとは限りません。画面上で親しみやすさを持ってもらうには、やっぱり笑顔や日常の投稿が大切です。アシスタントに動画を撮ってもらい、あえてふざけた動画を出すこともあります。
一方で、これまで大切にしてきたクールな表情の投稿も欠かせません。これは「この美容師にやってもらった」という誇りや価値観をお客さんに感じてもらうための、ブランディングとして保っている部分です。
親しみやすさとブランド価値。この両方をどう見せるかが大切です。今後は技術力もさらに発信して、業界内の認知も高めていきたいと思っています。




美容師になってから、あえてやっていないことと言えば、敬太くんの「前髪や顔まわり」のような特化した技術です。僕のフォロワーは世代も性別も幅広いので、求められる技術も自然と広範囲になるんです。それに対応できる美容師になるためには、やっぱり技術の向上が必須だと思っています。特化が目立つ時代だからこそ、僕にしかできないターゲット層の広さを強みに、技術も認知度もレベルアップしていきたいですね。



同世代でありながら、まったく異なるアプローチでフォロワーを得てきた2人。敬太さんは実践を重ねてノウハウを形にし、星那さんは長年培った発信力と自己ブランディングで存在感を築いてきた。方法は違っても、それぞれが「どう届けるか」を考え抜いてきたからこそ、いまの集客につながっている。

- 執筆者
- ozawa
大阪府出身。大阪文化服装学院スタイリスト学科を卒業し、大阪モード学園美容学科通信コ―スで美容師免許を取得。
- Twitter : @kamishobo
- Instagram : @bobstagram_kamishobo